チート『命の交換』を手に入れた 作:嘘吐き
僕は転生者だ。
まあ小説とかでよく出るありきたりな話。前世の記憶を持って生まれた存在って言えばいいのかな?
神様の手違いとかではなく神様でさえ予測出来ない死に方をしたらしく僕は呆れて笑うしかなかった。僕の死に方は心臓麻痺、健康体で外因的な死因でもなければ変な薬物を飲んで死んだというわけでもないし、ショック死なんて万にひとつもあり得ない。
神様でさえ、どうして心臓麻痺になったのか理解できず、死因とかを確認する本には何故か死因だけが黒く塗り潰されて復元不可能だった。
まあ、死に方の不自然さなんて正直どうでもいい。
僕の人生は充実はしていた。バイトで稼ぎながら大学で自由に学んで、内定取るまではある程度気ままな生活をしていた。
それが原因不明で消え去ったのは納得いかないが、神様のせいという訳でもない。恨むに恨めないし、恨んだ所でどうにもならないのが人生だ。いやもう死んでるんだけど。
神様は転生特典を二つくれた。
僕に合っているチートは二つしかなくて、それを貰える事になったのだがそれがまた癖の強いチートだった。
それを見て、使い所あるのか微妙に思った。
★★★★★★
僕の手に入れたチートは二つ。
一つが死の時間を可視化するという能力だ。人間が死ぬであろう時間を可視化する。死の帳簿そのものと言えばいいのかな。デスノートでいう所の死神の目である。寿命の半分取られる事はないのだけど。
これが異世界ものだったらそれなりに強かったかもしれない。自分が介入しない限り見える寿命を変える事は出来ない。予言者にでも占い師にでもなれただろう。日本では占い師などは存在するが、あくまで運気を測るもの。「貴方○○で死にます」とか言って金取ると詐欺罪やら脅迫罪になるのでただ人の運命が見えるだけである。
この眼はとりあえず『死の帳簿』と名付ける事にしよう。
もう一つ?チヨ婆って知ってる?
閑話休題。
いやー、赤ん坊ライフは強敵でしたね。
何が悲しくておっぱいを吸わなきゃいけないのか。幼少期にプライドはロードローラーに轢かれたように粉々にされた。
記憶保持したまま人生二周目は異世界でもなく日本だった。使えないし、平和な日本でこんなバカみたいな能力が役に立つのかと言われたら微妙過ぎるのだが、とりあえず赤ん坊ライフは記憶を失いたいと思うくらいに辛かった。
幼稚園児から小学生までは何の問題もなかった。
というより、日本の平和は何というか転生前より磨きがかかっているように見えた。
それはいい事なのか悪い事なのか当時わからなかった。
十歳の頃だった。
僕が公園で遊んでいた時、ある人とぶつかった。すみませんと反射的に謝ってその人を見ると……
「あっ?何見てんだ」
「え……あっ、ご、ごめんなさい」
《渋井丸全里 寿命 9分12秒》
その表示を見て目を見開いた。偶然ぶつかったこの人が残り九分で死ぬ。その事実に吐き気を覚えた。
もしも、もしも本当なら死因はなんだ?
交通事故、通り魔、工事中の事故。
可能性がいくらでもあるからこそ怖くなった。こんな日本で殺人が起きる筈がない。交通事故や不慮の事故なら救える可能性がある。恐ろしいけど、介入したら救えるかもしれない。
僕は彼を追った。
こっそりとバレないように尾行した。母さんに買ってもらった300円の腕時計を見た。
「ここって……」
あと三十秒、そこは公園だった。
此処は比較的交通も少ない。死因になるような事はない。工事とかもない。ハッキリ言って死因になるようなモノは見つからなかった。介入するにしてもどうして死ぬかを分からなければ対応の仕方が分からない。
腕時計を見た。
残り五秒、四、三、二、一、そして零–––––。
再び公園を電柱の影から覗く。
覗くと同時に驚愕した。
「……えっ?」
男の人は血だらけで倒れていた。
何が起きたのか分からなくて、近づいた。一体何が起きたのか理解できなくて走った。
僕が目を離していた五秒間の間で起きた出来事。
僕の『死の帳簿』は間違いなく死を告げていた。その原因は何だったのか。分からなくて、怖くて、でも助けられるのではないかと甘い希望に縋るように走った。
そして理解したのは、男は射殺されていた。
脳天を一発で射殺され、そして男の手にも銃が握られていた。サプレッサーというのか音が出ないタイプのモノが拳銃に取り付けられ、そして薬莢が
そして視線を茂みの中に向けた。
「うっ…おぇ……!」
死体があった。
脳を撃ち抜かれて死んだ僕と同じ年代くらいの女の子の死体が転がっていた。吐き気を堪えて耐えた。『死の帳簿』には名前は表示されているが、寿命は既に表示されていなかった。
よく見ると女の子も拳銃を持っていた。
サプレッサー付きで撃てば音が響かない。二人して同じ武器を持っていた。転がる二人の死体、そして薬莢が二つ。
相打ちによる死亡。
それが真実だった。
でも、此処は日本。顔立ちは間違いなく日本人の女の子であるはずなのに、十歳くらいの同年代の女の子が銃を持っている筈がない。僕は何かとんでもないことを知ってしまった恐怖心から逃げるように走った。携帯を持ってなくて救急車も呼べない。だけど誰かを呼ぼうとすれば自分が殺されてしまうのではないかと錯覚してしまうほどの恐怖心から家まで走った。
引き篭もるには充分過ぎるくらいの衝撃だった。
この眼はオンオフは出来ない。死を告げてしまうこの眼を初めて怖いと思ってしまった。この日、僕はご飯が食べられなかった。
★★★★★★
十八歳になった。
あの日から僕は興味本位で死期が近い人に迫るのを止めた。あの日から何かが変わったわけでもなく、警戒し続ける事が苦しくなっていつものままだ。
死は死だ。命は一つしかない。
死期が近い人間に近づく事はやめたのは僕も命が惜しいからだ。命を分け与えるなんて莫大なチートがあるものの、やっぱり生きていたいと思えてしまうから。
僕は人生を大切に生きている。
今は高校三年生だけどAO入試は合格して、バイクの免許も取って休日はカフェ巡りと順風満帆な生活を送っている。バイトがない日はカフェで勉強や読書をするのが趣味だ。
「……おっ、此処もカフェなのか?」
喫茶店リコリコ。
コーヒーや和菓子メニューからして和食カフェなのだろう。赴きがあるような店構えとコーヒーの匂いがする。ブレンドコーヒーは間違いなく美味い。巡ってきた勘から僕はお店の扉を開いた。
「いらっしゃいませー!お客様何名様でしょうかー!」
黄色みがかった白色の髪をボブカットに切りそろえ、左サイドに添えた巻き髪と赤いリボンを付けて元気いっぱいの女の––––
「っ!?う、そ……だろ!?」
「?どーしましたお客様?」
その異常さに目を擦った。
だが幾ら擦ってもそれは覆らない。身体から冷や汗が流れた。
初めての経験だった。
否、こんな存在がいる筈が無いと言えるくらいの異常さに驚愕では表せないくらいに恐ろしいと感じたのだ。
僕には人の寿命が見える。
それは僕が介入しない限り絶対の法則である。
そして、僕の眼に写した寿命は……
「……君…なんで…生きてるんだ?」
《錦木千束 寿命 00:00(+ 4年3月12日58秒)》
既に浪費している筈なのに。
彼女の無邪気な笑顔を見て、より恐ろしく感じた。
サッカーでもないのに人の寿命に初めてアディショナルタイムが表示された存在を見つけて思わず呟いてしまった。
お試し書きです。
ちょっと千束とイチャイチャを書いてみたいと思った欲望から書いたプロローグです。良かった感想ください。