思いつかなくて、サブタイが今までと違う件についてはスルーでお願いします…。
ワンピースには数多くの名曲がありますが、今話に登場する曲は作者の中でトップスリーに入るほど好きな曲です。
みんなはどの曲が好きなんだろうか……。
「「あ~~ッ!」」
「貴様、時王ッ!」
「なんで海軍の英雄がここに居やがるッ⁉」
まさかの鉢合わせを果たしてしまったゼニスとガープは、すでに
そして海賊たちもまさかの四皇と海軍の英雄の登場に驚き、固まった。
彼らはとにかくツイていなかった。先日辿り着いた島はビッグマムの縄張りで、麦わら海賊団との抗争の件でピリついていたため上陸を断念。
その前の島はすでに海賊に食い漁られた、枯れた島で物資の補給もままならず。
さらにその前の島は海軍の軍艦が、物資補給で滞在していたため上陸を見送り。
そんな中ようやく上陸できた島には、怪物たちがいた。
「なんでなんだよッ!なんでお前らは揃いも揃って俺様の邪魔をしやがる?俺様にうらみでもあるってのかよ、畜生⁉」
船長としての尊厳もプライドもかなぐり捨てた彼の心からの
不甲斐ない自分に対して、理不尽な現実に対して、目の前にいる怪物たちに対しての怒りだった。
そしてその怒りは、しっかりと彼らに届いていた。
「「やかましいッ!」」
届いてしまったからこそ束の間の休息と休暇を潰され、怒りを覚えていた彼らに一周され、怒号と共に放たれた覇王色によって、海賊たちの意識は閉ざされた。
そんな中でも精密に操作制御させて放たれた覇王色が、民衆に襲い掛かることは当然ない。
脅威がなくなったと歓声を上げる民衆は、さらなる厄災が目の前にいることに気が付いていなかった。
「お前ら!みんなを集めて出港の準備をしろッ!」
「お前ら!海賊どもを軍艦に運んで、手の空いた奴はこやつらを捕まえるために動けッ!」
「「「了解ッ!」」」
ウェルテクス海賊団はゼニスの指示に、海軍はガープの指示にそれぞれ応答を返し、役割を全うするために動き出す。
彼らの行動はすでにゼニスとガープの視界には入っていない。入っているのはお互いの姿だけである。
二人とも戦う気など全くなくこの島を訪れていたためお互いに丸腰であるが、もともとその拳を武器としているガープに理があるといえるのだが、地力はゼニスが上であると感じているガープに慢心など皆無である。
いつもの軽い空気など微塵もなく、そこにいるのは老兵でも好爺でもなく、ロジャー海賊団と渡り合った歴戦の猛者である。
それをひしひしと感じ取ったゼニスもまた、四皇を下すときと何ら変わらない真剣な表情で、向き合っている。
「ここでやるには街に被害が出る。場所を移すぞ。」
「ふんッ!海賊に言われんでもわかっとるわッ!」
「日和ッ!頼んだぞ‼」
「コビー!あとはお主に任せるぞ!」
それぞれが最も信を置く部下にその場を託し、二人はまるで瞬間移動でもしたかのようなスピードで、月歩と瞬歩を駆使してその場を後にした。
残った者たちは、指示されたことを迅速に熟しながらも、お互いのリーダーの気配を頼りに戦況を把握し続ける。
町のある島から絶賛移動中の二人は、数分の移動の末目に付いた無人島を決戦の場所と決め降り立った。
わずか数分の移動であるにもかかわらず、この島は先ほどの島から数十キロも離れていた。ここであれば二人が激突したとしても、さすがに先ほどの島への影響はない……と思いたい。
そもそもガープはまだしも、本職が剣士であるゼニスは得物がない現状では本気で戦うことは出来ない。
それでも負けるとは思わないが、無傷で勝てるとは言い切れないのは四皇の一角としてどうかと思うのだが、なにせ相手もまた正真正銘世界有数の怪物である。
ゼニスとしては仲間たちが迎えに来るまでの時間稼ぎに徹しようと考えていた。
対してガープは、得物を持たないゼニスを前に仕留めるならば今であると、真逆のことを考えている。
普段にましてやる気を見せるガープだがそれはなぜかーーまぁ一言でいえば、上の命令である。
傍若無人を地で行くガープであろうとも、さすがに五老聖の意向に逆らうことは出来ないのだ。
ただでさえ四皇となったルフィは世界政府に狙われる存在であり、さらにその座を狙う海賊からの追撃もある。
さすがの彼とて、本気になった世界政府を相手にするのは荷が重いと言わざるを得ないーーガープはそう考えている。
嫌味なことに世界政府ともあろうものが、海賊を人質に海兵を動かしているのである。
SWORDという立場上、必要以上に動く必要はないが、出会ってしまった以上はやらないわけにはいかなかった。
向かい合って構えを取り、いつでも動ける体制を取りながら相手を伺う。
その拳に武装色と覇王色を纏い、距離など関係なしに解き放つッ……ことはなかった。
「せっかくの休暇を邪魔しおって!」
「そりゃあこっちのセリフだ、クソジジイッ!」
「年上に向かって、なんじゃその口の利き方はッ!」
「はッ、海賊に対して説教かよ。」
始まったのは口喧嘩である。そう、この二人は既知の間柄である。
海賊と海兵という関係上、お互いを知っていることは少なくはないのだが、この二人はなぜか鉢合わせる回数が異常に多いのである。
今回の邂逅は都度6回目である。もはやお前ら友達かよと揶揄されるほどであるが、二人は断固として否定する。
会うたびにこうして口喧嘩をして、そうして小競り合いをしてどちらかが飽きたら撤退する。
それがいつもの流れなのだが、先ほども言った通りガープにはガープの事情があり、ゼニスもガープの気配からそれを感じ取っていた。
ここまではもはや恒例の言い合いを挟み、そして……島が割れた。
いつの間にか二人の距離はなくなっており、その中央で拳をぶつけていた。
島が割れ、空が割れ、空間が割れ、黒い稲妻が立ち昇る。
数秒の拮抗の後、ゼニスが吹き飛ばされた。軍服の上からでもわかるその鍛え抜かれた肉体を持つガープに対して、技に趣を置くゼニスが力だけで衝突したため当然の結果といえた。
「このッ、馬鹿力が!」
地面を跳ねながら吹き飛ばされるゼニスは未だ痺れる右手を含めた両手を地面に付け、勢いを削いでいく。
が、勢いを殺しきる前にガープの追撃が襲い掛かる。
この島に向けて移動していた時以上の速度で、吹き飛ばした先からゼニス目掛けて突貫する。
地面に両手をついて無防備なところに、先ほどと同じく覇気を纏った拳で殴りつける。
「ぬッ⁉」
「調子に乗んな!」
能力を使って一瞬の間に、攻撃態勢に入っていたゼニスにその拳は空振り、逆にゼニスの蹴りがガープに襲い掛かる。
それに対して反射的に殴りつけた方とは逆の拳で迎撃を図るのはさすがと言えた。がしかし、ゼニスはさらに上を行っていた。
ガープが反応をして迎撃に動くことを見聞色で視ていたゼニスは、その攻撃すら囮とした。
蹴りは空振り、それを迎撃するために振るった拳も空振り、完全に無防備なガープに振り上げた足を振り下ろした。
力の入った攻撃とともに投げかけられた言葉によって、完全に騙されたガープはその踵落としをもろに受け、特大な土煙を巻き起こしながら地面に叩きつけられる。
むやみに追撃することはなく、ゼニスは一度距離を取って態勢を整える。
「痛いわッ!」
地面に叩きつけられた時に巻き上げられた砂や岩の下敷きにされていたガープは、怒号とともにそれらを吹き飛ばし、ズンズンと姿を現す。
ゼニスの蹴りを受けた頭から血が滴っているものの、その足取りはしっかりとしており、それ以外の箇所には外傷も特に見当たらない。
当然ゼニスは攻撃に覇気を込めていたし、普通であればその頭が消し飛んでもおかしくない程の威力は込められていた。
しかしガープは咄嗟に武装色を纏って、さらに覇王色を纏い直撃を回避して見せたのだ。
さすがに戦闘不能にするのは無理だとしても、それなりにダメージが入ることを期待していたのだが、その期待は見事に裏切られた形となった。
「この石頭がッ!」
「ふん、貴様の蹴りが軽いだけじゃ!」
そこからさらに激突を繰り返す。
拳で、足で、肘で、膝で、さらには頭で。
一撃一撃に覇気の衝突による黒雷が立ち昇り、ぶつかった場所にはクレーターが出来上がっていく。
力で捻じ伏せようとするガープと、技によってそれらを絶妙に受け流し、カウンターを繰り出すゼニス。
衝突は地上にとどまらず、空中も戦場と化していた。
緑が生い茂るきれいな無人島はもはや見る影もなく、見るも無残な荒野へとなり果てていた。
その身を武器として使っている両者の激突は、能力を併用して使っているゼニスが有利に立っているものの、愛刀がない現状では決定的な攻撃を入れることが出来ず、闘いは頓着状態となっていた。
攻撃が気持ちよく入ることもなければ、いつまで続くかわからない現状にお互いフラストレーションを溜め続けていたが、それも終わりを迎える。
雨上がりの空を~♪仰ぐたび~♪
泣き虫だったころの~♪僕を思う~♪
誰かの背中を~♪がむしゃらに追いかけた~♪
強くなりたいって~♪
それは歌だ。
この戦場には……この荒野には、まったくもって場違いとも感じられる歌声だ。
しかしそれは、未だぶつかり合う二人の耳にもはっきりと届いていた。
荒ずんだ心を癒すような、どこまでも響き渡る歌声はこの戦いの終止符でもあった。
「どうやら、タイムアップのようだな。」
「……そうじゃな、じゃが次は貴様を捕まえるぞ。」
「ハッ、やれるもんならやってみな。」
それだけ言葉を交わした二人の視界は次の瞬間移り変わり、まるで楽園のような島に立ち尽くしていた。
そんな二人に背後から近寄ってきたのは、歌声の主でありウェルテクス海賊団が誇る音楽家ーーウタである。
「それじゃあ、ゼニス。行きましょう。」
「ああ。」
一言だけ彼女の言葉に返答した後、二人の姿は掻き消えた。
ガープはそれを眺めていることしかできない。なぜならここはウタが作り出した世界であり、この世界の中では彼女は正真正銘最強の存在なのだから。
彼もそれを分かっているため、無駄な行動を起こすことはない。
二人が消えて数秒。
創造主であるウタが消えた世界は終幕し、同時にガープの意識も暗闇に沈んでいった。
次に目を開けたとき彼の視界に入ったのは、自分を心配そうに眺めるSWORDのメンバーたちの顔であった。
「揃いも揃って暑苦しいわッ‼」
あまりにも報われない海賊たちと理不尽な怪物たちの邂逅でした。
正直分からない。
作中最強の主人公と衰えてなお海軍大将を殺せてしまうジジイの戦いの終わらせ方が。
そしてやはり最強のウタウタの実。