過去編の最後です。一気に現代へと戻ります。
続きの創作もあり、少し時間をいただくかもしれませんがご了承下さい。
「ゼニス、お願いがあるの。」
3人だけとなった空間で最初に口火を買ったのは、この状況を作り出した本人でもあるトキだった。
その目に浮かぶ覚悟を感じたり、ゼニスは少し気圧されながら喉を鳴らした。
「貴方には日和と一緒に10年後の未来に跳んで欲しいの。」
モモの助と赤鞘九人集が跳んだのは20年後の未来。
しかし、ゼニスと日和が跳ぶのは10年後だという。
「貴方はきっと強くなる。おでんさんよりもカイドウよりも。そして、ロジャーよりも。」
「でもそれには時間が必要。だから来る20年後の夜明けには強くなった貴方が必要なの。」
だから、10年後の未来で和の国から逃げ出して強くなってほしいのだと。トキはゼニスにそう言った。
しかしゼニスは頷かない。
今のゼニスには5年前と違って自信がない。
平穏な生活で鈍った体。貧弱な肉体。衰えた覇気。そして同じ相手への敗北。
トキのことは信じている。ゼニスにとってトキは最早2人目の母親なのだ。
でも、それが自分のこととなると信じ切れなくなる。
それにゼニスは気付いていた。
その中にトキが含まれていない事に。
頷いて仕舞えば、また、大切なものを失ってしまう。
「大丈夫よ。貴方を信じる私を信じて。貴方は強い。それに、私も近くで見守っているから。」
その言葉にピクリとゼニスの肩が揺れる。
「貴方に、私の能力である『トキトキの実』を引き継ぐ。」
悪魔の実は同時には出現しない。
再びその実が出現するのは前の能力者が死亡してからになる。
またその実の出現はランダムであり、同じ実を入手する事は困難である、はずなのだ。
そして明かされたのは『トキトキの実』の最終奥義。
能力者の命と引き換えに発動する技。
その名も『
誰かの延命を望めば、その誰かは長生きし。
誰かの死を望めば、その誰かには死が訪れ。
誰かの富豪を願えば、その誰かは億万長者になる。
勿論不可能なこともある。
死人を蘇らせることなど出来はしないし、能力者本人の未来を望むこともできない。
更に誰かの長寿と富豪、二つを同時に望むことも出来はしない。
出来るのはあくまで、僅かでも可能性がある未来を手元に手繰り寄せることのみ。
それでも『ゼニスがトキトキの実を手にする未来』を創り出す程度、この能力をもってすれば造作もないことだ。
だから…
「だからお願い。私の意志を引き継いでくれる?」
ずるい言い方だとゼニスは思う。
そんな事を言われては、嫌だと言えないではないか。
ゼニスは溢れ出た涙で頬を濡らしながら、無言で頷いた。
それはゼニスがおでん城に来た時以来の涙だった。
それを見たトキもまた嬉しそうに頷き返した。
そして次に視線の向かう先は、自分のお腹に顔を埋めながら涙を流す日和だ。
「日和、私の可愛い子。貴方の成長を見守れない私を許して頂戴。でも、大丈夫。なんたって私とおでんさんの子だもの。」
「それにゼニスが守ってくれる。」
優しく日和の頭を撫でながら嬉しそうに、慈しむように笑顔を浮かべながらゼニスに視線を受ける。
トキの視線の先では、ゼニスがしっかり頷いて応えた。
「ゼニスにはトキトキの実を、日和にはおでんさんからこれを託されたの。」
そう言って、先ほどまで座っていた座布団の下から一本の刀を取り出した。
それは、おでんが使っていた日本の刀のうちの一本。『閻魔』だった。
「受け取って頂戴。恐ろしい力だけど、日和なら大丈夫。誰かを守るために使ってあげて。」
しかし日和はトキのお腹に顔を埋めたまま、嫌だと首を振る。
そんな日和を困ったように、でも嬉しそうで哀しそうで。そんな顔を浮かべながらトキは無理やり顔を上げさせた。
「大丈夫!」
笑顔で日和の目を見ながら力強く。一言だけ告げた。
そしてゼニスを手招きで呼び寄せて、ゼニスと日和を抱きしめた。
強く、強く。温もりを確かめるように。
「……ごめんね。ごめんね。守ってあげられなくて……ごめんね。」
遂にトキの目からは涙が、口からは弱音が溢れた。
笑顔で見送ろうと思っていた。
おでんのように希望を未来に託したいと思っていた。
本音を言えばゼニスと日和には戦いとは無縁の、温かい生活を続けてもらいたかった。
なのに自分は、彼等に闘う事を強いてしまった。
自分が弱かったから。守れなかったから。
「違うよ、トキさんとおでんさんは強かった。だから俺たちは、モモの助たちは生きられたんだよ。」
トキの能力が発動して、光り輝く中でゼニスは日和とトキを力強く抱きしめながらトキの言葉を否定した。
「だから、ありがとう
その言葉を最後に、ゼニスと日和は未来へと跳んでいった。
残されたのは笑顔で涙を流すトキと、未来を照らす光だった。
その光が消えるまで、空を見上げていたトキは最期の能力を行使した。
『
再び眩い光がその場を照らした。
しかしその光は高く、大きく輝き和の国全土が光り輝いた。
近くの国の住人は、光の源であるおでん城へ視線を向けた。
そんな中燃え盛り、崩れゆくおでん城からトキが姿を現した。
民衆の視線が集まるのを感じながら、残り少ない命を精一杯使った。
少しでも和の国に希望を残すために。
「月は夜明けを知らぬ君
叶わばその一念は
二十年を編む闇夜に九つの影を隠し
一つの月が其れを照らす
月は一切を照らし
まばゆき夜明けは暁を知る」
言い終わったトキは床が崩れるのに、、身を任せ落下していく。
「
そこから、ワノ国には長い長い雷雲立ち込める夜が訪れた。
いつの日か、雲を割って晴れた空に差し込む月光を待ち侘びながら。
「そんで、跳んできた俺たちは戦って強くなって来た。」
目を覚ました二人の前には、『閻魔』。そして『トキトキの実』が転がっていた。
ゼニスはそれがトキの言っていた悪魔の実であると確信して、「ありがとう」と一言溢し、悪魔の実を呑み込んだ。
その後すぐに日和の手を取り、歩き出した。
島から出るために、そして強くなるために。
島からの脱出を果たした2人は特訓を開始した。
ゼニスは自分を見つめ直し、日和はゼニスから学んだ。
勿論海を横断しているわけで、海賊との戦闘も繰り返した。
「途中でミホークと斬り合ったり、エネルと殴り合ったり、天竜人を殴り飛ばしたり、死にかけの子供を拾ったり。なんやかんや合って今に至るわけだ。」
「いえ、なんやかんやですませて良いものなんでしょうか?」
反射的にツッコミを入れてしまったアインだが、自分の言動を反省していた。
あまりにも辛すぎる過去に、追求した自分への罪悪感が湧いてしまう。
家族を失って、命の恩人を失って、温もりを失って、新たな家族を失って。
残ったのは、大切な人が1人と
あまりにも辛すぎる。
それでも彼は、地より下のドン底から這い上がって来たのだ。
褒められはされど、責められて良いはずがない。
「すみ…ません。」
「気にすんなよ。
そう言って優しく撫でられた頭にゼニスの温もりを感じながら、アインは思う。
この温もりを守るために強くなろうと。
いつの間にか集まっていた仲間たちに頭を撫でられている場面を見られた事で、余すところなく真っ赤になっているアインを尻目にゼニスは彼らに向き直る。
「さて、これから黒ひげの首を取りに行く訳だが、アイツが帰ってこないと……と、ちょうど来たみたいだな。」
そう言って空を見上げた先から、ナニかがとてつもないスピードで突っ込んでくる。
それは人型であり、スピードを落とす事なくゼニス目掛けて飛んで来ていた。
「ゼニス〜〜〜〜!!!」
スピードを落とさずに飛んでくるそれに顔を青く染めながら、呼びかけるも抵抗虚しくゼニスに直撃して共に吹っ飛んだ。
ゼニスの名前を呼びながら不時着を決めた影に、周りのみんなは溜息をついて迎えた。
まるで、いつものお決まりネタでも見ているようなそんな雰囲気に包まれていた。
ゼニスが『トキトキの実』持っている理由でした。
『オペオペの実』にもありましたよね、不老手術。それの『トキトキの実』バージョンです。可能性のある未来を強制的に手繰り寄せる能力。
カイドウを殺さなかったのは、おでんの為であり可能性を創り出せる人物を未来へと送ってしまった為です。
さて最後に出て来た、芸に……人物とは一体⁉︎