【凍結中】海兵になったルフィとウタが後に酷い目に遭う話 作:黒のエレメンタル
「ねえライブをやっていい?」
「ライブか…みんな疲れ切っているけどやるのか?」
「やりたい人だけ集めてライブをしたいの!…ダメ?」
「良いと思うぞ」
ウタ准将は、疲れ切った将兵や海賊を励ます為にライブをする事にした。
こういう時は逆効果じゃないかというルフィの意見に参加したい人だけでやると反論した。
こうなってしまうと、何を言ってもきかないので、ルフィは彼女の意見を尊重した。
「よろしいのですかルフィ大佐?病人も居るのに許可するなど…」
「この船の個室は音が聴こえないから大丈夫だ」
歌姫であるウタは、軍艦をライブ会場にする事がある。
その為、軍艦は特別仕様で防音室が豊富にあり、楽器や歌の練習の音が外に漏れない仕様だ。
今回のライブは自己責任で参加してもらい、観客にライブを楽しんでもらう事にした。
「風の噂で聴いていたが、本当にライブをするのか」
「一曲だけでも聴いても損はないだろう」
マシラとショウジョウも気分転換でライブに参加しようと考えた。
今の顔をおやっさんに見せるわけにはいかず、切り替えのきっかけが必要だったからだ。
「よーし!野郎共!ウタがライブをするぞ!!」
「2時間後に全員生存の記念ライブをするよ!!」
「聴いたかお前ら!ライブ会場の設置を急げ!!」
「「「ハッ!」」」
記念ライブが開催される事となり歌姫の歌に魅了された海兵たちは会場の建築を始めた。
猿山連合軍は彼らの仕事っぷりを見て「これは勝てんな」と無駄に敗北感を与える事となった。
そしてライブに興味がある彼らは、最終ボス以外の全員が観客としてライブに参加する事にした。
「ここだけの限定品だよ~!歌姫のグッズは要らんかねぇ?今なら団扇が1000ベリーだぞ~!」
「何でいつも俺たちに売りつけるんだ!?」
「だって良いカモだし…」
歌姫によってライブが開催される事となった軍艦でウタ派の将兵たちはグッズを売り捌いていた。
それ自体は良いのだが、ルフィ派の将兵に売りつけるという摩訶不思議な光景が繰り広げられた。
全員が歌姫のファンなので軍艦内で通貨とグッズの循環が起こっている有様である。
しかし、グッズを貯めるのは限度というのがあり、無償で外部に渡す場合がある。
事情を知らない猿山連合軍は申し訳なさそうに無料のグッズを持って観客席に座っていた。
「ライブ開幕まで5分前です」
「ありがとう」
海軍本部准将ウタは、今から歌姫として観客に歌を披露する。
緊張などしていないが、海賊と海兵が仲良く観客席に居るのは首をかしげる光景であった。
『でもそれが私の望んだ世界かも知れない』
いつもと違って天空に居るせいか息苦しくて身体が重くコンディションは最悪と断言してもいい。
観客たちも疲れ切っており、いつものライブでは彼らは耐え切れないかもしれない。
だが、彼女は止まらない。
「みんなが疲れ切っているからこそ私は歌って励ますの!」
「ウタの歌声は、みんなを癒すからな!おれも肉を喰いながら楽しんでくる」
「ありがとう」
ウタはライブをする直前に幼馴染と会話をするが、それは童心を忘れないようにする為である。
幼馴染が楽しめないなら観客も楽しめないという精神でいつもライブに挑んでいる。
そして時間となりルフィは観客席に戻り、彼女は舞台裏から晴れ舞台へと向かって行く。
「「「「U・T・A!!U・T・A!!U・T・A!!」」」」
海兵達がウタグッズを片手に歌姫の名前を連呼する。
最初は困惑していた猿山連合軍だったが、彼らもノリが良いのでいつのまにか名前を呼んでいた。
ルフィはそれに満足しながら肉に喰らい付いてライブが始まるのを心待ちにしていた。
「みんな!ウタだよ~~!!」
舞台の幕が開いてマイクスタンドを片手に握り締めている笑顔のウタが居た。
紅白の髪型で左腕に青い長袖を付けているという
「今回は、全員生存の記念ライブをやるよー!!」
歌姫が右手でガッツポーズをすると観客席から彼女の声を打ち消すほどの歓声が聴こえてくる。
暫く彼らの声を会場に響かせた後、彼女は右手の人差し指を口の前に当てた。
ライブに慣れている海兵たちは一瞬で静まり返り、慌てた猿山連合軍の面々も静かになった。
「でもその前に注意事項があるよ!まずは緊急時の事ね!」
彼女はライブがやるのが好きだが、それ以上に観客の体調に気を配っていた。
特に今回は空島という環境だからこそ気を遣った。
「体調が悪くなったら赤い腕章を付けた海兵に話しかけてね!」
「誰か一人でも倒れたらライブは中止するから!」
赤色の十字架の腕章を付けた衛生兵たちは、観客に向かって手を振って存在感をアピールした。
ここでは階級も身分も思想も宗教も貧困も敵味方関係なしで純粋にライブを楽しめる会場。
そこは、歌を披露する歌姫に楽器を鳴らす軍楽隊とそれを聴く観客のみで構成されている空間。
それがプリンセス・ウタのライブ会場だった。
「次にライブが終わるまで舞台に飛び入り参加するのは止めてね!」
どさくさに紛れてライブ中に舞台に上がって来る観客が過去に存在した。
基本的に海兵やルフィに排除されるが、ウタからすれば観客の1人であるので辛いものがある。
「でも大丈夫!ライブが終わった後にやる予定の二次会で一緒に歌おうね!」
そこで彼女のとった策は、曲を披露するライブ中のみ我慢してもらって二次会でやる事にした。
みんなで一緒に騒いで歌って暴れるのは、彼女にとっても楽しい事だから。
盛り上がって自分を解放するかのようにライブに飛び入り参加する人物を否定しきれなかった。
「最後に!ライブでは暴力は厳禁だよ!前の席を蹴ったりしないでね!」
「どうしてもやるなら二次会で!いいよね!!」
どうしても暴れる人物というのは存在するので、そういった輩も二次会で勝手にやらせている。
無頼漢や暴れる連中は、ライブに参加させないが、彼女の信念に反する行為だった。
自分の歌が必要ならどんな人物であろうとも届けるのが使命だと彼女は信じているからだ。
「今回は新曲を披露するから楽しみにしててね!!」
海兵達は盛り上がり、ルフィは肉を喰うのを止めてウタを見つめていた。
自分の夢より幼馴染を優先した17歳は、新曲だけはしっかりと聴く準備をしている。
「盛り上がってきた事だし、今からライブの開幕だよ!準備は良い?」
「「「「おおおおおおおおお!」」」」」
「もっと行けるはず!準備は良い?」
「「「「おおおおおおおおおおおーっ!!」」」」
歌姫は茶番劇で観客の注意を逸らしている間に合図を出して念入りのチェックをする。
3個分隊で構成された軍楽隊に演奏の準備が完了したのを確認した。
照明班や音響班も準備万端でようやく歌えると分かった彼女はマイクを口に近づけた。
「じゃあさっそくだけど歌うよ!曲名は、『一緒に居てありがとう』!」
照明担当の海兵が歌姫にスポットライトを当てて彼女の姿をはっきり映し出した。
バックダンサーの4名が後方から飛び出してきてウタをセンターにするように配置に着いた。
そして軍楽隊の演奏が始まり、ついにライブは始まった。
「私…は……思うのぉ♪なんーで孤独はーこんなに辛いのぉ」
いきなり泣き出した歌姫は、マイクが握られた右手で胸を抑えて悲観的な歌い出しだった。
打ちひしがれたようにバックダンサーが両手を床に付けて頭を垂れている。
「消えそうな~灯を~誰も見つけられないーのぉー」
歌姫の後ろで手を伸ばして花のように開いていく。
錨を表すかのように赤色のスポットライトが歌姫を照らした。
「人はぁ決してぇ!相容れない!どんな!同情しようとも!伝わらない!」
「私しか~分からないからぁ♪」
いきなり拒絶するかのように右手を払い除けて観客に向かって叫ぶように歌い始める歌姫。
さきほど悲しみに満ちていた歌が急激に早口となり、怒りを感じられる。
曲名から想像できない力強い拒絶感をアピールするように左手で正義のコートを掴んで脱いだ!
「それでもぉ一緒に居たい!人は!孤独には~勝てない!誰かに縋りつきたいのぉーー♪」
彼女は脱いだ正義のコートを観客席に向かって放り投げて力強く歌い始めた。
温もりと残り香が残ったコートが飛んできて観客が混乱したのも気にせずに彼女は歌い続ける。
「だからぁ!私は示すのぉ!行動で愛を伝えるのよ~~ぉ♪伝えるのよ~~♪」
「愛と無関心は表裏一体!だから私は~愛を告げるのぉ♪一緒にいてくれて…」
「ありがとうおおおお♪ありがとおおお♪」
「Thank you always♪」
悲しみから怒りに、そして最後は笑顔で優しく観客に向かって歌うウタ。
間奏が始まり、フリルが特徴的のミニスカのワンピースを履いている歌姫は誘うかのように踊る。
それと同時に笑顔でリズム良く両手を叩き始めた。
海兵達はすぐさま彼女のリズムに合わせて手を叩き始めてすぐに会場全体に伝わっていく。
長年一緒に居たルフィですら彼女らしくない歌い方に驚きながらも、両手を叩いてリズムを作る。
「私は~いつも戸惑っている♪なんーで愛はーこんなに苦しいのぉ。」
「どうしてこんなに重いのぉー!」時間は決してぇ!待ってくれない!」
「どんな!泣き叫んでも!伝わらない!後戻りできない道だからぁ♪」
彼女の覚悟を聴いたようにバックダンサー達が躍り出して活気がステージ上が活気に溢れて来た。
計算されて設置された電伝虫に取り付けられた拡声器が歌姫の声を響かせる。
「世界は否定しても!私は!それには~負けない!もっと信じたいのぉーー♪」
興奮したのか無駄に動き回るウタはバックダンサーとハイタッチをしながら歌い続ける!
アドリブで動く羽目になったダンサーは完全に彼女に振り回されていた。
ただ、歌姫がきわどい動きをしてくれたおかげで彼らのミスが目立たなかったのが幸いだった。
観客は、ミニスカートが覆い隠せない歌姫の魅力的な大腿に視線を釘付けにされていたからだ。
「だからぁ!私は示すのぉ!歌で愛を伝えるのよ~~ぉ♪伝えるのよ~~♪」
胸に残っていた想いを全て開放するかのように歌姫は歌い続ける。
「愛と友情は決して変わらない!だから私は~言葉で告げるのぉ♪」
「一緒にいてくれて…ありがとうおおおお♪ありがとおおお♪」
何かを掴むように右手を伸ばしていたウタは少しずつ口元に指を近づけていた。
「Thank you, Luffy!」
そして最後に人差し指と親指を立てて幼馴染に向かってウィンクして1曲目が終了した。
いきなり自分の名前を大衆の前に出されたルフィは両手で口を押えて何度も咽た。
さきほど飲んでいたドリンクが鼻から垂れて更に咽た。
「「「「おおおおおおおおおおおお!!」」」」
一曲目が終わっただけなのに観客たちは大盛り上がりで熱風溢れる会場となってしまった。
まさかライブで、ウタ准将がルフィ大佐に愛の告白するとは誰もが思っていなかったからだ。
歌い切った歌姫ですら顔を真っ赤にしているのだから完全に最後の歌詞を間違えていた。
「「「アンコール!アンコール!アンコール!!」」」
「待ってみんな!歌詞を間違えただけだって!ホントだってば!!」
残り2つの新曲を歌おうとした歌姫の声は、観客のアンコール連呼の嵐で打ち消された。
確かにルフィが自分の夢に付き合ってくれた事を感謝した気持ちを歌詞にしてみたのは事実だ。
しかし、反応から【家族愛】という受け取り方をしておらず、完全に男女の仲の話題だった。
「いくら何でもおれの名前をいきなり出すのはきついぞ…」
「違うだってば!家族愛のつもりで歌っただけ!歌っただけって!!あっ!これもらっておくね」
「え?それおれの…」
観客に弁明しているうちに喉が渇いて来た歌姫。
幼馴染がドリンクを持ってきており、ライブ後にやってくれる差し入れと勘違いした。
それがいけなかった。
「ふーーー。生き返った!差し入れありがとうね!」
「いや、まだライブ終わってないから持って来てねぇぞ」
「え?」
空気が薄いせいか思考能力が低下したウタが飲んだのは、ルフィの飲みかけのドリンクであった。
これでルフィとは言い逃れできない関係だと観客に分からせてしまった。
「間接キス」と言われるのも時間の問題だろう。
「ルフィ大佐が差し入れしたって事は二次会だな!」
「違う!まだライブは「野郎共!歌うぞ!!」やめてぇ!!」
空島初のライブは、大成功したがウタだけ完全に失敗に終わってしまった。
この日から准将と大佐のカップリングについて熱く議論される事となる。