【凍結中】海兵になったルフィとウタが後に酷い目に遭う話 作:黒のエレメンタル
「“積帝雲”だ!予想より発生が早いぞ!」
「ウータンダイバーズ!すぐに海に入れ!海流を探るんだ!!」
目の前に迫って来る大規模な嵐に対して全力で自分のできる事をするしかない。
彼らは一心不乱となり、これが死地になろうとも最後まで任務をこなすつもりだった。
「お前らヘマァやらかすんじゃねぇぞ!」
「「「アイアイアイサー!」」」
モンブラン・クリケットの号令を元に猿山連合軍は“
信じられない事だが、“積帝雲”の海域で“
これを逃せば、数百年は同条件にならないと断言したくなるほどに。
「あいつらは何をやっている!?この好条件を逃せば次は無いぞ!!」
「大丈夫だおやっさん!すぐそこまで来てるぞ」
ニワトリの装飾を施された海軍本部の軍艦が猿山連合軍と合流しようとする。
世界政府という巨大過ぎる勢力の尖兵の象徴である海軍の中でも最高峰とも言える本部の軍艦。
大波に呑まれそうな海賊船と違って悠々と航海する軍艦は、まさしく海の王者である。
「おやっさん!海流を見つけた!」
「よし、あいつらを案内するぞ」
「アイアイサー!」
自分の夢の為に全力で尽くす猿山連合軍に感謝しつつモンブランはボスとして見届けるつもりだ。
「全ての電伝虫の保護が完了しました!」
「隔壁を降ろせ!我々が死んでも電伝虫を守るのだ!!」
「ルフィ大佐から死ぬなと厳命されてますが…」
「死んだ後に生き返ればセーフ理論で行くぞ!」
船の王者と揶揄される海軍本部の軍艦内でも着々と“
まずは電伝虫の保護と、壊れやすい楽器に緩衝材を取り付けて梱包して固定された。
「例外である航海士と操舵手を除き曹長以下の者は甲板への出入りを禁ずる!」
歴戦の猛者である尉官クラス以上と航海士以外は甲板に出る事を禁じられた。
非戦闘員は既に衝撃に備えており、緊張感溢れる環境となっている。
「良い天気だなー!」
「嵐にしかみえないけど…」
「なんかワクワクしねぇか?」
「それもそうね」
積帝雲によってもたらされた大波が軍艦を襲い始めており、この先の道の行く末を表すようだ。
だからといって、2人は臆しておらず、むしろ自然災害なので理不尽でも受け入れている。
「渦潮に入るけど良いのか?あんなに軍艦を大事にしてたのに?」
「自然災害ならしょうがないでしょ」
「わざわざ軍艦を壊しにいくんだぞ?」
「もし壊れちゃったら、サカズキ大将のお説教に付き合って!」
「いいぞ」
船首に居た幼馴染から伸ばされた手を握り締めたウタは目の前に広がる渦潮を眺める。
いつ死んでも可笑しくない状況だが、ルフィと一緒ならなんとかなる…そんな気がした。
「ウタ准将!敵襲です!!さきほど破った海賊団が追撃してきております!」
「はぁ!?メインマストとフォアマストを失ってここまで来るわけが…」
いくら“
そう思って振り返ると、何故追撃できたのか理解できた。
「まさか…あのガレオン級で乗組員全員で漕いできたの!?」
「すげぇな!不死身さと執念深さは億越えだ!!しかも砲撃してきたぞ」
フォクシー海賊団自体はどうでも良かったが今は時期が悪すぎた。
“突き上げる海流”の発生ポイントに向かって航海している為、反撃が難しかった。
自慢の大砲は固定されており、人員も艦内に収めているので、使い物にならなかった。
「軍艦の機動力で巻けない?」
「本艦のサイズがデカすぎて渦の抵抗で推進力が落ちております!」
「航海士を艦内に戻して!尉官クラスのみで白兵戦を…!」
すぐに戦闘を終わらせようとしたがここで誤算が生じた。
「報告申し上げます!渦の動きがおかしいです!まるで時間が遅くなった様に動きが鈍い!!」
「あいつの能力か!!」
「フェッフェッフェッ!ノロノロビ~ム!!ここがお前らの墓場だぜ!!」
どうやっても海軍に勝てないと悟った彼らは、嫌がらせでノロノロビームで足止めしてきた。
客観的から見れば、フォクシー船長がやった行為は自殺願望と言いようがない。
だが今回だけはその嫌がらせが良く効いた。
「せっかく良い気分で旅立てると思ったのに!!速やかに殲滅するわ!!」
空島にあるとされる黄金郷に行くには、“
ルフィとウタは士官という仮面を投げ捨てて夢の邪魔をされた怒りを力に変えた。
「割れ頭!冒険の邪魔をするな!!」
「割れ頭…」
「「「罵倒でショックを受けた!?」」」
いざ空島へ!と言う時にノロノロビームで妨害してきたフォクシーに対して罵倒したルフィ。
適当に言ったつもりでコンプレックスを刺激されたのか彼は船首の上で頭を付けて落ち込んだ。
それを見て「罵倒すれば勝手に倒れるんじゃねぇ?」と思った海兵達。
ノリが良い彼らは罵倒合戦に参加する事となった。
「鼻長おじさん!」
「引っ込めピーナッツ野郎!!」
「変な頭!」
「女装した方が女性にモテそう!」
「そこまで言わなくても……」
さきほどまでは殺し合いになりかねたのにワルガキが好んでいそうな罵倒合戦となった戦場。
本音で海兵達が罵倒しているのでノロノロビームを撃つのを忘れてフォクシーは床に伏せていた。
「オヤビンそんな事ないですよ!奴らの罵倒なんて気にしないでください!」
「おれたちにはオヤビンが必要なんですよ!」
「「「「オヤビン!オヤビン!オヤビン!!」」」」
「…お前らありがとうな!!」
そうだ、海兵には馬鹿にされても自分を愛してくれる部下達が居る。
彼らの応援によって戦意を少しずつ回復していき、笑顔で立ち上がろうとするフォクシー。
「じゃあ、お前らに訊くけどさ!この割れ頭の良い所って何だ?」
「「「「…さあ?」」」」
「お前らふざけんじゃねぇ!!どうしてそこで黙り込むんだ!!何か一つくらいあるだろう!?」
「「「「何かあったっけ?」」」」」
「上げるのか下げるのかどっちかにしてくれないか…」
せっかく立ち直ろうとした時にルフィから発せられた素朴な疑問に対して部下達は答えられない。
そのせいで再度落ち込むオヤビンであったが、彼らは重要な事を見落としていた。
「やばいですボス!おれ達も大渦に巻き込まれますぅ!!」
「なんだと!?」
猿山連合軍は、軍艦を案内したらさっさと海域から離脱するつもりだった。
だが、フォクシー海賊団と海軍とのやり取りに気を取られたせいで逃げる暇がなくなった。
「ウタ准将!このままであの大渦に巻き込まれます!!」
「嘘!?こんな話なんて聴いて無い!?面舵いっぱい!」
「舵が効きません!!渦に飲み込まれます!!」
島が丸ごと入りそうな目の前に広がる大渦にウタ准将は離脱の指示をしたが手遅れだった。
「なんだあの大渦は!?海兵ども嵌めやがったな!」
「オヤビンも漕いでください!!死ぬううううう!!」
海軍に喧嘩を売りに来たフォクシー海賊団もガレオン船を漕いで破滅の危機を逃げようとする。
「うおっ!?……なんだこの手は…?」
フォクシーも漕ごうとすると背後から伸びてきた左手を目撃して思わずオールを手放した。
その手は、何故か船首を掴んでおり疑問に思ってどこから来たか目で追った。
左手から腕を見て、そのまま視線で追っていくと麦わら帽子を被った海軍将校と目が合った。
「逃がさねぇ!お前らも来い!!」
右手でがっしりと鉄柵を掴んだルフィは、伸びた手を元に戻すと鉄柵が大きく捻じ曲がる。
それと同時にガレオン船が軍艦の方へと引き込まれた。
旅は道連れ世は情けというが、彼らを地獄へと引き摺り込んだ男の顔は笑顔だった。
「放せ麦わらあああああああああ!?」
最初に猿山連合軍に所属する海賊船2隻が大渦の中心へと飛び出していった!
すぐに軍艦とボロボロな海賊船もその後に続いた。
「渦が消えた!?」
大渦に巻き込まれればそのまま溺れ死んで海の藻屑となってしまう!
この場に居た全員が死を覚悟したが、さきほどとは打って変わって穏やかな水面になった。
無意識にルフィに抱き着いていたウタもあり得ない光景に呆然としていた。
「なんか嫌な予感がするんだが?」
「そりゃあ水面から異音がするんだからそう思うよな…」
親綱を柵に取り付けた海兵たちは、すぐにこれが大爆発の前兆だと気付いた。
彼らの予想は当たっており、大渦は“
「総員!衝撃に備えろ!!“
「ルフィ!?」
「安心しろ!なにがあっても守ってみせる!!」
ルフィ派の下士官が“突き上げる海流”が来ると告げた瞬間!
ルフィはウタを抱き寄せて鉄柵を握り締めて踏ん張った。
ウタも負けずに頼もしい彼を抱き締めて離れ離れにならないようにしがみ付いた。
プリンセス・ウタのファンが目撃したら罵倒どころか卒倒する光景だが、すぐに納得するだろう。
水面が大爆発して付近の光を奪う積帝雲を貫く大槍のように水柱が天空へと登っていった!
「水柱がああ!!!上を!?水柱の上を登ってるうううう!?」
「船体が浮いてるぅううう!!操舵手なんとかしろおおおお!!」
「ふざけんな!俺らにどうしろって言うんだああああ!?」
ただの自然現象に海兵も海賊も等しく無力だった。
軍艦も海賊船も海流に巻き込まれて天空へと放り出された。
勝手に全責任を押し付けられた操舵手班は、涙目になりながら必死に操縦した。
「すげぇな!船が空を飛んだ!これなら空島に行けるな!」
優秀な操舵手班の奮闘により辛うじて姿勢を保っている軍艦からルフィは天空を見上げて喜んだ。
帆を張った軍艦は風を受けて“