「……ん、ここ……は……?」
備えつけられたベッドに眠っていた少女は目を覚ますと、上体を起こして周りを確認する。
そこはキッチンと寝室が一緒にされている部屋だった。
どうして自分がここにいるのか思い出そうとすると、扉が開いて部屋に誰かが入ってきた。
「ん?目を覚ましたのか」
入ってきたのは見慣れぬ紺色の装束に緑のベストをきた男だった。
「っ!貴方は!」
しかし、少女は男を認識した瞬間に思い出した。
目の前の男は自分が乗っていた海賊船と敵対していた人物であると。
「待て待て、俺は戦う気はない。というか自分の船で暴れたくないし」
能力を発動しようとしたが、男の言葉に少女は動きを止める。
「ここは、貴方の船の中ということ?」
「そうだ。だから、ここでは暴れないでほしい」
どうすべきか迷う少女を尻目に男はキッチンに向かう。
「もう一度言うが俺は戦う気はないぞ」
そう言いながら男はコップに水を入れると少女の前に置く。
「そういえば自己紹介が遅れたな、俺はうちはハヤト。君は?」
「………ニコ・ロビン」
お互いに自己紹介を終え、男は椅子に座るがロビンは警戒して何時でも能力が発動できるようにしていた。
「どうして私を連れ去ったの?」
「ん?連れ去った理由か……」
ロビンは目の前の男が自分を連れ去った目的が自身にかけられた懸賞金だと考えていた。
「まあ、単純に興味が湧いたというのが強いかな」
「興味?」
「そ。まさか自分の体に腕が生えてくるとはびっくりしてね。あれって悪魔の実の能力?」
流石に初めて会う男に自身の能力を話すべきかロビンは考える。
「ああ、無理に答えなくていいから。何となくで聞いただけだから」
「それで、私をどうする気なの?」
わざわざ連れ去った理由が興味が湧いたという言葉をロビンは信じていなかった。
「え?どうもこうもないけど」
「………」
「(まあ、信じられないよな)」
正直に話しているハヤトだが、ロビンは信じていないよだった。
幼少期から世界政府だけでなく、懸賞金に目がくらんだ市民にまで命を狙われていた。
欲にまみれた大人の姿を見せられれば、中々人を信用するのは難しいだろう。
「まあ、しばらくゆっくりしていなよ」
そう言ってハヤトは船室を出る。
「やっぱり警戒されてるけど、こればっかりは仕方ないか」
仕方ないと溜息を吐いていると、ハヤトはこちらに近付く船影を見つけた。
「あれは………はぁ、面倒な客だよ」
近づいてくるのは帆にMARINEと書かれた一隻の軍艦。
海軍の軍艦だった。
「そこの船に告げる!直ちに停船しなさい!」
「はいはいわかりましたよ」
拡声器からの声にハヤトは船を停船させる。
停船した船の隣に軍艦も停船すると、ハヤトの船に橋をかける。
そして、軍艦から海兵達がハヤトの船に乗り込んできた。
「一応説明してもらえますかね?これはどういうことでしょうか?」
ライフルやサーベルを装備した海兵達の中から、正義と書いてあるコートを羽織った男が前に出る。
「海軍本部准将ヴェッロキンだ。この船に賞金首が潜んでいるという通報からこの船を検めさせてもらう」
「通報ね……」
その通報が誰からなのか気になるが、今は目の前のことを優先すべきだろう。
「もし拒否するるなら」
ヴェッロキンが腕を上げると、海兵達はライフルとサーベルを構える。
「拒否しませんよ。だけど、その前に……」
ハヤトは船に乗り込んだ海兵達を見渡す。
「なるべく荒らさない様にお願いします」
「いいだろう。始めろ!」
ヴェッロキンの号令に海兵達はハヤトの船を検め始める。
その様子を船室から見ていたロビンは、能力であの場にいる者全員を制圧するつもりだった。
だが、その前にハヤトが船室に入ってきた。
「大丈夫。そのまま大人しくしてて」
「何を言ってるの!こんな状況で!」
止められたハヤトにロビンは激高する間に海兵達は船室に入ってきた。
しかし、海兵達はまるでロビンのことなど眼中にないかのように物色する。
「異常はありません!」
船室から出た海兵のヴェッロキンへの報告にロビンは耳を疑った。
「さて、問題はなかったようですのでもういいですよね?」
「どうもご迷惑をおかけした。全員撤収するぞ!」
海兵達は軍艦へと戻るとかけていた橋も回収し、軍艦はハヤトの船から離れていった。
「はぁ~疲れた。けど、上手くいってよかった」
軍艦が離れたのを確認したハヤトは写輪眼を解除した。
海兵達が検める前に写輪眼を発動して、全員に幻術をかけたのだった。
「貴方、一体何をしたの?」
「まあ、ちょっとした手品みたいなものだよ」
そう言ってハヤトは苦笑するのであった。