「暇、圧倒的に暇」
吐き捨てるように部屋の中で呟いた言葉は誰にも届かない。
それもそのはず。この部屋には自分以外誰もいないのだから当たり前だ。
いっそ誰か来てほしい。化け物狩りでもしにいく方が早いかな?
そう思いながら、気紛れに世界を渡る。辿り着くはリバイスの世界。しかもなんか戦闘してるし…と呆れを感じながら、暇つぶしに手を貸すことにした。
鞘から引き抜く一振りの幻妖刀。愛用する“紫零月”を軽く振り、地面を蹴った。
「一気に…斬り裂く!」
グラデーションの刀身が踊る。剣先に力が宿り、横薙ぎに振るえば斬撃が飛ぶ。躱される…なら弾幕を振るうだけ。無詠唱のスペルカード。舞い踊った無の弾幕が敵を穿ち破壊する。
それだけで十分だった。色彩を持たぬ世界の主を、舐めるな…なんて、今言ってももう遅いか。
「…なんで、咲羅がいるんだ?」
変身を解き、元の姿に戻った大二が問いかける。
「圧倒的に暇だったから適当に気紛れで世界渡ったらこうなった?」
「そこはてなつけないで?」
彼の兄である一輝も話に混ざってきて、3人での雑談になる。
「てか何してたんだよ…あの程度で苦戦するって」
「「咲羅が強いだけだからね分かって?」」
「酷くない?」
いや、確かに常人じゃないというかそもそも人じゃないけども。流石に酷いと思う。
ダークブルーの髪を振って元の色彩(ペールブルー)に戻し、不満そうに二人を見れば、少し揶揄うように笑われて。
[そこまでにしてやれ]
不意に何処からか声が聞こえた。その声の主を、僕達は全員が知っていて。
「…カゲロウ、か?」
[そうだ…というか分かるなら聞かなくていいと思うんだが?]
「正論すぎて反論できなくなったんですけど助けて」
[いや、遊ぶなよ]
冷静な声が鋭い突っ込みを入れてくる。それが楽しくてつい遊んでしまった。
「咲羅って、ほんとカゲロウに懐いてるよな」
不意に大二がそんなことを言って。
「んぇ?」
なんかちょっと間抜けな声が出てしまった。
「俺より懐かれてるんじゃないか?お前は」
[…るっせぇ]
何となく、出てきてないから分からないが…少し顔を赤らめてそっぽ向いているような気がした。
「…照れてます?」
[いいから黙れっての!]
…なんか怒られた気がした。解せぬ。そして酷い。
[…あー…大二、変わっても良いか?]
「え、あぁ、良いけど」
[ありがとな]
一瞬強い風が吹き抜け、目を瞑ってやり過ごす。目を開けようとした時
[そのまま、目を閉じてろ。いいから]
そう言われて、素直に従っていると…ポスッと頭に手が乗せられた。そっと目を開ければ視線を逸らしながら撫でてくれるカゲロウの姿。よく見ると少し顔が赤い気がする。多分恥ずかしいんだと思う。
「…カゲロウ?」
[ばっ…目閉じてろって言った…!]
かぁ、と一気に顔を赤らめたカゲロウを、今度はお返しがてら僕が撫でる。
[っ…おい、待て、やめっ…恥ずかしいんだが…?]
「…知らん。それとも…」
撫でる手を止め、耳元で
「_二人だけの時にやった方が良かった?」
なんて囁いてみれば、本気で顔を真っ赤にして狼狽える姿が少し可愛くて。
「二人とも何してるんだよ…」
と一輝に呆れられて
[…お前後で覚悟しておけ?]
とカゲロウには脅され…?
なんとなく平和な一日は、後半にさしかかっていた