本日四話目
取り敢えずあと二話で定期更新は終了の予定です。
ストックがある分は毎日投稿を続けます。ストックが切れたら……
ではどうぞ!
「さて肝心のペナルティだが……破った場合お前は、悪魔の実の能力と覇気の記憶をデリートする。だ。」
クザンの苦肉の心境を理解したうえでさらに追い詰めていく。
クザンはこれまで、海軍大将としてかなりの数の海賊を葬ってきた。そして同じ数だけ、恨みを買ってきている。
そして今は、世界の敵であり海賊王を目指す者たちにとっての障害である黒ひげ海賊団の協力者という立ち位置にいる。
今までは問題なかった。海軍の時は世界政府という盾に守られていた。
今は黒ひげにとって価値のある協力者としての立場にある。
しかし、積み重ねてきた覇気の記憶が失われてしまったならば…。ロギアとしての能力者としての記憶がなくなってしまったのならば、それらは一瞬で崩れ去ってしまうことは想像に難くない。
そしてそんな未来に待つのはやはり、死であった。
残された道は、約束を受け入れた上でそれを破らないこと。
破らないためには余計な行動はせず、全てを捨てなければいけない。
あまりにも重すぎる約束。先程までは受け入れること一色だった脳裏にわずかな迷いが生まれる。
その迷いを彼等は見逃さない。
「ちょっとゼニス。それはあまりにも重すぎるんじゃない?」
助け舟を出したのは日和だった。
ゼニス本人が妥協してしまったのならば、それは半減してしまう。
ゼニス以外の誰かが行う必要があったのだが、そこは他の誰よりも長く寄り添ってきた日和がその意図をいち早く理解して合いの手を入れた。
ゼニスの狙いはこうだ。
初めに自分たちの強さを示して逃げ道を潰す。
そのための一環として、覇気を纏わずにクザンを一刀した。
目に見える形で能力を行使して、船を呼び寄せた。こちらは別にゼニスが行わなくても、他にも方法があったのだ。
更にクザンが分かりやすい指標として、ミホークに合わせてウェルテクス海賊団の一員であることを改めて認知させた。
次にメモメモの実の説明をした。
逃げる事は不可能であり、約束を受けるしか無いのだとクザンの選択肢を絞る。
そして与えた制約はかなり厳しいものを提示する。その約束で一瞬揺らぐものの、死を受け入れるよりは現実的だと思わせる。
が、明かされたペナルティもまた死と同列のものであることを明かす。それによって、ここで断る事も考える事だろう。
最後に助け舟を出す。
どちらにしろ死へ向かうのだから、ここで戦うべきか?それとも約束を受け入れて、窮屈で不自由な生活へと落ちて反しないことを願うか?
その極限の選択の中に一本の糸が垂らされた。しかもそれは、ゼファーに会う時もゼニスに同行していた日和からの糸だった。
これだけのメンバーの中で一人だけ連れていたのなら、かなり信頼しあっている中なのだろうことが察せられる。その意見は無下にはされないだろう。
…と考えるはずだ。
ゼニスは細く微笑んだ。
「ん〜、そうか?それなら…。」
そしてゼニスは日和の意見を受け入れる。
「一定の期間、又は一定の条件を満たしたら解放するって言うのはどうかしら?」
「そうだな。……俺はいくつかの用事を済ませたら、黒ひげの首を取りに行く。その時まで約束を破らないこと。その戦争が終わった後、俺とお前が生き残ったたら解いてやるよ。」と。
更にここでもう一つ手綱となる糸を足してやる。
「解除方法は…。」
『メモメモの実』の解除方法は、全権が能力者に委ねられる。
能力者があらかじめ解除方法を決めておいて、それを達成する事によって解除されるのだ。
厄介なのは能力者が死んだとしても、能力者が解除方法に自分の死を選択していなければ解除されないのだ。
そんな能力の肝とも呼ぶべき条件をステラは、こう定めていた。
「『自分』『恋人のテゾーロ』『船長のゼニス』の3人と握手を交わす」と。
これまで話していなかった能力を解除する方法。
クザンの頭には追い込まれていて、これまで思考から抜け落ちていた部分を補足で説明してやる。
するとこれまで、あるかどうかも分からない生存の道が一気に広くなったように感じてしまうのだ。
「さぁどうする?」
それは悪魔の問いかけ。しかし、光がある。
ゼニスが笑みを浮かべていることにクザンは気付かない。
故にクザンは応える。
「…分かった。俺は約束を破らないことを誓う。」
こうして誓約が施された。
今度はクザンにも見えるようにゼニスは笑みを浮かべる。
「よし、それで良い。サービスだ、テゾーロとステラと握手しとけ。」
それはつまり三重に掛かった鍵を二つ開錠すると言うこと。
戸惑うクザンを置いて、指名を受けたテゾーロとステラが前に出る。
彼等は分かっているのだ。ゼニスには考えがあることを。
それ以上に、指示を出したのは誰よりも信頼できる船長からのもの。
初めから断る理由など彼らにはなかった。
クザンは戸惑いながらも、素直に出された二人の手を握り返す。
それを確認したゼニスは満足そうに頷いたのだった。
「よし、これでクザンの用事は全て済んだな。それじゃあ行っていいぞ。ハチノス島でまた会おうや。」
言葉は出さず静かに一つ頷いて背を向けて去っていく。
が、ゼニスが待ったをかける。駆け足でクザンに追いつき、耳元で何かを囁いた。
クザンは驚愕の表情を浮かべるが一言「分かった。」とだけ返事をして、今度こそ去って行ったのだった。
海に氷の足跡を残しながら…。
「さて!それじゃあアイン。改めてようこそ、ウェルテクス海賊団へ!」
今更ではあるが、まだ言ってなかったことを思い出したゼニスは雰囲気で想いを口にした。
それに対してアインは照れ臭そうにしていた。
周りでは仲間達が温かい目で見守っている。
「それで…、うちの船に乗ったからには強くなってもらわなきゃならない。」
「俺は仲間が、家族が死ぬことを許さない。そのためには自衛の力も必要となるわけだ。」
急に真面目な雰囲気へと変わり話し始めるゼニスに戸惑いながらも頷く。
アインも自分の弱さをこの船に乗ってから嫌と言うほど痛感させられている。
誰も彼もがアインでは逆立ちしても敵わない怪物たち。
自分も彼らみたいに強くなりたいと心から願う。
同時に、自分では無理なのではないか?自分には才能が無いのではないか?
そう思わずにはいられなかった。
自分よりも年下であるゼニスはこの怪物達を率いている。
そんなゼニスよりも年下である日和も自分よりも圧倒的に強い。
そんな彼らに比べて自分はどうだろうか…。
考えれば考えるほど、思考はマイナスへと寄っていってしまう。
パンッ‼︎
ゼニスが手を叩いた後でハッとする。
暗く渦を巻き始めていた思考から引き上げられる。
「まぁ、お前の気持ちは分からんでもない。が、ハッキリ言わせてもらう。俺たちとお前じゃあ潜ってきた修羅場の数が、質が違う。」
言い切るゼニスの言葉にアインはついムッとする。
確かに彼らの方が強い。だがその言葉をそのまま鵜呑みには出来ない。
自分もそれなりの修羅場を潜り抜けてきた。
海軍のために、先生のために命も掛けてきたつもりで…。
「お前らはこれまで親父を支えることを優先してきた。それが悪いとは言わないし、息子の俺としても感謝してる。だが、成してきたのは親父のことであってお前らの望みではない。お前らに足りないもの。それは、自分のなすべきことを明確にする。そして、それをどんな手段を使ってでも、何を犠牲にしてでも成し遂げると言う気概。」
「そうだな……。ちょっと、俺の勝手な妄想だと思って聞いてくれ。世の中には決して越えられない天才というものが存在する。ありったけの知恵を振り出してなんとか勝ち抜いたとしても…長続きはしない。徐々に力が落ちてさらに強い奴らが次々と現れる。運が悪ければ、怪物のような奴と出会うかもしれない。だが…そういう奴らもいずれ歳を取り病に侵されて消えて行く。それでまた新たな強者が現れ、その座を占めることになるもんだ。」
「人生とは初めから勝てないようにできている。不合理なゲームだ。永遠の強者も永遠の勝者もなく、束の間の名誉と幸せのために生涯もがいて死ぬこと。それが人の一生だ。そんな、決められた一生の中でどんな生き方をするか。それがハッキリしているやつは、強いんだよ。」
「俺の場合は成し遂げたいことが家族を守ることがそれに当たるってわけだが…。」
「俺も偉そうには言えないけどな。」そう言って照れ臭そうにして頭をかくゼニス。
しかし語っていたときの目は本気だった。
それが口だけのものではないのだと、ただ聞いていただけなのに言葉一つ一つに引き込まれていた。
だから言い返すこともできず、続きを待つことにした。
「話が逸れちまったが、そんな経験は一長一短で身に付けられるものではない。故にお前が最初にやるべき事は覇気の勉強と修行だ。」
今回の他作品ネタを解った方は少ないのではないでしょうか?笑
「世の中には決して越えられない天才というものが存在する。……」
「人生とは初めから勝てないようにできている。……」
【ザ・ボクサー結城より】
ロジャーや白ひげを思い出させます。天才がいてもそれも結局は朽ちる、と言う意味では生まれてから死ぬまで、みんな平等なのかもしれませんね)笑