原作知識持ちが行かされる実力至上主義の教室 作:arc
行動方針は決まったが動くというほど動くこともないんだよなあんまり。ほとんどが授業方針の説明という本日の授業終わり。部活の説明会があるとさ。
数日経っても目当ての相手と接触できなかったらサッカー部の見学にでも行くかもしれんが。まあ今日はいい。1年はもうほとんどいなくなってるな。色々あるんだろうが今日に限っては大半が説明会行きか。
という訳で空いた頃を見計らって行って来ました上級生の教室。やっぱDクラスは席すくねーわ。バレないようにパシャパシャっとね。
今日こなすべきことは終わったので図書館へ向かう。ガラッガラでワロタ。タイミング的に仕方ないんだろうが椎名すら見かけない。クリスティでも借りていこう。
言い訳づくりを兼ねて他クラスの様子を観察しながら、放課後に徘徊する事3日、ようやく機会が訪れた。
「やあ、一之瀬さん。ちょうど良かった」
同じ1年だという以外顔しか知らないだろう男に話しかけられたからか一瞬意外そうな顔をするが、すぐに笑顔を浮かべて話しかけてくる。
「こんばんは。申し訳ないけど私は君の名前知らないんだ、教えてくれる?」
「Dクラスの綾部清正だ。内密に取引したいことがあって機会を窺ってたんだ」
人に見られたくないので名前を告げてすぐに本題に入る。
「取引って? どうして私に?」
「詳細を話すのは後にしたいけどこれからの学生生活について。君か神崎君がBクラスのまとめ役に近そうだったからかな。何度か観察してたからね」
一之瀬の表情がほんのすこし強張る。
最後の大嘘を真に受けたかな? 一之瀬が中心人物なのは一之瀬が居るときにBクラスを見ればすぐに分かる。だが神崎が実力者であることを外から数度見ただけで把握するのは予想外だったのだろう。原作知識前提の嘘だが。見ただけじゃわかんねーよ。いや一之瀬は反応的にこの短期間で理解していたようで怖い。
俺の部屋番号とフリーメールアドレスを記したメモを渡す。
「一之瀬さんか神崎君に出来る限り人目につかないように部屋に来てほしい。もちろん2人一緒でもいいし、そのアドレスで都合のいい場所を指定してくれてもいい。俺の希望条件は人目を避けられること、話を聞かれないことだけだ」
一之瀬に別れを告げてコンビニで買ったデザートを手に寮に戻る。これでしばらく嗜好品はペースを考えないといけないな。
チャイムが鳴らされたのでロックを外しドアを開けるとまさかの来客だった。
「お邪魔しまーす。へー、やっぱり男の子の部屋も同じ間取りなんだね」
一之瀬が来た。それはいい。それだけなのが問題だ。なぜ神崎は来ていない?
一之瀬が部屋に入る。ドアを閉める。ロックはどうするべきだ? 間違いが無いように掛けたいのが本音だが、いかがわしいことをする気だと誤解されないか?
混乱したままドアを離れる。
「それで取引したいことってなんなのかな?」
「神崎はどうした? なぜ一之瀬だけがここにいる?」
一之瀬の方を向かないまま、問いを無視して逆に問いかける。
「ふーん、素の喋り方はそんな風なんだ」
ホームの自室であることに加えて、今の俺の混乱具合では口調を取り繕う余裕がない。
「だから神崎はどうしたんだ。なぜ1人でここに来た?」
「綾部くんが招待したからだよ?」
同じ問いを繰り返す俺の顔を一之瀬が下から覗き込んでくる。接触するほどではないが近い。うわ、とか叫んで離れる。顔が熱い。なんかいい匂いがする。小悪魔みたいな表情をしてやがる。
「女子部屋への立ち入りを禁止される時間を過ぎてるのに一之瀬が1人で来ることは想定していない!」
当たり前の事を叫ぶ。初めて会話した相手の部屋にその日の夜に1人で訪れる女は普通いない。ビッチか切実な理由で身売りをする不幸な女とかだ。ただのパーというのは一之瀬の場合はない。
「そんなことよりお招きの理由を聞きたいな?」
また叫びたくなったが堪えて無理矢理切り替える。どうせ備えをした上で俺の動揺を誘いたかったとかそんなところだろう。体当たりが過ぎるが。
上級生各クラスの教室写真を見せ、各所の監視カメラ、無料商品、トラップ説明、仕上げにDクラスの(表面的)不適在庫の例も出して「推測」を説明する。
本来なら結果が出たらこちらが望んだ報酬を出すことを約束させてから説明したかったんだがやはり冷静になれていない。
「うん、君の考えは根拠も筋道もしっかりしていて本当にそうだと感じさせられるし、仮に間違っていても5月までお行儀よくしてもらうだけだからそんなにデメリットはないよね。でもどうしてBクラスの私達にそれを話すのかな?」
少し険しい表情で当然の疑問が飛んできた。クラス対抗だという推測を他クラスの一之瀬に教えるのは筋が通っていない。
「Dクラスが勝ち上がれると思っていないからだ。情報の見返りを要求する。俺の推測通りなら毎月2万ポイントを振り込んでもらう。ああ、1人2万ずつではなくクラスから2万だ、負担しあうならワンコイン分ですむ。安いもんだろ?」
表情の険しさが増した気がする。いい子ちゃんな一之瀬は、味方のクラスを裏切りながら、Dクラスに本当になんの価値も感じていないような報酬設定に不快感を覚えているのだろうか。
まあ問題ない。来月出る成果に比べればないに等しい支出を渋るようなことはないだろう。そういう相手だからこそ契約書もなにも用意していない。
「ああ、もう一つ要求だ。想像は付いてるだろうが、俺達は次に会う時が初対面だ。機会があるかは知らないが。ここでの事は誰にも知られたくない」
本当にな。綾小路じゃないから大丈夫だとは思うが担任が茶柱だからな。ポイントも本当は余所から取りたくはないんだ。余計な暴露が怖くて。
「私、帰るね」
一之瀬がドアに向かう。部屋を出る瞬間を見られないか確認するために俺も向かう。
「この情報は他のクラスに教えてもいいのかな?」
「もちろん構わない。要求さえ守ってくれるなら好きにしていい。Bクラスの利益を最大限に追求してくれ」
一之瀬が嫌そうな顔をしている。誰もいないことを確認して一之瀬に帰ってもらった。
これで頑張れば文化的な最低限の生活は送れそうかな。
予防じゃなくて反撃カウンターの準備をして飛び込むのはどうかと思う。