原作知識持ちが行かされる実力至上主義の教室   作:arc

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船上試験

 

 豪華客船、心行くまで満喫したかったんだよな。

 

 楽しくなかったとは言わない。あの後、船に戻って平田が堀北にも作戦の実行役として感謝を示していたし、堀北もそれを受けていた。この時点で2人が意志疎通できてるの珍しくね? 高円寺は高円寺やってた。

 改めて俺にも感謝を述べていたぜ。リーダー当てと大まかな作戦案の提案者としてな。クラスでの立場がまた上がったぜ。

 

 ……疑いの目が複数向けられてるのが分からなければ少しは気が楽になるんだが。まあ疑いを持つのがそんなに多くないあたりDクラスだなぁ、という感じだが。

 筆頭平田、次点に堀北と幸村。後は素振りを見せないが松下といい子ちゃんぶってる櫛田と。

 他にも少しはいるかもしれないが、差こそ開いたものの、Bクラスとポイント傾向が同じなことに疑問を持たない奴らだ。

 

 

 鋭い奴らだらけだと困るのは俺だというのにそんなことを思いながら船を回る。いやー贅沢って最高だな。些少ながらポイントをもらってたとはいえ、周りの目ってものがあったからな。ポイントを気にしなくていいパラダイス。

 

 

 ……現実逃避は終わりにしようか。平穏を好み諍いを嫌う平田は、問題を嫌ってかクラス全体には俺への不信感を黙っている感じだ。ろくでもないタイミングで持ち上げやがったしな。

 が、それがいつまでも続く保証はない。クラス内投票でそもそもの問題行動を起こした山内でなく、堀北に切れる平田には過剰に理性を求められない。もうもうこれ以上不信を募らせてはいけない段階に来ているかもしれない。

 

 Dクラスからもある程度人手を借りたい場面があるんだけどな。平田を通さず内密にバレないように? 嘘だと言ってよバーニィ。

 平田を通さないだけならまだいいんだが疑惑を知らん間に振りまかれてると困る羽目になる。当初の目論見と違ってどんどん首が絞まっていくぜ。

 

 求める結果の為に疑われるのを避けられないとしても、可能な限り疑われる要素を出したくない。という訳で一之瀬達になんだこいつと思われるのを承知の上で、俺自身がクラス内の優待者を把握する前に一之瀬達に他クラスの優待者を当てさせたい。

 強引でもなんでも俺がクラスを裏切る行動をしたと思わせたくない。自分で言ってて強引すぎるとしか思わないが。

 

 Bクラスのポイントをいかに稼ぐかを考えるはずなのにどうしてこんな悩みを持たないといけないんだ。300ポイントで我慢してもらってこっちのマイナスを消すしかないか。

 グループ人員さえ分かれば試験のシンキングを免除される代わりに余計なシンキングを強要されている。

 

 

 

 とりあえず船を楽しもう。

 という訳でクラスメイトとたまに雑談したりBクラスと遊んだり一之瀬とデートしたりした。

 はい、お待ちかねの重要メール。アナウンスも流れるよ。手を離してメールを確認する。

 

『間もなく特別試験を開始いたします。各自指定された部屋に、指定された時間に集合して下さい。10分以上の遅刻をした者にはペナルティを科す場合があります。本日20時40分までに──』

 

 携帯から目を離す。なんか竜グループの時間が見えたぞ。勇気を出して確認する。やっぱり同じ時間だ。

 

「2つ目の試験か」

「やっぱりあったね」

 

 一之瀬とメールの内容を確認しあうと同じ時間、違う部屋への呼び出しだった。完全に竜グループじゃん。まじかよ。

 

 一之瀬はクラスで話し合うとのことで解散した。平田か櫛田あたりを探して情報収集するふりでもするか。

 

 

 で、竜グループの説明前に判明した原作との相違グループは

 

 ・兎グループ

 Aクラス・竹本茂 町田浩二 森重卓郎

 

 Bクラス・津辺仁美 浜口哲也 別府良太

 

 Cクラス・伊吹澪 真鍋志保 藪菜々美 山下沙希

 

 Dクラス・軽井沢恵 外村秀雄 幸村輝彦

 

 

 

 ・牛グループ

 Aクラス・沢田恭美 清水直樹 西春香 吉田健太

 

 Bクラス・小橋夢 二宮唯 渡辺紀仁

 

 Cクラス・時任裕也 野村雄二 矢島麻里子

 

 Dクラス・櫛田桔梗 佐倉愛里 松下千秋

 

 

 

 後はどっかで山内が消えてるのと優待者の人数を合わせる為に調整とかあるのかねこれは。

 兎グループは優待者の所属クラスから変わってるが、牛グループは推定時任が間違えた時のままBクラスの小橋夢が優待者だ。時任が間違えるまで引っ張りてえなこれ。

 

 

 平田と連れだって歩く。時間が同じだから一緒に行こうと誘われたのだ。余計な前哨戦を避けるために、10分前行動する気だと言ったがそれで構わないとさ。薄っぺらい会話をしながら部屋に入る。星之宮が現れた! 

 外に出た方がいいか少し考えてしまった。一之瀬とのことを聞かれるのも嫌だし、それを平田に聞かれて印象づけられるのもよろしくない。でも今外に出るのもなぁ。時間が来るまで平田と雑談してるか。

 

 よし、虚無の会話で堀北が入ってきて時間になるまで耐えきったぞ。試験説明はカットカット。おなじみの匂わせワードはこちら、『 大前提としてAクラスからDクラスまでの関係性を一度無視 』『優待者は公平性を期し、厳正に調整』

 

 はい面子みるよー。

 

 ・竜グループ

 Aクラス・葛城康平 西川亮子 的場信二 矢野小春

 

 Bクラス・安藤紗代 一之瀬帆波 神崎隆二 

 

 Cクラス・小田拓海 鈴木英俊 園田正志 龍園翔

 

 Dクラス・綾部清正 平田洋介 堀北鈴音

 

 ……俺さぁ、こんなグループに参加したくねえよ。他はさておき龍園がいるってだけで嫌なのが本音だけど。

 説明が終わると平田が作戦会議をするかと問いかけ、堀北が少しだけ逡巡して、まずは1人で考えると言って部屋を出ていった。平田が携帯を確認すると色々連絡があったようでそのまま解散となった。話しかけられる前に部屋を出るぜ! 

 

 

 

 さて、グループ情報が集まったのでどうするかシンキングタイムだぜ。

 不可能極まりない理想を挙げるならBクラスが600ポイントプラス、Aクラスが300ポイントマイナス、という形になるわけだが。マイナスを他クラスに割り振るにしてもきつい。まあこの線は追っても仕方ないな。

 

 はい次、都合よく原作でCクラスがミスった牛グループ、優待者がBクラスのままです。これが起こるのを待ってからBクラスが一斉送信すると、Bクラスは400ポイントプラスが保証されます。

 ただこれ、無人島でB、D両クラスにコケにされた形の龍園がせっかちになると優待者を奪われるんだよな。手軽に300ポイントプラスできるのをプラマイゼロになるリスクを背負う価値があるかというとちょっとないよなさすがに。

 

 やっぱりDクラスがあとからBクラスの優待者をもらう形でさっさと終わらせるのがベストか。ポイント推移はこの形でいこう。

 

 

 ……いこうと思うんだがそう急ぐと軽井沢と真鍋達のイベントが発生しなくなるんだよな。綾小路程の外道行為はしなくともDクラス女子の誘導役として使いたいし、真鍋達もスパイに使いたいんだが。

 50マイナスを許容して保留にするか? それで様子見するしかないか。

 

 

 一之瀬にBグループの優待者予想を送り、明日の優待者当落メールで予想が合っていればこういう法則だろうと続けて送った。

 後は明日の俺に考えさせることにして部屋に戻ることにする。原作通りの部屋割りだと高円寺がなにかやってるかも……という理由を外に出ている言い訳にできていいな。いやデメリットの方が大きいが。

 

 

 

 翌日、一之瀬に竜グループだけ試験前におわらそーぜってメールを送ったけど無視されたままだぜ。憂鬱な午後1時だ。

 

「よお、一之瀬のオトコ。前の試験じゃお前にしてやられたぜ。だが今度の試験は俺が勝たせてもらう」

 

 遅れてくるなりなに言ってきやがるこいつ。

 

「俺が一体なにをしたって言うんだか、龍園」

「とぼけんなよ、お前とBクラスが揃って同じ事をやってポイントを残したんだ。これを偶然で済ませるほど俺はマヌケじゃねえぜ」

「俺たちの奮闘を綾部のおかげみたいに言われるのは気にくわないな」

 

 神崎がんばれ神崎がんばれ。ヘイトを奪ってくれ。

 

「ああそうだな、Dクラスを上回った分はお前らが頑張ったんだろうな」

 

 神崎じゃ勝てなかったよ。

 

「そんなことより龍園くん、自己紹介してないのは君だけだよ。それともペナルティを紹介してくれるのかな」

「ああ、そんなものもあったな。龍園翔だ。もう一度言っておく、この試験は俺が勝つ」

 

 無理だよ馬鹿。お前はBクラスが倒す。

 

 それにしても余計なこと言いやがって。Aクラスが俺に視線向けてきたじゃねーか。こっち見んな。30ポイントを惜しんでボーナス諸共ポイント消えるリスクを背負った結果だろ。

 

 その後、葛城が会話拒否作戦を始めたり、龍園が俺に絡んだり周りを煽ったりして1時間が終わった。一之瀬達はもちろん、龍園もこの段階では結果1を求めて来なかった。

 ひとまず終了、解散となった。堀北は大分大人しかったな、注目もされてなかったし。ポジション変わろーぜ。

 

 

 

 さて、そろそろいいかと神崎に頼んで兎グループの様子を注意して見てもらってた結果はどうだったかなー、と聞いてみると

 

「は? なにもなかった? 軽井沢とCクラスが?」

 

 マジかよ、と言うしかない。仲良くはないが険悪でもなさそうだと? 7月のポイントも消えたからカフェに行くこともなかったってか? どうすんだよこれマジでさあ。

 

 別に綾小路のような人非人みたいなことはしなくても、非常階段でのことを動画で取っておけばそれでよかったのに。

 俺は要所で軽井沢を使えて真鍋達をスパイにできる、軽井沢は真鍋に絡まれない、真鍋は龍園にバレない程度に情報を流すだけでいい、こんな理想的な三方一両得な関係はないのに。ちくしょう。

 

 

 

 デッキで綺麗な夕暮れを見ながら俺はまさに黄昏ていた。どうしてこうプランが崩壊していくんだ。

 重要イベントが発生条件すら消失していただろうことが判明したので、だらだらとこの試験を続ける意味はもうなかった。

 

 一之瀬と神崎に早めに優待者を当ててほしい旨とその後でDクラスにBクラスの優待者を教えてほしいとメールを送ってある。あまり時間をかけると龍園が法則を見つけ出すだろうと言う意見も添えて。

 

 真鍋達についてはもう本当にどうしようもない。洗脳能力でもあれば話は別だが、そんなものがあればそもそも悩んでいない。

 

 問題は軽井沢の件、だな。

 一、原作のように脅す。言うまでもなくリスクがデカ過ぎるし俺にそんなのできる訳ねーし人非人じゃねーっつったろ。

 二、軽井沢を諦めて代役を立てる。誰だよ。

 三、軽井沢どうこうを完全に諦めて情に訴える系。合意形成に使いたかっただけだから必須ではないんだよな別に。最悪Bクラスの力だけを借りて何とかする必要が出てくるが。

 ……こっちも諦める以外の選択肢がなかった。

 

 

 

「夕焼け、綺麗だね」

「ああ、そうだな」

 

 隣に来た一之瀬にそっけなく返す。夕食取るやら試験を考えるやらで今はここに人目はない。

 

「聞きたいんだけど、どうして私たちがDクラスに優待者を教える形にしたいの?」

「Bクラスとなら協力の余地があると思わせたい、俺が見抜いて重要性を上げすぎたくない。それにBクラス以外を当てられなくなる都合上、もっと早く法則を見抜いていればとか言われかねないしな」

「……そんな人、いるの?」

「減ったけど、まだいるな」

 

 少し刺々しい雰囲気になる。あいつらが勉強しなかったのは本当に俺のせいじゃないんだが? 過去問で中間をしのいでも期末でデッドだったよ。

 

「ついでに言うなら俺をそっちの回し者の可能性を疑ってる奴がいるからな。Bクラスが他クラスの優待者を全部当てた後に法則を発見するのは怪しすぎる。それならそっちから申し出て交友を育む方がいいだろ?」

 

 雰囲気が少し和らいで今度は難しい顔になる。余計なことを考えている気しかしない。食事がまだなら行こうと誘う。

 

 

 美味しゅうございました。贅沢できていいよねこの船。

 一之瀬がまだ何か話したそうにしているので、非常階段に場所を移す。

 

「ねえ、どうして綾部くんはクラスを裏切ってでもAクラスで卒業したいの?」

 

 やっぱりそういう話か。そうする以外に筋道が立たないという手段としての理由ではなく、一之瀬にとって好ましくない手段を取ってでも達成したがる理由。

 そろそろ天井だとは思いたいが、一之瀬がクラスと縁を深めれば深めるほど、俺への嫌悪感は増していった。感謝の念があって多少和らぐことがあっても本質的に減ることはないのだろう。

 なんならBクラスに害意を向けたとはいえ結果を出せなかった龍園より今は嫌われているかもしれない。

 

 

 

「お前には関係ない」

 

 理由など言えるはずがない。ここがライトノベルが原作の世界だなどと。俺は主人公の代わりに配置された誰かに乗り移っているなどと。

 

「お前はBクラスの為に」

 

 下手に退学や卒業した後、家族がどういう構成か分からない。借金漬けかもしれない。卒業時に偽造国籍発覚なんて馬鹿なことすらあるかもしれない。

 

「俺との契約を果たす」

 

 教員や学校に記憶喪失だと告げて自身のパーソナルデータを調べようかとも思った。だが俺をこんな事態に陥らせた『なにか』がその行為をを許してくれるかどうか分からない。存在すら定かでないそれを恐れずにはいられない。

 

「それだけでいい」

 

 Aクラスで卒業して過去からの干渉を絶ちきれる環境への斡旋を。だから、

 

「契約さえ果たされるなら、お前の理解や納得は必要ない」

 

 

 

 そっか、と呟いて一之瀬は携帯を取り出して操作しながら階段を上っていく。

 

「優待者を当てていくようにみんなに送ったよ。Bクラスの優待者情報ももう平田くんに教えていいよ」

 

 足音が聞こえなくなった後、かすかにドアが閉まる音が聞こえた気がした。

 

『竜グループの試験が終了いたしました。結果発表をお待ち下さい』

 

 このメールを皮切りに、断続的にグループ試験終了のメールが届いた。平田にメールを送って部屋に戻る。

 

 

 

 

 

 全てのグループが裏切り者の正解による結果3で終わった。

 

 Aクラス……マイナス150cl 変動なし

 

 Bクラス……プラス300cl  プラス450万pr

 

 Cクラス……マイナス150cl 変動なし

 

 Dクラス……変動なし     プラス150万pr




無人島でブーメラン投げてた気がするな。

はい、お手軽な原作知識ボーナス終了の巻。
勝手にくっついて勝手に険悪になるのなんなのこいつら。
意味が分からなくなってきたので(比較的)ノンストレスなif番外編書きます。


暫定クラスポイント(夏休み明け変動予定)
A876
B1566
C342
D219
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