【凍結中】海兵になったルフィとウタが後に酷い目に遭う話   作:黒のエレメンタル

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空島編7 狂気じみた正義との遭遇

急激な環境の変化にも耐えられる様に無駄に訓練させられて慣れた2人の海兵が就寝した頃。

 

 

「もう出航しなきゃいけねぇのか!?」

「ログポースがジャヤの磁気で上書きされちまう!早くいかねぇと暫くはチャンスはねぇぞ!」

「そうだとしてもそんな都合良く“突き上げる海流(ノックアップストリーム)”と重なるもんなんですかね…」

 

 

軍艦の会議室でルフィ大佐とルフィ派の下士官と猿山連合軍のボス3人組が計画を立案していた。

というのは建前で、実際は行き当たりばったりの適当過ぎる計画を口頭で話しているだけだった。

潜水やサルページの専門家であるので“突き上げる海流(ノックアップストリーム)”の発生頻度が高い場所などは知っている。

それが空島まで水流が届くか分からないし、その条件が整う可能性は著しく低いのは明白である。

さすがのルフィ派であっても、絶対に外れる賭博をやる価値など…。

 

 

「1週間粘ってできなかったら諦めるか」

「さすがに“マグマのおっさん”にもバレる頃だしな!肉お代わり!!」

 

 

ルフィほどではないが、純粋に黄金郷に興味があるロマン溢れる海兵達。

猶予を定めている期間中は全力で取り組むつもりだ。

 

 

「ところでアンケートって取りましたっけ?空島に向かうべきかといい案件ですが…」

「賛成8割、反対1割、棄権が1割だった」

 

 

反対意見としても、ルフィ大佐の生命源の源である肉を切らしているので反対。

ウタ准将のライブができなくなっているのは、全人類の損失だから反対と書かれていた。

まともな反対意見が無い時点で海兵全員が狂っているのが嫌でも分かる。

ちなみに棄権が出ているのは文字が読めない兵士が居るからだ。

 

 

「やっぱ、狂ってるな…うちの軍艦のクルーは…」

「正気だったり真面目な奴は、すぐに転属届けを出されるんだから仕方がない」

 

 

さきほどの会議の結果、ジャヤ島に留まると記録指針(ログポース)の指針が正常に上書きされてしまう。

そうなる前に即座に出航する事となった。

出航命令は船長がするものではあるが、能力の使い過ぎで船長であるウタ准将は就寝していた。

なので次に偉いルフィ大佐に権限があるが最後の書類にサインがされないので出航できなかった。

 

 

「大佐殿、最後の書類にサインしてください。この書類のサインがなければ出航できません!」

「いやだ!このままなら島から出ねぇ!」

「最優先事項は、艦内に居る380匹の電伝虫の安全確保及び、楽器の保全。何か問題でも?」

 

 

ウタ准将の軍艦は他の部隊と違って、ライブを頻繁にやる関係上、各種の電伝虫が380匹。

3個分隊で構成されている軍楽隊が存在する。

ルフィ派の下士官達は、最優先に守るべきものとして電伝虫と脆く壊れやすい楽器と定めた。

ところが上記について上官が不服のようで下士官達は顔を見合わせてその原因を探ろうとした。

 

 

「最優先事項は『全員生き残る』って書かない限り!おれは許可しねぇ!」

「それは当然の事でわざわざ記す必要が…」

「おれは誰も死なせねぇ!絶対に!!」

「大佐殿の熱意に負けました。全員生還する為に必要な努力は全てします」

 

 

そもそも黄金郷が空島にある証拠がないのに“突き上げる海流(ノックアップストリーム)”に乗っかって軍艦ごと飛んでいく。

その前提がなければ、電伝虫にも楽器にも気遣わなくて済むのである。

ただ、上官の無謀ともいえる黄金郷探しについて、反対意見ですら空島に行く手段を否定しない。

ロマンを求めるというと聞こえが良いが、傍から見れば狂気染みた命知らずのバカ野郎共。

横目で見ていたモンブラン・クリケットやその同胞たちは、その覚悟に感服していた。

 

 

「月に5回の頻度しか起きねぇ“突き上げる海流(ノックアップストリーム)”で“積帝雲”に突っ込むバカ共に逢えて嬉しいよ」

「おっやさん…」

「絶対に成功させてるぜ!七武海候補と噂される男前の俺がな!」

 

 

猿山連合軍は、二度と逢えない馬鹿共の為に全力で尽くすつもりだ。

 

 

「おいちょっと待て!“突き上げる海流(ノックアップストリーム)”って月に5回くらいしか起きないのか!?」

「そうだが?」

「次に発生するのは?」

「日付を越えたから…今日の昼ぐらいだな」

「「「「先に言え!!」」」」

 

 

ルフィ派の下士官たちは重要な情報を伝えなかった3人組に総ツッコミをした。

そんな情報を知らされても特に動揺しなかった男が居る。

 

 

「ウタ、今から出航するぞ!空島楽しみだなー!」

「「「「あんたは何やってんだ!?寝かせてやれ!!」」」」

「ぎゃああああ!殴るな!おれは偉いんだからもっと優しく!痛たたたた!!」

 

 

一方、ルフィは能力のせいで就寝したウタをいつも様に起こして電伝虫で出航すると連絡した。

当然、ルフィ以外の全員にぶん殴られたのは言うまでもないだろう。

 

 

『海賊によって成り立っている島…か』

 

 

部下どころか部外者にルフィが殴られているとは露知らないウタは起こしてくれた彼に感謝した。

寝室の窓から見えるジャヤ島を眺めておきたかったからだ。

 

 

『やっぱ、駄目ね……今からでもあの島を滅ぼしたい!』

 

 

強者が暴力によって弱者を虐げて全てを奪っていき、被害者だった者が更なる弱者を狙う。

それが海賊王の死によってもたらされた【大海賊時代】である。

 

 

『あの島に居る海賊団を全て潰せば、どれだけ世界が平和になるのかなー』

 

 

一昔前だったら20を超える海賊団を彼女は何の躊躇いも無く滅ぼしていただろう。

海軍大将“赤犬”の掲げる【徹底的な正義】に魅入られて彼の派閥に所属してその信念を聴かされるまでは…。

 

 

『おかしいよね…私たちが正義で居る為には目の前に居る海賊を放置しないといけないなんて…』

 

 

世界政府は混沌たる時代における最後の砦である。

故にその尖兵である海軍は【正義の味方】でないといけない。

その為には、殺人を抑えて投獄する必要があるが、今の世界政府にはそんな余裕はない。

海軍に新人が入隊すると、海賊が30人誕生すると揶揄されるほどに数が多すぎる。

囚人が増えるほど、看守、食費、管理費、整備費、増築、犯罪捜査など…。

莫大なコストが掛かって世界政府加盟国の出費では賄えず、いずれ破綻する。

 

 

『世界はそんな単純な物じゃない…でも、やっぱりこの時代は終わらせないと!!』

 

 

そもそも海軍本部は、大海賊時代を終わらせる気などない。

ジャヤ島の話に限っても、あそこには弱小海賊団が屯しているだけだと見えるだろう。

実際は大物海賊団の代理戦争に使われている駒か、その候補が蠢いていた。

あいつらは、投獄しようが討伐しようがすぐに勝手に生えてくる雑草のようなもの。

海賊同士で勝手に潰し合うならと、暗黙の了解で見逃しているからジャヤ島の興業が成り立つ。

 

 

『私は“新時代”を創ってみせる!』

 

 

海賊や犯罪者を全て滅ぼすイメージがある【徹底的な正義】。

その真骨頂は、リスクを冒す事によって発生する代償を踏まえても法に基づいて刑を執行できるか否かというもの。

 

 

『例え相応の代償を払うとしても!』

 

 

今回の場合は、『海賊のキューカ島』であるジャヤ島を滅ぼすと何が発生するのか。

娯楽を求める海賊共がその代用を近隣の島々に要求する。

今まではジャヤ島で済んでいた欲求を別の島で済まそうとする海賊に対して自分が対処できるか。

大量殺人をしなければ対応できないが、それは世界が海兵に対して望んでいるものではない。

よって不可能であり、拳を握り締めて何の罪のない島を睨みつける自分がよく分かっていた。

 

 

「プルプル!ガチャ!おーい!ウタ!さっきは起こしてごめんな!……痛い!?何で殴るんだ!?謝ったのに!?うわー!?」

 

 

純粋な平和を願うウタが苛立ちによって無意識に踵を床に何度も叩き始めた頃。

鳴り響く電伝虫の受話器を手に取ると、いつもと変わらない男の声がした。

さきほど起こした件について謝罪しているみたいだが受話器越しでも伝わる幼馴染が殴られる音。

あっという間に通話は途切れてしまったが准将では無く19歳のウタとして純粋な気持ちになれた。

 

 

『今までは絶対に失敗すると分かってても1人で“新時代”を創ろうとした…』

『でもみんなで協力すればきっとできるよね』

 

 

自分のわがままの為に【夢】を諦めてくれて一緒に“新時代”を創ってくれると断言したルフィ。

その声を聴いて癒された彼女は再び瞼を閉じて肉体の力を抜いた。

 

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