俺はヒーローに憧れない(re   作:アートレータ

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 前回の投稿から約3ヶ月ぶりになります。
 が、想像以上に別れる形となったアンケートもあり、なかなか進みません。

 そこで今回はお忘れの方もいるかと思い、ウェルテクス海賊団の一員であるウタを登場させる幕話となります。


主人公

 

「ゼニスって、主人公よね。」

 

「……何の話だ?」

 

「ルフィも大概だと思うけど、ゼニスはそれよりもだと思うの。」

 

 穏やかな波に揺られるがままに船を進めるウェルテクス海賊団。そんな彼らの船の上で、ウタがゼニスにそんなことを言った。首を傾げるだけのゼニスだったが、面白そうな話題に聞き耳を立てていた他の面々がぞろぞろと集まってくる。

 そしてそれに頷く彼らを見て、ゼニスは眉を寄せた。

 

「確かにな。お前はホントに主人公してる。」

 

 話を聞いていたサボがそんな相槌をしながら割って入った。

 しかし未だに自分ではわからないゼニスは、自分の話なのに入れないことに若干の不貞腐れを見せていた。

 仲間たちと話が盛り上がっていたウタは、そんなゼニスに気が付いて説明をする。

 

「だってさ、つらい過去を乗り越えて世界最強に成り上がった、とか。一度滅んだ世界を救うためにもう一度やり直した、とか。英雄色を好む、とか。」

 

 つらつらと出てくる話にやはり周りのみんなは頷いている。しかしどうも納得しかねるゼニスである。

 

 自分が最強だと思ったことなど一度もない。上には上がいると思い続けて、常に鍛錬を怠ることはなく過ごしている。

 世界を救いたいと思ったこともない。自分はヒーローではないのだ。守りたいのは家族であり、そのために起こした行動が偶々そうなったに過ぎない。

 英雄色を好むとは果たして。

 

 そう返すゼニスの言葉に彼らは笑う。

 そういう自覚のないところもまた、彼の主人公らしさの一因であることを彼以外は知っているから。

 

 しかし彼が主人公であろうとも、なかろうとも彼らは気にすることはない。なぜなら彼らが慕っているのは『主人公のゼニス』ではなく『ゼニス』であるから。

 彼らは言わないが何よりも主人公体質だと感じる原因、それは。

 

「トラブルにも愛されてるしね~。」

 

「「「あっ」」」

 

「バッ、おまっ!それはフラグだろうがッ‼」

 

 空気を読まないアルクは、問答無用でフラグを建てていく。

 そして主人公のフラグとは本人が望む望まないに関わらず、回収される。

 

 

 

 

 

 

「いたぞ!ウェルテクス海賊団だ‼お前らかかれ‼」

 

 世間的にはぽっと出の海賊であり、四皇としては新参者。そのうえ船員には美人が多く、世界的な歌手であるウタまでいる。

 よだれが出るほどおいしい獲物である……そう勘違いする馬鹿な海賊がこの海では少なくない。

 

「ほらね。」

 

 ため息を付く日和に、その隣で眺めるゼニスはツッコむ。

 

「いや、今のは俺のせいじゃないだろ。」

 

「どうだか。」

 

 納得いかない表情を浮かべるゼニスと、やれやれとジェスチャーする日和の夫婦漫才に周りは苦笑いを浮かべる。

 敵船を前にしても相変わらず、この船の緩い空気はなくならない。それは油断や慢心ではない。

 正確に敵の実力を把握したその上で取れる傲慢な行為である。それだけの実力と経験を彼らは持ち合わせている。

 

「さっさと片付けましょ!」

 

「そうね。」

 

 男性陣よりも早く立ち上がる男らしい女性陣。それに追随する形で男性陣もようやく腰を上げる。

 踏み出した彼らの一歩後ろで、ウタがマイクを握っていた。

 

「それじゃあ、いくよッ!」

 

『大丈夫さ~前に進もう~♪太陽をいつも胸に~♪

 嵐が来たら肩組んで~その先のを見よう~♪

 夢のかけら集めたら~明日に向かう地図になる~♪

 だから同じ旗のもと~願いを捕まえようよ~♪

 僕らはひとつONE PIECE~♪』

 

 ウタの歌に合わせてウェルテクス海賊団のみんなの体が発光する。

 それを確認した彼らは、人間離れした跳躍で未だ距離のある敵戦に飛び乗っていく。

 そして各々が戦いやすい戦闘方法で戦闘を開始する。拳で殴り、足で蹴り、剣でたたき切る。

 

 もともと常軌を逸した強さを持つ彼らだが、基本的には技で戦うのが彼らだ。しかし今彼らは、力で敵を制圧している。

 筋力は明らかに敵よりも低いであろうアインや日和でさえ、肉弾戦で圧倒していた。

 

 それこそがウタの覚醒した能力。

 ウタワールドほど万能ではない。ウタワールドのように万物の創造もできない。

 本来の使用は体力の消耗が激しく、眠ってしまうと解除されるというデメリットが存在した。

 しかし覚醒したことによって、ウタワールドの能力の一部を現実で行使出来て、体力の消耗は普段の歌を歌う程度まで激減した。

 もちろん使おうと思えば、ウタワールドも生成できる。状況によって使い分けることが出来るのだ。

 

 ウタワールドほどの万能性はなくても、その能力の応用力は多岐にわたる。

 今は仲間たちの身体能力を向上させるバフを掛けただけだが、飛行を可能とする翼を授けたり、即席の武器を創ることもできる。

 しかし翼にキズが付いたり、武器が破損したりすると形が崩れるというデメリットが存在している。

 何よりウタの創ったものはウタの能力であるが故に、使用者の覇気を纏わせることが出来ない。それでも十分に強力なのだが…。

 

 そんなわけで強化された身体能力で無双した仲間たちが、相手の船をあっという間に鎮圧して戻ってきた。

 

「お疲れ!」

 

「ああ、ウタもサンキューな。」

 

 彼らのもとに駆け寄ってきたウタが労いの声を掛けると、そんなウタの頭をなでながらゼニスもそれに返す。

 頭を撫でられたウタは、後頭部で結ばれたウサギの耳のような髪が、ぴょんと立ち上がる。

 そんな二人のやり取りを恨めし気に眺める目がいくつかあったのはご愛敬。

 

 

 

 

 

 臨時の収入が入ったウェルテクス海賊団は、近くの島に立ち寄りショッピングを楽しんでいた。

 普段海賊船にある資産の管理を行っているのは、日和とステラである。どこの世界でも女性が財布のひもを結ぶのは、暗黙の了解であるのかもしれない。

 しかし今回はその資産とは別に、敵船から()()()()()資金であるため、その紐を結ぶ必要はない。

 

 最近は戦い詰めの日々だったこともあり、羽を伸ばすいい機会だと思っている。

 

 ウェルテクス海賊団の貯蓄資産や臨時の収入とは別に、莫大な自己資産を持つテゾーロ。

 ゼニスの招集が掛かるまでグランテゾーロの事業で稼いでいた彼は、臨時の収入を受け取ることなく、一足先にステラと二人で街の中へ消えていった。

 

 元々そういうことに興味のないミホークとエネルは、船の番として名乗り出た。

 そしてこういう機会に毎回手持ち無沙汰になる人物であるサボは、数秒の逡巡の後一人で寂し気に街へ繰り出した。

 

 サボは普通にモテる。ルックスは良く、強く優しく、面倒見もいい好青年。

 一人で街を歩いていれば声を掛けられることも少なくない。

 しかしウェルテクス海賊団は文字通りゼニスの海賊船であるし、サボもそれを妬ましく思うことはない。寂しく思うことはあるのだが。

 そんなわけで、この状況にはもはや慣れているサボは受け取った資金を片手に、軽い足取りで店を回っている。

 

 残ったのはゼニスと日和。そしてアルクェイド、アイン、ウタである。

 ゼニスの今の状態は両手に花ならぬ、前後左右に花を抱えている状態だ。周りの視線を集めるのも必然のことである。

 しかしこの状況には慣れている彼らが、いちいちそれらの視線に意を移すことはない。

 彼らはただこの束の間の休息とデートの時間を楽しんでた。

 

「こんなにのんびりするのは久しぶりね~。」

 

「そうね、最近は戦ってばっかりだったもんね。」

 

 周りのいろいろなお店を見渡しながら、そんなことを口にする日和とアルクの言葉に「うぐッ」と声を漏らすのは、アインとウタである。

 NEO海軍の一件から始まって、ウィーブル戦に黒ひげ海賊団との戦争。エレジアの抗争を挟んで、鬼ヶ島での戦争。

 そんじょそこらの海賊であれば、一生に一回出くわすかどうかという大事を立て続けに立ち合い、そしてそれらすべてを乗り越えてきたのだ。

 これを異常といわずになんというのか。

 

 そしてNEO海軍の件とエレジアの件は二人が関わって起きた事件だけに、その言葉がやりのように突き刺さる。

 そんな二人を苦笑いを浮かべながら三人は見ていた。

 

「まぁでも、そのおかげで二人に会えたんだし。」

 

「そうだね、私たちも家族が増えてうれしいしね。」

 

「日和~!アルク~!」

 

 二人を慰め、擁護する言葉によよよと泣きながら抱き着く、傍から見れば微笑ましい光景。

 しかし慰めたのは日和とアルクだが、落としたのもまた日和とアルクなのだ。意識的か無意識か、一度落として上げるという高等技術を見せる二人にゼニスは一人戦慄していた。

 そんなこんなありながら、楽しい一日が終わる……とは問屋が卸さない。

 

「海賊だ~‼」

 

「早く逃げろ~‼」

 

 ゼニスたちが船を止めている岸とは真逆に位置する海岸。一隻の海賊が錨を下ろした。

 銃声と耳障りな声、そして町人の悲鳴を聞いたゼニスの額に青筋が浮かぶ。

 

「…せっかく人が休日を満喫してるってのにッ!なんて無粋な奴らだッ‼」

 

「まぁ主人公(ゼニス)だからね。」

 

主人公(ゼニス)だからかな?」

 

主人公(船長)ですからね。」

 

主人公(ゼニス)だしね~。」

 

 日和・アルク・アイン・ウタの声が重なった。しかし町人の悲鳴にかき消され、それがゼニスに聞こえなかったのは幸か不幸か。

 さらに主人公(ゼニス)の不幸は続く。

 

「なんじゃッ!せっかくの休暇を邪魔しおって!」

 

 どこかで聞いたことのある声にゼニスは振り返った。そして二人の眼があった。

 

「「あ~~!」」

 

 さらに二人の声が重なった。

 ゼニスの視線の先に立つのは一人の老兵。しかしその肉体と覇気は、一目見ただけで強者のそれだとわかるほど鍛え上げられている。

 その人物は今や生きる伝説とも呼ばれる海軍の英雄ーーモンキー・D・ガープその人であった。

 





 普通の恋愛すら書けるほど豊富な経験を持ち合わせていない俺に、ハーレムを書くなんて無理だったんだ!
 結局バトルシーンに逃げちまったよ、ちくしょう!



 はい、と言うわけで次回……VSガープ⁉︎デュエルスタンバイッ!
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