【凍結中】海兵になったルフィとウタが後に酷い目に遭う話 作:黒のエレメンタル
艦長と副艦長が不在である軍艦に海兵たちが待機していた。
本来の目的は肉の調達であって、偵察がメインではないはずだった。
ところが前日に偵察に出かけると言って未だに何の合図も無いので動けなかった。
「なにかあったんですかね?」
「そりゃあ、お前。この騒動で何も起きて無いと思うか?」
“
もはや威力偵察を通り越して戦争しに行ったと彼らが勘違いしてもおかしくなかった。
「またルフィ大佐が暴れているのか…」
「いつも騒動の渦中にいますね…」
新参はルフィ大佐が騒動を起こしたと思っているが古参の海兵の思考は違った。
むしろ、ウタ准将こそがトラブルを悪化させる元凶だと知っていた。
東の海から“リヴァースマウンテン”と通ってウソップ海賊団を追う提案をしたのはルフィ大尉。
しかし、その作戦を承認して軍船を海流に突っ込ませたのはウタ少佐だった。
『それで行く先の国を救うんだから分からんもんだな…』
ウタ派の下士官は、彼女に惚れているが結婚したいかというとそれは違った。
彼女に相応しいのはルフィ大佐であって、自分たちはそのやり取りを微笑ましく見るだけで良い。
「空魚だああああ!!」
「さっさと仕留めろ!」
「嵐脚“
「よくやった!」
またしても空魚が襲撃してきたがルフィ派の将兵によって片付けられた。
砲撃すると敵勢力にバレる可能性があるので、できるだけ音を立てずに仕留める必要があった。
しかし、遠距離から対応できる兵は限られている上になりより彼らは焦っていた。
「絶対、ルフィ大佐はお腹を空かせているはず!いつになったら合図が来るんですか?」
「ウタ准将が傍に居るから餓死することはないだろう。引き続き指示を待て」
「猿山連合軍を島に降ろして捜索させませんか?」
「心配なのは分かるが、堪えろ」
命令を順守する将兵たちは、停泊している軍艦を襲撃してくる空魚に対応を追われていた。
しかし、猿山連合軍や非戦闘員の海兵はやることが無いので好き勝手に行動していた。
ルフィ大佐に憧れて海兵に志願した女海兵は、真っ先に彼の胃袋を心配した。
「おい信煙弾が上がったぞ!!3発だ!!」
「武装偵察1個班は、速やかにお二方を回収せよ」
「ハッ!!」
ようやく合図が出たのを確認した将兵は迅速に行動を移した。
2人をさっさと回収したらさっさと青海に帰りたい海兵達の動きは早かった。
子電伝虫を所持した班長と共に精鋭部隊がボートに乗って島に乗り付けて上陸を開始した。
「子供?」
「銃口を降ろせ」
偵察班が見たのは、ウタのアイコンが描かれたタペストリーを掲げる少女。
それを守るように付き添う民族衣装を羽織って銃を構えた男が居た。
「この子を保護してくれないか?」
「ああ、しっかりと守ってやる。それよりあんたらは…っておい!?どこに行く!?」
海兵たちの目を見て信頼したブラハムは無言で少女を置いていくように去っていった。
「嬢ちゃん、一体何があったんだ?」
「“声”が“声”が消えていくんだ…みんなの声が!!」
「なるほど、事情は分かった」
「だからみんなを助けて!!」
海兵達は上官がどうしてこんな事をしたのかは分からないが意図は大体察した。
おそらくこの島で何かが起こり少女が取り残されてしまった。
ウタ准将とルフィ大佐は戦闘を続行しているが、少女は自分たちに保護させようとしたのだろう。
「分かった!でも俺たちだけじゃ人手不足だから一回船に戻ろうな?」
「そうだぞ、まず安全な場所でみんなを助ける作戦を考えようじゃないか」
作戦を変更して少女を救助して船に戻ろうとする海兵たちは嘘をついた。
海軍が世界政府に未加盟の国家を助ける義理がないとかそういうのではない。
精神が錯乱している少女を安全な場所で保護して落ち着いてから情報収集するつもりだった。
「私も立派な戦士、みんなを助ける為に協力したい!!」
「そうか、一緒に頑張ろうじゃないか…ところで名前は?」
「アイサ!シャンディアのアイサだよ!!」
「よし、アイサ!助けるにも人手が居る!まず船に戻ろうじゃ…いっ!?」
駄々を捏ねられる前に少女に手を差し伸べた班長は彼女の手を取る事ができなかった。
突然、眼前に落雷が降ってきたせいで回避行動をするしかなかった。
「班長!!」
「こっちは無事だ!!被害は!?」
「……全員無事です」
「速やかに軍艦に帰投する!!」
落雷のショックで呆けた少女を背負った班長は部下と共に乗って来たボートへと向かっていく。
まるで雷が侵入者を排除するようであったが彼らからすれば好都合だった。
「それでいい。【島の生存者は5名】でいい」
島に上陸した海兵を落雷で牽制したエネルは、大人しく退き下がっていく彼らに満足した。
神の予言は絶対であるので、本日の正午に生存者は自分を含めて5名でなければならない。
他所から追加補充されてしまっては、計算が狂う以上、退散してもらった。
小娘が1人回収されてしまったが、その程度など誤差に過ぎない。
「苦しそうだな?」
「おれは……お前に…勝てないの…か!?」
「ああ、そうだとも、何度も言ったじゃないか。どうやったら人が雷に勝つのだ…と」
「……ごはっ」
「そろそろ時間切れだな。蛮勇だけは評価してやろう。せいぜいゆっくりと休むと良い」
槍でエネルの頭を貫いたカマキリは感電して身体が震えて動けなくなった。
それでも会話する事ができたが、それだけだった。
「カミキリ!!」
ゲンボウは感電した彼を助け出してエネルの前に躍り出た。
「時間を稼ぐ!!その間に…」
「3000万V“
「ぐああああああああああああっ!?」
エネルが背中に生えた太鼓を叩くと雷に変化して鳥になって彼を襲撃した。
バズーカ砲で砲撃するが“
為すすべなく雷を喰らったぱっちゃり系のゲンボウは倒れ込んだ。
「ほう?鉄の砲弾で大半の雷を逸らして戦友を庇うとは良い心意気じゃないか」
“
一見すると雷に打たれて倒れ込んだ彼が彼なりに足掻いた結果を素直に認めた。
攻撃を極限まで反らして自分の身体に鉄の砲弾を撃ち込みながら戦友を庇ったというのだ。
自身の想定を上回る動きをした人物には素直に称賛できる持ち主でもある。
『ワイパー、犬死だ!!こいつに“
エネルと実際に対峙して絶望感と能力の詳細を知った彼はワイパーに知らせるつもりだった。
元からあの神を人間が相手にするのは間違っていたと…。
「ヤハハハ!雷から逃げられると思ったか?」
「“
目の前に出現したエネルにカマキリは炎の刃で神を両断した。
後ろにあった大木すら両断できる加熱された鋭利な刃をもってしても雷には効果が無かった。
自然現象の雷に対抗するには同じ火ならいけると勘違いしてもおかしくない。
問題なのは、雷そのものだったせいで牽制には効果があるがダメージは与えられなかった。
「なるほど逃げたフリか。小賢しい真似を…!」
「逃げろワイパー!!」
「100万V“
瀕死状態だったカマキリは放電を受けて倒れ込んで“
放電を受けて悲鳴すらあげる事ができなかったのが彼のダメージの大きさを物語っている。
「ん?一番強い奴の気配が消えたのか、これは番狂わせだな」
帽子を被り白色のコートを羽織っていた黒髪の若い男の気配が消えたのにエネルは驚いた。
いくらシャンディアで最強の戦士と対峙したとはいえ実力差は圧倒的だった。
認めたくないが神である自分に届く実力者ではないかと思い始めていたくらいだった。
カマキリを感電させている間に何が起こったのだろうか。
「うむ、ワイパーも分からんか。まあいいそれも余興というものだ」
万能な力をもってしても原因が分析できなかったが分からないならあっさりと彼は切り捨てた。
自身の脅威になりそうな男が居なくなったのだから逆に喜ぶべきである。
無論、神はそんな事など思いも付かなかったが…。
「えっルフィ!?」
一方でルフィの気配が消えて喜べない人もいる。
10年間ルフィと一緒に過ごしてきた19歳の准将は、唐突にルフィの気配が消えて焦っていた。
『あれ?これって…』
落ち着いて見聞色の覇気で感知していると彼が消えた場所で昨晩逢った大蛇の気配がしていた。
今までの彼女が味わった経験則から蛇の口を洞窟と勘違いしたルフィが突撃していった。
そう勘違いしても仕方が無かった。
『ハァ……ビブルカードまで出して安否を確認しようとした私がバカみたい』
ビブルカードは髪の毛を使用して作られた不思議な紙である。
髪の持ち主の生命力を長さから判別する事ができて持ち主に向かって動く物だ。
無意識とはいえルフィの安否を確認しようとしたウタは自分に嫌悪感を抱いてしまった。
けれどもルフィが生きていると分かる証拠を見たおかげで気を取り戻したのも事実。
『これじゃあルフィを信頼してないみたいじゃない…』
昔から置いて行かれるのが大っ嫌いだった少女は、幼馴染だけが心の支えだった。
どんなことがあっても自分の元に帰って来てくれる少年の為に彼女は何でもした。
今回もルフィの願いを叶える為に『黄金郷』を探している。
『“
見聞色の覇気で巨大な蔓の上で大勢の人が虫の息になっているのを感知した。
おそらくエネルがやったと言っても過言ではないだろう。
「ルフィ、先に行ってるよ」
大蛇の体内で大暴れしているルフィの姿を思い浮かべながらウタは巨大樹の森を歩いていく。
全てはルフィの夢を叶えさせてあげる為に。