お前も海兵! お前も海兵! 作:スカウトマニア
主人公の天竜人に対する見解とクーデターについても。
☆月×日
忌々しい大海賊時代の到来。俺は鬱々たる気分をやる気の炎で燃やし尽くし、ピースメインの名前を海賊共には恐怖と共に刻んで、これから海賊になろうなんて考える奴が居なくなるようにしてやる。
意気込みはこんな具合として、実際にやる事は部隊を二つに分けて、活動範囲を広げた事くらいだからちょっと情けない。
新しく加わったリンリンの子供達のお陰で人数が増え、俺、リンリン、カイドウの内誰かを指揮官として、その下にアルベルとリンリンチルドレンで構成する二番隊と二番隊の指揮官以外の俺、リンリン、カイドウ、バレットで構成する一番隊だ。
白ひげのところやゲッコー・モリアのような大物海賊の本隊を相手にしない限りは、この二部隊編成で任務は十分に果たせる。
なにが大海賊時代だ。自由と平和を奪う海賊ばっかりが増えやがる。ロジャー、自由に生きたお前とは正反対の屑ばかりが海に増える時代が来ちまったよ。
☆月×日
ワノ国に出張中のカイドウから知らせが来た。俺達が留守にしている間に、次世代の大物ゲッコー海賊団がワノ国を襲ったらしい。
カイドウが到着したのは戦いが終わった後で、おでん達が勝利したものの、ゲッコー海賊団がワノ国に攻め入ったのは、竜の首を落としたという伝説の侍リューマの遺体と大業物の名刀『秋水』を彼の墓から盗む為だったようだ。
モリアのカゲカゲの実の能力は生き物の影を別人の遺体に封入する事で、絶対服従のゾンビを作り出せるはず。リューマのスペックを活かせる強力な剣士の影をモリアが手に入れれば、伝説の侍というか侍モドキというか、とにかく強い剣士が奴の配下に加わる事を意味する。
剣士の影を確保するのには相当に苦労するとは思うが、ゲッコー海賊団の大幅強化もあり得るか。おでんをピースメインに引き抜きたいくらいだぜ、まったく。
☆月×日
シキの奴がインペルダウンを脱獄したと知らせが入った。まさかあそこから脱獄できるとはと驚いたが、シキの奴、海楼石の足枷を嵌められた両足を切り落として脱獄したという。
そこまでやるかと思ったが、奴ならやるとすぐに思い直した。脱獄した後、奴はなにをする? 海賊団を再建して再び海に君臨するか、それともロジャーが齎したこの新時代を破壊しようとするかもしれん。
いずれにせよ白ひげと並ぶ古強者が海に解き放たれた事実は、忌まわしいものに違いない。モリアの事と言い、どうにも凶報が続くな。
☆月×日
西の海にある都市オハラに対し、バスターコールが発動された。島の中央に全知の樹がそびえ、世界中のあらゆる資料が集められ、世界中の学者達が集まる知識の島、学者の島といったイメージが強い。
バスターコールが発動されたのは、学者達が密かに研究を禁じられた“空白の百年”や“
知的好奇心と探求心の赴くままに禁忌の扉に触れたのはオハラの学者達が悪いが、それに対する制裁がバスターコールはやり過ぎた。学者達をオハラの地下に隠された資料ごとこの世から消滅させる気か、政府め。
ところで、俺がこの日記を書いているのはバスターコールに向かう軍艦の中である。
俺がワノ国の一件で二階級降格からの昇格で准将になってから二年弱、俺はとうとう中将になってしまっていた。俺が中将に昇進するのを渋っていたのは、今回のようにバスターコールに動員される可能性があるからだ。
天竜人の部下になってしまう大将は絶対に嫌だが、中将は中将でバスターコールをやらされる可能性があり、気乗りしなかったのである。ガープもよく中将をやる気になったなと思う。
まあ手に負えない海賊団や犯罪組織相手に発動するのなら、俺だって喜んでバスターコールに応じるとも。だが今回のような禁忌に触れたとはいえ、本来守るべき市民に手を出すようなバスターコールには断固としてノーを突きつけたい。
まあ、政府がそう言う考えならね、俺にもね、考えがあるのでね。
追記
後日、この日の俺は過去で一番キレていたとリンリン達から教えられた。腸どころか脳みそもグツグツと煮えたぎっていたと思う。
☆月×日
バスターコールの当日。流石に学者ではない市民達は避難させる事となり、海兵達に誘導させて避難を進めていたのだが、その避難民を乗せた船に向けてサカズキが砲撃を命じた。
曰く、学者達が混じっている可能性がある、悪は芽から潰さなければならない、ここで一人でも逃せば今回の犠牲が無駄になる、ざっくりまとめるとこんなところだ。
サカズキ、お前のその徹底ぶりには敬意を表したくなるくらいだ。中途半端に情に絆されて、かえって大きな被害をもたらした例はいくらでもある。
でもな、俺はそれを受け入れられねえんだ。その為に、我儘を通す地位と実力と人脈を築いてきたんだ。まだまだ足りねえけどな!
避難民を乗せた船に砲弾が命中する前に“嵐脚”で斬り落とした俺は、サカズキが抗議の通信を送ってくるよりも早く、艦隊に屁理屈と承知の上で、こんな土壇場で砲撃中止の命令を送った。
今回のバスターコールは政府直轄の諜報機関
今回のCP9長官からのバスターコール発令に関して、本部からの発令でない事に情報工作の可能性の疑いが上がり、実行に当たっては精査する必要がある。ひいては権限の委譲元であるセンゴク並びにコング元帥、政府本部への確認を行うべき、と。
今さら言うなよ、と我ながら思う突っ込みどころ満載の発言だが、時間稼ぎが狙いなんだから良いんだよ。サカズキからは烈火の如き怒声と抗議の通信が届いているが、悪いな、無視させてもらうよ。
バスターコールは指定地域の殲滅を指示するもの。サカズキが避難民を船ごと沈めようとしたのも命令の範疇だ。後で問題視されることもない。
今回のケース、問題視されるのはやはり俺の土壇場での駄々捏ねだろうな。ただ、俺が攻撃中止を訴え、遅延が生じたことにどこかほっとした顔つきになった海兵達がいたのを確認できたのはせめてもの救いだった。
避難民ごと、それも誘導している味方の海兵もまとめて沈めるのは、例え上官からの命令であろうと良心が咎める者も多いだろう。
とはいえ俺の駄々こねの屁理屈で稼げるのはせいぜい数時間。ギリギリまで仕込みを伏せなければならなかったから、学者達を逃がすのも直前まで行えなかったのが痛い。
バスターコールの招集を受けてから、俺は独断でオハラの学者達に会いに行き、彼らを逃がす算段を立てていた。禁忌に触れる研究なんかするなよと愚痴を言いたくもあったが、政府も過激すぎるんだよ。
やり方は乱暴極まりないもので、バレットのガシャガシャの実の能力を使って、俺が調達した廃船や廃材を組み合わせた避難船を造り、それに学者達を乗せて、青龍に変身したカイドウがその船を持って空から逃げる、コレだけだ。
カイドウも船も目立つところだが、それを気付かせないためにもリンリンには猿芝居をしてもらった。後でいくら頭を下げても下げ足りない。
リンリンがこれまで制御できていた“食いわずらい”を発症してしまった事にして、特別なホーミーズである雷雲のゼウスとカイドウのウオウオの実の能力を合わせて、オハラ周囲の海域を一気に荒れたものに変えて、頭上には雷光の走る黒雲が広がる状況に様変わり。
センゴクやガープと同格扱いされるリンリンの突然の狂奔によって、バスターコールどころではなくなり、俺を含めサカズキもリンリンを抑え込むのを優先せざるを得なくなる。
ゼウスに乗って自由に空を飛べるリンリンに対し、サカズキは海に落ちたら無力化するという能力者の宿業から逃れられない。軍艦全部を沈められたら、バスターコールを果たせない上に自分の命も危うい。
そうして俺達がリンリンを相手に手をこまねいているふりをしている間に、カイドウに連れられた学者達はオハラから脱出し、ワノ国へ亡命する手筈が整っている。
幸い住居は鬼ヶ島を使ってもらえばいいし、暮しについては自給自足の生活がてら、ワノ国で歴史の研究をしてもらうしかない。
ワノ国は世界政府非加盟国だから、加盟国にはない秘密の歴史があるかもしれないし、彼らの知的好奇心と探求心を満足させられるかもしれない。
亡命者の中には元海軍中将で巨人族のハグワール・D・サウロも居たが、避難船はどうにか船底が抜けずに済んだし、カイドウも頑張ってくれた。
後で聞いた話だがオハラに上陸していたクザンがサウロ、カイドウと接触しており、今回の俺の我儘について知ったそうだ。
リンリンの食いわずらいは、カイドウの脱出を確認してから収まった事にした。その間に本部からは今回のバスターコールが正規の手順を踏んで発令されたものであり、多大な叱責の言葉が俺に向けられていた。
うるせえ、そんなことは分かっているんだよ! 海兵の誇りと正義を全うさせてくれ! 俺は誰にも胸を張れる、「当たり前の正義」を信じて、掲げて、海兵をやってんだ!!
☆月×日
結局、オハラへのバスターコールは避難民に関しては後日、時間をかけて戸籍と照合する事となり、避難船を吹っ飛ばすサカズキの案は却下された。時間はかかるが、犠牲を出さない方法を取れたのはセンゴクやコング元帥、ガープの耳に今回の件が届いたからだろう。
だがサカズキの判断も決して間違いではない。そんな時代なのだ。後で菓子折りを持って詫びに行かなけりゃならん。
それとクザンは俺に対して何も言わなかった。彼自身、オハラでのバスターコールについては色々と思うところがあったのだろう。それまで掲げていた「燃え上がる正義」を撤回するほどなのだから。
オハラの学者達は無事にワノ国に到着し、事前に話を通していたおでん達には色々と迷惑をかける事になってしまった。俺の権限で出来る限りの配慮をしておこう。
元中将のサウロも居るし、またゲッコー海賊団が仕掛けて来ても、おでん達と鬼ヶ島のホーミーズと連携し、撃退できるだろう。またオハラの亡命者組にはニコ・ロビンという八歳の子供も居た。助けられて本当によかったと改めて思う。
さて世界地図からオハラの抹消までも決定した今回のバスターコールだが、俺は作戦中の多くの失態を理由に三等兵への降格が決まった。ここからまた頑張ろう。
追記
一番下っ端になった俺だが、リンリンやカイドウ達は階級がなんであれ、俺達の隊長はあんたしかいねえだろう、と言ってくれたのには思わず鼻の奥がツンとした。
いい歳して泣いてやがるぜ、と笑われたが怒る気にはなれなかった。歳を取ると涙もろくなって仕方ねえ。
☆月×日
三等兵としてピースメイン隊長から一番の下っ端になった俺だが、今日も雑用だろうとなんだろうと頑張る日々である。
しかしそんな日々にも予想もつかない出来事とは起きるもので、街に買い出しに出かけていた俺達の目の前で、一組の恋人達がなんとも不運な事に天竜人に連れて行かれようとしていたのだ。天竜人の目的は女性の方か。
なんだかここ最近、陳腐な芝居が得意になってきた気がするが、どこかの海賊が攻めてきた事にして、俺が率先して天竜人の護衛をしている黒服と海兵に話しかけて避難を呼びかけ、用意しておいた煙幕を焚いて天竜人の目を晦ませている間に怪我を負っていた男性と女性を確保し、天竜人の目から逃がす。
たったそれだけのことだが、俺達はすっかりと手慣れたもので手際よく不細工な顔立ちの天竜人を騙し、事態の変化に理解の追いついていない恋人達を半ば拉致するように船と連れて行く。
大急ぎで船を出し、街を襲った海賊は後で適当にでっち上げて追い払った事にしとこ。
天竜人に理不尽な目に遭わされていたのはテゾーロと言う青年とステラと言う女性だった。
テゾーロは元々奴隷だったステラを買い、引き取ろうと必死に働いていたらしい。ステラもそんなテゾーロに献身的に接し、二人は恋人関係となったそうな。
ところがそこに天竜人が、となり俺達の出くわした場面が出来上がったわけだ。とはいえ天竜人に目を付けられた以上、世界政府加盟国に彼らの居場所はない。
こうなってくると非加盟国に逃がすしかないわけだが……俺の視線に気付いたカイドウは、また俺か! と怒鳴ってきたが、全ては空を飛べる君が悪いのだよ、カイドウ君。
それにしてもワノ国の鬼ヶ島はどんどん賑やかになって行くな。オハラの面子とはだいぶ毛色の異なる二人だが、世界政府と天竜人に迫害されたもの同士、悪い関係にはならないと思いたい。
☆月×日
誰が言ったのか、天竜人について俺はどう思っているのか、と聞かれた。俺はその場では答えられなかった。加盟国に多大な負担を強いている天上金、人々に理不尽な不幸をバラまいている天竜人。
加盟国百七十を誇る世界政府を束ねる五老星は色々言いたいこともあるが、確かな統治能力を備えた政治家なんだが、普通の天竜人達が害悪の権化過ぎる。
正直、天上金をせめて半額に、いや、三分の一に、いやいや五分の一に、そもそも無くした方がいいだろうとは常々思っている。
世界政府という世界最大の国際機関を作り上げた天竜人の始祖達は確かに偉人と言えるが、今、現代を生きる天竜人達はどうか? おそらく生まれた時から施される教育の所為なのだろうが、ホーミング聖のような存在は極めて稀だ。
正直、ただ天竜人と言うだけで嫌悪感を抱いてしまう程、俺も偏見に凝り固まってしまっている。
もし力で天竜人を排除しようとした場合、中将、大将、元帥の半数以上を味方につけたい。加盟国も世界会議に出席する権利を持つ五十か国の過半数は味方につけておかないと、政府転覆後の世界の混乱を迅速に纏められないだろう。
仮に天竜人の排除が上手く行ったとしても海軍や陸軍、諜報機関は大打撃を受け、世界中の世界政府全軍が指揮系統の混乱で機能停止し、この大海賊時代に一般市民への被害は短期間で加速度的に増えるだろう。
そして何より天竜人達の有する神の騎士団の全容が掴めない。神の騎士団以外にも、他にどんな戦力を持っているのか? 天竜人達に伝わる世界をひっくり返すような秘宝とやらの詳細も分からないままだ。
これまで世界政府が一度も転覆しなかった事実が、天竜人の保有する独自の武力の存在を後押ししている。
もし世界の変革を望むのなら、必勝の体勢を用意しなければならない。だが、情報は足りず、手勢は足りず、人脈もその後の展望もなにもかもが足りていない。
今の俺では世界を変える事は出来ない。ロジャーの足元にも及ばないのが、正直なところさ。それでも、俺に出来る何かを、必死にやっている。それだけは確かだった。それしかなかった。
<続>
〇侍リューマの遺体と秋水がゲッコー海賊団に盗まれました。
〇シキが脱獄しました。原作とモチベーションが異なります。
〇オハラの学者達がワノ国に亡命しました。
〇テゾーロとステラがワノ国に亡命しました。
〇オハラの学者達、ニコ・ロビン、ハグワール・D・サウロ、テゾーロ、ステラが外部協力者になりました。
〇三等兵に降格しました。
ルフィとエースとサボを海兵にするか悩み中。