実は今話と前話は『ハチノス編』を書き始めて、一番最初に書いた話でした。ようやく投稿が追い付いてホッとしています。
「時間、か。」
突然の発言をするゼニスに訝しみながら、「逃げる気か?」など挑発を口にするティーチに先ほどまでとは打って変わって、まるで慈しむよう笑みを浮かべていた。
それはゼニスの精一杯の相手への敬意と感謝。今では数少ない、自分を楽しませてくれた相手への。
「楽しかった、礼を言う。マーシャル・D・ティーチ、お前は間違いなく強かった。そんなお前に敬意を表して、俺も切り札を一つ切ろう。」
突然のゼニスの独白にティーチはより一層訝しむ。同時に勝負は既についているかのようなその態度が気に食わない。
そしてそれ以上に気味の悪さを感じていた。身構えるティーチを嘲笑うかのように、それは突然起こる。
ゼニスもティーチも動いていなかった。なのにも関わらずティーチの右腕の肩から先が宙を舞った。
遅れて切られたことを証明するように、その肩から血しぶきが噴き出した。「がっ!」と悲鳴を押し殺したような声を上げながら、血を噴き出す右肩に左手を添えた。
そんなティーチを尻目にゼニスは、右手に握られた刀を空中で一度振り下ろした。
しかしそれを気にしている余裕が今のティーチにはなかった。その混乱する頭の中では、今の一幕が何度も何度も繰り返されていた。ゼニスからは目を離していないし、見聞色にも反応はなかった。
何一つわからなかった。いつ斬られたのかも、誰に斬られたのかも………本当に斬られたのかも。そう、まるで最初から斬られていたかのような。
そこでハッとする。残酷なことにその高い戦闘IQが、理解したくはない現実をそれが答えであると囁きかけてくる。そこで思い出すのは、ゼニスが刀を振り抜いた動作。
見えない攻撃。存在しない攻撃。意味のない動作。これらが意味すること……すなわち。
「未来を……斬ったっていうのか。」
そのティーチのつぶやきにゼニスは驚愕の表情を浮かべた。まさか一度の攻撃で見破られるとは思っても見なったからだ。しかしそこに焦りは微塵も存在しない。
なぜならこれはカラクリが見破られたとしても、防がれることは
「その通りだ。事象の逆行実現、それが
事象の逆行実現――つまり過程→結果というプロセスを逆に起こしてしまうのがこの技の正体である。この技の恐ろしいのは絶対に回避できないことにある。字面で表した時、逆順で成立すればそれはそのまま現実となってしまうのだ。
つまり今回の件は『「ティーチの右腕が斬れた」のは「ゼニスは刀を振った」から』のだが、これが『「ゼニスが刀を振った」から「ティーチの右腕が斬れた」』として成立してしまったのだ。
ゼニスがまだ子供のころ、『トキトキの実』を手に入れたばかりの時、ゼニスは夢を見た。未来を改変する力を手に入れる夢。
誰もが子供の時一度は夢見るであろう妄想の一つに過ぎない。しかし『トキトキの実』が覚醒することによってその能力は現実のものとなった。
悪魔の実は不思議なものだと思う。それはまるで、絵物語に出てくる空想や妄想を体現したような夢のような力。
だからこそ
一切の前触れなく、切欠が存在せず結果だけを強制的に求めてしまい、何の因果もない後つけ動作のないで結果が固定される。そんな究極の能力であるのだが当然、絶望的な弱点が存在している。
能力を発動して結果を求めた時からその過程を得るまでの間、能力者の心臓はその機能を停止する。
今回はティーチの右腕が斬れてから、ゼニスが刀を振るうまでは精々3秒程度。
しかし刀を振る動作を完結させる前に邪魔をされてしまった場合、その過程を得ることができず心臓が機能を再開することはない。一度求めた結果を否定することもできず、過程を得るまでは新たな結果を求めることもできない。
その過程を得るまでは決してその心臓は動くことはない。致命的なまでの弱点であった。
しかしゼニスにとっては弱点たり得ない。『刀を振る』という動作はこれまで数十万、数百万回以上繰り返してきた動作である。
今のゼニスにとってその動作を完結させるのにコンマ数秒あれば事足りた。
その凶悪な能力を前にティーチは逃走を選択する
即座にゼニスに背を向けて山に向かって走り出したティーチの左腕が宙を舞った。悲鳴を噛み殺しながら、過程を得るために刀を振り下ろそうとするゼニスを含めた周囲一帯を闇が覆った。
すると不思議なことに宙を舞っていたティーチの左腕は何事もなかったかのように付いており、ゼニスの心臓も過程をこなしていないにも関わらず動き出していた。
ティーチの賭けは成功した。この技は『結果を求めてから過程を得る』までが能力によるものである。悪魔の実を無効化する闇の力にゼニスの足が触れた時点でその対象となり、技そのものが無効化されたことで不成立となり、結果そのものがキャンセルされたのだ。
左腕を取り戻したティーチは即座にその左腕に地震のエネルギーを纏い、背後にそびえる山に向かってその拳を振り下ろした。
狡猾なティーチが緊急の脱出用として改造を施していた山はその衝撃によって地中に沈んでいき、山があった場所は平坦な平野へと変貌した。
脱出手段を持っていた『ワプワプの実』の能力者であるヴァン・オーガーが倒されたこと足での逃走を余儀なくされた彼らは、ティーチの後を追う形で逃走しだす。
当然追撃に動き出す元白ひげ海賊団の面々とウェルテクス海賊団だったが、そこにゼニスとステラは含まれていなかった。
隣に並びたったステラにゼニスは一つ合図を送った。それを受け取った彼女は『メモメモの実』の能力を発動させる。ステラから放出された光はほかのウェルテクス海賊団のメンバーとマルコを包み込んだ。
『
途端彼らの脳裏にある記憶が甦っていく。
それは2週間前の、計画を練っていた時の記憶。
「計画の決行は2週間後。
計画の概要が決まったゼニスは決行の日時を報告した。それに頷く面々を確認したゼニスは徐に立ち上がり、甲板へ移動する。それに続く形で部屋を後にする彼らの最後尾では捕虜となったボルサリーノが海楼石の錠に両腕を拘束されながら胸倉を弄っていた。
全員が甲板へ姿を現したのを確認したゼニスはボルサリーノに近づき、仰向けに組み伏した。サボに指示を出し探らせるとそこから小型の電伝虫が現れた。そう会議の一部始終はすべてこの電伝虫を通して海軍本部へと流されていたのである。
つめよろうとするサボを抑えながらゼニスはステラに指示を送る。次の瞬間当たり一帯を光が包み込む。
光が晴れた後ゼニスは作戦会議を始めるために室内向けて歩き出す。その場にそれを不思議に思うものはなく、続いて室内へ歩き出した。
立案者であるゼニスと能力者であるステラを除き、彼らは一度目の会議の記憶を置くそこで封印された。
そして二度目の会議では電伝虫を取り上げられたボルサリーノにできることはなく、彼らの会議をただただ眺めていた。そして決まった日時は一度目の会議よりも早い
その場にいない海軍本部はそれを知る由もなく、偽りの時刻に合わせて動き出す。ボルサリーノ奪還と海賊団の一網打尽を目的として。
そして現在、ハチノス島。日の出に合わせて島を目指していた海軍の艦隊が、太陽を背に地平線に姿を現した。しかし想定とははるかに違い、すでに戦闘は終盤に差し掛かっており、敗走を始めた黒ひげ海賊団をウェルテクス海賊団とはさみ打つ形となっていた。
漁夫の利を狙っていたはずが、すべてはゼニスの掌で踊らされておりまんまと黒ひげ海賊団の包囲網の一枚として使われてしまったのだ。
そして海軍大将を始めとした精鋭を相手にするだけの体力はすでに黒ひげ海賊団には残されていなかった。膝を折るクルーや傘下を尻目に、その後方で佇むゼニスをティーチは睨みつけた。
「てめぇか!海軍を呼びやがったのは⁉」
その言葉に肯定も否定もなくゼニスは軽く笑った。
「チェックメイトって将棋の王手とは違う、打ち取ったていう合図だ。だから最初に言っただろ……チェックメイト、てさ。」
しかしその言葉が答えだった。それを受け逆上したティーチは残りの力を振り絞って反撃に出るもその前に、ゼニスにその腕を吹き飛ばされる。先ほどの繰り返しのように、闇を広げて対応しようとするティーチ。
ゼニスが認めた強者だけあってその対応力と瞬発力は、目を見張るほど早かった。だが、ゼニスにとってそれはあまりに遅ぎた。
闇がゼニスに届く前にティーチの首は宙を舞っていた。
『チェックメイトってさ…』
【ノーゲーム・ノーライフ 空より】
将棋にチェスに囲碁にオセロ。ボードゲームが好きな作者としては、行ってみたいセリフトップ3に入るセリフです!
17話のセリフをようやく回収できました!
次話を投稿しましたらストックが尽きてしまうため、再び亀更新になってしまうと思いますが…引き続きよろしくお願いいたします!
カイドウとビッグマムを倒すのは果たして⁉
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仲良し(笑)船長トリオと愉快な仲間たち
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最強集団ーーウェルテクス海賊団