【凍結中】海兵になったルフィとウタが後に酷い目に遭う話 作:黒のエレメンタル
投降してきた海賊は、フォクシーと名乗った。
空島で優雅に過ごしていたら突然、海賊船が攫われていった。
彼は一緒に居た部下2名と共に団員たちを奪還しようと試みたが一蹴されて逃げて来た。
なんとか空島からここまで逃げてきて、追手を海軍におしつけてしまった。
申し訳ない気持ちで一杯だが、可愛い部下達を助ける為に協力して欲しい。
「海賊が海軍に助けを求めるとは!」
「お前ら正気か?海軍が海賊を助けるわけないだろう」
【徹底的な正義】を掲げる赤犬派閥の海兵たちは海賊の懇願を鼻で笑った。
海軍の中でも過激派と言われている彼らは、意外と秩序を揺るがす行為を嫌がる。
海賊で成り立っているジャヤ島を見ても滅ぼさない事で一致するほど慎重派でもある。
だが、海賊が頭を下げて懇願しても意見を聞き入れないなど正義の味方であろうとした。
「お願いだ……俺たちじゃあいつらを救えねぇんだ。後生の頼みだ!一緒に来てくれ」
「勝手に滅んでろ。海賊団が1つ消えたところで世界は何も変わんねぇんだから!」
「畜生!!」
海楼石の手錠を付けられプライドを捨てて土下座して懇願したフォクシーの想いは届かなかった。
海軍すれば、海賊と第三勢力が勝手に潰し合うのを介入する必要性などなかった。
さきほどの神兵の襲撃は、やむを得ず交戦して殲滅しただけで騒動を起こすつもりなど毛頭ない。
「少しは見直したわ。こんなに仲間想いだったなんてね」
「准将殿、さっきこいつ仲間を売ってましたよ……」
「銃口を付きつけれれば保身に走るのを否定できない。そうでしょ?」
「は、はぁ……?」
ウタ准将は、狐海賊団の船長が仲間想いで感動していた。
協力はしてあげたいが、立場上自由に動くことができず、どうやって協力するか悩んでいた。
「なあウタ?こいつらの仲間は【アッパーなんとか】っていう場所に居るんだろう?」
「そうね」
「黄金があるのもそこだよな?」
「その可能性は高いと思うけど…」
ウタはルフィが言いたい事は既に理解している。
しかし部下が手を汚してまでエンジェル島で肉を調達しようとする心意気を見てそれを躊躇った。
「割れ頭と一緒に島に行っていいか?」
「ダメに決まっているでしょ。わざわざ内戦にも海賊にも介入する必要はない!」
「ウタは気付いてるじゃねぇか!
「だからこそ戦闘を避けていたんだけどね」
スカイピアに入った時から
見聞色の覇気で間違いないが、かなりの実力者のようでどこにいるか2人は感知できなかった。
海軍本部の中将ですら居場所を探らせないほどの範囲がある覇気使いは居ないだろう。
「もうバレてるぞ」
「私はそれでも肉を合法的に調達したい。ルフィが餓死しそうになるのは嫌なの」
「アッパーなんとかに居る奴を全てぶっ飛そうぜ!」
「スカイピアの住民をまとめあげている秩序側である以上、介入は避けたいの」
ルフィとウタは論争して話が平行線になる時がある。
お互いを想っているからこそ自身の意見が譲れない。
こうなってしまっては、部下達が双方を説得するのは不可能となる。
「どうしても無理なら!おれと猿のおっさんたち、割れ頭だけで行く!」
「
「だから一緒に行きたいんだ」
紅白の後ろ髪が垂れた幼馴染の手をルフィは握り締めて優しく引っ張った。
身分に囚われたお嬢様を近所のワルガキな少年が面白い事を見せる為に手を引くようだった。
「そうね、ルフィの居場所は私だもんね」
「行こうぜ」
「えぇ!」
ルフィは信念や夢を捨ててまでウタに付いて行った。
「おれの居場所は、ウタが居る場所!」と豪語する彼の覚悟を感じて彼女は熱意に折れた。
「これより本艦の指揮系統のトップは、大尉に委譲するわ」
「「「准将殿!?」」」
ウタは准将としての権限を使って軍艦内のトップを3番目に偉い大尉に押し付けた。
ルフィの意見を承諾した瞬間、指揮系統を移譲させる時点で彼女も何か感じていたようだ。
「これより部隊を2つに分けます。大尉はエンジェル島に寄港して物資を調達して頂戴!」
「私たちは、“
「作戦終了後に信煙弾を3発撃ちあげるから物資を調達したら“
ウタは准将としての立場をフル活用し、無茶な命令を無理やり通していく。
これにはルフィもびっくりしたが、「一緒に冒険したいんだ」と笑顔で見守れた。
「お待ちください!これでは威力偵察ですよ!?」
「既に秩序側の部隊が1つ消失した時点で、バレるのも時間の問題。そうでしょ?」
「それは間違いありませんが……」
「ならば私たちの取れる手段を絞って選んでいきましょう」
既に神兵の部隊を全滅させてしまった以上、空島に長居できない。
自分たちがここに来た目的を考えれば、黄金郷を発見したら即座に徹底。
准将の命令にそのような意図が隠されていると分かっているので部下達も反論できなかった。
「異論が無いのであればこの案でいきます。今をもって作戦開始します!」
「ハッ!」
「日が暮れる前に出発!ボート一隻を海雲に投下!20分で準備して」
「了解しました!!」
海兵達が准将の命令に従って慌ただしく動き出した。
女王アリを頂点とした働きアリたちは、一心不乱に統率された動きをしていた。
「俺たちを信じてくれるのか?」
「利害が一致しただけ……と言いたいけどあんたの仲間想いに心を打たれたのもあるわ」
「ありがとうな……」
「感謝するなら仲間を全員助けた時に言って。何が起こるか分からないから…」
狐海賊団が何をやらかしたのか分からないが追手に襲撃された時点でもうダメだろう。
取り残された海賊団の団員を一言も救うと言って無いのは生存が絶望的だからだ。
しかしそれを船長に向かって発言するほど彼女は鬼では無かった。
「ルフィは猿山連合軍のボスにボートに乗るか訊いてきて!」
「分かった!!」
一緒に黄金郷を探す同志を誘う為にルフィは会議室を飛び出した。
その後ろ姿を見届けた彼女は、幼馴染の背中が一段と大きく見えて鼓動が高まった。
泣き虫だった彼が自分より頼もしくなっていく姿に胸部が締め付けられる感覚がした。
「ところであんた達も来るの?」
「当然!!」
「ププププ、一緒だった仲間を見捨てるわけないだろう」
ポルチェとハンバーグもボートに乗り込んで仲間を救出する気満々だった。
それを見たウタは、速やかに自室に戻って着替え直して弁当を片手に飛び出した。
道中でリュックサックとカットラス、拳銃、水筒を回収して甲板に向かって行った。
「なんか色気が無くなったな!」
「冒険でライブ用のミニスカワンピースなんて着れるわけないじゃない!!」
魅力的な大腿を魅せ付けていた歌姫からファッションセンス皆無の女に変貌した。
あんまりの変わりようにマシラがツッコミを入れると彼女は歯を剥き出しにして反論した。
「それ!おれがプレゼントしたTシャツだよな!?」
「うん、15歳の時にルフィが描いてくれた柄のTシャツだよ!!」
ウタが着ているクソダサTシャツは、熊みたいな顔が歪んで描かれていた。
本人たちは百獣の王ライオンと豪語しているが、どう見ても熊だった。
「ルフィこそ冒険ルックじゃない。正義のコートは脱がないの?」
「しししし!!帽子とコートだけは譲れねぇ!」
ルフィは赤色のベストに水色の半ズボン、草履の服装で正義のコートを羽織っていた。
もちろん麦わら帽子を被っているが、せっかくの冒険ルックもコートのせいで見づらかった。
「ウタこそ下半身が海兵のままじゃねぇか」
「脚を怪我するわけにいかないしね…」
海軍の服装を指摘したウタもクソダサTシャツに海兵のズボンと軍靴を着用していた。
エニエス・ロビーの門衛が着用していた掌から上腕二頭筋を覆う黒色の長手袋をしている。
どちらかというと海兵の格好をしていたのは彼女の方だった。
「もうちょっと女の子らしい服装で良いんじゃないか?」
「ルフィと一緒に居るんだから汚れてもいい服装にしたの!!」
「Tシャツはプレゼントしてもらった大切な奴じゃないのか!?」
「ルフィと一緒に冒険するから着用しているの!なんか文句ある!?」
「「「…ないです」」」
『歌姫ってファッションセンス皆無じゃないか?』と思う猿山連合軍のボス達。
それよりもさっきから彼女の様子が可笑しい気がしてならない。
「これで全員?」
「ああ!」
猿山連合軍からは、マシラ、ショウジョウ、モンブラン。
フォクシー海賊団はいつもの三人組。
海軍からはルフィとウタ。
合計8名がボートを漕いで“
「ジョーーーー!!」
「あっ、サウスバードも忘れてた…」
方向を見失わないように檻に入ったサウスバードも連れて来ていた。
これで準備は整った。
「ルフィ!ちゃんと弁当をリュックサックに入れた?」
「入れたぞ!」
「本当に?」
「ホントだぞ!!」
最後に念入りにルフィが弁当を忘れてないか確認したウタは今度こそボートに乗り込んだ。
それに続いてルフィが猿山連合軍が最後に乗ろうとして海雲に落下したフォクシー。
危うく雲を抜けて地上に向けて落下しそうになったのを辛うじて救助されてボートは動き出した。
「ところで嬢ちゃん、そのカットラスは?」
「サバイバル生活をしていた時に使った物よ。私たちにとってはお守りみたいなもん」
海兵の2人だけ装備が充実しており、海賊の6名とは格差を感じられる。
しかし、ウタが持ってきたカットラスだけは柄も護拳は傷だらけ。
刃は少し錆びついており、所々欠けていた。
モンブラン・クリケットが指摘すると彼女は笑顔で持ってきた理由を述べた。
彼はその時に彼女が見せた些細な表情の変化を見逃さなかった。
「さあ、出発よ!頑張って漕いでね」
「ウタも手伝ってくれよ!」
「私は進路をしっかり確認するリーダーだから良いの!!」
「船長も漕いでください!なんで乙女の私がこんな事を…」
「俺は後方の見張りだから……頑張ってくれポルチェちゃん」
ボロボロのカットラスを撫でた瞬間だけ彼女の瞳から光が消えて濁ったのを。
相当闇深い感情を彼女が抱えていると見抜いたモンブランは無言でオールを漕いだ。