俺はヒーローに憧れない(re   作:アートレータ

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 大変お待たせしました。
 ついに始まります、ティーチ戦。


22.VSマーシャル・D・ティーチ

 

 アルクェイドの月を墜落させた音は島の反対側の出来事であるにもかかわらず、二人の耳まで響いていた。ティーチはそれをサンファンウルフが倒れた音だと()()して、ゼニスはアルクェイドの仕業だと()()している。

 違いは単純。仲間をどう思っているか、それだけだった。

 

 仲間を自分が成り上がるための手段・道具としてみているティーチと、仲間を唯一無二の存在・家族としてみているゼニス。

 その違いが仲間への理解という形で表れているのだった。

 

 次々と敗れていく黒ひげ海賊団の幹部達の覇気を感じ取りながら、それでも提督ティーチは笑っていた。例え自分一人になったとしても此処を切り抜ける力があると自負しているからだった。

 

「ゼハハハッ!情けねぇ野郎どもだ‼︎」

 

 それに彼らの船長である目の前の青年ーーゼニスを倒せば形勢は一気に傾くと考えていた。

 確かにその膨大な覇気には驚かされたが、自分には最強の『ヤミヤミの実』と『グラグラの実』があるのだ。正面からぶつかって負ける道理などあるはずが無かった。

 

「どうだ⁉︎お前ら纏めて俺の船に乗れ‼︎」

 

「乗るわけねぇだろ、バカが!」

 

 突然の勧誘に当然乗る訳もなく、即座に斬り捨てる。

 なおも機嫌よさそうに笑い声を上げるティーチとそれを無表情で眺めるゼニス。そしてそれは突然だった。

 

 何の前触れもなく同時に動き出した2人はその拳と刀がぶつかった。ハチノス全土に響き渡るその轟音と元となった拳と刀は触れていなかった。

 高い練度に鍛え上げられた武装色と纏われた覇王色に覆われた両者の攻撃は触れる事なく、その絶大な威力を発揮していた。そこに両者とも能力は乗せていない、純粋な覇気によるものですらこの威力となっていた。

 

 その均衡は崩れる事なく、勢いそのままに一度距離を取った2人は間を置かず再び同時に前に出た。今度はティーチの拳には地震のエネルギーが込められていた。

 それに応じるようにゼニスも能力を行使する。

 

嚮後合一(きょうごごういつ)

 

 地震のエネルギーが込められた拳と五度の重ね掛けされた剣撃が衝突した。されど相も変わらずその二つが直接触れることはなく、空中で止まる形でぶつかり合っていた。

 

 島全土にその轟音を鳴らしていた一撃を遥かに超えるそれは文字通り島を引き裂いた。ぶつかった攻撃を中心に地面に罅が入り、戦場となったハチノスを二分にする形で広がっていった。

 地面に止まらず空さえも罅が入り、暗雲立ち込めていた空を引き裂いてその空には青空が広がった。

 

 均衡を保っていた衝突は、徐々に傾き始める。押し始めたのはゼニス、逆に押され始めたのはティーチだった。

 確かに両者の攻撃は拮抗していた。ならば何故その均衡が崩れ出したのか……。

 

「やまない地震など、あるはずが無い。」

 

 ゼニスは『嚮後合一』に更に重ね掛けする形で、『時流綿々』を発動していた。触れているものの時間の流れを強制的に加速させるこの技によって、ティーチが纏っていた地震のエネルギーは加速され、強制的に終わりを迎えようとしていた。

 

 このままでは押し負けると即座に判断したティーチは、もう一つの『ヤミヤミの実』の能力を行使する。

 

闇水(くろうず)

 

 直後、地震エネルギーを完全に消滅させた剣撃がティーチに襲い掛かる。それを闇水に加えて武装色と覇王色を纏った左手で受け止めた。

 衝撃は闇水によって完全に消され、その剣の切れ味も覇気の前には無力となりティーチにダメージが通ることはなかった。

 

「ゼハハッ、今のは危なかったぜ!」

 

 冷や汗を流しながらも不敵な笑みを浮かべるティーチと刀を押し込む体制のままのゼニスは至近距離で睨み合った。

 ゼニスも本気では無いとは言え、ティーチの覇気は予想以上のものであった。これ以上ここで戦闘を続けた場合、本格的に周りへ被害が出かねないと感じたゼニスは場所を移動すべく、力の限り刀を振り切った。

 

 その勢いに押されるがまま吹き飛ばされたティーチは遥か後方に聳える山へめり込んだ。先程の戦場からは十里ほど離れた山を越えると海が広がる海岸寄りの陸地。

 

「今のは効いたぜ。ゼハハハッ!」

 

轟音とともに山に叩きつけられたティーチは、土煙の中から姿を現した。口の端から一筋の血を流しているもそれ以外には特に傷も見当たらず、セリフとは裏腹に大したダメージにはなっていないことが伺えた。

 

 ティーチを吹き飛ばした後すぐにそれに追随する形で追ってきたゼニスは、そんな彼の姿を静かに見据えていた。そして自分が握る刀――「三日月宗近」の刀身を一瞥した。

 

手ごたえとしては、山すら両断できるだけの力は込められていた。しかし山は愚か、直接刀身を叩き込んだティーチですら五体満足の結果に、ヤミヤミの実の所為だとは知りつつ感覚と結果の際に不快感を感じずにはいられなかった。

 

そしてそれはティーチも同じことだった。その顔には笑みを浮かべているものの、覇気と能力を行使なおも止めることができなかった現実に、少なくない苛立ちを感じていた。

 

一時的に訪れた静寂のなかゼニスは、冷静に戦力の分析を行っていた。覇気は自分には遠く及ばないものの、さすが四皇を名乗るだけのことはあり、かなりの量と熟練度が伺えた。

能力はさすがに現状不利と言わざるを得ない。「グラグラの実」に対しては優位に立てる「トキトキの実」であるが、すべての悪魔の実の天敵と言われるだけあって「ヤミヤミの実」に対しては能力のみで対抗するのは厳しい。というのが今の一連の流れで感じ取った現実である。

 

 そして真に厄介なのは、その強力な悪魔の実と高い覇気を持つ事実を数年間も白ひげ海賊団に隠し通した狡猾さ。

 ここで逃がしてしまえば、厄介なことになるかもしれない。改めてそれを感じたゼニスは、必ずここで仕留めなければならないと気を引き締めなおした。

 

 なにもゼニスの考える時間をただただ与えるほどティーチはバカではない。つかの間の時間で回復に尽力しながら、ゼニスと同じように現状の把握に努めていた。

 

 能力で無力化したにも関わらず吹き飛ばされた事実。つまり完全には無力化できなかった――逆にゼニスの膨大な覇気で能力の効果を一部無力化されてしまったからである。高い戦闘IQを持つティーチはすぐにその結論に行き着いた。

 

自分の実力に高い自負を持つティーチはその事実に再び苛立ちを覚えるも、何よりも勝つことを至上としてきた彼はその苛立ちは怪物のような理性で無理矢理抑え込む。

 覇気では不利ではあるものの、最強の二つの能力を駆使して戦えば勝てる。

 

 図らずも覇気を主軸に決めたゼニスと能力を主軸に決めたティーチ。この結果はある意味必然であった。

 わずかな時間で考えをまとめた二人は、ティーチが先手を打って動き出したことで戦いは再開した。

 

 中距離など関係ないとばかりにその場で地震のエネルギーを纏った拳を振り抜いた。それをゼニスは瞬歩を持って交わし、そのままティーチとの距離を詰める。

 刀の射程に入ったゼニスは一歩踏み込んで振り下ろそうとするも、それをさせまいとティーチは『闇穴道(ブラックホール)』を発動させる。

 

 ゼニスの足元に闇が広がりゼニスの足を呑み込もうとするも、それを即座に足に覇気を纏って対処してそのままティーチ目掛けて刀を振り下ろす。

 四皇クラスの覇気使いとなるとこうなることは目に見えていた。しかし体制を崩せれば十分であり、わずかに崩れた体制の穴をついてギリギリのところでその刀を交わして見せた。

 

 交わされたことを確認したゼニスは空中に飛び上がり、もう一度その刀を振り下ろす。今度は交わせないと踏んだティーチはその刀目掛けて地震のエネルギーを纏った拳で迎撃を行った。

 

 空中という踏ん張りの利かない場所で衝突した攻撃はティーチに軍配が上がり、態勢を崩されたゼニスを狙って反対の手で再び地震のエネルギーを纏って振り上げた。

 しかしその拳はゼニスに届くことはなく、その直前で何かに弾かれて不発に終わり、その隙を見て態勢を整えたゼニスは地面に着地した。

 

 ティーチの拳が弾かれたのは『時穿剣』によるもの。空中に飛び上がったゼニスは地面に広がっていた闇の支配下から解放され、能力を使えるようになった。そこで振り下ろしに重ねる形で剣撃を空中にとどめて、ティーチの拳を迎撃したのだった。

 

 先ほどとは反対に、今度はゼニスから攻撃を仕掛けて出る。

 『時空剣』を飛ばすも見聞色で読み取ったティーチはその剣撃を覇気を纏った拳で空へ弾き飛ばす。が、それが狙いだった。弾き飛ばす先――空へティーチの視線が動いた一瞬で気配を消したゼニスが態勢低く、地面ギリギリで駆けて接近したゼニスはそのまま刀を振り上げた。

 

 直前で気が付いて防御したティーチだが、『合一』によって重ね掛けされた剣撃はティーチを空中へ吹き飛ばした。ティーチと接触する前に効果を発揮した能力は無効化されることなく、ティーチが無効化できたのは重ね掛けされた剣撃の威力のみ。

 そしてその威力も覇気で劣るゼニスの攻撃は完全には無効化することは叶わず、そのまま吹き飛ばされた。

 

 それを追ってゼニスも宙へ飛び上がった。苦悶の表情を浮かべながらもそれを確認していたティーチは迎撃すべく動き出す。

 『解放(リベレーション)』によってティーチの前に広がった闇の中から、瓦礫の山が慣性そのままに下から追うゼニス目掛けて落下し始める。その瓦礫は、最初に山に吹き飛ばされたときに『闇穴道』によって呑み込んでいた岩であった。

 

 それらを自分にあたる岩だけ収拾選択して切り飛ばしていくも、必然切断された岩によってその視界は狭まっていく。吹き飛ばされた勢いを殺し切ったティーチは、その見た目通りのゼニスよりも重い体重によっていち早く降下を開始した。

 

 降下の勢いそのままに左手に闇を、右手に地震を纏ったティーチは岩を左手で呑み込みながら進み、闇の引力によってそのままゼニスの胸倉を捕まえた。そしてそのまま地面に叩きつけ、同時に地震の宿った右手を振り下ろした。

 落下途中に殴りつけて万が一着地の際に威力を逃がされてしまうと効果は半減すると考えたティーチは、落下途中ゼニスに無防備を晒しながらも致命傷は覇気でカバーして最も威力が発揮する落下と同時にその力を解放した。

 

 地面と地震の力に挟まれながらゼニスが叩きつけられた場所は、まるで隕石が落ちた現場を連想される惨状が出来上がっていた。

 いち早くそのクレーターから抜け出したティーチは、落下中にゼニスに受けた剣撃に体のあちこちに裂傷を残しながらも、確かな手ごたえに笑い声を上げていた。

 

 少ししてクレーターで巻き起こっていた土煙が一気に吹き飛んでいく。その中からは頭と口の端から血を流しながらも五体満足なゼニスが姿を現した。その口元には笑みが浮かんでおり……。

 

「今のは…効いたぜ。」

 

 そう嘯いた。

 それは山に吹き飛ばされたティーチが姿を現した時の再現のようで、まるでこの程度かと挑発しているかのようにすら思える不敵さが浮かんでいた。

 

 ティーチはそんなゼニスに笑い返しながらも両者ともに再び構えた時、ゼニスがピクリと肩を動かしてひとり呟いた。

 

「……時間、か。」

 





 ティーチ戦はもう少し続きます。
 書きながら思いましたが、グラグラとヤミヤミ。二つを持ってるティーチは本当にチート。

カイドウとビッグマムを倒すのは果たして⁉

  • 仲良し(笑)船長トリオと愉快な仲間たち
  • 最強集団ーーウェルテクス海賊団
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