【凍結中】海兵になったルフィとウタが後に酷い目に遭う話 作:黒のエレメンタル
あらゆる勢力が複雑に絡む青海にあるジャヤの一部だった“
その島に居る外部の治安維持組織である海軍本部の大佐は衝撃的な事を口にした。
「おれ、黄金を探して栗のおっさんの所に持って行きたい!」
元はいえばルフィが肉を喰えず餓死しかけて有人島に寄ったのが始まりだった。
そこからその島には黄金郷の伝説があり、彼はそれに興味津々となりそこを探す事にした。
世界の海の治安を守るはずの海軍が黄金郷探しなどと論外の事である。
「まあいいんじゃない。まだその場所が発見できてない以上、探す価値はあるよ」
「よし決まりだな!」
大佐のロマンに乗っかった女准将は、特にそんな事など気にしていなかった。
元凶となった海賊が狼に喰われている光景を無視してしまうほどルフィの言葉に心が打たれた。
「ところでお主ら、あの男は仲間ではないのか?」
「青海人でも派閥があるの。私たちは本来敵同士なのよ。共通の敵で協力しているだけだから」
「共通の敵か…」
ガン・フォールは、エネルという共通の敵が居るおかげでシャンディアとは揉めていない。
しかし奴が去れば、再び“
彼としては和平したいのだが、喋る度に彼らの地雷を踏んでしまって上手くいかなかった。
「なんか周りがうるさくなってきたな」
「シャンディアの戦士と島の守備隊が交戦しているようね。これで少しは楽になるかも」
崖の上を目指して“
ただ、そこらじゅうで爆発音がしており、突発的な戦闘が発生しているのが窺える。
だからといって逃げる訳にも行かず流される様に船は進んで行く。
「ハァハァ…死ぬかと思った」
「オヤビン大丈夫!?」
「これのどこが大丈夫に見えるんだ…」
「なんか昨日から変なんだ。無理しないでくれぇ」
「ああん?」
無駄に頑丈なフォクシーは、ようやく狼に噛まれた負傷から立ち直る事が出来た。
心配そうに駆け寄ってきたハンバーグに見栄で元気なフリをしようとしたが違和感があった。
「何が変なんだ?言ってみろ」
「いや、オヤビンって何ていうか。もっと卑怯で卑劣だけどそこまで気持ち悪くなかった」
「ん?」
フォクシーという男は卑怯者だが骨はある。
だが、昨日から彼以外の団員たちは違和感に気付いていた。
船長なのに姑息で卑怯というより女の尻を追うような気持ち悪い男になっていたと…。
「まあいい!よくもやったな女海兵!!」
「あら割れ頭、無駄に頑丈なのね」
「無駄に可愛いのに性格が最悪だぞお前!!」
「海兵だもの。海賊に対して辛辣なのは当然でしょ。ましてや海軍本部の将校なら尚更ね」
ここにいる誰もが気付いているが何故かフォクシーはウタに対して気持ち悪いムーブをしていた。
最古参のハンバーグですら彼にドン引きするほどだ。
もはや顔すら見たくないウタは雲ウルフ越しで返答するしかなかった。
「貴様にデービーバックファイトを申し込む!!俺が勝ったら…」
「海賊のゲームなんて海兵がやるわけないでしょ!!」
「ほげっ!?」
ガープ中将譲りの拳骨でウタに殴られたフォクシーは気絶した。
武装色の覇気を纏わずに殴ったのはせめてもの優しさだったのだろう。
「オヤビン!?」
どんな事があろうとも笑いはするが船長を見捨てないハンバーグは彼の元に駆け付けた。
「ほえ?わたしはだれ?ここはどこ!?」
「オヤビンが!オヤビンの頭がハッピーセットになっちまった!!」
ガープ中将より手加減されたとはいえ彼譲りの拳骨はフォクシーの頭脳に大打撃を与えた。
哀れな彼は、ギャグ補正を貫通して記憶喪失になってしまった。
『これはさすがに可哀そうね』
フォクシーへの好感度がマイナスにカンストしたウタもこの惨状は見てられなかった。
自分のせいで記憶喪失になった以上、もう一度殴って戻すのがマナーというもの。
「てい!」
「ぎゃっ!?」
「オヤビンーーー!?」
「いつもこうなのか?」
「なんかウタはあいつと相性が悪いみたいだ。いつもはこんな事しねぇ」
ガン・フォールは目の前の光景が信じられなかった。
さすがに思春期の女子が不思議な髪形をした男を殴るのは鈍感な彼でも異常だと感じ取った。
彼女と親しそうな麦わら帽子を被った男も見た事ないのか心底驚いた顔をしている。
「さすがにオヤビンが可哀そうだよ…」
「痛みを伴わずに人は変わる事はできないの。ならば痛みを与えて変えるべきじゃない?」
「そうかな…?」
自分の失態を隠すように暴力でなんとかしようとする歌姫らしくないウタ。
実際、殴ったせいで記憶喪失になったので、それを直すには殴るしかなかった。
だからといって髪型だけがお洒落な女の子が身長180cm越えの大男を殴るのは異常だった。
グロッキーモンスターズのリーダーで“四足ダッシュの奇人”の異名を持つ男すら困惑させた。
「はっ!ここは!?」
「オヤビン!!」
タンコブが2つ生えたフォクシーは何事もなかったように目覚めた。
あまりにも扱いが酷過ぎて笑って馬鹿にできなかったハンバーグの瞳が涙で歪んだ。
「おっ!誰か知らんが可愛い子が居るじゃねぇか!俺と付き合ってくれ!!」
「ありがとう。あんたにはもっと良い乙女が居るわ!ほら付き合ってあげなさい!」
凡人が異性からの告白を拒否すると相手を撃沈させるだけしかできない。
一流の歌姫であるウタは、ファンから告白される事がたまにあり、その度に受け流してきた。
もちろん、ただ受け流すのではなくその異性に合いそうな相手を見繕ってお返しをしていた。
「ガルルルルル!!」
「ぐぎゃあああああ!!」
今回は、雲ウルフ2才、独身で好物は新鮮な内臓という肉食系女子を選択した。
フォクシーという素敵な男を見た瞬間、食べたくなるほど大好きになったようだ。
あっという間に肉に飛び掛かって噛みついてじゃれ合う仲になった。
「これは可哀そうではないか?」
「眉間に鉛玉ぶち込んでも絆創膏を貼っただけですぐに動ける男よ?これくらい平気でしょ」
「その言い方だと実際に撃ち込まれた感じがするのだが…」
「実際に私が鉛玉を撃ち込んだもん」
「なんでそんなに堂々と言えるのだ……」
男女の絡みを見ていたガン・フォールは最年長として仲介しようとしたが失敗に終わった。
頭がすっからかんになったおかげで重要な事を気付けた男が居る。
彼の子分であるハンバーグは船長に何が起こったのか今のやり取りで理解できた。
「もしかしてオヤビン、いじめっ子が好きな子に対するムーブをやってたりする?」
好きな女の子に対して素直になれず距離を置くどころか興味を惹こうとして嫌われるムーブ。
ここでは海賊団の船長としてのプライドと立場のせいで女海兵に対して素直になれない。
だからといって舐められるわけにもいかず、下ネタや変に絡んで更に嫌われた感じがした。
ようやく昨日からオヤビンの様子がおかしいのは恋煩いのせいだとハンバーグは気付いた。
「なんだそれ?」
「全く意味が分からないわよ…なにそれ」
ウタと逢うまで孤独で生きていて後にできた友達と盃を交わして義兄弟になったルフィ。
海賊団の船長の娘として9才まで育てられて紆余曲折あってルフィの
双方とも友人が限られた特殊な環境で育ったせいか。
有人との距離感というのが掴めず、ましてや同年代の異性の想いなど気にしなかった。
「吾輩には分かる気がする」
この場では、ガン・フォールだけがハンバーグの言っている『気持ち』とやらが理解できた。
無駄なプライドや意志は、若い者にはありがちな失敗に繋がるものである。
だからといってそれを全否定して説教するほどの度胸などなかった。
「つまり割れ頭は女の子を見るとこんな感じなのか?」
「違う。いくら惚れていてもオヤビンはこんな事しない」
「でもやってるじゃないの」
記憶が吹っ飛んで目の前に居る可愛い子ちゃんに告白したフォクシー。
ある意味本能と下半身だけで生きた彼に待っていたのは雌狼の牙であった。
「オヤビンは昨日から様子がおかしくて、おで達は船長の為に貯金を崩したんだ」
「どういう事?」
「エンジェル島の繁華街でショッピングを楽しんでもらおうとしたんだ」
「あーやっぱりあの島にはそういうのがあったのね」
「最古参のおでとポルチェちゃんと一緒に船長とお買い物をしたんだ」
ハンバーグは昨日の出来事を話し始めた。
海軍と交戦してからオヤビンが何かに取り付かれたように狂ってしまった事。
空島に来てバカンスをやっていたが、いつものオヤビンじゃないのでやる気が無くなった事。
皆で貯金を崩して空島の通貨に換金して繁華街で楽しんでもらおうとした。
オヤビン、ポルチェ、フォクシーは繁華街に行った時にコニスという少女に逢った事。
繁華街について彼女から話を聴いていたら、セクシーフォクシー号が攫われたという事を告げた。
「なるほど、大所帯なのにたった3人の理由が分かったわ」
数百人を超える規模なのに試練に受ける人物が3人しかいない理由が判明した。
船長の様子がおかしいので最古参のメンバーで楽しんでもらおうと企画したのだろう。
おそらくスカイピアの住民を共犯にして罪人を“
そしたらあのオンボロの海賊船が丸ごと攫われたと言う事なのだろう。
「つまり私に恋したせいで割れ頭は変わったのね!」
「違う!オヤビンは女に惚れてもあんな態度なんて取らない!」
「ふーん、とりあえずもう一回殴ってみましょう!てい!!」
「いでぇえええ!ごげっ!?」
フォクシーに絡み付く狼を優しく追い払ったウタは、彼のタンコブ目掛けて拳を振り下ろした!
「あれ?なんか取れた」
「ホントだ」
「なんだこれ」
ウタがフォクシーを殴った瞬間、眉間に付いていた絆創膏が取れて何かが床に転がった。
「銃玉じゃねぇか」
「あっ、これ初対面でマスケットで眉間を撃ち抜いた鉛玉ね」
「ぷぷぷぷ、確かに眉間に撃ち込んでたな」
それは海軍の制式装備である連発可能なフリントロック式ライフル銃の弾丸だった。
ルフィが餓死しかかっていて苛立っていたウタを煽るようにフォクシーが現れた。
一応、彼女は警告したが無視されたどころか逆に介入したので引き金を引いて眉間を撃ち抜いた。
「もしかしてこれのせいで割れ頭がおかしくなってたのか?」
「えっ?」
ルフィの何気ない一言でウタとハンバーグは硬直した。
眉間を撃ち抜いても絆創膏を貼っただけで復帰したので頑丈だと思うくらいしかなかった。
しかし、実際はその弾丸こそがフォクシーの頭脳に悪影響を与えていた。
「いてぇええええ!おい誰か!痛み止めをもってきてくれぇ!」
「…どっちが痛いの?」
拳骨か眉間に空いた穴か。
どっちが痛むのか分からないウタは不用心にもフォクシーの傍に寄った。
「隙あり!!いてぇ!!腕を折りやがった!!」
「“
「間違いない!本物だ!無敵のボクサーだったけど卑怯過ぎて永久追放されたオヤビンだ!」
痛がったフリをしてノコノコと来た女に屁を貯めた“
ウタはライブ用に“
予想はしていたが、前よりはマシな感じがして最古参の幹部に意見を聞くと元に戻ったようだ。
「……って事は、眉間に鉛玉をぶち込んだ私が悪いのこれ?」
ウタの一言を聴いてその意見に同意するように誰もが頭を縦に下げた。
「ルフィ!!ルフィなら私の味方になってくれるよね!?」
「さすがにいきなり銃を撃つのは可哀そうじゃないのか?」
「うわああん!!ルフィの為に頑張ったのに!もう知らない!!雲ウルフに添い寝してもらう!」
最後に希望だったルフィに梯子を外されるどころかドン引きされてしまった。
ウタからすれば彼の為に頑張ったのに理不尽過ぎて拗ねた。
近くにいた雲ウルフを抱き寄せて胸を押し付けながら彼女はほっぺを膨らませて威嚇した。
「おい麦わら、ちょっと手を貸してくれ」
「ああ、分かった」
「“カウンターフォックスブロー”!!…ってあれ!?」
「あぶねぇな!次やったらぶっ飛ばすぞ!」
相変わらず懲りないオヤビンは間抜けそうなルフィに目を付けた。
無垢の少年のように駆け寄ってきた彼に金属製の狐の顔をぶつけようとしたが躱されてしまった。
見聞色の覇気で動きが読めるルフィには通用しない卑劣な不意打ちだった。
「待て待て待て!こんな狭い船の上で喧嘩する事はないだろう」
「ピエールを見てみろ。こんなに静かにしているのではないか」
ガン・フォールの相棒であるピエールは気絶していた。
目覚めたら獰猛な雲ウルフの群れが視界に入って脳が現世を拒否したのか。
意識は再び微睡の中へと転がり落ちていた。
「…しょうがないわね」
とりあえず調子に乗っている割れ頭をなんとかしようとしたウタは次の瞬間、動きを止めた。
「全員、船を飛び降りて!!早く!!」
すぐさま雲ウルフを連れてウタは船から飛び降りた。
続いてルフィも空の騎士を突き落として気絶した鳥を抱えて飛び降りた。
何が起こったか分からないがハンバーグも船長を抱えて飛び降りた。
その数秒後に凄まじい閃光と共に轟音が辺りを響かせて
「何が起こった!?」
「川に雷が流れて来たの!!今の攻撃で川沿いで交戦していた7人が死んだわ!!」
罪人である以上、試練で裁くと先入観を持っていたウタは、裁くのは神の機嫌次第だと分かった。
エネルという男が攻撃の意志があると見聞色の覇気で感知して逃げてみて正解だった。
少なくとも質問をして来たルフィを筆頭に全員は無事そうだった。
「でもよ!!これじゃあ地面に叩きつけられて死ぬんじゃねぇか!?」
「雷を浴びるよりマシでしょ!我慢しなさい」
幸いにも崖を登っていく川だったので地面に向かって落下するだけで済んだ。
凡人にはその時点で辛いのだが、全員が頑丈なので平気だと彼女は独断で判断して切り捨てた。
「ウタはいいよな~~!月歩を使えて…」
「ルフィも練習すればできるって!」
「ゴム人間には難しいんだ」
とりあえず振り出しに戻ってしまった一同。
空中で飛び回れるのはウタだけなので合流するには時間がかかるだろう。
ルウタ班、フォクシー班、空の騎士と雲ウルフ班に分かれてしまった。
「ウタ!!あの雷みたいな奴はどこに居るんだ!?」
「そっち」
「よし!おれがあいつをぶっ飛ばしてくるから、ウタは黄金を!」
「ルフィも見聞色の覇気は使えるでしょ」
「人や動物が多すぎてわかんねぇんだ」
さっそく雷のあいつをぶっ飛ばそうとしたルフィはウタが指を指した方へと飛び出していった。
「移動してるから場所を教えても意味は無いよ」と言いたかった彼女は言いそびれてしまった。
「しかたないわね。わたしがその間に黄金を探そう」
ああなったルフィはウタですら止めるのに一苦労するので追跡は諦めた。
そんな事より彼が言っていた黄金を探しに地図を片手にウタは前へと進んだ。