俺はヒーローに憧れない(re   作:アートレータ

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今話を書くのは楽しかったですが、その分時間がかかりました。
ある一箇所の部分です。)笑


11.修羅の道

 

「そいつの名は、百獣のカイドウ。新世界に君臨する4人の皇帝の1人だ。」

 

「百獣のカイドウ…。」

 

「世界最強の生物。なんて呼ばれてる正真正銘の怪物だ。」

 

 その場を重く暗い空気が支配する。

 それだけ、その名前には重みがあった。

 しかしそこは、大人のネオが起点を効かせた。

 

「そんな奴がいる島なんだよ、ここは。ゼニスも今日もう一日泊まらせてやるから、しっかり疲れを取ってとっととこの島を出るんだな。」

 

 重々しい空気を振り払うように、軽い調子で一言告げる。

 そう言い残して、去っていくネオの背中に声をかける。

 

「どこに行くんですか?」

 

 立ち止まったネオはゼニスへと振り返る。

 いい笑顔を浮かべながら一言。

 

「仕事!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日ゼニスは、ネオと一緒に一日を過ごした。

 薪割りを手伝ったり、無人島でのことを話したり、海賊時代のことをは話してもらったり。

 薪割りを手伝うといった時は、「休めといってるだろ。」と呆れられる一幕があったりもした。

 それでも7年ぶりに一日中一緒にいる相手がいるのは嬉しく、何より楽しくて。

 あっという間に夜も更けていた。

 

「なぁゼニス。明日この島を立つお前に選別をくれてやる。」

 

「……ねぇ、ネオ。もっと一緒にいたいよ。」

 

「……その気持ちは嬉しいが、朝も言った通りお前を思ってのことなんだ。分かってくれ。」

 

 それはネオも感じていた者。

 長らく居なかった、気のおけない相手。

 今日一日を共に過ごしたゼニスは、朝まであった口調の硬さも取れるほどネオに懐いていた。

 

 それでもネオの言う通り、自分を想っての発言であることは頭では理解している。

 でも、感情はそうはいかなかった。

 いくら大人びていてもゼニスはまだ、10歳の子供なのだ。

 

「俺がカイドウを倒したら、一緒にいられる?」

 

 感情が荒ぶる小さな体で、精一杯考えた結果の発言だった。

 

 ネオもゼニスが波ではない戦闘力を持っていることは、今日一日過ごして分かった。

 ズレない重心の位置、身体の使い方それらは海賊だった頃の経験で身についた観察眼で持って分かったこと。

 何より薪割りの際、足りない筋力を補うために使われた覇気。

 強すぎず、弱すぎず。

 ネオの振るう斧の強さを完璧に再現して見せたセンス。そして、覇気の熟練度。

 どれをとっても海賊時代ですら滅多に見なかった、圧倒的な才能。

 

 しかし、今回は相手が悪すぎる。

 如何に怪物の()()()ゼニスでも、相手は正真正銘怪物である。

 この広い海の支配する最強の一角、それがカイドウだ。

 賢いゼニスはもちろん分かっている。

 それが無理だということなど。

 

「お前ならわかってるだろう。」

 

 だからネオも強くは言わない。

 呆れを含んだ笑みを浮かべながら、子供に言い聞かせるようにやさしく返す。

 その問いに俯きながらもゼニスは確かに頷いて見せた。

 そんなゼニスの頭をネオは優しくあやすように撫でる。

 頭に置かれた手のひらから感じるぬくもりに心地よさを感じながら、ゼニスは身を任せた。

 

 少しの静寂を挟んで、再度ネオは話を戻した。

 

「それで、選別だが俺の能力でお前を占ってやる。」

 

「え?」

 

「本当はカイドウに禁止されてるんだが、今回は特別だ。」

「それじゃあ、名前と生年月日と血液型を教えてくれ。」

 

 

 それらに答えた後ネオの正面に座る。

 すると二人を包むような光に包まれ、光が収まると二人の間には一枚の紙が浮いていた。

 ゼニスは恐る恐る手に取って確認すると()()()()記されていた。

 

 

『今宵竜が占い師を訪ねる

 闇に沈みゆく占い師の傍で

 あなたは愛情と無情の選択を迫られる

 選択を誤ったあなたは修羅へと向かう』

 

 

 詩となって現れた自分の未来。

 読み取ることができずに、首を掲げるゼニス。

 そんな彼を見てネオはクツクツと笑いながら、ゼニスの手から紙を奪い取る。

 幾つもの詩を読んできたネオからしたら、解読するなど朝飯前だった。

 

「どれどれ?」

 

 しかし、ネオの口から内容が告げられることはなかった。

 詩を見た瞬間から真っ青に染まった顔のネオから出た声。

 それは…

 

「今すぐ島を出て行け‼︎じゃないとここにカイドウが‼︎」

 

「俺を呼んだか?」

 

 ネオの口からついて出た悲鳴も、最後まで語られることはなかった。

 突如横から聞こえてきた声に唾を飲む。

 まるで体重が3倍4倍になってしまったのかと錯覚するほどの重圧。

 

 ゼニスは思わず出かかった悲鳴を無理やり唾と一緒に飲み込み、声のした方向に顔を向ける。

 そこにいたのは、筋骨隆々の巨体とナマズ髭。

 大きな角に左肩から腕にかけての竜の鱗のような刺青が特徴の怪物。

 四皇の一角百獣のカイドウ、その人であった。

 

 その姿に圧倒されるゼニスを庇うように、ネオが一歩前に出る。

 

「なんで来た?約束の日はまだ先の筈だろ?」

 

「ウォロロロ。特に意味はねぇが強いて言うなら俺の勘だ。」

「俺の勘も捨てたもんじゃねぇな。」

 

 そう言って、左手に握られていた瓢箪を一気に掲げる。

 ゴクゴクと音を立てながら豪快に飲んだあと、また特徴的な笑い声を上機嫌響かせる。

 カイドウとは対照的に、ネオはそれ以上にないほど顔を歪ませていた。

 

 そんなネオの後ろに隠されていたゼニスに、遂にカイドウの視線が停まる。

 

「ウォロロロ!おまけに面白そうなガキがいるじゃねぇか!」

 

「俺はどうなっても構わない!だが、どうか!この子だけは見逃してくれ‼︎」

 

 カイドウの発言にいち早く反応したのは、声をかけられたゼニスでは無くネオだった。

 これまで表面上強気を保っていた態度から一転。

 頭を地面に押し付けながら、ネオはカイドウに対して土下座した。

 が、カイドウは非情であった

 

「テメェはどっちみち約束を破った罰で死ぬんだよ。そんな話を聞いてやる義理はねぇ。」

 

 頭を下げ続けるネオの横を素通りして、ゼニスに近付いて行く。

 ネオは無駄な足掻きだと分かっていながら、近づけまいとカイドウの足にしがみつく。

 そんなネオをカイドウは鬱陶しい虫を払うかのように、片腕で薙ぎ払う。

 今は覇気も使えない一般市民も同然のネオにはそれすらも致命傷になり得てしまった。

 

 薙ぎ払われて吹き飛ばされたネオは、弾むように地面を転がりながら薪割りに使っていた切り株に衝突する。

 ネオは薄れゆく意識の中思うのは、海賊時代の仲間のこと。

 そして昨日会ったばかりの1人の子供、ゼニスのことだった。

 

『すまなかった、お前ら。今から俺もそっちに行くから。また一緒に冒険してぇなぁ。』

『ゼニス。お前には未来があるんだ。あまり生き急ぐんじゃねぇぞ。』

 

 狭まる視界で、つい先程占ったゼニスの未来が記された紙を捉える。

 ゼニスには伝えなかったが一説しか記載されていないということは、長くて1週間しか生きれないと言うことだ。

 そして記載されていた内容は。

 

今宵竜が占い師を訪ねる(今夜カイドウがネオの元を訪れる)

闇に沈みゆく占い師の傍で(死へと近づいていくネオの側では)

|あなたは愛情と無情の選択を迫られる《ゼニスは死の承知でカイドウに挑むかネオのことは忘れてカイドウに着くかの選択を強いられる》

|選択を誤ったあなたは修羅へと向かう《あなたにとってはどちらを選んでも間違いで果てしのない闘いになるだろう》

 

『だがこの能力の利点は未来は行動次第で改変が可能だと言うことだ。』

『きっと、きっとお前なら。』

 

 万感の思いを込めて、ゼニスの安心させるようにネオは笑顔を浮かべる。

 それは血慣れた顔で痛みで若干の歪みが入った不細工なものあった。

 しかしその顔に確かな温もりを感じるそんな笑顔を浮かべながら、ネオの眼から光が消えたのだった。

 

 ネオの最期を確認したカイドウは鼻をひとつ鳴らし、再びゼニスへと視線を向ける。

 視線の先にいるゼニスはカイドウを見てはいなかった。

 ゼニスの視線には既に事切れた、ネオの姿が映し出されている。

 ゼニスの目には、ネオの姿がレイドの姿に重なって見えていた。

 

「おい小僧。お前には資質がある。俺の部下になれ。ウォロロロ!」

 

 ゼニスの様子などお構いなしに、カイドウが声をかける。

 その声にハッとした様子でカイドウへと視線を移す。

 しかしゼニスの目は朧げで、焦点があっていなかった。

 

 何度も言うが、カイドウは間違いなく最強の一角だ。

 ここで断れば躊躇なく殺されてしまうのは目に見えている。

 だが相手はネオを殺した相手だ。

 

 生きたい。

 

 死にたくない。

 

生きたい。でも。死にたくない。でも。生きたい。でも。死にたくない。でも。でもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでも!

 

 

 混乱する頭の中を振り払うように、頭の上で握りしめていた拳を振り下ろした。

 はっとした時にはもう遅かった。

 振り下ろされた拳は、正面に立っていたカイドウの胸を叩く。

 酔っていたカイドウは突然の拳に少したたらを踏む。

 

 そしてカイドウにとってそれは、反逆の証であった。

 「そうか。」と一言呟いて瓢箪を一口流し込む。

 

「有望そうなガキだと思って誘ったが……残念だ。」

 

 対して気にしてなさそうな表情、声色で語られたそれに対してゼニスは顔を強張らせる。

 それはゼニスにとって事実上の死刑宣告だった。

 カイドウはそれをこともなさげに冷酷に告げる。

 

 すくむ足で後退りながらふと思う。

 ネオはゼニスを守ろうと体を張って散って行った。

 だと言うのに自分はそんなネオの想いを無碍にして、ただただ殺されてしまってもいいのか。否だ。

 自分は何のために7年間も無人島で鍛え続けた。生きるためだ。

 

 ならば覚悟を決めろ。

 ただ殺される自分を許すな。

 せめてネオの覚悟を引き継いで、前に進め!

 

 ゼニスの目に先程まであった動揺は消え失せる。

 だがその事に酔っているカイドウは気がつかない。

 

 腰に刺していたレイドから引き継いだ剣に手を掛ける。

 剣にも武装色を纏い、腰を下ろす。

 居合の態勢に入り、一瞬の間にカイドウの懐に入り込む。

 力は入れない。余計な力は逆に動作の妨げになる。力を入れるのは斬る瞬間。

 軽く握っている刀を鞘から抜き、そのままカイドウの胸を斬り上げた。

 果たしてそれは、カイドウに届いた。

 

 カイドウは油断していた。

 いくら資質があるとはいえ、まだまだ子供。自分に刃を届かせる事は無いだろうと。

 だからこそゼニスの攻撃動作を止めようともしなかった。

 その結果がこれだった。

 

 

 ゼニスの踏み込みは完璧だった。

 

 ゼニスの覇気は並大抵のものではなかった。

 

 ゼニスの剣の達人も脱帽する程のものだった。

 

 しかし、届いたのは刃先だけと言う絶望的なものだった。

 





前話で気づいていた方も多いかと思いますが、ゼニスが辿り着いた島とはワノ国。そこを支配する海賊とは勿論、カイドウでした。

ネオの能力である、詩歌の部分は考えるのが楽しかったです。詩なんてわからない作者はとても苦労もしましたが…。

あの巨体のカイドウが酔って力加減などできるわけがある、覇気もつかえず戦闘向きでは無い能力を持ったものが一撃を喰らったら木っ端微塵になると思うんですよ。
それでも、そうならなかったのはネオに海賊として鍛え上げた身体があったからです。

ゼニスくんは覇気を使えますが、流桜は使えず未来予知も出来ません。
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