俺はヒーローに憧れない(re   作:アートレータ

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 これを書いたのは実は1年以上前……。
 
 さぁ、それではリメイク版をどうぞ‼︎


フィルムZ
1.始まり


 

 

 「きッ、貴様!こんな事をして、分かっているのか!」

 

 倒れ伏す男に向けて1人の青年が刀を向けていた。

 彼らの周りは建物は倒壊して瓦礫が広がり、あちこちで火の手が立ち昇っている。そして地面にはみんな一様に同じ服を着た男達が意識を失って横たわっている。

 しかし驚く事に、そこに死者は1人もいなかった。それは青年と彼らの実力差を如実に表していた。

 

「当たり前だ。むしろその為にやってるんだ。しっかり報告してくれないとこっちが困る。」

 

「く、狂ってる!そんな事で、ここを!海軍G・L第6支部を襲撃したというのか⁉︎」

 

 そう、ここは世界各地の5つの海に散らばる海軍の支部。大佐以上の地位の人物によって管轄されるひとつだった場所。

 今は青年の手によってみるも無惨に破壊され、立派だった要塞は見る影も無くなっていた。

 しかし青年は気にした様子も無く、男の言葉に耳も傾けることすらなく、刀を振り翳した。

 

「それじゃあ、頼んだぞ。」

 

 一言残して刀を振り下ろした。もちろん殺すことのないように、工夫が施されている。青年の持った刀は黒く変色して、その刃はまるで潰されたようになって海兵の首へ叩きつけられた。

 

 次の日新聞は一面この事件が綴られた。たった1人の青年の手によって、一つの海軍支部は壊滅。更に1人の死者も出ないように、手加減を加えられる醜態。

 同時に、事件を起こした青年の手配書が世界にばら撒かれた。

 

 

 

 

 

 とある新世界のある島で。とてもジメジメしていて湿気が多すぎて暮らしにくそうな土地ではあるものの、その中心に聳え立つ城内にて、一人の男がはその記事と手配書を読んでいた。

 

「フッ、ついに動くか。あの二人もいなくなった事だし、俺もいくとするか。」

 

 そう独りごちて長年過ごした島を後にして、大剣豪は海へと繰り出した。

 

 

 

 

 

 通称「黄金帝」と呼ばれている巨大黄金船の船上。数ある高層ビルの中でも一際高いビルの最上階に向かい合う形で座りながら、テーブルに置かれた記事を見ている男女がいた。

 

「ビジネスも、ここまでのようだな。」

 

「そうね。あの人も動くみたいだし、ようやく恩を返せるわね。」

 

 『恩』という言葉に、一つ笑いながら男はそうだなと相槌を打つ。その様子を見ながら女は男に尋ねかけた。

 

「でもいいの?」

 

 その問い掛けにはいろんな意味が含まれていた。創り上げたビジネス、黄金帝を捨ててもいいのか。中立地帯を出て危険に見舞われてもいいのか。ここを手放して世界政府に目をつけられてもいいのか。

 それらを理解した上で、男は頷いた。

 

「この命はあの時から、あの人に預けてるからな。」

 

 この日、世界の資金を回していた一角が忽然と姿を消して!世界に動乱を巻き起こすのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

「なぁ、エース。俺にも見つかったよ、命を賭けて海賊王にしたいやつ。」

 

 「あいつはそういうの興味ないだろうがな」そう言って笑いながら、片手に例の新聞を、もう片手に盃を持ちながらポートガス・D・エースの墓の前で一人の青年が胡座をかいていた。

 墓の前に一つの盃。青年の手にも盃。そしてもう一つ盃が置かれていた。

 

「お前も、こんな気持ちだったのかな。あいつと戦う事になったとしても、俺は引かないし、アイツもきっと正面からぶつかってくるだろうな。」

 

 ここにはいないある人物を思いながら、昔を思い出してついつい笑ってしまう。

 

「お前も、見守っててくれよ。俺たちが自由にいきてくのをさ!」

 

 そう言って手に持っていた盃を飲み干して、墓に背を向けて歩き出した。その時まるでその背中を押すように、強くしかし温かい風が吹き抜けていった。

 

 

 

 

 

 人類では未だ到達し得ない地で、それを踏み締めたある男が腰を上げた。

 

「そろそろ飽きていたところだ。次は、あの男と青海でも制覇するとしようか。」

 

 立ち上がった男の手にはやはり、例の新聞が握られていた。その男を神と咎める者たちが、男の前に跪き着いていく旨を伝えるがそれを断って歩き始める。その不遜な態度も気にかける事なく、見送った。

 そして見送られながら男は、「ヤハハ」と独特な笑い声を響かせながら、雷鳴と共にその姿を掻き消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前らがアイツの家族か?」

「恨むならアイツを恨みな!」

「アイツの大事な者なら全部壊しちまえ‼︎」

「お願い!貴方だけは生きてッ‼︎」

「待って!●●さん‼︎僕を置いていかないで‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は生きるのよ?そしてこの子を守ってあげてね。」

「ダメだ!■■さんも一緒に逃げるんだ‼︎」

「いいえ、私はここまで。大丈夫、貴方ならきっとあの人みたいに…」

「待ってくれ!もう俺は……。■■さん‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、俺から奪わないでくれ……。」

 

「……ス、………ゼ…ス。もう、ゼニスってば!起きてください‼︎」

 

「ん、ん〜。」

 

「ほら、もう少しで着きますよ。目的地の島に。」

 

 声の主である二人は現在、新世界ではあり得ない小舟で海を進んでいた。男性はどうやら眠っていたようで、一緒に乗っていた女性に起こされる。

 そこで声をかけた女性が男性、ゼニスの顔を見てあることに気付いた。

 

「……ねぇ、どうして泣いてるの?」

 

 言われたゼニスは本人も気付いていなかったようで、言われて目元を撫でることで始めて気付く。

 

「あ〜…、昔の夢をちょっとみてた気がするからそのせいかなぁ?」

 

 少し照れ臭そうにしながら、答えたゼニスは頭をガシガシ掻いたのち視線を海へと移した。

 女性もその一端を知っているため深く追及する事はなくゼニスと同じ方角へと視線を移した。

 

 どうして彼ら二人は新世界の海を小舟で進むという暴挙に出てるのかというと……ゼニスがある新聞記事を目にしたのがきっかけだった。

 

 

《“Z”率いるネオ海軍がエンドポイントを破壊した》

という記事だった。

 

 

 ゼニスは"Z"と呼ばれる人物が"父・ゼファー"であるとすぐに気が付いた。

 

 確かに父に恨みを持つ海賊に母を殺された。誘拐された。絶望もした。しかしそれでも、ゼニスは父の背中を見て育ったのだ。父の背中に憧れたのだ。

 覇気を纏い、どんな海賊にも臆さず、不敵な笑みを浮かべながら薙ぎ倒していく『黒腕のゼファー』と呼ばれていた男に。

 

 何もあの事件で大切な者を失ったのはゼニスだけでは無い。ゼット……いや、ゼファーもまた奪われた側の人間であるのだ。

 ゼファーは自暴自棄になったのか、復讐を果たすつもりなのか。それはゼファー本人にしかわからないことだ。

 しかし、同じ立場だった者として、親子として。ゼファーの考えている事は何と無くではあるものの、理解できた。

 

「…あぁ、親父は死ぬつもりなんだな。」

 

 恨みはない、未練もない。むしろ、その後を考えると同情もする。それでも、"家族"に危険が及ぶのであれば危険な種を潰す必要がある。故に、ゼニスはゼファーがいるであろう最後のエンドポイントに向かうことにしたのだ。

 

 元々一人で向かうつもりだった。しかし、それを他のメンバーが許さず、かと言って余りの大所帯でも困る。その為、1番ゼニスと過ごした時間が長い彼女が付き添う形で纏り、二人で海を進んでいたのだ。

 

 こうなった経緯を思い出していると、視線の先に一つの火山島が見えてきた。ゼニスは寝転がっていた体勢から起き上がり、同行者の彼女に声をかけた。

 

「日和、あの島がそうか?」

 

「ええ、あの島が最後のエンドポイントの島。そして……。」

 

「…親父がいる島、か。」

 

 言葉を切った彼女・日和に続くようにゼニスが言葉を綴ると日和はそれに無言で頷く事で肯定を示す。その後言葉はなく、二人で静寂を保ったまま見据える先の島へと船を進めてゆく。

 

 

 

 

 島に船を止めた後、ゼニスは見聞色の覇気で島全体の様子を確認する。するとちょうど反対に位置するところに多数の気配を感じる。その中に強者の気配も幾つか感じられた。おそらくネオ海軍のものだろう。

 海軍はどうやらまだ到着していないようだ。

 

 あまりゆっくりしていては、親父と会う前に戦闘が開始されてしまう。せっかくここまできたのだから、挨拶くらいは交わしておきたい。

 それを口に出して日和に伝えると苦笑いされる。素直に会いたいと言えないゼニスに対する者だったのだが、ゼニスはそのことに気付かずゼファーの気配を感じるところへ向けて歩みを始めていた。

 日和も遅れまいとゼニスの背中を追いかけて、駆け出した。

 

 そうして二人で歩いて数分。島の山頂にある窪みへと辿り着く。中央にはゼットが腰を下ろし、周りには大量のダイナガンが埋め込まれていた。

 一つが爆発したのなら連鎖的に全てのダイナガンが誘爆を起こし、島諸共エンドポイントを吹き飛ばすだろう。

 新世界が火の海に包まれ、家族だと燃え尽きてしまう。

 

 が、そうはさせない。親父に会う為、そして親父の計画を止めて家族を守る。そのためにわざわざ足を運んだのだ。

 たとえ親父と決別して消すことになったとしても、家族を守る。

 

 

 

 

 

 

「よう、親父。久しぶり、だな。」

 

「…誰だ、小僧。……俺に息子はいねぇ。」

 

「ひでぇな。まぁ、仕方ないか。」

 

 言って肩をすくなる。そう仕方がないのだ。ゼファーはずっとゼニスは死んだと思っていた。その上ある出来事でゼニスは実年齢よりも若くなっている。

 忘れたい事件。忘れられない事件。妻と子を亡くした忌まわしい事件。知っているものは少ない。

 

 しかし目の前の青年は知っている。警戒するのは当然のことであった。岩に腰を下ろしていたゼファーは臨戦体制に入る。それを見て再びゼニスは肩をすくねた。

 

「俺だよ、ゼニスだよ。ゼファー大将。」

 

自分の名前を名乗り、ゼットの名前を戯けながら言い当てる。その名は確かに34年前に亡くしたと思っていた息子の名前。更にゼットを名乗っている自分の本名、前役職を言い当てる。

 

「(まさか、本当に…。本当にあのゼニス、なのか…?)」

 

 ゼニスはゼファーが信じ始めたことを見聞色の覇気で読み取って、ニヤリと笑う。

 

「あぁ、本当にゼニスだよ。死に体の親父に会いにきてやったぜ。」

 

「何故!お前はあの時、殺されたんじゃないのか?」

 

 その言葉に悪人顔を止め、真顔に戻る。そして、あの事件の真実。事件後の出来事などを一部脚色しながら語っていった。

 一通り語り終わった後親父は一言、「よかった。」とだけ呟いてサングラス越しの瞳から涙を流していたのだった。

 

 





 取り敢えず前作に追いつくまでは、6時間定期投稿で行きたいと思います。
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