BEASTLORD   作:タマヤ与太郎

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25話。ぼちぼち2クール目も終わりです。
トブの森編は多分3クール目に突っ込みますが。


25:蜥蜴人の集落にて

 

メコン川一行が蜥蜴人(リザードマン)の集落に到着した時、一行を出迎えたのは歓声だった。

蜥蜴人の存亡の窮地を知識(とげんこつ)で救った英雄の帰還であるからだろう。

地鳴りのような歓声を全身で浴びながら、ハムスケから降りたやまいことメコン川。

2人は、「緑爪(グリーン・クロー)」族長、シャースーリュー・シャシャの家へと案内された。

家の中には黒い鱗を持った蜥蜴人、主であるシャースーリューを含め、

6人の蜥蜴人が車座になって座っており、やまいこの姿を見ると深々と一礼する。

そんな彼らを一人ずつ指し、やまいこはメコン川に面々を紹介する。

 

赤黒い鱗をした蜥蜴人、シャースーリューの実弟であり、

最初に魚の養殖技術を「緑爪」にもたらした者、ザリュース・シャシャ。

湿地帯に伝わる四至宝の1つ、「凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)」を持つ、

蜥蜴人の英雄でもある。

 

白い、トカゲというよりは蛇に近い外見を持った蜥蜴人、

朱の瞳(レッドアイ)」族長、クルシュ・ルールー。

祭司としての力を持ち、やまいこが介入した戦いにおいてザリュースと共闘。

その後結ばれ、その伴侶となっている。

 

明るい緑の鱗を持つ、ひと際大柄な蜥蜴人、

四至宝「酒の大壺」を持つ「竜の牙(ドラゴン・タスク)」族長、ゼンベル・ググー。

無手の戦いを得意とし、ザリュースとも五分に打ち合う猛者でもある。

 

ほのかな魔法の光を放つ、骨の鎧で全身を覆った蜥蜴人、

鋭き尻尾(レイザー・テール)」族長、キュクー・ズーズー。

装備したものの知力を奪い、その分だけ硬度を増す四至宝「白竜の骨鎧(ホワイト・ドラゴン・ボーン)」を装備してなお、

ややたどたどしいものの自我を保ち意思疎通が可能なほど知力に優れているらしい。

 

そして最後、クルシュを除く他の蜥蜴人に比べ小柄だが引き締まった肉体を持つ、

小さき牙(スモール・ファング)」族長、スーキュ・ジュジュ。

百発百中のスリングの名手で、族長を決める儀式(戦い)においても、

投石の1発で片を付けるほどの腕前を誇る。

 

一同の紹介が終わった後、シャースーリューが重々しく一礼し、口を開く。

 

「ヤマイコ様、ご紹介痛み入る。失礼だが、そちらの御仁はご友人か?」

 

「おう、ええと、シャースーリューの旦那だったか。

 俺は獣王メコン川、やまいこさんの古いダチでね。王国を挟んだずっと向こう、

 アベリオン丘陵ってとこで亜人の頭張ってるもんさ。

 ま、やまいこさんと同等ぐらいには頼りにしてもらっていいぜ」

 

「ほう、丘陵の……ヤマイコ様のご友人というならそれも納得だな」

 

「へえ! あそこの連中は相当に強いと聞くがよ、

 その頭を張るって事は、あんたも相当みたいだな!」

 

その言葉に反応したのはザリュースとゼンベル。

通常蜥蜴人は自分たちの集落で暮らし、一生を終えるが、

中には集落を離れ旅にでる『旅人』と呼ばれる者達がいる。

ザリュースとゼンベルがそれに該当し、

ザリュースは学んだ知識、特に魚の養殖技術をもって貢献し、

ゼンベルは旅をして力をつけ、「竜の牙(ドラゴン・タスク)」の族長となった。

旅の中でアベリオン丘陵においても聞き及んでおり、

かの『十傑』を統べる者という肩書は、メコン川の思う以上に一同をどよめかせた。

 

「人食いはやめさせて、今は近くの人間の国(聖王国)と交易してるんだがね。

 あんたらはあまり外部と取引はせんと聞くけどよ、

 海のものが欲しかったら言ってくれよ! 川魚も美味いもんだが、

 海の魚も中々悪かねえぜ?」

 

「うみのさかな、おおきいと、きく。とりひきできれば、うえるもの、へる」

 

「ヤマイコ様が盟主となってからは、少しづつ外部と交流することも増えましてね。

 丘という事は森は少ないのでしょうね、

 ならばこちらからも差し出せるものはあると思いますね」

 

キュクーとスーキュの言葉に、他の者達も同意する。

蜥蜴人の主食は魚だが、縄張りの中には果実や薬草が取れる場所もある。

そういったトブの森でしか取れないものを輸出したり、

食料を輸入すれば、万一また魚が取れなくなったとしても食いつなぐことができるだろう。

それが、最終的に族長らの出した結論であった。

 

 

 

「皆、ヤマイコ様も戻られたことだ、例の件についての話し合いを始めよう」

 

改めてやまいことメコン川を上座に据え、シャースーリューが口を開く。

例の件。やまいこもハムスケから聞いていた、森の奥地に人間が入り込んでいる件だ。

ザリュースが遠目に見た限りでも、強力なマジックアイテムで身を固めた強者たちが、

森の奥地で何がしかの調査をしているようだった、というのがザリュースの言である。

やまいこがクレマンティーヌから聞いた話と合わせるに、

その人間達はスレイン法国の精鋭部隊、漆黒聖典。

破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)』というものを捕獲するため、

それが封印されている地を探索しに来たのだろう。

 

「スレイン法国? 聞いた事があるな、亜人嫌いの連中だろ?

 戦いになるのは構わねえが、どんだけ強いんだろうな!」

 

「ぜんべる、けんかっぱやいの、よくない。たたかい、しにん、でる。

 はたらきて、へる、まずい」

 

「キュクーの言う通りよゼンベル。戦う前提で物を考えないの。

 それに戦いにならないにせよ、『破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)』というのは……

 どう転ぶにせよ、脅威になるわね」

 

好戦的なゼンベルがキュクーとクルシュに突っ込まれて項垂れ、

クルシュが件の『破滅の竜王』について言及する。この地の蜥蜴人の伝承に、

『大昔、空から降ってきた怪物がどこかに封じられた』

という伝承がある事を思い出し、それを伝える。

 

「ねえクルシュ、それってどのぐらい前なのか、分かる?」

 

「正確なところはわかりませんが……代替わりの回数から数えまして、

 おおよそ、二百年ほど前の話かと……」

 

「二百年、かあ。メコンさん、そう言う事かな?」

 

クルシュの言葉に、やまいこはううむと唸ってメコン川に目配せする。

二百年。二人は、その数字がなんであるのかを察していた。

二百年という数字は、丁度十三英雄が活躍していた時期と符合する。

メコン川はツアーより、二百年前、暴走した従属神(NPC)が魔神と化した、

という話を聞いている。しかし今の話を合わせて考えると、

全ての魔神がNPCではないのだろう、という推測も立つ。

百年ごとにあるらしい『揺り返し』(ユグドラシルからの来訪者)

その中にはプレイヤーやNPC、ギルド拠点の他にも、

POPしたモンスターなどもいたのだろう。

メコン川は『破滅の竜王』も、そう言ったものの1つなのだろう、と結論付けた。

十三英雄の活動時期と重なる所を見るに、彼らが対処するも倒せなかったため、

封印するにとどめたのだろう。

 

「……おそらくな。それがマジなら、早めに片を付けたほうが良いかもしれん」

 

「メコンガワ殿、我らも加勢しよう。仔細は分からんが、

 察するにこの森全体の存亡にかかわる事態と見た」

 

シャースーリューの申し出に、メコン川は申し訳なさそうな顔で首を横に振る。

 

「……すまねえが、今のあんたらじゃあ恐らくは無理だ。

 件の化け物を封印したのは、恐らく十三英雄と呼ばれるかつての英雄たちだ。

 そいつらが討伐しきれなかったほどの相手だ、恐らくはでかい被害が出る。

 それに、もし戦いになった場合、この集落を守る戦力がいる。

 あんたらには、この集落の非戦闘員を守っててほしい」

 

「―――そうか」

 

「戦士の誇りを傷付ける様な事をいってすまん。

 だが、あんたらはやまいこさんが守ろうとした奴らだ。

 そんなあんたらを、俺にも守らせてくれ」

 

そう言って頭を下げるメコン川。

自分達よりはるかに強いやまいこ、彼女と同等の強さを持つらしいメコン川に頭を下げられ、

それでも加勢しよう、と言えるほど、蜥蜴人の族長たちも無謀ではなかった。

 

「それによ、俺ぁ当時を良く知る連中……十三英雄の生き残りに伝手があってな。

 そいつらにも話を聞いて対処する。だからよ、『破滅の竜王』は任せてくれ」

 

「そこまで言われては食い下がるわけにもいかんな……

 ならば、村の防衛は我らが引き受けた。すべてが終わったら、盛大に労わせてくれ」

 

「お、なら俺んとこの「酒の大壺」の出番だな!

 強い男と飲む酒は最高に美味いもんだ、好きなだけ飲んでくれよ!」

 

ゼンベルの言葉にザリュースが「なら俺は魚を」と言えば、

スーキュやキュクーが「ならば我らは果実を」と言い出し、

そのままなし崩し的に宴の話し合いに突入。

クルシュとシャースーリューが「これだから男共は……」「すまん……」と、

頭を抱えつつも苦笑していたという。

 

 

 

「――――――ん?」

 

何かが繋がるような感覚を覚え、『白金の竜王(プラチナム・トラゴンロード)』、

ツァインドルクス=ヴァイシオンは訝しげに首をもたげた。

この感覚は<伝言(メッセージ)>―――離れた者と会話をする魔法である――――によるものだ。

旧友の誰かが連絡してきたのか、と思えば、その相手は意外な相手であった。

 

『ようツアー、今いいか? 聞きてえことがあんだが』

 

獣王メコン川。アベリオン丘陵の亜人を統べる「ぷれいやー」だ。

少し前に友人である『蒼の薔薇』のイビルアイから彼と共闘した、

と連絡が来たのを思い出す。

 

「やあ、君か。キーノ……イビルアイと言ったほうが良いか。彼女から聞いたよ、

 仲間のうちの1人が見つかったそうだね。

 ……で、なんだい? 暇を持て余していた所だったから、時間だけはあるけれど」

 

『俺ぁ今トブの大森林ってとこにいるんだがよ、

 そこに封印されている『破滅の竜王』ってのに聞き覚えはあるか?

 竜王とついてるからお前の知り合いかと思って連絡したんだが』

 

破滅の竜王。覚えはある。十三英雄として活動していた時期に、

仲間達が空から降ってきた強大な魔物を封印した、という話を聞いたことがある。

 

「ああ、覚えはあるよ。その時私はパーティから離れていたので直接見たわけではないが、

 友人たちがかつてそこに封印したらしい。

 それと、『竜王』と呼ばれているのは法国が勝手に名付けただけさ。

 実際はすさまじく巨大な大木の化け物だそうだよ」

 

『ぶっ殺してなんか問題あるか? 法国が最近チョロチョロしてるらしくてよ、

 連中、傾城傾国……支配能力を持つワールドアイテムも持ち出してるようだ。

 連中の手に落ちる前にぶっ殺しときたくてな』

 

「なるほど……まあ、問題があるかなしかで言えばないかな。

 恐らくは二百年前の『揺り返し』でユグドラシルから呼ばれた魔物なんだろう。

 この世界の為にも、処分してくれるなら私としては止めはしないよ。

 立場もあるから、表立ってどうこうはできないけれどね」

 

『まあ、俺達でどうにか出来ねえ時はちっと頼むかもしれねえがな。

 ……あとはまあ、一応断っておくことが一つある』

 

一段トーンを落としていうメコン川に、ツアーは訝しげに首を傾げる。

しかしその直後、周囲空気が張り詰める。メコン川の発言を聞き咎めたからだ。

 

『俺は漆黒聖典の連中からワールドアイテムを奪い取る。

 あるいは、交渉で手に入れる。今仲間内に元漆黒聖典の奴がいてな、

 そいつの話を聞くに、どうやらそいつら、もう1つのワールドアイテムを持ってる公算が高い』

 

「……一応、理由を聞いておこうか。君の事だ、理由があるんだろう?」

 

『おう。ざっくり言えば、俺はワールドアイテムを使う気はねえ。

 それらを法国から奪取した上で、装備する。目的としてはそれだけさ』

 

身に付けはするが、使う気はない。なぞかけのようなその言葉にまた首を傾げるも、

少し考え、ツアーはメコン川がやらんとしている事に思い至る。

 

「……そうか、メコンガワ、君は『世界の守り』を得ることが目的だね?」

 

世界の守り。それは、始原の魔法(ワイルドマジック)を扱える竜王が、

同じく始原の魔法からの防御を行う際に張り巡らせる、

あるいは自然と身に纏う防護能力の事である。

だが、この世界には始原の魔法の他に『世界の守り』を得る方法がある。

それが、ユグドラシルからもたらされたワールドアイテムだ。

ワールドアイテムはどれも超級の能力を誇るが、装備したものに『世界の守り』を与え、

始原の魔法やワールドアイテムによる効果を防ぐことができる。

メコン川はそちらの効果を目当てにしているようだ。

 

『ご名答。実際、ワールドアイテムは連中には過ぎたおもちゃよ。

 どっちみち奪い取るつもりではいたが……それ以前に、

 俺はワールドアイテムを使われることを恐れてんのさ』

 

「……そうだね。備えはいるだろう。私は現状君たちと敵対するつもりはないし、

 出来れば親しくなりたいとすら思っている。

 だが……他の『生き残り』達の中には、そうは思わないものもいるだろう。

 そのための備えをすることは大事だろうね。

 一部の始原の魔法には、『世界の守り』がないと防御すらできないものもある。

 君達がそのために持つというのならば、止めはしないよ」

 

五〇〇年前に転移してきた八欲王によって、多くのドラゴンが殺された。

中には自分から襲い掛かって返り討ちにあった者達もいたが、

この世界にとっての『異物』であるユグドラシルの者達を良く思わない竜王も多い。

それでなくとも、ワールドアイテムが在ると知れば対策を考えるのは当然だろう。

 

『世界、とつく魔法があるからそうだろとは思ってたが……

 まあ、破滅の竜王も含め、止めやせんならそれでいいさ』

 

「ともあれ、やりすぎるようならば介入も辞さないよ?

 今の法国には思うところもあるけれど、六大神と交わした盟約もある。

 ()()()の君の誓いを聞いたからこそ、あの時引いたのだからね」

 

『もうちょっと信用されてねーと思ってたんだけどな?

 ま、あん時言った言葉に嘘はねえさ。

 法国が人間「だけ」しか守らねえ国じゃなかったら、

 俺だって面と向かって協力してたよ』

 

「『人間』は私や君と違って脆弱な種族だからね。

 彼らのやり方に同意はしないが、理解はしているつもりだよ」

 

『元人間としちゃ、わからんではないんだがな。

 ま、極力やりすぎん程度にはするさ。トブの森はやまいこさんの縄張りだ、

 更地にするほど暴れるつもりはねえよ』

 

苦笑しながらの言葉と共に、<伝言>が切れる。

彼の事だから派手にはなるとしてもやりすぎることは無いだろう。

そう思いながら頭を下ろすと、空気が動くような、

竜の感覚でようやく捉えられるほどの反応を感じた。

少しして目の前に現れた人影に、ツアーの目に喜色が浮かぶ。

現れたのが、ここ暫く見ることのなかった()()だったからだ。

 

「――――――君か。イジャニーヤといい、どうしていちいち気配を消すんだい?

 まあいい、君と会うのも随分と久しぶりだ。土産話でも聞かせてくれないか。

 こちらも……まあ、最近のキーノの話とか、いくらか話せることはあるかな」

 

先程のメコン川との会話とは違う、僅かに弾んだ声。

『あるもの』を守るためこの場をほとんど動くことのないツアーにとって、

二〇〇年ほど前、十三英雄の一人『白金』として鎧を動かしていた頃からの友人の来訪は、

現在まで生き残るこの『真なる竜王』にとって、またとない楽しみであった。

 

 




ま、まだ漆黒聖典と遭遇すらしていない……!
彼らとやり合うことになるかどうかは正直ちょっと悩んでます。
隊長以外はルプーとユリで潰せそうな気がせんでもはないし……
悩む悩む。

族長ズの中で一番好きなのはキュクーです。
あとすっげえくだらない余談ですが、オバロを11巻あたりまで買ってた頃はクルシュ蛇っぽいなー、と思うぐらいでしたが、最近は「割といける」とか思うようになってきて性癖の広がりを感じますね。

tino_ueさん、誤字報告ありがとございました。
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