BEASTLORD   作:タマヤ与太郎

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なんだかんだで買ってなかった書籍版聖王国編以降と4期を見てたらむらむらと書きたい気持ちが湧いてきたので描いてみました。お楽しみいただければ幸いです。


聖王国編
1:世界の終わりは花火を見ながら


YGGDRASIL(ユグドラシル)。12年前に発売された体感型ゲームで、

一時はDMMORPGと言えばこれ、と言われるほどの人気を誇った名作である。

 

だが、始まりがあれば終わりがあるもの。

12年の長きに渡り愛されてきたこのゲームも、ついに終わりの時が訪れる。

終わりだからこそと羽目を外すもの、終わりだとしてもいつも通りに過ごすもの、

個々人が自分なりに世界の終わりを楽しんでいた。

 

そしてそれはここ、ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の本拠、

ナザリック地下大墳墓でも同じであった。

 

「えー、それでは僭越ながら、ギルド長である私自ら音頭を取らせていただきます。乾杯!」

 

「「「乾杯!」」」

 

中央に黒曜石の輝きを放つ巨大な円卓が鎮座した部屋に、数名の声がこだまする。

円卓には41の席があったが、人影があったのはわずかに4つ。

そこに座っている4名は、いずれも人間ではなかった。

 

「いやー、まさか4人全員揃うとは。メール送って見るものですね!」

 

1人は、大仰な装飾の施された豪奢なアカデミックガウンを纏う、むき出しの骸骨。

ギルド長、死の支配者(オーバーロード)、モモンガ。

 

「まー、最期ですからね。どうにか今日明日ぐらいは休み取りましたよ」

 

また1人は、コールタールを思わせる黒色の粘体。

ギルドメンバー、古き漆黒の粘体(エルダー・ブラックウーズ)、ヘロヘロ。

 

「最近はログインしても狩りばっかりとかだったからね……せめて今日ぐらいは、ね」

 

もう1人は、巨大な両腕を持つ、この中でもひときわ醜い巨体。

ギルドメンバー、半魔巨人(ネフィリム)、やまいこ。

 

「色々不義理かましちまって申し開きのしようもねえけど……

 今日は派手にやろうぜ! こんなこともあろうかと、外に花火仕掛けまくってきたんだ!

 おかげで素寒貧だけどな」

 

そして、最後の1人。笠を被った、和装のカワウソのような外見をした人物。

ギルドメンバー、妖怪変化(アヤカシ)、獣王メコン川。

 

「はは、メコン川さんは相変わらずですね。そういえば、何か渡すものがあるとか?

 何かまでは聞いてませんでしたけど……」

 

『?』のアイコンを浮かべたモモンガに話を振られ、

合わせるように『!』のアイコンを浮かべるメコン川。

アイテムボックスに手を突っ込み、取り出したのは……ハンドボール大の種。

それを見た3人の雰囲気が変わる。

 

「こ、これ……世界樹の種!? メコンさんこれどうしたの!?」

 

詰め寄るやまいこ。この種は、ただのアイテムではない。

ワールドアイテム。ユグドラシルに存在する全アイテムの中でも頂点に位置する、

200個のアイテムの中の1つ。

通常種族変更不可能な、モモンガの様なアンデッドの種族すら変えることを可能とするものだ。

 

「何、別のギルドの知り合いにさ、最期だから、って譲ってもらったんだよ。

 これ1つで今までの不義理を許してほしいとは思わねえが……ケジメはつけなきゃな」

 

ニヤリ、と不敵な笑顔のアイコンを出すメコン川に、モモンガは世界樹の種を恐る恐る受け取り、

己のアイテムボックスへと収納する。

 

「ここまでしてもらわなくても大丈夫ですよ、メコン川さん。

 でもお気持ちはありがたく受け取っておきましょう。

 さて、これからどうしましょうか? サービス終了までは……

 まだ1時間ほどありますね」

 

「あ、なら私はメイドたちを見ておきたいですね。ソリュシャン達と会えるのもこれが最後ですし」

 

「ボクもユリやペストーニャ達を見て置きたいな。メコンさんは?」

 

ヘロヘロとやまいこが己や友人達の作ったNPC達との別れを惜しもうとし、

問われたメコン川は少し考え込み、口を開く。

 

「俺もルプスレギナを見ておきてえな……モモンガさんはどうする?

 パンドラズ・アクターは宝物庫だろ?」

 

「うぐっ……いや、私はいいですよ。正直あいつは黒歴史ですけど……

 あそこに押し込めた私が今更会いに行くのも、虫が良すぎる話じゃないですか」

 

「まあ、それならそれで構わんけどな。気持ちはわからんでもないし……

 そんじゃ、10分前くらいに入り口近辺に集合って事でどうだ?

 各々のNPCも連れてさ。折角だ、NPC達にも花火を見てもらおうじゃねえか」

 

メコン川のその言葉に残った三人も賛成の意を示し、

ユグドラシルの終焉に向け、ナザリックのあちこちに散っていった。

 

 

 

そして、世界(ユグドラシル)が終わるまであと10分。

 

「よーし! みんな準備と配置はいいな! 上げるぜ!」

 

ナザリックを覆う6mほどの壁の上に登り、メコン川が声を上げる。

その隣にはどうやってここまで連れて来たのか、褐色肌、

赤い長髪を三つ編みにしたメイドが立っていた。メコン川の創造したNPC、

ナザリックの最終防衛ラインともいえる(設定の)戦闘メイドチーム、

プレアデスの一人、ルプスレギナ・ベータだ。

 

「OKですよメコン川さん!」

 

「こっちも大丈夫です!」

 

「あ、待って待って……うん間に合った!」

 

眼下を見ればモモンガ・ヘロヘロとやまいこの3人に加え、

黒いドレスを着た色白の少女、第1~第3階層守護者シャルティア。

氷を削りだしたような甲殻を持つ蟲人、第5層守護者コキュートス。

オッドアイに金髪の双子のダークエルフ、第6層守護者アウラとマーレ。

浅黒い肌にスーツを纏った知的な男性、第7層守護者デミウルゴス。

全10層に及ぶナザリックの各階層を守る階層守護者たち。

そしてモモンガの左右を挟むように、黒髪に白いドレスの美女、

黄色い軍服にマント、埴輪のような顔をした人物。

守護者統括・アルベドと、宝物殿領域守護者、パンドラズ・アクターだ。

ヘロヘロの隣には、彼の創造したNPC、

ルプスレギナと同じプレアデスのソリュシャン・イプシロンがいる。

 

「あれ、なんだよモモンガさん、結局パンドラズ・アクター連れて来たのか」

 

「やまいこさんに怒られまして……確かに最後ですもんね、

 自分の息子ともいえるこいつを宝物殿に置き去りなんて、可哀想だ」

 

「……そうだな」

 

ちらりとメコン川がやまいこを見れば、

サムズアップのエモーションを出しながらやまいこがこちらを見上げる。

周りにはやまいこの作ったNPC、黒髪を夜会巻きにした眼鏡の女性、ユリ・アルファと、

メイド服を着た獣人といった雰囲気のNPC、ペストーニャ。

そしてナザリック大墳墓執事、セバス・チャンと、ソリュシャン・ルプスレギナ・ユリを除く

プレアデス全員が立っていた。

やまいこが「待って」と言ってたのはこの大人数を連れて移動していたからだろう。

 

「やまいこさんはやまいこさんで大勢引き連れてんなぁ……」

 

「ほんとだったら全員連れてきたかったけどね、これでも絞ったんだよ?」

 

「まあ、気持ちは分かりますよやまいこさん。私だって本当なら、

 ソリュシャン以外の担当メイドたち全員連れてきたかったですよ!」

 

両手を上げてふるふると体を震わせながら(両拳を天に突き上げているらしい)いうヘロヘロ。

和気藹々とした様子を見て苦笑すると、メコン川は「行くぜ!」と一声上げ、

花火に点火するボタンを押した。

 

 

 

 

ナザリックを覆うように、光が昇り、華咲き、散っていく。

無数に上がるそれらを見上げながら、メコン川はこれまでを振り返っていた。

アインズ・ウール・ゴウンの前身であるクラン、ナインズ・オウンゴールに加わった時。

徐々に増えていくメンバーと、馬鹿をやりながらもユグドラシルを走り回った日々。

ナザリックを攻略して手に入れ、顔を突き合わせてあれこれと語り合った事。

夢のような日々だった。リアルの事情で長らくログインできなかったり、

ログイン時間が取れず、狩りの手伝いしかできなかったことは、本当に申し訳ないと思っている。

ワールドアイテム1つで許されるとは思っていない。

本当なら、『世界樹の種』ではなく『支えし神(アトラス)』を取り返したかった。

だが、そう長い時間プレイすることができない現在、あれを奪還することは不可能だ。

最後にこうして今在籍する全員が揃ったことだけでも、奇跡のような確率だろう。

だがそれも、もうすぐ終わる。

 

「楽しかったよなぁ……集まって、騒いで、馬鹿やって。

 後悔も、未練も、山ほどあるけどさ、俺、アインズ・ウール・ゴウンに……

 いや、ナインズ・オウンゴールに入って、本当に良かったよ。

 それだけは、胸を張って言えるよ、モモンガさん」

 

「そうですね……私も、そう思います。

 あの時、ただのスケルトン・メイジだった頃にたっちさんと出会えて、本当に良かった。

 ……そうだ、最期に魔王ロールで行きたいんですが、構いませんか?」

 

おう、ええ、OKと、三者三様の言葉を受け、モモンガは一つ咳ばらいをすると、口を開く。

 

「この場に集いし、アインズ・ウール・ゴウンの強者たちよ!

 此度は世界最後の宴に集ってくれて、私は嬉しく思う!

 世界は終わる。それは私にすら変えられぬ宿命だ。だが、それでも終わらぬものもある!

 我が友ヘロヘロ、やまいこ、獣王メコン川。そして去っていった、

 37人の友たちよ! 我らの友情は永遠である!

 シャルティア、コキュートス、アウラ、マーレ、デミウルゴス、アルベド、セバス。

 ペストーニャにプレアデス達。お前たちの絶対なる忠誠に、心よりの感謝を!

 そして最後に、我が息子にも等しき宝物殿守護者、パンドラズ・アクター。

 今まで、宝物殿に押し込めて済まなかった。これからは自由に生きよ!

 お前の望むまま、思うままに! それが、せめてもの罪滅ぼしである!」

 

そして、モモンガは「飛行」でふわりと浮き上がり、どんどんと高みへと昇ってゆく。

その手の中には7匹の黄金の蛇が絡み合い、

それぞれの蛇の口に宝玉が咥えられたデザインのスタッフ。

アインズ・ウール・ゴウンの象徴ともいえるギルド武器、

スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンだ。

それを掲げ、モモンガは、そして残る3人のギルメン達は声も高らかに叫ぶ。

 

「「「「アインズ・ウール・ゴウンに、栄光あれ!」」」」

 

そして、世界は終わる。

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

「……お?」

 

メコン川は、自分がふと砂浜に立っているのに気づく。

ナザリックの壁の上ではなく、日光に照らされた砂浜の上に。

ユグドラシルは終わったのではなかったか? 他の皆はどこに?

慌てていつの間にか切れていた通話回線を開こうとして――――――

 

「……コンソールが開かねえ?」

 

コンソールを用いないシステムも試してみたが、全く反応がない。

何かのエラーで呼び出せないのではない。まるで最初から存在しなかったようだ。

 

「そうだ、時間! ……嘘だろ!?」

 

アイテムボックスから取り出した時計を見れば、0時はとうに回っていた。

無情にも時刻を刻んでいく時計を呆然と眺めながら、メコン川は思案する。

 

(……何らかの罠? ありえねえ、表層とはいえナザリックだぜ?

 ユグドラシル2? 都市伝説がマジだった? いや、これもねえ。

 それにこの全身で感じる太陽の光、目に突き刺さる日光。

 ユグドラシルだったらありえねえ……どういうことだ?)

 

そこまで考えて、自分の横に気配がある事にようやく気付く。

反射的に飛び退いて警戒態勢を取り……メコン川は硬直した。

それは赤い三つ編みに金の瞳、黒い帽子にメイド服を着た女性。

 

「ルプスレギナ……か?」

 

そう、そこにいたのは、自分の作ったNPC、ルプスレギナ・ベータ。

 

「は、はいっす。どうなされました、獣王メコン川様……?」

 

主人に警戒態勢を取られたからなのか、やや怯えを含んだ表情で、

そう、ユグドラシルでは決してあり得なかった感情を宿した目で、

ルプスレギナは返答を返してきた。

 

 




そんなわけで1話。できる限り続けていきたいとは思うので、よろしくお付き合いください。
メコン川さんの外見に関しては「公式的には獅子の獣人みたいな外見なんだろうな……」と思っているので奇をてらいたかったのと、
獣王→動物系+メコン川→川→カワウソ→そういえばかわうそって妖怪いたよね、という連想から。異論は受け付けますが変更はしません。


※今回の主な独自設定・解釈※
メコン川さんの外見・言動
世界樹の種の外見
ナザリックの範囲内とはいえ墳墓の外にNPCを動かせるのか?という点
(今回はナザリックの敷地内という判定なら動かせはする、という解釈)
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