俺はヒーローに憧れない(re   作:アートレータ

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夏期講習では、ありません。覇気講習です)笑

今話でようやくゼニスの能力が明らかになります。
更に今話と次話は独自解釈を多分に含みます。


7.覇気講習

 

「覇気?ですか?」

 

「そう覇気だ。」

 

 それはもちろん知っている。自分も使えるし、新世界では覇気が使えないものから淘汰されて行く。

 生きていくためには必要不可欠な力だ。

 今更学ぶものでもないはずだが…。

 

「その前に。お前ら長時間悪かったな。取り敢えず次の島に到着するまで自由だ。以上、解散!」

 

 ずっとゼニスの後ろで控えていた面々だが、ゼニスの言葉を皮切りに各々の行動に移っていく。

 ここに残ったのはゼニス、アイン。そして、日和とビンズだった。

 

「日和、ゆっくりしてたいんだぞ?」

 

「大丈夫よ。疲れているのはあなたも一緒でしょ?それに、貴方のそばにいる方が落ち着くもの。」

 

 そう言って、ゼニスに体を寄せる日和。そんな日和の頭を愛おしそうに軽く撫でる。

 そして、もう一人の残った者にも声をかける。

 

「ビンズ、あんたもゆっくりしてていいんだぜ?」

 

「…え?あ、あぁ。拙者も勉強させてほしいでござる。知識や力は持っていて余分になる事はないでござるから。」

 

「フッ、いい心がけだな。」

 

 声をかけられたビンズは、唐突にそして一瞬にして桃色空間を作ってしまった二人に呆気に取られる。

 が、ゼニスの呼びかけに反応して残る旨を伝える。

 ちなみに二人の空気に当てられて、顔を赤く染めた青髪の女性がいたとかいないとか。

 

 そうしてゼニスによる覇気の講座が始まった。

 『覇気』とは全ての人間に潜在する意志の力のことであり、「気配」「気合」「威圧」「殺気」「闘争心」などと同じ概念で、目に見えない感覚を操るものである。

 

 「気合」と「闘争心」を司る力は『武装色の覇気』と呼ばれている。

 体外に見えない鎧として纏う事で、攻撃力や防御力の底上げにつながる。

 また、ロギアの能力者への攻撃手段としても有効打となる。

 

 「気配」と「殺気」を司る力は『見聞色の覇気』と呼ばれている。

 相手の気配や感情を読み取る事で、攻撃を先読みして躱すことが可能となる。

 

 「威圧」を司る力は「覇王色の覇気」と呼ばれている。

 数百万人に一人が持つとされる特別な覇気で、力量差がある相手を威圧だけで戦闘不能にすることが出来る。

 

 と言うのが世間的な認知のされ方だが、俺から言わせれば全然ダメだ。

 

 

 これには、相槌を打ちながら聞いていた二人は「え?」と困惑を示す。

 そんな二人の反応を満足げに眺めながらゼニスは続きを話し始める。

 

 

 まず見聞色だが、これは極めると未来を見ることが出来る。違う。本来の力が未来を見ることなんだよ。

 未来とは、現在の延長線上に存在している。つまり繋がってるんだよ。

 

 例えばなぜ今風は吹いていると思う?

 風とは目に見えないが形を持った空気だ。

 空気は温度が上がると膨らみ、反対に温度が下がると縮むという性質をもっている。

 膨らむと重くなり落ちるし、縮むと軽くなり浮かんでいく。

 それを俺たちは風と認識しているだけだ。

 

 または雨。雲が風に流され一箇所にたまると雨が降り、雨が降ると海が荒れる。

 海賊でも海軍でも知っていることだ。

 なら航海士は見聞色の覇気が使えなければならないのか?答えは否だ。

 航海士は、雲や空気の流れから天候を予測している。

 

 戦闘でも同じことだ。

 見聞色の覇気は気配を読み取る。

 動く際の筋肉の動き、動いた後の音の流れ、風の変化。それらから敵の動きは詠むことができる。

 その延長線上には未来史と呼ばれるものがあるだけだ。

 

 つまり、見聞色の覇気は気配を読み取るのではなく、神経を収束させて変化を感じ取るものということだ。

 小さな変化から、その先の変化を予測する。

 それが未来史の正体であり、本当の力というわけだ。

 

 気配を読み取るだけというのは、完全には使いこなせていないということの証明であり、見聞色の副作用みたいなもんだ。

 遠くの声が聞こえる、それは音の振動を感じ取っているから。見えないはずの姿が感じ取れる、それは風の流れが見えているから。

 戦闘の基本のハズだろ?相手の観察なんて。だが、意外と出来ていない。出来て、それを極めたものが見聞色の覇気を使えてると言える。

 

 必要なのは集中力。

 相手の一挙一動に集中しろ。

 小さな音を聞き流すな。

 空気の流れを感じろ。

 小さな変化にもしっかり反応しろ。

 それが見聞色の覇気を身に付ける近道になるはずだ。

 

「取り敢えず説明したから実践してみようか。日和頼む。」

 

「私でいいの?」

 

「聞いてるだけじゃ暇だろ?」

 

「フフッ、そうね。」

 

 そう言ってゼニスと日和は立ち上がる。

 ある程度の距離をとってお互いに向かい合う。

 ゼニスは刀を抜き、向かい合う日和は腰を下ろして構える。

 

「改めていうが俺はトキトキの実の時人間だ。簡単に言うと未来に干渉する力を持つ。普通のやつだと、反応さえできないだろうが…。見てから反応するんじゃ俺の攻撃には対処できない。」

 

「俺はこれから覇気は使わず、能力を使って日和に攻撃する。見てから反応したら俺の攻撃には対処出来ない。そこで日和は覇気を使って先読みしてそれを防ぐ。一瞬だからよく見とけよ。」

 

 ゼニスは構えていた剣を振りかぶる。

 ビンズは瞬きを一つ挟んだ。次の瞬間に写ったゼニスの姿は刀を振り下ろしている姿であった。

 それはまるで、振りかぶっていた刀を振り下ろしたかのような…。

 

 その姿を視認したのとほぼ同時に、日和の方から破裂音が聞こえてくる。

 破裂音は三つでまるで何かが衝突したような音であった。

 何起こったのか分からず、隣で見ていたであろうアインに視線を向ける。

 

「さて、何が起こったか分かったか?」

 

「……はい。気付いたらゼニス船長は刀を振り下ろしていたんですけど、その時日和さんを見ていたら急に目の前に斬撃が出現して。日和さんはそれが分かっていたように、すでに迎撃の構えに入っていて斬撃を3つとも相殺しました。」

 

 それを聞いたゼニスと日和はほぉと感嘆の声を上げる。まさか本当に一度で、そこまで見えるとは思っていなかったからだ。

 これは素質があるかもしれないと、ゼニスは微かな期待を抱いた。

 

「その通りだ。俺は日和に斬撃を三つ未来に飛ばして、日和はそれを予測して迎撃してみせた。言葉にすればそれだけだ。」

 

「貴方のことなら覇気を使わなくても分かるけどね。」

 

 と、再び桃色の空間が生成されそうになったので咳払いを入れてアインは先を促した。

 

「まぁ見聞色の覇気はこんな感じだ。」

 

 と適当に締めるのだった。

 だが、実際かなりタメになる話である。

 自分の考えが根底から覆されるが、納得できる部分もある。

 実際に目の前で見せられては納得するしかないと言うのもあるが…。

 

 

「さて、次は武装色の覇気だ。」

 

 こっちは見聞色の覇気よりも単純だ。

 鎧を纏うって言うのもあながち間違いではない。

 しかし、使い方によって体の表面だけでなく体内外にまで影響を反映することができる。熟練度が高いものは体外に纏っているものもいる。

 

 武装色の覇気っていうのは簡単に言えば気。誰もが持っている潜在能力だ。

 それをコントロールできるかどうかが覇気使いか否かを分ける。

 

 覇気使いでも殆どのものは体内に纏うまでで止まってしまう。

 何故かと言うと、必要ないと考えるからだ。

 

 厚さ3ミリのガラスコップがあるとしよう。水を飲む場合、このコップは必要か?

 

 突然の問いかけ。戸惑いながらも当たり前だと思い、肯定で返す。

 

 そうだよな。でないと、器がなくて水がこぼれてしまうからだ。

 これが体内に纏う覇気だ。

 

 てば、厚さ3ミリのコップと厚さ3センチのコップがある。どっちを使う?

 

「厚さ……3ミリの方を使うと思います。」

 

 何故?

 

「水を飲む際にその厚さは邪魔になるから?」

 

 まぁそうだよな。たが、コップに入るのが熱湯だったらどうだ?

 3ミリのコップで熱いのを我慢するか?3センチのコップで飲みづらくても熱くない方を選ぶか?

 そう言うことだ。

 

 普段使いにはそんな物は無用な長物でも、先を見据えると考えは変わってくるハズだ。

 だが、殆どのものはそこに辿り着かない。だって今の状態でも十分使えているのだから。

 それじゃあ甘いんだよ。

 

 さらに、気と言うものは形を持たない。

 総量が多いほど体外に纏って相手を攻撃した際に、相手の体内にも絶大な影響を及ぼすことができる。

 気を増やすには、どれだけスムーズに体内を循環させられるかで変わってくるんだ。

 

「こんなとこかな?取り敢えず一般的な二つの覇気は以上だ。」

 





ゼニスの能力は『トキトキの実』でした。
能力の詳細やどのような過程でゼニスに渡ったのか。それらは追々明らかになっていきます!

この章はもう一話続きます。その後から次章に入り、投稿頻度が変更となります。
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