【凍結中】海兵になったルフィとウタが後に酷い目に遭う話   作:黒のエレメンタル

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空島編23 ウタワールドとの再会

「中々利口じゃないか。とっさに攻撃する者は居ても冷静に話しかけられる者は少ない」

「神からそのようなありがたいお言葉を頂けるなんて…」

 

 

汗をタオルで拭いている時に男に話しかけられたウタは冷静に返答できたのが奇跡だった。

傍に寄って来た彼を中心に爆音が響き渡り、ところどころ閃光の様な光が迸っていた。

悪魔の実の能力者、それも【雷】の“自然系(ロギア)”の能力者だと彼女は理解できた。

せっかく運動した後の汗を拭いたのに別の汗が流れてしまった。

 

 

「小娘、【雷】は怖くないのか?」

「雷より怖いものなどいくらでもあるわよ」

「例えば?」

「死とか…」

「“神”を前にして死に怯える……まあ分からんでもない」

 

 

背中から4つの太鼓が生えていて皮は勾玉が三つ巴に並んだ模様、明らかに正常な人間ではない。

この世には、個性で角が生えた人間など居るので些細な問題だが、太鼓が生えるのは希少である。

少なくともウタはその太鼓が『能力』に関わっていると推測した。

 

 

「私はとっても不愉快なのだ」

「至高の存在である“神”が人間と同じ感情を持ち合わせているの?」

「小娘やそこの小僧といい、“神”である私ですら行動が読めないのはとっても不愉快だ」

 

 

ルフィはウタに近づく敵を感知しており、すぐにでも攻撃するつもりだった。

襲撃された本人が合図で『指示するまで手を出すな』とジェスチャーしているので堪えている。

ただよっぽど排除したいのか、噛み締めて歯茎を見せて自称“神”を睨んでいた。

 

 

「さっきまでは神官が裁きに来たのに“神”がわざわざ私達を裁きにいらっしゃったの?」

「弁えているようだが小娘。私を過小評価していないか?」

 

 

“神”に問われた彼女は反応に困った。

彼女の比較対象は、大将赤犬や青キジクラスなのでそれと比較すれば過小評価してしまう。

ただ、このスカイピアに入国した時から自分たちを監視してきた人物は、こいつで間違いない。

見聞色の覇気の練度が桁違い過ぎて更に強い存在が居ると認識し過ぎていた。

 

 

「“神”という力は人間風情が想像できるものではないので…どうしても」

 

 

フーシャ村のマキノさんから女の子らしい喋り方を教わった海賊の娘だったウタ。

部下を乗せた軍艦にストロベリー中将かヤマカジ中将が居ればすぐにでも攻撃したかった。

それほど、ファンでも仲間でも部下でもない奴にへりくだった態度を取るのが限界だった。

 

 

「ヤハハハハ。エンジェル島に居る部下達の事でも考えていたか?」

「ご明察、さすが至高の存在ね」

 

 

凄まじい見聞色の覇気を使える以外は海軍本部に所属するスモーカー准将より劣る男。

能力を出される前にルフィと2人で短期決戦すれば勝てる相手だった。

問題なのは、こいつを逃がしてしまうと軍艦と部下達を失うので下手に仕掛けられなかった。

 

 

「まあいい。私はもうじき夢を叶えられる影響で少しは寛大になったから気にはしない」

「愚かにも“神”に盾突く貴様らにも希望を与えようじゃないか」

「そこの川に船が用意してある。それで試練を乗り越えて明日までに私の元に辿り着け」

「然れば無事に青海へ帰しても良いし唯一神である私に仕える権利を与えよう」

 

 

要するに罪人である自分たちは割れ頭と同じように罪人として試練を受けろ。

そう受け取ったウタであったが、1つ気になる点があった。

 

「畏れ多くも“神”という至高の存在に仕える者たちは……」

「小娘如きにやられた神官など用済みだ。所詮、やつらはその程度だって事だ」

 

 

“神”からすれば、ヤギのように鳴く兵士や神官ですら使い捨ての駒だという事。

すなわち、神に騙されて空島から落とされるか、余興の駒にさせる選択肢しかない。

 

 

『ここは素直に従っておきましょうか』

 

 

雷の速度で移動されたら初見殺し満載のウタウタの能力ですら通じない可能性がある。

なにより雷の爆音のせいで歌が掻き消されてしまい意識をウタワールドに連行できない。

それらを踏まえた結果、彼女は自称神とやらの意見に賛同するしかなかった。

 

 

「罪人の数は?」

「4人だ。小娘と私を睨む獣、残りはお前たちが決めるといい」

「それ以外は神に捧げる生贄でいいの?」

「前任の罪人に訊くと良い。私の名は“(ゴッド)・エネル”。スカイピアの唯一神だ」

 

 

エネルと名乗った男は、嘲笑しながらその場から消え去った。

音が後から聴こえてくる時点で音速越えで移動したのが誰もが分かった。

 

 

「ウタ、大丈夫か!?」

「大丈夫だけど……汗を拭くところを見られちゃった…」

 

 

ウタが簡潔に状況説明をすると無事を確かめる様にルフィは彼女に抱き着いた。

まるで彼女の身体を誰にも見せないように守るようであった。

 

 

「あいつを見張っていたら疲れた……子守歌を歌ってくれないか?」

「いいよ」

 

 

甘えてくる弟分の意見を受け入れた歌姫は即興で作った子守歌を披露した。

 

 

「瞼をぉ閉じて~~♪音を聴くの~♪世界があなたを祝福してる~~♪」

「ゆっ~~くりと~♪味わうの~~♪夢に~~落ちるのは~~悪くないの~~♪」

「もっと力を~~抜いて~~♪休もうぉ。あなたはぁ~~今日もぉ~~頑張ったのぉ~♪

「また明日で~逢おうね~~私もぉ一緒に居てあげるからねぇ…♪」

 

 

久しぶりに子守歌を聞かされたルフィは寝息を立ててしまった。

歌姫も釣られたのか眠気で倒れそうになっていた。

 

 

「おい大丈夫か!?」

「しっ!静かに…」

「すまん!!!」

「うるさい…」

 

 

ルフィが寝たと知らないショウジョウは大声でウタに呼びかけてしまった。

彼女は左手の人差し指だけ立てて口元に持って行って、「静かに」のジェスチャーをした。

それでも上手く伝わっていなかったので、睨みつけるとさすがに彼も黙った。

 

 

「敵地で寝るなんて神経が図太いなこいつ…」

「正確に言うと私が眠らせたんだけどね」

「まあ、子守歌を歌ったからな」

「……うん、そうだね」

 

 

マシラもショウジョウもモンブランもルフィが子守歌で眠ったと思っている。

それ自体は間違っていない。

彼が眠った原因は、ウタの能力でウタワールドに意識が飛ばされたからだ。

 

 

「なあ!ウタ!!なんであいつを倒そうとしなかったんだ!!」

「仕方ないでしょ!!雷のせいで逃げられると厄介なんだもん!!」

 

 

ウタワールドに辿り着いたルフィは、さっそく彼女に抗議した!

 

 

「おれなら絶対に逃がさねぇ!何でもっとおれを信じてくれないんだ」

「あいつにも宝物とか大切な物があるはず!そこで戦った方が楽に勝てると思ったの!」

 

 

自分の夢を諦めてまでしてウタに依存している彼は本気で怒っていた!

彼女が危険な目に遭いそうになったのもそうだが、自分を信じてくれない事に!

共依存関係の彼らは、もはやお互いが自身の半身と言えるほどの仲だった。

そのせいか、いつも以上に激怒している彼を見て嬉しい反面、申し訳ない気持ちが一杯だった。

 

 

「ごめんね。ルフィの気持ちを考えられなくて…」

「もう終わった事だし、我慢した分、あいつを思いっきりぶっ飛ばしにいくから!」

 

 

彼女が頭を下げた瞬間、一瞬で怒りが吹っ飛んだルフィは両手を構えて殴る練習をした。

何がしたいのか察したウタは、すぐに地面からエネルの絵が描かれた看板を生やした。

 

 

「“JET銃乱打(ガトリング)”!!」

 

 

武装色の覇気を纏った拳はその看板を狙って何百回も殴りつけた。

現実の物ではなく全てはウタの思い通りになる空間なので看板は異様に丈夫だった。

2分ほど殴り続けて幼馴染に介入してきた自称神の末路に満足したのかウタに駆け寄った。

 

 

「終わったの?」

「まあな」

「私の仇をとってくれたんでしょ?ありがとう」

「ああ、今度あいつにあったら、ぶっ飛ばす!!」

 

 

ルフィはウタに抱き締めてもらうのが大好きである。

泣き虫で孤独が嫌いな少年を温かくて優しく包んでくれる空間が癖になっている。

現実世界では優しく抱き締めるが、ここでは逃がさないように強く抱き締める事ができる!

 

 

「膝枕してくれないか」

「もちろん!やってあげる!」

 

 

それより大好きなのが、こうやって膝枕をしてくれる事。

母親みたいな存在は居たが、母親のように甘える事ができなかった。

フーシャ村のマキノには、男らしく振舞ってしまう癖があってお願いできなかった。

 

 

「もっと甘えたい?」

「こうやってウタの笑顔を見るだけで良い」

 

 

膝枕なら身体を休めながらウタの顔を見る事ができる。

現実世界では、脚を痛めるし部下の視線を感じてしまってやり辛かった。

だから、ウタワールドに来た時に必ず彼女に頼み込んでやってもらっていた。

 

 

「……よし!なんとか気分が元に戻った!」

「望むならもう少しやってあげてもいいけど?」

「割れ頭の仲間たちが心配だ!おれも手伝わないと!」

「大丈夫だよ。向こうでは、みんな生きているし、私の歌で肉体再生が始まってるし…」

 

 

海賊が大っ嫌いなウタでも海賊が死なせるのは極力まで避けようとする。

以前は『心さえ生きていれば肉体を失っても人は死なない』という価値観があった。

海軍に所属して様々な経験を得て、肉体の死は人の死だと彼女は考えるようになった。

そうでもしないと、自分が自分で居られなくなる気がしたから。

さっき歌った子守歌は、歌で肉体を活性化させて傷の修復速度を上げていた。

 

 

「オヤビン!!」

「イトミミズ!?黒焦げになってたのに大丈夫か!?」

「誰かの歌声が聴こえてしっかり聴こうとしたら目覚めちゃいましてー」

 

 

真っ先にウタに癒されたのは、超スズメを乗りこなす宴会隊長のイトミミズだった。

ウタウタの能力は聴いた者をウタワールドに連れて行くだけではない。

現実世界の肉体を歌い手がある程度、コントロールできる力があった。

ここでは雷で焼かれた鳥や野郎共の肉体の回復の手伝いをしていた。

 

 

「そうか!あいつらが無事ならいいや!」

「もっと私に甘えなよ。ここなら誰にも邪魔されないよ?」

「しししし、今度はおれがウタを守る番だからこれで終わりにするよ」

「次回はもっとゆっくりしようね」

 

 

現実世界に戻る事にしたルフィはウタワールドに居るウタにお別れを言った。

ウタという少女は、現実世界とウタワールドの2人で構成されている。

それを理解できなかった幼少期は、何とも居心地の良くない世界だと思った。

 

 

「ああ、今度は面白い事をたくさんやろうな!」

「うん!また逢おうね!」

 

 

今はルフィにとって誰にも知られたくない癒しの世界だった。

現実世界のウタに優しくされながらここで、もう1人のウタに甘える事ができるのだから。

膝枕をされたまま彼は名残惜しそうにゆっくりと瞼を閉じた。

 

 

「お帰りなさい。夢の世界は愉しかった?」

「たっぷり休んできた!これで大丈夫だ!!」

 

 

意識をウタワールドに持っていくとウタが寝ない限り、ルフィは現実世界には帰れない。

しかし、それは敵に襲撃されやすい隙になってしまうのを2人は嫌でも実感していた。

一時的に意識を借りる手もあるが、それだとルフィは満足できなかった。

 

 

「代わりに寝てくれ。おれが守るからさ」

「じゃあ、お言葉に甘えて…おやすみ!」

 

 

そこで逆転の発想でウタワールドに居るルフィをウタと入れ替えて彼を現実世界に返した。

意識は全て同じ価値があるのと、等価交換できるという抜け道を突いたものだ。

現実世界のウタがルフィと入れ替わってウタワールドの彼女と同化した瞬間、彼女は眠る。

それまでの時間差で寝起きの隙を少なくしようとした。

 

 

「おい何だよ…歌姫は寝ちまったのか?」

「ああ、疲れているんだ。寝かせてくれ」

 

 

モンブラン・クリケットは、ウタ准将の能力についてはさっぱり分からなかった。

だが、ルフィが寝ている時は、やたらとウタが物音に警戒していた。

そして今度は、入れ違いになるように起きたルフィが同じような事をし出した。

なのでおそらく夢と現実を司る能力だと推測をした。

 

 

『思春期……という割にはやけに重いな』

 

 

超人系(パラミシア)”の能力者でも概念系の能力はかなり珍しいがその分、強力だ。

ただ厄介な事に使い方を間違えれば、必ず身を滅ぼすほど強力な能力が多いのを彼は知っている。

元海賊で部外者である以上、指摘はしなかったが、その生活を続けると何か嫌な予感がする。

…そんな気がした。

 

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