お前も海兵! お前も海兵! 作:スカウトマニア
■月△日
ロックス海賊団を壊滅させた神の谷事件からしばらく。傷の癒えた俺達は経過観察と精密検査をすると言われて、随分と厳重な設備の病院に連れ込まれた。
胡散臭い。この一言に尽きる。施設の職員は表向き俺達を歓迎している風だが、怪我や病気を治そうという気概のある医師や看護師とは思えない連中ばかりだし、この施設……中から外に出さない為のものだな?
それにシュトロイゼンは元の病院から転院せず、俺とカイドウとリンリンの三人だけが転院を命じられたのは解せない。俺の怪我の具合はシュトロイゼンより少しマシってレベルだしな……こいつはひと暴れする必要があるかもしれん。
俺はカイドウとリンリンに油断するなよ、とハンドサインで伝えておいた。二人は頼もしい事この上ない笑みを浮かべて答えてくれた。
■月△日
おらおらおら、俺達を罠にはめようとした命知らずの阿呆はどこだ! と俺達は病院とは名ばかりの実験施設で暴れ回る事となった。
胡散臭さを感じたのは間違いではなく、この施設は主に希少な生物や種族を対象に吐き気のするろくでもない実験を行う為の施設だったのである。
人間として最強最高レベルの肉体を持つカイドウとリンリンを実験対象に選んだどこかの阿呆が、俺を人質にして二人を実験台にしようとしたのだが、二人の事を見誤ったな。
小型の海王類なら一発でぐっすりの睡眠薬を用意していたようだが、臨戦態勢を整えていた二人には通じず、俺も傷の完治していない状況だが、可愛い俺の部下になにしようとしてやがる、と怒りのままに暴れまくった。
ついでに表には出せない資料と責任者相当の職員の確保を忘れなかったのは、汚れ仕事寄りだが、海兵としての生き方が俺の骨身に染み込んでいたからだろう。
俺達が大暴れした結果、ほぼ瓦礫と化した施設からは囚われていた多くの人々や生物が逃亡したのだが(一般市民に被害が出そうなのは確保しておいた)、その中でカイドウが一人の少年を見つけて、俺達の前に連れて来た。
褐色の肌に白髪、そして背中には黒い鳥の翼、背からは燃える炎……ルナーリア族? 神とも呼ばれる幻の種族じゃねえか。世界政府に存在を知らせるだけで一億ベリーが支払われるなど、政府もやたら執着している種族だが……。
どうやらこの施設、俺が思っているよりも根深い問題に繋がっていそうだな。
俺がこの後の海軍と政府との交渉を考えている間も、カイドウは嬉しそうに笑ってルナーリアの少年と話をしていた。リンリンも初めて見るルナーリア族が珍しいのと、自分の子供でもまあおかしくない年齢の少年に対し、カルメルを思い出す態度で接している。
少年の名前はアルベルというらしい。俺達が暴れ出した時に、カイドウが侵入した部屋の中に四肢を拘束されたアルベルが居て、解放したらしい。それだけだったらカイドウがアルベルを連れてくるわけもない。
拘束から解放されたアルベルは自らも武器を手に取ると、炎を自在に操り、見どころのある戦闘技術を発揮して、施設の警備員を蹴散らし、施設を破壊してまわり、その強さをカイドウが気に入ったんだとか。
ああ、そう言えば俺達四人の中だとカイドウが最年少で末っ子扱いを受けているから、自分より年下の子供を相手に兄貴風を吹かせているってわけか。
アルベルの方も直接自分を助けてくれたのに加え、俺の影に隠れていろ、俺が庇ってやる、誰にもお前を渡さねえと自信たっぷりにいうカイドウには早くもある程度の信頼を寄せているように見える。
リンリンもカイドウがダメな時には俺が守ってやるから安心しな、と大笑い。それにカイドウが突っかかるが、リンリンは気にした風もなく笑うだけだ。はいはい、わかりました、分かりましたよ。面倒ごとは全部俺がやりゃいいんだろう? なんとかしてやらあな。
■月△日
疲れた。なんとかはした。
■月△日
日記にまで疲れたと書くとか、我ながら結構参っていたようだ。現在、退院したシュトロイゼンとアルベルを連れた俺達はエルバフにある羊の家に戻ってきている。
あの後、俺の予想通り政府の面倒くさいところと繋がっていた施設をぶっ壊した事で、俺達はやり玉に挙げられたが、神の谷事件でロックス海賊団壊滅に貢献した事もあり、俺の大佐への降格と謹慎でとりあえず話は済んだ。俺の方も実験施設の中で色々と弱みを握れたのもある。
問題のアルベルはというとルナーリア族というトンデモ爆弾だが、俺を通して海軍の監視下に置けること、俺達を騙して実験施設送りにしたことと相殺する形で政府を納得させた。
これは海軍側がアルベルを確保し、政府相手に切れるカードを確保しておきたいという考えも含まれている。必ずしも政府=海軍というわけではないからな。
それにしても嫌だねえ。まだ子供のアルベルが陰鬱なやり取りの材料にされるなんてよ。せめて羊の家に居る間くらいは、気を楽にしてもらいたいもんだ。
■月△日
俺とリンリンとカイドウ、シュトロイゼンの部隊は特定の基地や専用の軍艦を持たず、任務に応じて最寄りの基地に居候したり、軍艦を借りたりしている。その中で羊の家は俺達の非公式の拠点兼我が家となっている。
俺とリンリンにとっちゃ住み慣れた場所だし、人間不信だったカイドウも素性だけなら自分以上の厄介なモンを背負っている子供らばかりだから、そこまで邪険には扱わない。
まあ、裏で人身売買というか職業斡旋をしているのに気付いた時には、自分がウォッカ王国に売られた時のことを思い出して、怒髪天を突いていたもんだ。
幸い、二代目マザーもカルメルと同じ方針で子供達を真っ当に育てているのと、俺達がバックに居るぞ、と暗に海軍と政府に伝えているのもあり、奴隷として売り飛ばされたり、ネグレクトが心配される家庭に養子に出されるよりはよほどマシとカイドウも今は理解してくれている。
アルベルはカイドウから離れたがらなかったが、子供らがルナーリア族というのを理解していないのもあるが、朗らかに接してくるのとリンリンが構い倒してくるのもあり、徐々に緊張は解れていった。
■月△日
俺達が羊の家に帰ってきた時の恒例行事に、巨人族の戦士達との手合せがある。これも政府と巨人との交流の一助と思い、俺はいつも手合せに臨んでいるがカイドウあたりは巨人の強者達と思う存分戦えるのを楽しんでいる。そんなカイドウの絶対的な強さを目の当たりにして、アルベルはよりいっそう、カイドウに懐いたようだった。
部下ばっかりが活躍していちゃ、上司としての俺の面目が立たない。ペロスペローやカタクリといったリンリンの子供達も見ている事だし、俺も少しはいいところを見せないとな。
俺のオリジナルで開発した技を二つ、試させてもらった。武装色の覇気を血流に流して操作し、体の中を硬化すると同時に大量の熱を発して身体能力を大幅に向上させる、名付けて“鉄血装”。
更に自分の見聞色の覇気を相手の見聞色に合わせて流し込み、見聞色で得られる情報と五感で得られる情報を隔離させ、混乱させる“
祭だ祭りだ、とテンションを上げてくる巨人達に向けて、かかってこいや! と俺は威勢よく答えたものの、リンリン、カイドウ! お前達までなんで俺に向かってくるかね!?
■月△日
負けた。くそ、やっぱり単独ではリンリンにもカイドウにも勝てない。今の俺では二人を同時に相手にしたら、時間稼ぎに徹したとしても精々半日が限界か。もっと強くならなければ。
それはそうとアルベルの俺を見る目が少し、マシになった気がする。ちょっとは良いところを見せられたらしいや。
■月△日
報告の為に久しぶりに本部に寄ったら、面倒くさいことこの上ない相談をされた。
世界貴族、世界の支配者たる
自分達以外はすべて等しくゴミクズ、地上で奴隷売買や視察をする時には同じ空気を吸わないようにヘルメットを着用と突き抜けた特権意識を持ち、それが許されてしまう奴らだ。
しかしまたなんで地上に移住を? ドンキホーテ家といえば天竜人の中でもかなり家格が高い。反対意見もかなり出たそうだが、ホーミング聖は意志を曲げなかったし、奥方も同意見だったという。
どこにでも変わり者はいるもんだ。問題があるとするならば、ホーミング聖の移住先に世界政府の非加盟国が選ばれた事である。
加盟国からは天竜人への貢ぎ金“天上金”を絞り上げ、非加盟国には人権を認めずに人さらいが横行するなど、その原因の大部分を担っている天竜人は恐怖と同時に憎悪と怒りの対象でもある。
ホーミング聖がどう認識しているかは知らないが、政府の保護の無い非加盟国で天竜人とバレたら、焼き討ち獄門晒し首なんてことになりかねない。
多分、異端を許さない他の天竜人達がホーミング聖が十中八九、悲劇に見舞われると分かった上で非加盟国に降ろされるよう手を回したのではなかろうか。
俺としてはこんな呆れるような真似を、しかし、天竜人らしからぬ行いをするホーミング聖を悲劇に襲われると分かって放置するのも心苦しい。一緒に幼い二人の兄弟を連れていると知らなければ、そこまで肩入れしなかったろうけど。
■月△日
本部を介して更に政府を介し、あっちこっちに根回しと嘆願と依頼を重ねた結果、どうにかこうにかホーミング聖一家の移住先をアラバスタ王国へ変更することに成功した。
アラバスタ王国のネフェルタリ王家は天に昇らず地上に残った天竜人の末裔だ。その為、聖地の天竜人からは裏切り者扱いされているが、ホーミング聖からすれば唯一の先達とも言える。
ネフェルタリ王家にとってはいい迷惑かもしれんが、天上金の大幅な減額が約束されているし、次期国王のコブラ王子は名君の素質を見込まれている。
コブラ王子にはホーミング聖の子供、ドフラミンゴ君とロシナンテ君の良い見本、良き兄貴分になって欲しいと勝手ながら期待したい。
■月△日
責任者という事で俺はホーミング聖一家の護衛の一人として、アラバスタ王国まで同行することになった。実際に話をしてみるとホーミング聖ご夫妻は本当に天竜人かと疑いたくなる善性の人物だった。見通しは死ぬほど甘いけど。一個人としては好感の持てる方々だったので骨を折った甲斐があるというもの。
しかし子育てはまだまだらしく、長男のドフラミンゴ君は典型的な天竜人でザ・クソガキだ。リンリンとカイドウを連れてこなくて良かった。弟のロシナンテ君は引っ込み思案と言うかドジっ子で幼いのもあるが、天竜人らしくない。
クソガキのドフラミンゴ君も弟は可愛いようで、優しいお兄ちゃんをしている。
名君の輩出率が高いネフェルタリ王家が上手くホーミング聖一家を地上の暮らしに馴染ませてくれるといい。俺も出来るだけ様子を見に来よう。
■月△日
アラバスタ王国からの帰路、海賊が町を襲っていたので半死半生にして叩きのめした。どうやら大将に上り詰めた黒腕のゼファーを逆恨みしたバカ海賊が、彼の妻子を狙ったらしい。間に合って良かったとつくづく思う。
今回の事件から家族が狙われる可能性や人質にされる危険性を考え、一定以上の階級の海兵の身内には護衛を付けるか、基地に住んでもらうなど対策を考える必要がありそうだ。
■月△日
家族の危機を救ってくれたとゼファーにものすごく感謝された。よせやい。海兵として当たり前のことをしただけさ。
■月△日
珍しくカイドウがアルベルを連れて出掛けたいと言うので許可を出した。そうそう、数年前に正式にカイドウの部下になったアルベルだが、素性が不特定多数に知られるのは良くないとマスクを被り、キングとコードネームを名乗っている。背中の翼と炎であんまり素性を隠せてないのは内緒だ。
■月△日
カイドウとアルベルが帰って来た。カイドウの奴が妙にボロボロになっていたが、肩にはもっとボロボロの少年を乗せていた。十四、五歳ってところか。
どうしたと聞くと軍事国家ガルツバーグで大暴れしていたのを叩きのめし、戦利品として持ってきたと言う。
そういやガルツバーグが半壊したと報告にあったが、この少年、最強の少年兵とか言われているダグラス・バレットか! 捨て猫じゃないんだから簡単に拾ったとか言うなよ。
鉄血装 → ギア2とBLEACHの動血装と静血装を足して3で割ったような技。
悪苦諦無邪魔 → マクロスFのアクティブステルスもどき。
◯アルベルが海兵になった!
◯ドンキホーテ・ホーミング聖一家がアラバスタ王国に移住した。
◯ダグラス・バレットを拾った!
俺……中将以上大将未満の強さ。