原作知識持ちが行かされる実力至上主義の教室 作:arc
上陸した俺達は点呼を取られ、整列させられた。壇上にAクラス担任の真嶋が上る。
「今日、この場所に無事につけたことを、まずは嬉しく思う。しかしその一方で1名ではあるが、病欠で参加できなかった者がいることは残念でならない」
あーそっすか。退学者はノーカンっすか。分かりました分かってましたけど。
真嶋先生が無言の中、作業着の大人がテントを立てたりパソコンを持ち出したりして異様な雰囲気に生徒達が困惑した頃、真嶋から生徒達に衝撃の言葉が発せられる。
「ではこれより───本年度最初の特別試験を行いたいと思う」
説明が始まり、企業でも採用されていると生徒たちの不満を押し潰しながら試験の実行を強いてくる。そして企業なら騙し討ちはしないだろうという指摘に対し、テーマは『自由』だと語る。
クラスごとに試験専用のポイントを300与え、それを自由に使って過ごせるとのお達しだ。
生徒達の空気が上向いたところで、この試験が試験たる説明がなされる。
「この特別試験終了時には、各クラスに残っているポイント、その全てをクラスポイントに加算した上で、夏休み明けに反映する」
生徒を振り回して楽しいのか冷静に対応出来るようになれと言いたいのか。
欠席者が出たAクラスへのペナルティ30ポイントを聞いて他のクラスが驚くだけでなく、Aクラス内にも顔を険しくしている生徒が見受けられた。差が小さいから余裕がなくなっているのか。
担任から補足説明を受けるようにと言われてそれぞれの担任の下に集まる。
夏休み明けから増えるポイントに思いを馳せている。
安全管理の為の腕時計の説明と配布がなされ、そこからさらに試験内容の説明や質問が飛び交う。
ポイントを使わない限り自給自足、ペナルティ行為、ポイントを使いきった後にマイナスされても0のまま、ベースキャンプを設定して午前午後の8時に2回点呼を取ること。そして揉め事のトイレ説明。
篠原を筆頭に簡易トイレを使いたくない女子とポイントを節約したい男子が軽く揉めるが茶柱が追加ルールの説明を始める。スポットと占有権、リーダーのことなど。今日午後の点呼までにリーダーを決めなければ勝手に決めると伝えて茶柱は説明を終える。
平田はすぐにリーダー決めを後回しにしてベースキャンプの場所について意見を尋ねる。しかし須藤もいないのにトイレの話の流れになっていく。
話が進まないので口を出す。
「ベースキャンプを決めてからの話だが仮設トイレは設置するべきだ」
すると女子から微かに好意的な声が上がり、男子から不満の声が上がる。
「なんだ、彼女ができたからって調子に乗りやがって」「ポイントもったいないだろ」「女子の人気取りか」
「女子の人気取りが必要なのは彼女がいなくて欲しがってるやつだろ」
イラついたのでマウントを取る。何人か血を吐いた気がしたが気のせいだろう。
「家でトイレ争いが一度もなかったやつはどのくらいいる? 何人家族だ? 10人程度で2、3日ならまだしも37人で1週間をトイレ1つで回せるわけがない。女子の感情だけの話じゃない」
幸村が出てくる前ににさっさと進めよう。
「ここは日を遮るものもなにもない。ここをキャンプ地にすると人数分のテントが必須でスポットも見当たらない。ポイントを残したいならまずはここを動くべきだ。話し合いが先だとしても場所は変えた方がいい」
同意の声が続き、ひとまず森の中の過ごしやすい場所を探しにいく。少しだけ称賛の声が聞こえて気持ちいい。
日を遮れて周囲に人がいない場所で平田が話の続きをする。探索をしたがる男子もいたが、決めるのが先だとしてトイレの設置反対派を説得する。やっぱり俺がやるより柔らかいな。
幸村とは夜にでも話すか。お勉強キャラじゃない頭脳キャラになってくれたら嬉しいんだが。堀北? 怖いから近寄りたくないな。
トイレの設置が可決され、平田が探索志願者を募ると男子2人しか手を上げなかった。原作でもそうだったが探索しようぜって言ってたんじゃなかったのかお前ら。
俺も志願した後に櫛田も続くと更に男子が続く。それ櫛田からの株上がらないし他の女子から下がってるぞ多分。
平田がグループをつくるためにもう1人を募ってもなかなか希望者が出ずどうなるかと思っていると、俺にも意外な希望者が出た。余りものグループの構成員は俺、高円寺、長谷部だ。
高円寺が先頭を進む。俺も船から見て大まかに把握していたがちゃんと原作と同じ道を通っていそうだ。無言なのも空気が悪いし長谷部に話しかける。
「手を挙げてくれて助かったよ長谷部、でもこういうのに参加するのは意外だったな」
「なんかあのままじゃ誰も出そうになかったからね。ポイントは多い方がいいし。ところで、一之瀬さんと付き合ってどう?」
「長谷部もそういうことに興味あるんだな」
「そりゃー女の子ですから。で、どうなの?」
流そうとしたのに聞き直される。不自然にならない程度にデタラメを吹き込むか。
「まだ一月も経っていないからな。期末も挟んでいたし。でもまあOKしてくれて嬉しかったよ。試験が終わった後の休みにでも遊びに誘おうと思ってる」
「へー、やっぱり意外。綾部くんはそんなに恋愛に興味ないと思ってたんだけどな」
鋭いな。ぼっち傾向仲間だから注目されていたのか。興味がないというよりは余裕がなかったわけだが。
「俺も突然だったからよくわかってないよ。でも恋愛ってそんなものなのかなって」
この上ない本音の後に意味の分からないことを付け足す。と、高円寺劇場が始まった。なるべく原作の綾小路がしていたような回答をする。長谷部は高円寺の相手をする気はないのか黙っている。
そして高円寺がこの場所への感想を聞いてくる。俺は綾小路と違ってできる男なので自前でハンカチを持ってきているのでそこらの枝に結ぶ。にわか知識じゃ違和感とかわかんねーわ。
高円寺が再び森を進み始めるが、長谷部がキツそうだ。俺もキツい。
「少しゆっくり行かないか。疲れてきた」
「私も疲れてきたけどさ、いいの?」
「しょうがないってやつだ。みんなもいきなりリタイアされても困るだろう。こちとら都会っ子だ」本当はどうか知らんけど。
しばらくすると開けた場所に出た。これまでの場所と比べると明らかに人の手が入った道だ。さらに進むと山、そしてそこに開いた洞窟が見えてきた。ちょうど男が2人入っていく。高円寺じゃないがグゥッド、だぜ。
向こうから見えにくい場所に長谷部を誘い、静かにのジェスチャー。そしてキーカードらしきものを持った葛城が先に出て来て1、2分後に戸塚と一緒に原作通りの小芝居を始める。内容は聞こえないが原作一致だろ大方。
2人が消えたあと念のため見られていないか気を付けながら洞窟のスポットを確認しにいく。モニター付き端末に残り時間が表示されている。
「ねえ綾部くん、さっきの人キーカードっぽいの持ってなかった?」
「そうだな。残り時間も合わせて考えると間違いなくあの2人のどちらかだろうな」
「あの持ってた方の人じゃなくて?」
「これみよがしだったからね。わざわざ見えるように持つ必要がないから気にかかるかな。まあ後で平田に報告しておこう」
そして先ほどハンカチを結んだ場所まで戻ってきてトウモロコシを探す。ショートカットショートカット。変な目で見られたくないからシャツは脱がないが。
「本当にあったのね。適当言ってるのかと思ってた」
「まあ変なやつだけど意味ありげだったからな。スポットは取られていたが収穫ありってことでいいだろ」
長谷部と2人、両手にトウモロコシを持って帰還する。平田に高円寺ロスト、スポットとAクラスのリーダー候補、トウモロコシの件を報告する。高円寺の功績が大きい的には言ったが果たしてあいつへの敵意は和らぐだろうか。
休んでいると原作通りの川スポットを見つけてくれたようで、戻ってきていないチームの為に数人残してスポットへ向かう。
見つけた場所をベースキャンプにすることが決まり、リーダー選定の話になると櫛田が原作通り堀北を推挙する。責任感を発揮する場面がなかったので能力の話に置き換わっていたが。
三宅を推薦しようかとか言っていたな。嘘だ。というか期末後に体調を悪くしていて今平気そうにしている。途中でぶっ倒れて回復したんだろう多分。なので体力は大丈夫そう、手柄も立てさせておきたいし。
しかし櫛田のこれ、今回はともかく原作だと体調悪いの気付いた上でやらせたんだろうから本当たち悪いな。
堀北は即答しないが平田の推薦もあり、他に適任が思い当たらなかったからか最後には了承した。
スポットを占有し、仮設トイレを申請すると、水問題が始まる。
川の水を、ポイントを節約したいが積極的には飲みたいわけではない男子VS飲みたくない女子、ファイッ! いや勝負にもなってないです。
仕方ないのでアピールアピール。
「この川は清潔な川の条件が揃っている(根拠なし)。それに学校側が安易に飲んだら体調を崩すような罠みたいなことをしたら問題になる」「多くの国の水道水よりも清潔な川の水の方が安全(水道水を飲めない国は多いが川の水が安全かは知らない)」「念のために俺がそのまま飲む、あと1人誰かに沸騰させた水を飲んでもらう。これで明日判断する。他のみんなには今日は購入した水を使ってもらう」「川の水を使えれば50ポイント近く変わってくる」
と捲し立てた。一之瀬の彼氏という立場もあるのか決断は明日だからか一定の説得力を認められたが、まだ揉め事はあり、やはりテントは2つとも女子のものになった。理不尽に思えるが経緯を考えれば当然だろう。
節約したくて「テントに使うポイントがもったいない」「じゃあテント使うな」当たり前体操。レディファースト的発想とか女子優遇とか以前の問題だった。
巻き添えにされるのは嫌だが実感させるために傍観した。ビニールアイデアは伝えていない。ささやかな嫌がらせだ。自爆でもあるが。
テント設営をする平田を手伝い、休憩した後で焚火用の枝を拾いに行くことを告げる。自分で接触したくないから誰か伊吹拾ってくれないかな。わざわざスパイ引き入れた間抜けみたいに思われたくないし。最終的には作戦だったと言えるが。
伊吹がいそうな場所を避けながら枝を集め、焚火を着ける。しばらくすると探索に出ていたグループが戻ってきた。集団の気配を感じて出待ち場所を変えたのか伊吹がいた。拾ったグループに櫛田や平田がいたから話がスムーズだろう。俺もそちらに向かい、果実についてレクチャーする。さすがに付け焼き刃じゃ分からないのがちょっと混じってたぜ。
雰囲気が上向いてきたところで平田がポイント使用についての話をする。幸村が反発するがおおよそ原作の流れで通す。水問題も俺が話した内容を踏まえて明日から努力する方針になった。沸騰水を試すのは三宅、君に決めた!
伊吹の件も高円寺のリタイアもまあ流れの通りだ。トウモロコシだけじゃ1、2食分程だからマイナスがでかいしな。焼け石に水か。
後は隙を見て個人面談だ。珍しいソロ平田と遭遇したので、伊吹がスパイの場合、堀北をリタイアさせる策だけ伝えておく。Cクラスの様子を見ないうちの決めつけは不自然だからさらっとね。
という訳で本日の最終タスクに設定した幸村ティーチングです。
「幸村、お前そんなんじゃ絶対Aクラスには行けないぞ。そもそも要不要、敵味方の区別もつかないお前がAクラスに相応しいと思ってるのか?」
話し声がクラスに聞こえない距離まで連れてこられてのこの台詞、そりゃ怒っちゃうね。
「馬鹿にしてるのか! 一体俺のどこがAクラスに相応しくないと言うんだ!」
「とりあえず1つ挙げるならAクラスに上がるための行動をしていないところかな」
「こんな馬鹿だらけのクラスで一体どうしろと言うんだ!!」
こわー、というか声でけえ。叫んだのが分かるのはともかく内容向こうに聞こえてないよな? 注意して距離取ったつもりだけど。
「それで止まって何もしないのが問題なんだよ。堀北も一度は退学組に勉強を教えようとした。まあ結局見切りをつけてお前と同じようになにもしなくなったが」
うん、堀北も一度だけあの馬鹿どもに勉強教えようとしたんだ。断られて終わったけどな。櫛田となにがしかの伝達事項やらで平田が話しかけなければ完全なるぼっち完成だぜ。
「クラスポイントを上げたいなら最低限退学者が出ないように尽力する必要があるし、成績が影響するならクラス全体の底上げをしなきゃいけない。2000万ポイントでのクラス移動を狙うならどうやって稼ぐか算段をつけなければいけない。できるかどうかはさておき、生徒会に入って自分のための抜け穴をつくろうとするでもいい」
俺みたいに苦労しろよ。
「この試験に関してもそうだ。勝手にポイントを使わないように牽制するためならともかく、必要物資に対して本気で反対してどうするんだ? 女子が嫌になってリタイアでもし出したらポイントは残せないぞ。ポイントを残すことだけを考えてどう残すかを考えられていない。今後の試験でもクラス内で対立があったらどうなるかは火を見るより明らかだろ?」
そろそろ寝るか。
「どうするかは幸村の自由だ。Aクラスに上がろうとするか、何も考えずにお勉強だけしてDクラスを受け入れるか。よく考えた方がいい」
言い捨ててテントに向かう。しかしスタンスがブレブレだ。元々の予定を一之瀬に壊された上に突貫で修正したような浅い考えは疲労で簡単に崩れるな。やっぱビニール敷けばよかった。
真嶋の開幕挨拶は、退学者いたら実際触れたんだろうか。とりあえず生徒でないものは触れない方向にしたけど。
星之宮は生徒呼び出しをしなかった茶柱をそこまで注視してないので真面目にやってます。