【凍結中】海兵になったルフィとウタが後に酷い目に遭う話   作:黒のエレメンタル

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空島編15 余計なトラブルとの遭遇

漢は語った。

自分たちの故郷は空島の連中から“神の島(アッパーヤード)”と呼ばれている島だと。

だが、400年ほど前に彼らは外敵によって島から追い出された。

空島では土が貴重で“大地(ヴァース)”と憧れを抱き、讃える外敵が見逃すはずもなかった。

多勢に無勢、1万mの環境に即座に適応できなかった戦士達は次々に散っていった。

勇敢な戦士の意志を継いだ先祖たちは必ず故郷を奪還すると誓った。

 

 

「にくー、もっとたべたいー」

「「「涎垂らして寝るな!」」」

「いだっ!?」

 

 

重要な情報を聴かされている時、ルフィは爆睡していた。

とても人の話を聞く態度ではないが、それだけでは部下から殴られない。

幼馴染の女に抱き着いて涎を垂らして寝ているとあっては殴られるしかなかった。

 

 

「なるほど。故郷奪還を目指して戦い続けてるのね」

「すげぇ!抱き着かれて涎垂らされても動じねぇのか!?」

「ちょっと黙ってて」

「……はい」

 

 

幼馴染と10年以上過ごしてきた女からすれば、抱かれて涎を垂らされても動じない。

とはいえ赤の他人から指摘されるのは嫌なのでウタはショウジョウを黙らせた。

 

 

「痛ぇえええええ!?なんで殴るんだよ!?」

「まだ分かんないのか!?」

「分かるわけねぇだろう!?痛い!!」

 

 

クロコダイルを倒して英雄として讃えられている大佐もここでは躾けられる犬である。

愛ある拳は、打撃を無効にするゴムの肉体にダメージを与えて大佐は悶絶していた。

殴られる理由に正当性があるので、准将も弟分が殴られるのを止めようとはしなかった。

 

 

「これでいいか?」

「ありがとう。これで充分よ」

「本当に逃がしてくれるのか?」

「よそ者が首を突っ込む案件じゃないしね。話してくれてありがとう」

 

 

武器を渡され釈放されたワイパーは、困惑しながら軍艦から飛び出して去っていった。

 

 

「おやっさんはどう思う?」

「もしかしたらその島が黄金郷かもしれんな」

 

 

マシラに話を振られたモンブランはそう呟くしかない。

彼は、ジャヤ近海で黄金郷が眠っていると10年以上も潜水してきた。

実際は、“突き上げる海流(ノックアップストリーム)”で島が飛ばされて天空に存在する可能性が浮上した。

今まで考えた事もない事態に彼は未だに適応しきれてなかった。

 

 

「明らかに領土問題ですし一度、大将赤犬殿に連絡を取られてはいかがでしょうか?」

「やめておくわ…」

「無謀な行動で兵と軍艦を失わせる行為を行なったからですか?」

「それもそうだけど、この空島自体を世界政府に公表しない方が良いと思うの」

 

 

直通回線(ホットライン)電伝虫”を渡そうとする部下の提案を蹴った准将。

領土問題でごたごたしている所に世界政府が介入する事態だけは阻止したかった。

なにより、神の島(アッパーヤード)が黄金郷だった場合、政府の役人が出張って来る。

トラブルを避けたい彼女は、政府にこの島の事を伝えないつもりだ!

 

 

「なんだその電伝虫?」

「忘れたの?アラバスタ王国で独断で動いてサカズキ大将に叱られた後、頂いた電伝虫よ」

「全く覚えてねぇ…」

「私たちが判断できない事態に陥った時にこれで連絡して直接指示を請うの」

「良く分かんねぇからウタに任せる」

 

 

海軍本部の将官クラスであっても直接、本部に居る上官とは連絡がとれない。

一度、本部の通信兵と連絡をとって、マリンコードを示して規則に基づいて上官と繋いでもらう。

そんな面倒な事をしないと思ったサカズキ大将は、わざわざ貴重な直通回線(ホットライン)電伝虫を授けた。

これなら面倒な手順を省いて執務室に居る大将と直接連絡を取る事ができる。

 

 

「逆に言えば今度独断行動をとったら許されないって事なのでは?」

「クビにされたらルフィと共にライブを開催する旅に出かけるから大丈夫!!」

「どこが大丈夫なんですか!?」

 

 

既にバレたらクビにされかねない状況なので部下も強制はできなかった。

帰還命令を放置して黄金郷を探す為に兵と軍艦を失う所だったなどと口が裂けても報告できない。

口が軽いルフィ大佐なら情報を漏らす可能性もあるが、全て准将に任せているので大丈夫だった。

 

 

「さて振り出しに戻ったが、これからどうするんだ?」

「この島雲の近くにエンジェル島があるらしいからそこに向かうつもり」

「そこに何か手がかりがあるのか?」

「有人島みたいだから物資の補給をするついでに情報収集するつもり」

 

 

格安でグッズを売り飛ばそうとしたがホワイトベレーの隊員が払えない事態が発生した。

どんだけ安月給で酷使しているんだと思ったが、ウタは物々交換で手を打った。

そしたら地図を入手して機密情報の管理についてどうなってるのかと疑問に思った。

ただ“司法の島(エニエス・ロビー)”で情報を漏らす諜報員が居たし……と勝手に納得した。

 

 

「地図を入手するなんてちゃっかりしてるな嬢ちゃん」

「伊達にみんなからちやほやされている歌姫じゃないってこと!」

「おーこわいね。敵に回すとおっかないな…」

 

 

ショウジョウ、マシラ、モンブランは強かな歌姫を見て敵対しない事を心で誓った。

彼らもまた歌姫の魅力に囚われたファンになりつつある。

 

 

「冒険できるのか?」

「エンジェル島に行けばできるかと…」

「そっか、やっと冒険できるんだな!!」

 

 

物々交換で入手した地図には、エンジェル島と神の島(アッパーヤード)という場所が示されていた。

なので、まずはエンジェル島に向かうつもりだ。

ルフィは既に冒険する気満々で肩を回して準備運動をしていた。

 

 

「30分後に出航させるわ!その間に全員を乗船させて点呼を終わらせて!」

「了解しました!!」

 

 

2時間も休ませたのだから無理難題に付き合ってもらう。

休める時は休ませるが、酷使する時は酷使する。

それがルフィとウタのやり方であった。

 

 

「まだ30分も待つのか…」

「今のうちに冒険の準備ができるじゃん!今からお弁当を作ってもらおうよ!」

「おっ!いいなそれ!」

 

 

ルフィの動かし方を知っているウタは見事に彼を誘導させる事ができた。

彼の左手を握り締めて一緒に調理場に向かって行った。

 

 

「青春だな」

「いいな…」

「俺も昔は恋人が居たんだが、くだらない理由でフラれて海賊になったんだ」

「おやっさん!?それ初耳だぞ!?」

「あーーー、そうだったな」

 

 

2人の睦まじさに若さゆえの青春を感じ取った一同。

思わずモンブラン・クリケットが過去を口走ると水を得た魚のように喰らい付いた。

ショウジョウやマシラはおろか、海軍の下士官まで興味津々に話を聴こうと試みる。

それを見たモンブランは、恥ずかしながらも過去について語り出した。

 

 

「もうできてますよ!」

「よっしゃあ!ありがとうな!!」

 

 

調理場では、既に弁当ができており、ルフィは感謝の言葉を告げて弁当を受け取った。

そして自室に戻ろうとしている時に不穏な単語が聴こえた。

 

 

「……ウタ准将、肉が無くなりました」

「大丈夫、これから空島に寄港するからその時に肉を調達するわ」

「ですが、この大所帯を養える肉を調達できるのですか…?」

「大丈夫、海と違ってここは見聞色の覇気で空魚を感知しやすいから最悪は……」

 

 

なんと肉が切れたという話が聴こえて来た。

それを受けて泣きそうな顔をしてウタとコック長に近づく大佐。

 

 

「肉がぁ…なくなったのかぁ!?」

「こういう時だけ耳が良いんだから…」

「大丈夫なのかぁ!?」

「物資調達班と私を信じなさい!お腹いっぱい食べられるお肉を調達するから!」

 

 

泣きじゃくる17歳児を抱き寄せた19歳の姉貴分は優しく麦わら帽子を撫でた。

自分の采配ミスでルフィを餓死寸前まで追い詰めてしまった彼女。

二度と同じ悲劇を繰り返さないように信念の象徴である麦わら帽子に誓った。

『ルフィが肉を食べられなくなる機会を二度と作らない』と!!

 

 

「ウタ准将!こちらに……あっ、すみません」

「違う違う!変な誤解をしないで!!逃げるなああああ!!」

「すみません!空気読めなくてすみません」

「謝らなくていい!謝らなくていいから!!」

 

 

上官が調理場に居ると知って駆けつけた部下は、泣く大佐を優しく抱き寄せる准将を目撃した。

さすがに声をかけるのを躊躇って逃げようとするとウタは必死に誤解を解くために呼び留めた!

 

 

「…で?何事?」

「戦闘が発生しました」

「その割には静かね」

「我々自体は戦闘になっていませんが、ここから離れた場所で戦闘が発生しています」

 

 

対岸の火事だと分かり安心したウタであったが火の粉が飛んでくる可能性がある。

速やかに島雲から出航させるように命令しようとした。

だが、1つ疑問を抱いた事がある。

 

 

「なんでそれを私に伝えたの?」

「准将殿と因縁がある相手が襲撃されていたからです」

「はぁ?」

 

 

意味が分からないウタは、泣いていたルフィを部下に押し付けて甲板に向かった。

そして誰が襲撃されているか分かった瞬間、彼女は脱力して座り込んだ。

 

 

「助けてくれえええええ!!」

「オヤビン!あれ海軍の軍艦ですよ!!」

「この際、何でも良い!!あそこまで逃げるんだ!!」

 

 

フォクシー海賊団の船長フォクシー、戦闘員のポルチェとハンバーグ。

『天の裁き』によって残る団員を連れて行かれて奪還を目指していた。

だが、『試練』によってボロ負けした彼らは脱走を図った。

なんとか“神の島(アッパーヤード)”から逃げたが追手に追いつかれた。

 

 

「あいつらを巻き添えにするんだ!!」

「プププ、その前にボートが沈みそう」

「ハンバーグ!口を動かす暇があったら漕いで!!」

 

 

絶望的状況で船が停泊しているのを見つけて何とかここまで来た。

近づくと海軍の軍艦だと分かったがそんな事などもはやどうでもいい。

 

 

「ノロノロビ~~~ム!!」

「小癪な!!」

「ノロノロビ~ム!ノロノロビ~~ム!」

 

 

フォクシー海賊団が空島に来たきっかけは、海軍に巻き込まれたせいだった。

ならば今回は、彼らが海軍を巻き込む番である。

 

 

「速やかに出航するわ!!」

「まだ点呼が終わってません!!」

「ああああああ!!なんでこうなるの!?」

 

 

ウタは何としても戦闘を避けようとしたが手遅れだった。

フォクシー海賊団に巻き込まれる形で“神の軍団”と交戦する羽目になった。

 

 

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