最初は4000字前後で書いていくはずが、話数を重ねるごとに文字も増えていく不思議…。
今話は過去最長の6500字越えとなっております。
……クリスマス?なにそれおいしいの?
午前は後輩とスラムダンクの映画を見て、午後はアニメを見ながら筆を走らせておりました、ハイ。
サボは狙撃手であるヴァン・オーガーを相手取っている……はずなのだが、彼はまるで姿の見えないアサシンを相手にしているような錯覚を覚えていた。
『ワプワプの実』によって、1発ごとに瞬間移動を行なって四方八方から放たれる弾丸はそのすべてが見事にサボの急所を狙っている。
さらに狙撃手として高い能力は、その狙撃の腕にとどまらず気配を消すことにも長けていた。
赤髪のシャンクスや船長であるゼニスは覇王色で完全に無効化できるが、オーガーは当然その境地にはいない。
しかしそれを補うために能力を駆使して、今なお戦闘を続ける兵士たちの人混みの中から弾丸が放たれていた。他の兵士の気配に紛れて攻撃をしてくるため、オーガー本人の気配が読み切れず、サボは防戦一方の展開を強いられていた。
人混みの中から放たれているにもかかわらず、サボはその弾丸が到達するまでの間にサボ以外には弾丸が当たっていないようで、その威力が減少することがない。そのため常に意識を張り巡らせていなければならなかった。
サボもその両の手に持つ銃で反撃に出るべきなのだが、ヴァン・オーガーほどの狙撃が可能では無いため人混みの中にあるヴァン・オーガー目掛けて放った場合味方を傷つけてしまうかもしれない。その気負いが攻撃を躊躇させた。
味方のみならず敵さえも有効活用するヴァン・オーガーに対して、味方の存在が返って行動の制限となってしまっているサボ。
戦場の状況。その活用方法。戦闘方法と能力の噛み合い。
この場は既にオーガーのものとなって来た。
それでも銃撃を見聞色で確認して、『キョリキョリの実』で銃弾と自分の実距離を伸ばす事で誤魔化していた。
実距離はほんの数センチ。されど銃弾の移動距離は超距離となった事でその銃弾はまるでスロー再生のような動きになり、それを見たサボは弾道を確認、最小限の動きでそれを見切り味方のいない方向へ弾き続けていた。
『キョリキョリの実』はまだ覚醒に至っていないため、日和の『ベクベクの実』とは違い、全方位の展開が不可能であり、任意で展開しなくてはならなかった。
絶え間なく襲い来る弾丸に常に精神をすり減らしながらも、その集中力は途切れる事なく反撃の機会を窺い続けていた。
ウェルテクス海賊団の中でサボはまだまだ未熟な部分が目立つ。戦闘経験が足りなかったり、船ではそもそも人生経験が浅かったりもする。
逆に言えばサボは未だ未完の大器であり、未熟な分だけ成長の余地を残していることに他ならない。その可能性をゼニスも感じ取っていた。
そういえば、と以前ゼニスに言われたことを思い出していた。あれは確か、ゼニスと模擬戦をした後のことだった。
「惜しかったな。」
「……どの辺がだよ。」
「あの辺だ。」
「……具体的には?」
「やっぱりその辺だった。」
模擬戦という名のゼニスの鬱憤ばらしに付き合わされたサボは顔中をボコボコに腫らしながら、甲板の椅子に座って反省会を行なっていた。
かなり溜まっていたらしいゼニスは日和が止めに入るまで、能力を使いながらかかってくるサボを覇気だけであしらいながら、物理的にも心情的にも叩きのめした。
それによってゼニスの鬱憤は晴れたらしく、機嫌良さげにサボに話を振った。が、それを即座に否定したサボ。さらに問い詰めるサボの言葉に重なる形でボケを重ねた。
思い出したい事柄とは違うことが出てきたサボは戦闘中なのを忘れて思わず被りを振る。その一瞬は戦闘にとって大きな隙となり、ギリギリで防いだものの危うくその脳を貫かれるところだった。
確かこの後だ。
「俺は子供の頃、どんなにでっかい大人にだって立ち向かって行けた。なのに、大人になった今はお前に立ち向かっていくのが怖いんだ。まるで巨人の前に立っているように思えて、脚が竦んじまう。」
「サボ、それは違う。……俺は阪神が好きだ。」
「話を聞けよ!お前みたいな化け物は見たことないって言ってんの‼︎」
ルフィと言う守る対象がいたとは言え、刃物も持った大人にさえ掛かって行った子供の時と比べ、武器すら抜くことなく、本気すら出さないのを分かった上でも途轍もなく大きく見えてしまう。
それは紛れもない恐怖をサボが抱いているからに他ならない。
その胸中を吐露するサボにゼニスは、ボケか本気か的外れな回答を返した。堪らずいつもの調子でツッコミを入れたものの、顔を腫らした状態であることを思い出し鈍い痛みが走り顔を顰めた。
「聞いてねぇよ!」
反射というべきか。戦闘よりもその身に染み付いたツッコミが炸裂した瞬間、今度こそヴァン・オーガーの弾丸がサボの左腕を貫いた。
一撃が大地を大きく粉砕する拳が降り中アインは、それらを身軽に躱し続けていた。
ただでさえその体格故、圧倒的な膂力の差があるのに加え、ジーザス・バージェスは『リキリキの実』によってさらにその膂力を強化していた。
そのパワーは以前対峙したウィーブルなど、とうに超えるものであると躱しながらアインは感じていた。ウィーブルの時は受け流せた打撃も、ジーザス・バージェスの打撃から見たら赤子のそれにも等しく感じてしまう。
例えガードしようとも受けたら最後、ガードなど関係ないとばかりに島の外まで吹き飛ばされてしまうのではないだろうか。
戦闘センスや覇気の技術・総量はウィーブルに軍配が上がりそうだが、バージェスはそんなことは関係ないとばかりに、強化された膂力そのままに拳を繰り出し続けている。
「攻めこそ最大の防御」とはよく言ったもので、一撃一撃が大振りであるものの、その膂力から放たれる拳はむしろ大振りだからこそその真価を発揮していた。
他の者であれば隙なく小刻みに相手の隙を待ちながら織りを見て大振りをするところを、全部が全部大振りのバージェスは当然隙だらけといってもよかった。
しかしその一撃が必殺たり得るその拳は、万が一を考えてしまい隙だらけの懐に飛び込むことを躊躇わせる。
小刻みな耐えられるかもしれない拳を受けてでも一撃を決める、という選択肢が強制的に排除された。無駄が逆に無駄をなくしているという、厄介極まりない存在に仕立て上げていた
さらにその攻撃力に比例するように、武装色への高い適性が感じられた。武装色が厚いということは必然、高い防御力を有していることにもつながっている。
アインの戦闘スタイルは軽やかな身のこなしと『モドモドの実』を主軸とした立ち回りで、手数の多さで勝負をするスタイルであるため、必然一撃の攻撃力は落ちてしまい、このような相手との相性は最悪といっても差し支えなかった。
アインの攻撃力が求められる状況ではあるが、大幅アップが見込める覇王色の覇気は結局、ウィーブルとの戦闘以降発動することは叶わずじまいである。
しかし、ここで出せるかどうかもわからない覇王色に頼るほどアインは落ちぶれていない。
ありったけの武装色を両手に持つ短刀に纏って、少しずつ掴めてきた無茶苦茶の中にも確かに存在しているその人物特有のリズムに合わせて、バージェスの懐に飛び込んでその短刀を振るう。
しかし強靭な鍛えられた肉体と武装色の覇気によって裂傷はつけるも、到底致命傷には至らない。
ヒット&アウェイで攻撃を続けるアインに少しずつ傷を増やしていくバージェス。
しかし彼の攻撃が勢いを弱めることはなく、むしろその激しさを増しているようにすら感じる。
攻撃の苛烈さに後退を強いられながら、バージェスの攻撃によって地面はすでにデコボコで、不十分な足場に攻撃に転じることが次第に困難になっていく。
ウィーブルの時のように地面に能力を発動して足止めを狙うも、その怪力によって足止めにもならないまま足を抜かれてしまい、隙を作り出すこともできない。
こちらはガードの上から攻撃を受けることさえできず、逆に相手はガードもしないまま攻撃を受けても関係なしに攻撃を続けてくる。
その焦りが少しずつ少しずつ単調な動きに変わって、ついに決定的なミスにつながってしまう。
ジーザス・バージェスの拳の引きに合わせて踏み込み、斬りかかる。
刺突の要領で人間の弱点、心臓目掛けて突き出された短刀はジーザス・バージェスの肉体にあたると同時にその刀身が砕け散った。
業物でもないただの短刀は、アインとジーザス・バージェスの覇気に耐え切れなかったのだ。驚愕に一瞬固まるもすぐに離脱を試みるアイン。しかし短刀が崩れたことによって、想定よりも若干深く重心が偏っていたことによって、回避は間に合わない。
溜めのスペースがないながらも最大まで体をひねることによってパワーを生み出したジーザス・バージェスの必殺の拳が、アインに襲い掛かる。
アインは咄嗟にモドモドのオーラを飛ばすも焦りからか、あらぬ方向に飛んでいく。
笑みを深めたジーザス・バージェスの拳はアインを捉える……ことはなかった。
アインは追い詰められて下がっていたのではない。さらに言うと短刀がこのタイミングで砕けたのも偶然ではない。すべては計算の上で、なるべくしてなったことである。
サボが右腕に風穴をあけられたのは、決して…決して油断していたからではない。……ないったらない。
攻勢に出なかったのも、味方に被害が及ばないようにするため、だけではなかった。
この戦いは幹部同士の一対一での戦いでは決してない。これはウェルテクス海賊団と黒ひげ海賊団の戦いである。
ウェルテクス海賊団にとって一番厄介な存在は『ワプワプの実』であり、その能力者であるオーガーであった。詳細が分からないゆえに、どれだけの距離を移動できるのか?何人まで同時にワープできるのか?発動と距離の関係は?その一切が分からず、逃走の手段としても厄介極まりないものだった。
彼は狙撃手であり、ウェルテクス海賊団の狙撃手たるサボが相対するのは必然であるが、相性もあり確実に仕留められるか微妙なところである。というのが事前の想定だった。
確実に仕留めるためには、相性と油断・隙。一撃で仕留めるための手段。それらが揃って初めて可能になる結果であった。
それだけ『ワプワプの実』は凶悪な能力であるのだ。その能力者であるヴァン・オーガーは狙撃手であり必然、警戒心も高い。
確実に仕留めるためには何重にも罠を仕掛ける必要があった。その罠にかけるためにさらに何重にも布石を打った。そして遂に、その罠に足を踏み入れた。
「サボ、お前は優しすぎる。」
「急になんだよ?」
「力は相手を殺すために振るう必要はないんだ。お前はまだ、それを分かってない。」
言われたときは理解できなかった。しかし理解できたとき、サボは壁を一つ越えた。
それまでは、相手との距離を能力でつめてその刃を相手に届かせることだけを考えていたが、それが間違いだと知った。『キョリキョリの実』は自分だけではなく、他人にも作用する能力であると知った。
サボの頭を貫くために放たれた弾丸はしかし、サボの頭の横を掠めるように通過していった。サボは躱していない。オーガーが外したのだ。
『錯乱距離』
自分の距離を操作するのではなく、相手の認識距離を操作する技である。オーガーがサボの頭を貫くべく放たれた弾丸は実際には若干ずれていた。ただ躱すためのものではない。その弾丸が貫いたのは、アインが飛ばしたモドモドのオーラ。
そしてアインを捉えたはずの拳が空を切ったのも同じくサボによって、認識距離を誤った結果である。アインは拳を躱して後退しながら、サボの能力範囲までバージェスを誘導していたのだ。
アインはこの数日地獄のような修行を重ね、心身ともに成長した。その結果、能力覚醒にたどり着いた。以前ゼニスに能力の本質を仄めかされた一件以来、ゼニスの修行以外の時間でも能力の鍛錬に時間を費やしてきた。
能力者になってからの年数は比較的長いため、そこに辿り着くのも早かった。
『モドモドの実』は『事象の回帰』が今までの使い方だった。触れた人間の年齢が戻ることによって見た目は子供になり、固まった溶岩に使えば固まる前のマグマに戻る。形が変わることはあれど本質が変わることは決してあり得ない。
しかし覚醒させた能力の行き着いた先は、『現象の回帰』である。
「事象」とは、主に視覚で経験できる出来事のこと。
「現象」とは、人間の全ての感覚で経験する物事のこと。
ヴァン・オーガーの弾丸がアインのオーラに触れた瞬間、その弾丸はまるで逆再生されているかのような動きで撃った本人であるオーガー目掛けて動き出す。
否、実際に逆再生しているのだ。弾丸が打ち出される前、銃の中に戻るために。
ワープで逃げるも、オーガーが撃ちだしたのはその手にある銃である事実がある限りは永遠にオーガー目掛けて弾丸は移動し続ける。
そして遂にヴァン・オーガーの握る銃に弾丸が吸い込まれた。筒の中で畜装された銃弾とぶつかり合い、銃ははじけ飛ぶ。銃のない狙撃手など何の恐怖もないとばかりにアインは、オーガー目掛けて飛び出した。
その手にはオーラが生成されており、オーガーに向かって投げつける。
も、ワープして回避した。……はずが、オーラがオーガーがいた空間に辿り着くと、ワープしたはずのオーガーが姿を現した。
空間そのものが現象回帰を起こした結果、オーガーがワープする以前の空間へと戻ってしまったのだ。状況が呑み込めない彼の目の前には、短刀を振り上げたアインの姿があり、その短刀はヴァン・オーガーの左胸に吸い込まれた。
アインがオーガーに向かったのと同時に、サボはバージェスに飛び掛かった。
そんなサボに拳を振り下ろすが。サボによって生み出された無限に近い距離によって届くことはない。覇気や能力によって無理矢理その距離を飛び越える怪物が幾人かウェルテクス海賊団に存在するが、バージェスはそのどちらも持ち合わせていない。
両手に握っていた銃のうち右手の銃を腰のホルスターにしまい込み、代わりに短刀を握りしめる。
銃を始めに撃ちだした。それを覇気を纏った拳で振り払うも、それによって開いた脇腹目掛けて、短刀を振り下ろす。その距離は短刀では到底届かない距離であるため能力で補正する。
アインよりも覇気の練度が高いサボの覇気は、しっかりとジーザス・バージェスの肉体を抉り裂く。痛みをこらえて踏み込み殴り掛かるも又しても、その拳は届くことはない。
バク転の要領で一時距離を取ったサボは空中で逆さまの状態から、弾丸を放つ。
先ほどと同じように覇気を纏った拳で振り払おうとするもその拳は空を切り、一瞬の間をおいて振り払った拳を避けるように、その肩を貫いた。
サボと相対した相手はいくつもの選択肢を迫られる。
銃弾は能力が作用しているのか、いないのか。作用している場合は距離が遠いのか、近いのか。短刀でもまた、同じく選択肢が発生していく。
自分の攻撃は悉く受け流され、相手の攻撃は幾重ものパターンを想定して対処していかなければならない。この上なくフラストレーションが溜まっていき、攻撃は単調なものを誘発されていく。
それらが積み重なっていくことで、この上ない悪循環が出来上がっていく。
この循環を抜け出すためには、見聞色を活用して地道に攻略していくか。相打ち覚悟でサボの攻撃に合わせるか。はたまた一部の強者のみ許された選択肢として、圧倒的な覇気で能力そのものを相殺するか。
バージェスはそれらの選択肢を選ばず、我慢の限界が訪れた。
俊敏な動きでサボに接近した彼は、両手を組み、振り上げた拳を力一杯地面に叩きつけた。そこにはとても人が作り上げたとは想像もできないような大きなクレーター…いや、穴が出来上がっていた。そこにサボの姿は見当たらない。
それを確認したバージェスは今迄の鬱憤を晴らしたかのように、特徴的な笑い声を響かせた。
「ウィーハッハ!」
「何がそんなに面白い?」
笑うジーザス・バージェスの上から声が聞こえてきた。そちらを見上げると、無傷のサボの姿があった。地面をたたきつける前兆を感じ取ったサボは即座に後ろへ身を引き空中へ回避した。バージェスが殴りつけたのは、認識誤認で見たサボで、本体はその後方にいた。
空中に回避したのと同時に地面との距離を操作したことによって、石礫が届くこともない。
上空から降りたサボはバージェスの顔面を掴み取り、その巨体をごと上空へ飛び上がった。ある程度の高度に到達した段階で落下を始めた。
その速度はやけにゆっくりだった。それはサボの能力によって、実際の落下距離よりもはるかに長い距離を落下しているからである。
必死にサボから逃れようと藻搔くが、その拳がサボまで届くことはない。数秒後ようやく地表の高さまで来た段階で、サボはバージェスの体を蹴っていち早く離脱する。
バージェスはそのまま、自らが作った穴の中へと姿を消していき、さらに数秒後とてつもない轟音が穴の中から鳴り響いた。
戦闘シーンにパロディネタを入れないとも、載せるネタにギャグがないとも言ってない!
「惜しかった…」
「巨人のよう…」
【銀魂松陽先生・銀時より】
このネタすごい好きです!www
カイドウとビッグマムを倒すのは果たして⁉
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最強集団ーーウェルテクス海賊団