お前も海兵! お前も海兵! 作:スカウトマニア
●月×日
リンリンとペアを組み、海軍本部の指示に従って新世界を飛び回るようになってもう六年だ。幸いリンリンの食いわずらいは制御の利くものになっていたが、いくつかの不幸が重なると周囲に大きな被害を与える危険性があるのは変わらない。
本部に相談したところ、あらゆるものを食材に変えられる超人系悪魔の実“ククククの実”の能力者シュトロイゼンが寄越され、そしてリンリンには老衰によって天寿を全うしたカルメルが前任者であったソルソルの実が用意された。
カルメルの葬儀から時間が経ったとはいえ、今も時折思い出しては涙ぐむリンリンは他の奴にマザーの悪魔の実をやるわけにはいかない、と俺が止める間もなくソルソルの実を食べてしまった。能力者になると泳げなくなるんだが・・・・・・。
そうそうシュトロイゼンだが以前は海賊崩れの料理人だそうで、エルバフの周囲をうろちょろしていたところを捕まり、ククククの実の能力とリンリンの食欲問題が相性が良いと判断され、司法取引の末、俺達のところへ派遣されたようだった。それなりに腕も立つようだし、監視の目を緩めずにおけば問題は無いか。
さて今回、俺達の新たな任務はウォッカ王国のカイドウというどえらい強さの少年の引き取りである。いわゆる徴兵という奴でウォッカ王国はカイドウを世界政府に引き渡す代わりに、世界会議に出席する権利を得るんだとか。
いや、これ、当のカイドウからしたら堪ったもんじゃねえな。ウォッカ王国といや天上金を稼ぐ為に諸国に戦争を吹っかけて、賠償金で賄っているっていう貧乏な戦争国家だ。
一桁の年の頃から兵士をして戦いに明け暮れて、挙句の果てには政治の道具とあっちゃ、普通は怒る。こりゃあ、本部のというか政府の指示の通りにするとカイドウに反発されるな……最悪、反政府運動家か海賊か、犯罪者になる気がする。報告が本当ならリンリンなみの逸材だぞ?
●月×日
海軍本部大佐に昇進した俺と見習いから大尉に昇進したリンリン、伍長扱いのシュトロイゼンがウォッカ王国を訪れた時、俺が事前に送っていた提案通りに、カイドウは愛用の金棒を手に俺達が来るのを待ち構えていた。
俺達はこれからカイドウと決闘を行う。カイドウが兵士として戦う中で暴れ足りないと頻繁に愚痴を零していたのは報告されていたから、ここはいっちょ俺達になら下についてもいいと、シンプルに力で思わせる事にしたのだ。
もしカイドウとの決闘で奴を倒せなかったら、徴兵を一旦免除すると政府に話を通してある。カイドウが徴兵されなかったとしてもウォッカ王国は世界会議への参加権を得られる。
破格の条件だが、カイドウの戦闘能力を考えると将来的に大将・元帥クラスだ。この戦力が下手をすれば野に下って、政府と敵対する危険性を減らす為には必要だとなんとか説得できたのは、我ながらナイスな働きだ。めちゃくちゃ頑張ったぞ、俺。
しかしまあ、このカイドウ。十三歳の少年だとは信じられない覇気と佇まいだ。見聞色を使うまでもなく規格外の怪物だと俺の本能が警告して、細胞がブルってる。今の海軍で勝負になるのはガープ、センゴク、おつる、ゼファーをはじめ、数える位しかいない。
俺は……どうだろう? リンリン相手に何度も死にかけながら戦ったから、それなりに鍛えられたとは思うがなあ。
カイドウは俺の目から見てもとんでもねえ怪物だが、一人目じゃない。カイドウに負けず劣らずの怪物を俺は知っている。人生の半分以上を一緒に過ごしている相棒リンリンだ。
この世のありとあらゆるものに不満だらけだと言わんばかりの表情のカイドウに対し、今年で二十二歳になるリンリンは余裕の笑みを浮かべて俺の横から進み出る。
カイドウはリンリンを見て女かと侮りはしなかった。その代わり、全力で戦える怪物が目の前に居る事を理解し、まだ少年と呼べる顔立ちに凶悪極まりない笑みを浮かべる。
リンリンも目の前のカイドウが本気を出していいおもちゃだと気付いて、大人になった顔にちょっと引きそうになる笑みを浮かべた。お前、母親になったんだから、そういうの止めとけよ、と思ったが、戦わせているのは俺だし、なにも言えなかった。
●月×日
カイドウとリンリンの決闘は夜通し行われ、軍配はリンリンに上がった。リンリンがあそこまで消耗した姿は初めて見た。つくづくカイドウの怪物ぶりを思い知らされて、こいつが野に放たれずに済んで、心の底からほっとしている。
カイドウはどうも根っこのところは真面目な性格をしているらしく、気絶から目を覚まし、自分の敗北を認めると素直に俺達の下につくのを認めた。
ウォッカ王国とはこれで縁切りだと憑き物が落ちたようにも見える。腐っても生まれ故郷、多少の愛着はあったのかもしれない。
まあ、二人の決闘の余波でウォッカ王国の首都近郊はえらいことになっちまったけどな!
●月×日
無事、カイドウが俺とリンリンの部下となり、海兵見習いとなってからもうずいぶんと経つ。カイドウからみてシュトロイゼンはどうだろう? 先輩ではあるが部下と上司ってわけでもないしな。
当初は人間不信だったカイドウも対等の怪物であるリンリンと物おじしない俺との付き合いが続けば、軽口や冗談を叩き合うくらいの関係性と信頼が出来上がるもんだ。
シュトロイゼンのククククの実の能力は便利なもので、そこらの草木や岩なんかも、あいつの手に掛かればなかなか美味い食べ物に早変わり。食べ盛りのカイドウが加わった俺達にとっては、実にありがたい存在になったもんさ。
カイドウとリンリンの実力はメキメキと伸び、既に大将級の実力を備えている。なにより助かったのは、リンリンの食いわずらいが、頻度が少なくなり、暴走も控えめになったとはいえ、いざとなったらカイドウが力ずくで抑えられるので、俺が怪我を負う回数が激減した事だ。
個人的にかなり充実しているのでは? と思う日々は、最強最悪のロックス海賊団が神の谷に天竜人とその奴隷達を狙って攻め込んだことで終わりを迎える。
海賊の中でもよくもこれだけ集めたなと言いたくなる大物ぞろいのロックス海賊団を相手に、そこに居合わせた海賊ロジャーにガープが手を組んで戦っているその現場に、准将になった俺と少佐になったリンリン、中尉になったカイドウ、嫌だと駄々をこねるシュトロイゼン軍曹も介入して大暴れしてやった。
●月×日
ロックス海賊団との決戦は俺とシュトロイゼンが包帯でぐるぐる巻きになる重傷を負い、リンリンとカイドウもかなりの傷を負ったが、幸い俺達に死者は出なかった。
ロックス海賊団は壊滅できたが、有力な残党はちらほら居て、彼らが新たな大海賊として台頭する時代が来るだろう。まだまだ俺も現役で頑張らにゃならん。
それにあのロジャーって男、ありゃあ、時代そのものを動かす器と言うか、エネルギーがある。これから先、世界政府はとんでもない目に遭う気がする。世界政府加盟国非加盟国問わず、一般市民に害が及ばないのなら別にいいけどさ。
そういえばリンリンが神の谷でウオウオの実の幻獣種モデル“青龍”を見つけ、既に能力者だったリンリン、シュトロイゼンが食うわけにはゆかず、カイドウが食べる事になった。本部に報告する前に食っちまったから仕方が無い、事後報告だ、と俺は頭が痛くなった。
リンリンは一生の恩だぜ、と笑っていたが、半ば押し付けられたカイドウは逆に怒っていた。俺からすれば姉弟のじゃれ合いだが、他の連中からしたら街一つ壊れかねないじゃれ合いだなあ、と病院のベッドの上でこの日記を記す。
○シュトロイゼンが海兵になった!
○カイドウが海兵になった!
○ネタが切れた!