原作知識持ちが行かされる実力至上主義の教室 作:arc
2日目。
男子のテントは人数分少し広いぜ。いややっぱせめえわ。
男の密集している空間を出ると平田もちょうど外にいてポイントを残せるかの不安についての話やAクラスを狙うか生活優先かを聞かれたりした。この試験中に取る行動はどちらでも変わらないが。もちろん生活優先だと嘘をついておいた。
平田がトイレに行ったので顔を洗いにいく。やっぱりいました神崎が。ちょっと顔わからん遠くにもう1人もいるな。軽い雑談をしてBクラスのキャンプ地を聞くと帰っていく。
「誰と話してたんだい?」
平田も顔を洗いに来て見かけたのか聞いてきた。
「Bクラスの神崎だ。恐らくポイント消費量を探りに来たんだろうな」
こちらから先に相手の推定目的を口にしておく。
「綾部くんが付き合っている一之瀬さんのいるクラスだよね。こういう環境でクラスが離れてるってどんな感じなんだい?」
平田の質問に他意はないかも知れんが裏ありありな俺としては意味深に聞こえる。これからの行動次第では今そうでなくとも後から疑われるしな。
「普段ならポイント格差が激しいから意識するもんでもないが、こう直接クラス間で競うことを促すような試験が来ると複雑だな。単純に今の試験じゃ会話が難しいというのも寂しいものがある」
そっか、と呟いて平田が顔を洗うのを見て俺も倣う。タオルで顔を拭き終わる頃に平田が
「綾部くん、Bクラスとこの試験の間だけでも不戦条約みたいなものを結べないかな。お互いをリーダー指名しないように。 他のクラスには勝てなくても、せめて団結して試験をクリアしたいと思ってるんだ。だからリーダーの正体に気づかれたくない」
……彼女が他のクラスにいる俺の立場を慮っているのか、俺を疑っているのか。弱音を吐かずに言い出すあたり、少なからず後者の要素がありそうだなこれは。具体的な裏切りする前から疑われてるのつらたん。せめて次の試験で裏切ってからにしてくれ。
「そうだな、話をしてみるよ。伊吹のことがあるから他のクラスの様子を確認したいしな」
点呼後、自由行動に入ってしばらくすると騒ぎ声が聞こえた。俺にとっては行動開始の予鈴だが、堀北の扱いに悩んでいた。そもそも積極的に近寄りたくもないし、原作より更に頑なモードだし、クラスで疑われなければいいだけだから、無視しても問題なかった。
問題なかったんだが昨日あれだけ幸村にぶちまけた手前というものがある。最終目的は一切変わっていないのに、なぜか行動目標にBクラスとDクラスの両方を向上させるというのが設定されていく。
騒ぎが収まったのが本鈴だ。例えが適切じゃなかったな。仕方ない、断られてもいいから声だけかけていくか。ちょうど1人離れたところにいる。
「堀北、少しいいか?」
冷たい一瞥。それ以外の反応はない。
「堀北さんはDクラスだからお返事もできませんか?」
ギロリと睨まれた。こわっ。
「さっきの騒ぎもあるからCクラスの偵察に行くのと、平田に頼まれごとがあってBクラスに行くんだ。流れでAクラスにも寄るかもしれない。付いてきてくれないか?」
「どうして私にそんなこと言うのかしら?」
「推薦で選ばれたとは言えリーダーと言うほどの仕事もしてないな、て言うのと、これは幸村にも言ったんだけど自分がDクラスであることに納得いってないわりに、Aクラスに上がるための行動をしてなさそうだったからな」
「こんなクラスと同レベル扱いされて納得いかないことが悪いのかしら? 抗議をしても聞き入れてもらえないわ」
「状況を変えようとしないのは受容と取られても仕方ないからね。文句を言うだけで行動しない人達を馬鹿みたいって思ったことない? 学校からは堀北はそういう風に見られてると思うぞ」
堀北の顔がひきつる。一息つくと、俺を睨んで言う。
「なにもしていなかったのは、あなたも同じでしょう。そんな人に言われても考慮する気になれないわ」
言って、俺から離れる。
今もこのクラスのためになにかをする気はないんだ。自分の為に動かなきゃいけないことを理解しろ、堀北。
堀北にフラれたのでやって来ましたソロキャン、じゃなくてCキャン。ビーチを謳歌してやがるぜ。俺1人で龍園に面通しできるかも不安の1つだったりする。まあ誰彼構わず呼ぶつもりだったのかお呼ばれしたが。
「一之瀬のオトコだったか。俺に何か用か?」
無線機確認。用は終わったぞ。これで帰ると不審ってレベルじゃないからなんか話すけど。
「こんなにポイントを使って何を考えてるのかという疑問はできたな」
「見ての通り俺たちは夏のバカンスを楽しんでいるだけさ。つまり、この試験中お前らの敵にはなりようがないってことだ。わかるだろ?」
「この試験が終わった後も敵になるのかって言うのも追加だ。まあそれはどうでもいい。伊吹が顔を腫らしていたのは誰がやったんだ」
「はっ。威勢よく飛び出したと思ったら、なんだ、あいつは結局他のクラスの連中に助けを求めたのか? 情けない女だな」
などと容疑者は犯行を供述しており……
お前がもう1人追い出したのも0ポイント作戦もリタイア作戦もその裏も取引も俺は知ってるっての。反応返すのが面倒だ。
「じゃあな、お前が一之瀬にフラれたら俺が一之瀬と遊んでやるよ」
イラッと来た。余計なことを口走る前に出ていく。
Bクラスのキャンプ地にやって来た。タゲ取り用の盾役がいないせいでストレスがたまってしまったぜ。ここで癒されよう。
「あれ、綾部くん?」
一之瀬が俺に気付いて声をかけてきた。ハンモックの紐を木に結ぶのを待って話しかける。
「龍園が2人追い出したっていう内の1人がこっちのクラスに来た。こっちにも来てるか?」
「金田くんのことかな?」
「警戒しなくていいがスパイだ」
一之瀬がうろんげな目で俺を見る。
「スパイだと決めつけておきながら警戒しなくていいっていうのはよく分からないかな」
「Cクラスで龍園を見てきてやりたいことの想像がついた。詳しいことはまた話す。表向きの用事がある」
そこまで話すと金田の姿が見えたのでただの雑談に切り替える。金田が何か変なものを見たような様子で一之瀬に質問して去っていく。
「平田からお互いにリーダー指名をしないようにできないかとの要請だ。この試験中の不戦条約だな。休戦できる相手だ、と相互理解できるくらいの価値しかないが」
「平田くんからの話はオッケーだけど、どういうことなの?」
「スポットを回れるだけ回っておいた方がいい、という話だ。あからさまにバラすのはよくないがバレても構わないつもりでいい」
Bクラスは環境づくりの作業中で構ってもらえそうにない。邪魔するのも悪いので理由を聞けなくて不満そうな一之瀬の手を離してAクラスのキャンプ地に向かう。
ビニールで目隠し。知ってた。
帰りにトウモロコシも確認するがもう全部回収し終わったようだ。あとは食料探索くらいかな。平田に報告してひとまず休憩するか。
平田に諸々報告っと。
Bとの不戦、テントの下にビニール敷く工夫、打ち水、AとCクラスの様子。
「で、今日得た情報ではこれが一番重要だと思うんだが、Bクラスの方に龍園から追い出されたっていう男がいたんだ。伊吹といい無線機の存在といい、完全にスパイだぞ」
平田は悩む。揉め事を嫌う平田としては追い出すのは気が進まない。もちろんスパイとしてリーダーを当てさせる訳にもいかない。それにリーダーを探るための揺さぶりになにか直接問題を起こすかもしれない。
「平田、昨日も軽く言っただろ。堀北がリーダーだとバレたらリタイアさせようと。その応用だ。あからさまじゃない程度に堀北がリーダーだと分からせて証拠を掴ませるんだ」
「確かにそれなら問題は少ないかもしれない。でも、リタイア者が増えたら士気も下がるしポイントも減ってしまうよ」
「やり方と考え方次第だ。負担をかけることにはなるが、可能な限りスポットを回ってもらってボーナスを増やしてもらい、最終日午前8時の点呼前にリタイアしてもらう。点数が下がることになるのは変わらないが、CクラスとおそらくAクラスも堀北を指名する。だからBクラス以外とは差が詰まることになる」
平田が俺の目をしっかり見つめてくる。伊吹じゃないが目を逸らさず見つめ返す。
「ちょっと検討してみるよ」
「ああ、まだ2日目だからな。方針を固定しないといけない訳じゃない」