BEASTLORD   作:タマヤ与太郎

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今回、大分勢いで突っ走った感あるのでノリが特殊かもしれません。ご容赦ください。
ただ書いてる当人は本当に楽しかったです。



9:酒は呑んでも吞まれるな~蒼の薔薇、所により百合~

 

ラキュースらがティアとティナを救わんと気炎を上げていた頃より、時間は少し遡る。

燃え盛る村落の中で、対峙する影、2つと3つ。

片やアダマンタイト級冒険者チーム、蒼の薔薇のティアとティナ。

片やメコン川とルプスレギナ、そしてネイアの3人。

 

「忍者が破壊工作とは古風じゃねえの。だが火付けして逃げようたあいい度胸だ、

 やるってんなら相手になるぜ? 逃がしもしねえがな」

 

「こーふくすれば命は保証するっすよ! あつあつおでんで勘弁してやるっす!」

 

「あ、煽らないでくださいよルプスレギナさん……」

 

余裕綽々な2人と、この中で最も弱い、というのが理解できているため及び腰なネイア。

そんな2人を見ながら、ティア・ティナは手先の動きだけで会話していた。

 

(……やばい。後ろの弓使いは大したことはないけど、他の2人がイビルアイより強そう。

 特にあのカワウソがやばい。何も強さを感じない(・・・・・・・・・)けど、

 私の勘が「敵に回すな」と言っている)

 

(ただ、交渉の余地はある。恐らく向こうはこっちが無辜の民を襲ったと思っているみたいだし、

 素直に素性を明かせば話は通じるはず。それに、赤髪の女も、後ろの女の子も、

 どういう訳かカワウソも冒険者のプレートを付けている。交渉する価値はある)

 

表情は変わらぬまま、2人の頬を一筋の汗が伝う。

生か死か、ここが分水嶺だ。

 

 

 

そして、時間は戻り。ラキュースら三人は、焼き討ちした村から程近い所にある草原、

その只中にある立派な家(・・・・・・・・・・・)の前にいた。

王国の様式ではないが、漆喰で出来た立派な塀、上品にまとめられた南方様式の庭、

家屋の前まで来てみれば、王国の文字で書かれた立て看板が入り口の脇に置かれている。

 

「……イビルアイ、この家、何だと思う?」

 

「私が知るか。だが、こんな家、さっきまでは無かった。

 恐らくは何らかのマジックアイテムだろう」

 

「『歓迎、蒼の薔薇御一行様』だと? 舐めやがって」

 

ガガーランが看板を蹴飛ばし入り口の前に立つと、音もたてずに引き戸が開く。

 

「入ってこい、って事かしらね……」

 

「私が先に立つぞ、ラキュース、ガガーラン」

 

イビルアイが先頭になって、家屋に侵入する。見た目以上に広く、静かだ。

入口には靴が四足、並べて置いてあった。うち2つには覚えがないが、

覚えのある残りの2つは全く同じデザイン。

ティアとティナのものだ。それを見て、イビルアイが訝しげに首を傾げる。

 

「南方の様式だと玄関で靴を脱ぐものだが……2人も脱いでいる?

 <魅了(チャーム)>でも使われたのかもしれないな……」

 

「あの2人に魔法を通せるとなると、油断できない相手みたいね……

 うわさに聞く『六腕』かしら」

 

「―――――待て、今音が聞こえた。これは……声か? この奥だ」

 

イビルアイが顔を向けたのは、入り口の奥。歩を進めるごとに通路に置かれた燭台が点り、

明かに空間が歪んでいる長さの通路を進むと、奥の方に紙張りの引き戸が見えた。

よく耳をすませば、そちらの方から、悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきている。

 

「2人の声……じゃないな? どうする、罠だと思うが」

 

「ここまでなめられて引っ込みがつくかよ! ぶち破ってやらあ!」

 

一気に距離を詰め、すぱん、と小気味よい音を立てて開かれた引き戸。

その中では――――――

 

「うおお()られてたまるかあぁぁ!

 つうかルプスレギナお前何羽交い絞めにしてんだ! あっこら脱がすな! 下を!

 今まさにお客さん来るって状況で何おっぱじめようとしてんだ! TPO考えろ馬鹿!」

 

「そんな可愛い声で抵抗したってこっちがビンビンになるだけっすよ!

 さあ、今のうちに下を!」

 

「据え膳食わぬは女の恥、では失礼して……」

 

「あ、あの! 私女なんですけど……そっちの気はないんですがーっ!」

 

「大丈夫、皆最初はそう言ってた。直ぐよくなる」

 

「あっちょっとどこ触って……誰か―っ!」

 

引き戸を開けた先では、目を疑うような光景が繰り広げられていた。

赤い髪の少年を羽交い絞めにした赤い髪の女性と共謀して少年の下を脱がそうとするティナ、

鋭い目つきの少女に絡みついてするすると少女の衣服を脱がしていくティア。

周囲には酒瓶や酒器、そしてなぜか『ドッキリ大成功!』と書かれた看板が転がり、

赤髪の女性と二人の顔は真っ赤に染まり、その目はとろんと蕩けていた。

つまるところ、いたいけな少年少女に酔っ払い共が絡んで服を脱がせようとしていたのだ。

その現実離れした(2人の性癖を考えればある種起こり得ないとは言い切れない)光景に、

ラキュースは呆然としながら一言、言葉を漏らした。

 

「……何これ」

 

 

 

そして、時間はまたも遡る。時はメコン川と双子が相対した少し後、

イビルアイが双子の吸血の刃(ヴァンパイア・ブレイド)を持ち帰ったあたりまでさかのぼる。

草原にたたずむ謎の家屋―――メコン川のマヨイガ。その中の一室で、

メコン川一行と双子は相対していた。

……双方相好を崩し、大いに打ち解けた上で。

 

「いやあ、済まんね、あの村が例の八本指の拠点だったわけか。邪魔しちまったかい?」

 

「分かってもらえたようで何より。ところで、あなたたちは何物?」

 

「こんなマジックアイテムまでポンと出せるというのは、只者ではない」

 

「んーっと……メコン川様、これ言っちゃっていい奴っすか?」

 

「まあ、いいんじゃねえの。素性は隠したとはいえ一応正規の手段で入国してるしな」

 

そこで、メコン川達は己の素性を明かす。

聖王国の東、アベリオン丘陵の亜人を統べる『獣王』であること。

王国との国交を結ぶため、そしてそれを結ぶに値するかを調べるため、

商人に扮してリ・エスティーゼ王国に来た事。

そして、聖騎士志望の少女、ネイアの修行のために王国で冒険者活動をしようとしている、

と言う事。

 

「……なるほど。噂で丘陵の亜人を纏める王が生まれたというのは聞いたことがある」

 

「そっちの子、聖騎士志望だとするならうちの鬼ボスが参考になるかも」

 

「『蒼の薔薇』のラキュースさん、ですよね? 確か、高位の神官戦士だとか。

 わ、私なんかがお話していいんでしょうか……」

 

「大丈夫、アダマンタイト級冒険者は、人格も十分に吟味されたうえでのアダマンタイト級。

 話ぐらいは聞いてくれる。駄目でも私の『妹』になれば、無下にはされない」

 

そういうと、ティアはネイアの手を取って抱き寄せ、顔を近づける。

突然の事態にネイアはパニック状態でティナのなすがままだ。

 

「アダマンタイト級は人格も吟味される、って今聞いたっすけど」

 

「性癖は吟味されねえの? 『蒼の薔薇』の癖に百合咲かしてどうすんだよ」

 

半眼で睨む2人からの視線ではっと我に返ったティア。

ネイアから離れて咳払いを一つ。

 

「と、ともかく。仲間が真っ先に見るような所に私たちの武器を落としてきた。

 今頃それを見つけ、どうするか話し合っている頃合い」

 

「……それ俺達がお前ら攫ったことになんない?」

 

「そういう時はこれを使うっすよ!」

 

とルプスレギナが取りだしたのは『ドッキリ大成功!』とこの世界の言葉で書かれた看板。

それを見てメコン川は軽く頭を抱え、ティアに視線を向ける。

 

「……戦闘になったらお前ら責任取れよ? そういえば青い方。えーと……ティアだっけ」

 

「何?」

 

「お前さ、さっきネイアにコナかけてたろ。じゃあこういうのはアリ?」

 

言葉と共にぼふん、と小さな爆発。煙が晴れると、其処にはネイアより少し下ぐらいの、

ルプスレギナによく似た少女がいた。似たデザインの帽子を被り、

小柄ながら出る所は出ているスタイルで、踊り子のような肌も露わな服を纏っている。

メコン川の変化バリエーションの1つ、セット名「ルプスレギナの妹」。

ルプスレギナの妹、というイメージでデザインされた外装だ。

 

「ぬっ……これは……小柄ながら出る所は出ているトランジスタグラマー……

 それにお尻の方から伸びているのは尻尾? ケモ尻尾!?

 その上悪戯っぽい顔がいい……中身がオス、と言うか男だという事を加味しても、

 いやだからこそ出せる理想の女性像だからこその魅力が……っ!」

 

「うわ気持ち悪ぃ。美少女がやってもアレなもんはアレだな……

 そうか、茶釜さんがファンがたまに気持ち悪ぃって言ってた気持ちが分かったぜ……

 ……ってあれ、声まで変わってる? そうか、このスキルもいくらか変質してんのか……」

 

このスキルは本来声までは変わらず、可愛い外見で騙してからの、

野太い男声とのギャップで精神的ダメージを与えるものである。

しかし今変身して見た所声まで可愛らしい少女のものに変わっており、

それがより一層ティアをヒートアップさせる。

 

「気持ちはわかるっす……この姿のメコン川様は私と同じぐらい、

 いやそれ以上にかわいいっすからね……ささ、ご一献」

 

「これはこれはご丁寧に……美少女を見ながら美女のお酌でお酒……最高……」

 

「……しーらね、もうどうにでもなれだ」

 

ご満悦、と言った所でルプスレギナのお酌を受けて飲み始めたティアを放置して、

(良く見ればルプスレギナの顔も赤くなっていた(=呑んでやがった))

メコン川もまたアイテムボックスから取り出した酒瓶を開けて飲み始める。

美少女がやさぐれた顔で一升瓶をラッパ飲みしている、という酷い絵面だが、

もう姿を戻すのすら面倒になっているメコン川にはどうでもよい事だった。

ネイアにもジュースを渡してさて残る1人は、と双子のリボンが赤い方、

ティナの方を見れば、こちらも既に用意してあった酒瓶を勝手に開けて飲みだしていた。

顔は赤く、目は据わっており、先程からずっと飲んでいたのだろう。

ふと、ティナと視線が合う。メコン川は一瞬身構えるも、ティナの方が一瞬早かった。

瞬時に残像を残すような速度でにじり寄って来る。

 

「うわぁ!? なんだよお前お前もそっち系か!?」

 

「―――断じて違う。メコンガワ、あなた、『男の子』にはなれる?」

 

「え、まあ、いや……なれるけど……」

 

早く!!!!!!!(ハリーアップ!)

 

「うわぁ据わった目で胸倉掴むなよ胸の布ずれてポロるだろうが!」

 

『ポロリもあるの(あるっすか)!?』

と即座に反応する酔っ払い共を務めて意識の外に追い出し、

変化バリエーションセット名『ルプスレギナの弟』を起動する。

ぼふん、という爆発音とともに現れたのは先程までの『妹』によく似た少年。

髪はうなじのあたりでざんばらに切り、

タンクトップの上からファーのついたジャケットを羽織り、

半ズボンを穿いた活動的な姿。それを見て、ティナが爆発した。

 

「FOOOOOooooooooo!!!!!!」

 

「うわ、狂った」

 

「いや私は至極冷静しかしこの可愛らしさを残しつつも

 やんちゃっぽさを出した外見は何とも言えぬ美であり

 露出した膝小僧が靴下と半ズボンで挟まれたある種の絶対領域は

 活動的という言葉では到底片づけられず

 やや怯えの色があるくりっくりのおめめがまた嗜虐心をそそるという

 これはもはや据え膳ではないだろうか

 なのでいただきます」

 

「据えてねえよ馬鹿! あっお前脱がすな脱がすな……あれ、力が入らねえ……」

 

ちらっ(今まで自分が呑んでいた酒瓶を見る)

 

・アイテム名:神変鬼毒酒・ウルトラ大吟醸

異形種に使うとステータスが一時的にレベルにして8割減するぞ!

特に種族クラス:アヤカシを持っているとプラス1割、つまり9割減だ!

人間が呑むと? すっげえ美味いけどめっちゃ酔うぞ!!(意訳)

 

ちらっ……(ティナが呑んでいる酒も同じ銘柄であることを確認して何かを諦めた顔)

 

そしてその時、メコン川に電流走る。

そう、自分で駄目ならシモベの手を借りればよいのだ!

 

「ルプスレギナ! 助けてーっ!」

 

がっし。(呼んだら来たけどメコン川が羽交い絞めにされた音)

 

「裏切ったなテメエーっ!? うっわ酒臭ぇ!?」

 

メコン川が助けを呼んだものの、その頼みにしたルプスレギナもまた酔っていた。

そして暴走していた。

 

「こんな食べ頃状態のメコン川様をほっとくなんて女がすたるっす! さあティナ!」

 

「合点!」

 

会ったばかりなのに息ぴったりの連携でメコン川の抵抗をいなし、

一枚一枚丁寧に服を脱がしていく2人。

メコン川は最後の希望、恐らく素面であろうネイアに助けを求めようとして―――

 

「フフフ良いではないか良いではないか……」

 

「えっ、ちょっと、あの、ティアさん!?」

 

泥酔したティアに迫られてしどろもどろなネイアを見て全てを諦め……きれず、

鮮魚のごとく暴れてみるが押さえ込まれ……ここでメコン川達とラキュースの時間が合流。

はっと我に返ったラキュースと、押さえ込まれたメコン川(少年体)の視線がぶつかり……

 

ごんごんごん。

 

都合三回のキリネイラムアタック(剣の腹で叩く)により、酔っ払い共は鎮圧されたのだという。

めでたくなしめでたくなし。

 

 

 

そして一同の酒も抜けた頃、ティア&ティナとルプスレギナは正座させられお説教を受けていた。 

 

「心配して駆けつけて見れば何やってるのあなたたち!

 それとあなた……誰だか知らないけど、酔って他人を襲うとか何考えてるの!」

 

「鬼ボス、もっと声を小さく……脳に響く」

 

「鬼リーダー、こっちの状態も考えるべき」

 

「くおお……甲高い高音が脳にキくっす……」

 

「分かっててやってるんです! 今度はガガーランにやってもらうからね!?」

 

酒は抜けたが酔った影響でガンガン痛む頭にラキュースのお説教を受け、

苦悶の表情を浮かべる3人。

酔いの上、ラキュースの愛剣、魔剣キリネイラムの腹でどつかれ、

どでかいたんこぶをこさえているからだ。

 

「まあまあ、その辺にしてやろうぜ、説教は。

 俺がうっかり出す酒間違えたってのもあるしよ……」

 

そこに割って入るメコン川。もう変化は解いてカワウソに戻っている。

それを救世主を見る眼で見つめる三人。しかしその顔はすぐに青ざめる事となった。

メコン川が大鍋いっぱいのアッツアツのおでんを取り出したからだ。

 

「あの、メコン川様。そのへんにしてくれるんじゃないんすか……?」

 

「おう、その辺にしといてやるよ。『説教は』な」

 

「メコンガワ、もしかして怒っている……?」

 

「怒ってると思うか? 忍者だろ、察して見ろ」

 

ティナがメコン川を見るも、

メコン川の表情はつぶらな瞳が半目になっているぐらいで正直よくわからない。

おでんの使い方はなんとなく察したので逃げようとするも、

 

「<魔法抵抗突破化(ペネトレートマジック)集団麻痺(マス・パラライズ)>」

 

メコン川の魔法で麻痺させられ、

顔面のあちこちとたんこぶに熱々おでんを押し付けられたのだという。

どっとはらい。

 

 

 

「本当にうちの子達がすいませんでした! よく言って聞かせるので平にご容赦を……」

 

「いやいや、さっきも言ったが半分は俺の自業自得よ。俺の誘い方も悪かったしな……」

 

また少し後、改めてメコン川達と蒼の薔薇一行は顔を突き合わせていた。

お互いの事情を話し、ひとまずは和解。今後の動向について話し合っていた。

 

「しかしまあ、十三英雄の魔剣を使うアダマンタイト級冒険者って聞いてたからよ、

 どんな厳つい大男かと思えば、随分な別嬪さんじゃねえの」

 

「そんな褒めても何も出ないわよ……って、その話は、誰から?」

 

「ん? ……ええと、そうだ、リクって奴だよ。白金色の全身鎧を着た奴でな。

 ダチ、と言うほど親しくはねえが、ちっと縁があってな。

 その辺りを軽く聞いてたんだ」

 

「リク……? 聞いたことがない名前ね」

 

リクとは、ツアーが最初名乗りかけた偽名である。

流石に一国の王に等しい相手が言っていた、と言う事を伏せる程度にはメコン川も頭は回る。

ルプスレギナ以外の者が首を傾げる中、一人だけその名に反応するものがいた。

赤いローブを纏った仮面の魔法詠唱者、イビルアイだ。

 

「おい、そいつは本当に『リク』と名乗ったんだな?

 そしてその白金色の鎧、竜を象った意匠があったろう」

 

「おう、そうだな。知り合いか?」

 

「そうだな……古い知り合いだ。ラキュース、こいつは信用できる。

 この間その『リク』から連絡があってな。むやみに血を流すことをよしとしない、

 人……まあカワウソだが、手を借りる分には問題ないだろう。

 実力も折り紙付きだ。はっきり言うが、恐らく私より強いぞ」

 

「へえ……イビルアイがそこまで言うなら、もうちょっと突っ込んで話してもよさそうね」

 

他言無用よ、と言い置いて、ラキュースは口を開く。

この依頼は、ラキュースの友人であるこのリ・エスティーゼ王国第三王女からの依頼である事。

八本指と一部の貴族が癒着し、民を食い物にしている現状を憂いた王女だが、

聡明ではあれど宮中において我を貫くほどの影響力はなく、私兵も持たないため、

善を成したいと思っていてもそのための力を行使できないのだという。

冒険者の不問律として(まつりごと)には関わらないのが常だが、

ラキュースやメンバーの義侠心からこの依頼を受け、麻薬畑を焼いて回っているらしい。

 

「なるほどねえ。こんな大っぴらにクスリを作るなんざ大それたことだと思ってたが、

 お上が手を回してるんだっていうなら納得だわな。

 ……いいぜ、面倒ごとには首突っ込む気はなかったがよ、

 弱いやつらを食い物にするカスは許しちゃおけねえ。

 連中のシノギがクスリだってのが特に気に入らねえしな。

 ルプスレギナにネイア、構わんな? 恐らくは人とやり合うことになるぜ」

 

ばしん、と拳を手に叩きつけるメコン川。

静かに闘志を燃やすメコン川に「了解っす!」と即答するルプスレギナ。

ネイアもまた同意したが、メコン川の様子を見て、不思議そうに声をかけた。

 

「これでも聖騎士志望です。無辜の人達を苦しめるやつらを許してはおけませんけど……

 メコンガワさん、何か、あったんですか?

 こう、うまく言葉にできないんですけど……なんか、すごいやる気出てるって言うか」

 

そう言われて、メコン川ははたと我に返ったように頭を掻く

 

「あー、まあ、そうだな。つい熱くなっちまった……

 連中のやり口が気に入らねえ、ってのが、まずあるよ。

 それに、麻薬を売りさばいてるってのがよ、昔を思い出して腹が立ってくるんだ」

 

考え込むように黙り込んでから、メコン川は口を開く。

ルプスレギナも知らぬ、ユグドラシルともまた違う世界の事を。

 

「俺の故郷はよ、まあ、控えめに言って詰んでた。

 世界には毒の空気が満ち、マスクを通さなけりゃ、肺が腐って死ぬ。

 暮らしもひどいもんさ、下々の人間なんざ、その日を生きるのが精一杯、

 そうして必死に働いて金を稼いでも、明日なんて見えやしねえ。

 毒の空気を遮断した街の中で暮らせるのなんて、ほんの一部の上流階級だけさ」

 

どこか昔を懐かしむように、遠い目で、メコン川は言う。

 

「だからよ、薬に手を出す奴はいたよ。黒粉とはまた違う奴だが……同じようなもんさ。

 苦しみから逃げるためにクスリをやって、薬に金をつぎ込み過ぎて金がなくなって、

 また金を稼ぐために無理して働いて、過労で倒れて働けなくなって、死ぬ。

 俺は運が良かったよ。腕っぷしは強かったからよ、金持ちに雇われて用心棒したり、

 賭け試合で稼いでよ、まあそこそこ裕福には暮らせてた。

 でもな、そんなもんは現実から目を背けてるだけさ。明日には死んでるかもしれねえ、

 そんな恐怖と戦いながら、毎日を必死に生きていた」

 

そして、ルプスレギナに目をやり、言葉を続ける。

 

「ルプスレギナや、古巣の皆と馬鹿やってんのは楽しかったぜ。

 まあ、長くは続かなかったし、最終的には4人しか残らなかったがな」

 

「メコン川様……」

 

「だからこそだ。こっちにきたのは偶然だけどよ、この国は、この世界はまだ間に合う。

 そして俺には、そのための力があるんだ、今はな」

 

この世は弱肉強食。強いものがすべてを勝ち取り、弱いものは強いものに従って生きるしかない。

だからこそ、強いものには責任がある、そうメコン川は語る。

 

「俺の国、獣王連合の国是は『弱者救済』そして『弱肉強食』よ。

 強い奴が、力あるものが世界を統べる。それが世界の法則って奴だ。

 だがな、強いやつには、弱いやつを守る義務がある。

 虐げるなんてことは、本当ならあっちゃならねえんだ」

 

「綺麗事だな。絵空事と言い換えてもいいが」

 

「だからこそ真剣(マジ)になる、本当(マジ)にする価値がある。そういうもんだろ?」

 

イビルアイのまぜっかえしに、ニヤリと笑って答えるメコン川。

そしてメコン川はラキュースの前に立ち、片手を差し出す。

 

「ナインズ・オウンゴール獣王連合盟主、獣王メコン川。

 『蒼の薔薇』に対する協力は惜しまねえ。言ってくれ、何からしたらいい?」

 

「アダマンタイト級冒険者『蒼の薔薇』、

 リーダー、ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ。

 全力で『綺麗事』をしに行くわ。皆、付き合ってくれる?」

 

メコン川の差し出した手を、強く握り返すラキュース。

 

「まあ、獣王連合(ウチ)は冒険者組合ねえし金もねえから、そっち方面の支援は期待せんでくれよ?」

 

「それなら仕方ないわね、戦力を借りるわ。差し当たってはあなたたちを」

 

握手を交わした後でメコン川がオチをつけ、その場の全員が大笑いする。

腐敗の蔓延した国、リ・エスティーゼ王国。その国が、良い方向に一歩、

踏み出した瞬間であった。




範囲麻痺が<集団~>なのか魔法効果範囲拡大化なのかは正直よくわかっておりません。支配は<集団~>のつく魔法あるんですが。

まあそんなわけで、ぐだぐだしましたが蒼の薔薇と協力体制を取ることになりました。
八本指の指が全部折れるのも時間の問題かも。
今回のあの酔っ払い大暴れシーン、多分人によっては好き嫌いあるとは思うんですが、
書いてる当人はあのシーン書きたくてしょうがなかったのでご容赦を……

メコン川さんの変化バリエーション、妖怪と言えば化けるもんだろう、という考えから何種類かのバリエーションがある、という設定にしてあります。この変化は基本的にガワが変わるだけなので中身のステは変わりませんが、この変化を習得していることが基点になる派生スキルが色々ある、という設定。
ドッペルゲンガーの変身とは似て非なるスキルのつもりです。
ちなみに変化セット『ルプスレギナの妹』の外見はオバマスの「レギィ(笑うメイス)」の年齢をネイアよりちょっと低いぐらいまで下げた感じ。

路徳さん、えりのるさん、誤字報告ありがとうございました。
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