【迷伝】ティータが見る獅子戦争   作:12club

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招かれざる来訪者

side:レミリア・スカーレット

 

 三途の川の此岸。

 私は霧深い川辺の先を覗くように、その時を待っていた。

 別に死にに来たわけじゃない。

 会わなければいけない人物がいるだけだ。

 ……まったく、用件があるならそちら側から我が館の門を叩くのが礼儀だというのに、彼岸の役人はわざわざ私を呼び付けて当然だと思っているのだから始末が悪い。

 そんな招待状に誘われて来てやった私も相当なお人好しだが。

 川辺から、その先を覗き込むように身を乗り出す。

 

「お嬢様、あまり前に出すぎると日に当たりますよ」

「ならおまえが私に合わせなさい。従者ともあろう者が主人に口答えするとは何事か」

「主人はと言えば、何でも従者が応えるとも思わないでください。労働対価の問題に発展しますよ」

「おだまり」

 

 言いながらも、咲夜は私に合わせて日傘を前へと差し出してくれた。

 これで口答えさえしなければ理想的な使用人なのだが。

 などと思っていた矢先、川の向こうから一艘の小舟が近付いてくるのが見えた。

 川辺に到着し、そこからひとりの人物が姿を現す。

 

「お待たせしました。レミリア・スカーレット」

「ふん、私を呼び出しておいてその上待たせるなんて、いったい何様のつもりだ、おまえは」

「仕事の量がいつも多いもので、暇を持て余すということがないのです。貴女とは違って」

 

 コイツ……。本気で一発ぶん殴ってやろうか。

 目の前の人物は、四季映姫・ヤマザナドゥ。例のティータ・ハイラルを蘇らせた張本人だ。

 

「それで、頼んだ例の件はきちんと果たしてくれましたか?」

「ああ、ティータに会ったよ。なかなか愉快な小娘だったな」

「そうでしょう。さすが私がミスって……じゃなかった、目をかけて蘇らせただけのことはあります」

「聞き捨てならないな」

「おや、私は何も言っていませんよ」

「都合のいい時だけ白黒つけようとするんだな、おまえは」

「それが裁判長としての務めですから」

 

 よし、殴ろう。

 用件を済ませてから一発くれてやることを固く誓いながら、私はグッと拳を握りしめる。

 それに気付いてかいないのか、目の前の裁判長は続けた。

 

「彼女、ティータは何か言っていましたか?」

「ああ、私の話は意味がよく分からんと、そう言われたよ」

「しかし、具体的なことは何も話していないのでしょう?」

「あの時、それでいいのであれば伝えたさ。でもそれは八雲紫が許さないんだろう」

「その通りです。それに私もそれを許すつもりはありません」

「一々おまえたちの機嫌なんか窺っていられるか」

「それでも、貴女はこらえてくれたのでしょう。その事については深く感謝いたします」

 

 そう言って、楽園の裁判長は深く腰を曲げて頭を下げた。

 少しくらいは力加減を考えてやるか。

 

「しかし、ですが」

「ああ、しかし、だな」

 

 四季映姫が頭を上げて私の視線と交わし合う。

 私は告げた。

 

「イヴァリースの戦乱は決して避けられない。これは決定事項だ」

 

 対して彼女は、コクリと頷いた。

 

 

 

 

 

side:ティータ・ハイラル

 

 平和です。

 昨日、酒場でレミリアさんと対話してからというものの、私も色々と考えさせられることがありましたが、おおむね生活は平穏です。

 安寧と激動。

 どちらを選ぶかという問いに対し、私は安寧を選びました。

 しかし、ゆくゆくは激動へと身を投じるのは眼に見えて分かります。

 ディリータ兄さんが、その先にいるのなら。

 動く前に、私たちには時間が必要です。

 私とラムザさんたち、動くことには彼らと共にあるのが必須条件だとレミリアさんは言いました。

 運命を見ることが出来る少女。

 果たしてその正体が本物なのか嘘なのか、判別付きかねますが、それと信じられる気迫が彼女から伝わりました。

 言っていることが抽象的過ぎて、昨日のことが夢のようにも感じられます。

 果たして、いま私はどうすればいいのか、それも分かりかねます。

 だからこそ、私たちには時間が必要なのです。

 抽象的な問いに対する具体的な答え。

 いずれは出さなくてはいけない問題だとしても、今はまだ時期尚早だと判断したので、とりあえず地に足がついた生活を送ろう、というのが私が答えを保留する理由でした。

 

「店長」

「なんだ」

「閑古鳥が鳴いてるなぁ、と」

「だったら掃除でもしてろ平民」

「はーい」

 

 店が忙しいかどうか関係なく、結局いまの私たちの生活は変わりません。

 ですが昨日のレミリアさんとの対話で、皆、戸惑っているのが分かりました。

 私もこんな風に見られていたのかなー、と同じく困惑する次第です。

 ふと、何か気付いたようにシグルドさんはぶっきらぼうに言います。

 

「おい平民」

「なんですか?」

「玄関を閉めて鍵かけてこい」

「? まだお昼過ぎですし、閉めるのは早すぎますよ?」

「今日の営業はもう終わりにする。その代わり、おまえの言っていた赤い館という場所に行く。案内しろ」

 

 やっぱりシグルドさんも、昨日の話に思うところがあったようです。

 不確定要素のシグルドさん。

 どうしてそう呼ばれていたのか、それはゲーム『ファイナルファンタジータクティクス』をプレイしていた私には何となく察しがつきました。

 シグルドさんという方は、ゲーム中にも存在しない。

 メタ的に言えば、彼はゲーム中に出てこないオリキャラだということですから。

 

「オヴェリア王女にも声をかけておけ。館に深入りしていたのはおまえら二人なんだからな」

「それは、まあ」

 

 特異点、と呼ばれた彼女のことも気にかかります。

 本来なら、ディリータ兄さんに助けられて、グレバドス教会にいいように扱われたオヴェリア様が今もまだ私たちと共にいる。

 ここで彼女を私たちが手放せば、私たちの運命がどう変わるか。

 良くも悪くも変化がある、ということでしょう。

 

「分かったならさっさと準備しろ」

「はーい」

 

 間延びした声音で返事します。

 焦っても仕方ない。

 けれど、シグルドさんはそうでもないみたいです。

 レミリアさんからもう少し情報を絞り上げたい、という気持ちは分からなくもありません。

 さっそくオヴェリア様にも声を掛けて、出発することにしました。

 

 

 

 ディアラ湖の畔から回り込んで、ランベリー城の裏手まで来て。

 

「あれ?」

 

 私は妙な違和感を覚えました。

 

「ここで合っているはず、よね」

 

 オヴェリア様も同じご意見な様子。

 先々日も訪れたあの館が。

 ない。

 

「どういうことだ?」

「どうもこうも、赤い館はこの辺りにあったはずなんですが……」

「訳の分からんことを言うな」

「訳も何も、その通りだからおかしいんですよ」

「狐か狸にでも騙されたんじゃねえのか?」

「おかしいですねぇ」

「オフィーリア、おまえも同じ意見か?」

 

 シグルドさんの言に、オヴェリア様はひとつ頷きます。

 

「ここに館があったのは違いないのよ。あれだけ目立つ外装の館だもの。間違えるはずがないわ」

 

 シグルドさん、チッと舌打ちして。

 

「まあいい。おまえらの記憶に頼ったのが間違いだったってことだ」

「でもでも、レミリアさんは昨日見たでしょう? あの方がここにあった館の主人だってことは間違いないんですよ」

「それは分からんでもないが、赤い館ってのはオレは知らん。おまえらが狐狸にでも化かされたんだろ」

「レミリアさんが狸だったってことですか?」

「あれだけ胡散臭いやつがまともな人間だったってことの方が、オレには間違いにしか思えんからな」

「神隠しにでもあったんですかねぇ、あの大きな館が」

「もしくは化かされたんだろ。だったらもうここに用はもうねえよ」

 

 「帰るぞ」と、出発の時は意気込んでいたのに、まさか空振りだったということで、シグルドさんのテンションもだだ下がりな模様。

 それは私たち二人も同じなんですけど。

 私はこっそりと、オヴェリア様に耳打ちします。

 

「オヴェリア様はどう考えます?」

「わからないわ。でもあの館が消え去ったっていうのは厳然たる事実のようね」

「しかしまあ、綺麗さっぱりなくなったものですね。私にはまだ信じられませんけど。でもシグルドさんも興味を失ったことですし、私たちも忘れた方がいいのかもしれませんね。というか、それを期待して館の方から消えてなくなったとしか思えません」

「どう考えようと、私たちにはもう縁はなくなったということね。結局、話の意図が掴めなくなったということの方が残念でならないわ」

「ですよね」

 

 こそこそとお喋りしている私が気に障ったのか、シグルドさんが私たちに向かって言い放ちます。

 

「おい、何をこそこそしていやがる。さっさと帰るぞ」

「あ、待ってくださいよ。店長ー」

 

 もう興味がなくなったと言わんばかりに、私たちの前をずんずん進んでいくシグルドさんを追いかけます。

 その後ろで、オヴェリア様が嘆息するのが聞こえました。

 

「……やれやれ、ね」

 

 仰る通りです。何が仰る通りかは、ともかくとして。

 

 

 

「はあ、骨折り損のくたびれ儲けでしたね」

 

 『喫茶シグルド』に戻ってきて、私はカウンターの席に着いてぐったりとしていました。

 一応、店は閉めてあるのですが、掃除などの雑務は残っていたので、一応ひらひらしたウェイトレスの制服に着替えてあります。

 シグルドさんは、何の収穫も無かったことに対して疲れたのか、屋敷の奥の部屋に引っ込んでしまう始末。

 

「まあ、仕方のないことじゃないかしら。私だってしっかりと覚えていたはずなのに、あれは夢だったようにしか思えなくなってきたもの」

 

 言いながら、オヴェリア様がホットティーを私の前に置いてくださいました。

 なんともはや、王女様自ら淹れてくれたお茶です。とても光栄です。

 カップに口を付けて少しすすると、あ、美味しい。

 お茶の香りとはちみつの甘みが私の体と心の疲れを癒してくれました。

 

「うーん、でもまあ。イヴァリースじゃこの程度のこと、日常茶飯事なのでしょうか」

「こんなことが毎日行われていても私は困るわ」

「そうですよねぇ」

 

 私にとってはここはゲームの世界。

 だから何が起ころうとも不思議とは思わなかったのですが、やはりいざ目の前にしてしまうとやっぱり夢だったのかな、と思考が誘導されていくようです。

 というか、記憶の方から無理矢理あの館のことを忘れたがっているような、そんな錯覚にも陥ってしまいます。

 

「ティータ、あまり気にし過ぎても心にしこりが残るだけよ。なくなったものは仕方ないのだから、このことは私たちの胸の内に留めておくことにしましょう」

 

 そうしていつかは忘れてしまうのか、そう口に出してしまいそうなところ。

 

 ドンドンドン。

 

 と、強めに店のドアを叩く音が聞こえました。

 おかしいな。

 もう今日は店じまいしていて、CLOSEDの看板も吊り下げてあるはずなのに。

 オヴェリア様が静々と店の入り口に向かいます。

 

「どちらさまでしょうか。恐れながら当店は既に営業を終了していますが」

 

 その声に応えるように、外から店内に声が響きます。

 

「営業終了の時分に申し訳ない。少し訪ねたいことがある。どうか入り口を開けてはもらえないだろうか」

 

 あれ、この声は……。

 オヴェリア様、無警戒にドアを開こうとします。

 あ、ちょっと待って。何か嫌な予感が――。

 

 ――がちゃり。

 

 開いたドアから見えた、その姿は。

 

「オヴェリア様……!?」

「アグリアス!!」

 

 うわぁ、嫌な予感的中……。

 即座に脳が猛回転して、なんとか場を収める方法がないかと思索し始めますが。

 

「なンだ。意外とすぐに見つかるじゃねえか。北天騎士団の警邏範囲から離れていたっていう予想は案外当たっていたもンだな」

 

 げげっ、この声……、まさかガフガリオンさんも一緒!?

 私は慌てて入口へ向かって駆け出しました。

 

「すみません、すみませんが当店はもう営業時間外でして……!」

「おまえは、確かラムザと一緒に逐電した小娘……大当たりじゃねえか」

 

 くつくつと、いやーな笑みを浮かべながらガフガリオンさんが笑います。

 やばい、顔バレしてるどころか、ピンポイントで私たちの居場所が割れるなんて……!

 

「おい、小娘。どうせラムザのやつも一緒なンだろ? 怒ってねえから顔出せって呼ンできな」

 

 やばいやばいやばい、この窮状、一体どうやって切り抜ければ……!

 

「……営業は終了しているけれど、せっかく来てくれたのだもの。上がりなさい、二人とも」

「オヴェリア様!?」

「いいから、貴女はラムザを呼んできて。シグルドには黙っておくようにね」

「わ、わかりました」

 

 もう何が何やら……。

 でも話の主導権はオヴェリア様が握ってくれる様子。

 今のうちにラムザさんを呼んでこないと。

 私はパタパタと屋敷の奥へと走って、ラムザさんの部屋を目指しました。

 

 

 

 

 

side:オヴェリア・アトカーシャ

 

 厄介事は忘れた頃にやってくる……。

 正直、本当にやっかんでいた訳ではないけれど、今は状況がまずい。

 

「探しましたよ、オヴェリア様。その服装は一体?」

「私は今この店で厄介になっているの。メイド……、いえ、ウェイトレスをやっているのよ」

「そんな下賎なことを……オヴェリア様がなさる必要はございません」

「下賎だなんて。私はそんなこと、一度も考えたことは無いわ」

「しかし……」

 

 バタバタと、屋敷の奥から駆け足でこちらに向かってくる足音が聞こえた。

 早くもティータがラムザを連れてきたみたい。

 

「アグリアスさん! ガフガリオン!」

「よう、ラムザ。意外と元気そうだな」

「元気そう、じゃない! なぜ貴方がここに!?」

「元々はしらみつぶしに探すつもりだったンだよ。案外早く見つかったのは運がよかったみたいだな」

 

 ぐっ、と息を詰まらせるラムザ。

 彼もまた、この状況をどうしていいか分からないみたい。

 実際問題、私にだってどうしようもないことくらいは分かっている。

 でも。

 

「さ、オヴェリア様。ガリオンヌへ参りましょう。ラーグ公も首を長くしてお待ちになっているはずですよ」

 

 アグリアスが簡潔に用件を述べる。

 というか、元々がその予定だった。

 それがティータとラムザに連れ出されて、まあ無理矢理とは言わないけれど、ここまで連れてこられただけに過ぎない。

 だから、アグリアスの言うことはもっともなのだけれど。

 

「……帰ってちょうだい」

「オヴェリア様……?」

「私は今の、ここでの生活が気に入っているの。ラーグ公の元に連れていかれたら、また私は籠の中の鳥になってしまう。ガリオンヌには、あくまで私の意思で行かない。そう伝えてもらえないかしら」

「そんなこと、そう簡単に要望を聞くわけには参りません。ラーグ公の元に参るのは王家の意思。オヴェリア様は養女であるとはいえ、王家の血を引く者。そのような方が王家に逆らうなどということ、あってはなりません」

「私こそ、それくらいのことは承知しているわ。けれど私はアトカーシャ家の血を引く者。どれだけこの身が自由を許されないことだとしても、心まで縛られるつもりはないわ。たとえ貴女が言う、下賎な立場だとしても。だから、私のことは忘れて王都に戻ってもらえない?」

「そのように仰られても、私こそ王家の命によりオヴェリア様をお連れする身の上。その命に逆らうことなど承知いたしかねます」

「我が侭を言っていることは充分理解しているわ。でもだからこそ、貴女の言う王家の命には従えない。誰にも私の心を縛らせるつもりはない」

 

 話の主導権はこちらが握っている。

 アグリアスが諦めてくれるまで、私は私の意思を貫けばいい。

 と。

 

「いいじゃねえか、アグリアス。ここは一旦出直すとしようぜ」

「ガフガリオン! 貴様、裏切るつもりか!?」

「裏切るも何も、王女はここでの暮らしが気に入っているンだろ? それにこの強情っぷりだ。話し合うのが無理なら、ここは出直した方が話は早い。急がば回れとも言うしな」

「くッ……」

 

 アグリアスは言葉を詰まらせる。

 意外だ。護衛隊が私の言い分をあっさりと聞いてくれるなんて。

 

「……いいでしょう。この場は退きます。ですがオヴェリア様、貴女にはどうしてもラーグ公の元に来ていただきます。それをお忘れなきよう」

「アグリアス……」

 

 口惜し気に、アグリアスが私に背を向けた。

 そのまま足早に、その場から去っていく。

 ガフガリオンと呼ばれた剣士も私に背を向けた。

 

「感謝します、ガフガリオンさん。ですが私のこの意思、曲げるつもりはないこと、よろしくお願いします」

「ま、それがあンたの意思ならしょうがないわな。ラムザ、おまえもそれでいいンだろ?」

 

 ラムザは、とりあえずひとまずの危機は去ったと見てか、コクリと頷いた。

 

「ガフガリオン、感謝する。出来ればこのまま諦めてくれると嬉しい。それがオヴェリア様のご意思なのだから」

「おまえのその態度を見てりゃそれくらいは分かるよ。アグリアスはしつこく来るだろうが、まああいつもあいつで使命を果たさなきゃいけない身なンだ。それくらいは分かるよな?」

「オヴェリア様はもう既に自分の道を決めていらっしゃる。出来ればガフガリオンからもアグリアスさんにそう口添えしてほしい」

「その辺はあンまり期待するンじゃねえよ。じゃあな」

 

 そう言って、ガフガリオンさんも去っていった。

 

「ごめんなさい……、アグリアス」

 

 心の底から、そうアグリアスに詫びることしか出来なかった。

 私はティータの方へと眼を向けて。

 

「心配しないで、ティータ。私だって貴女に迷惑をかけるつもりはないわ」

「しかし、オヴェリア様……」

「あのレミリアが言っていたでしょう。貴女には私が必要なんだって。その言葉、忘れたわけではないから」

「……ッ! あ、ありがとうございます!」

 

 感極まってか、ティータは私の手を取って感謝の意を示した。

 私には、私の大切なものを守る自由がある。それが分かった以上、私は王家の血を引く者としてその血に反することは出来ない。

 私は、オヴェリア・アトカーシャ。

 誰にも私を利用させるつもりはないのだから。

 

 

 

 

 

side:ガフ・ガフガリオン

 

 王女はあの店に居付いているのか。そうかそうか。

 ならいくらでもやりようはある。

 オレはアグリアスには秘密裏に、北天騎士団の騎士を呼ンでおいた。

 

「すぐに南天騎士団に偽装した部隊を集めろ。さっさと片を付ける。やるのは今週中だ。それまでは用心深く、事態の推移を見守る。やる時は一気にやるぞ。いいな」

 

 それに頷いた騎士がオレの元から去っていった。

 準備は怠りなく、慎重かつ大胆に事を済ませる。

 王女たち――奴らはまだ逃げ回るつもりはない心算でいるらしい。

 一気に歩を詰める。

 奴らの甘さを、その身でしかと味わわせてやろう。

 オレはくつくつと、暗く、しかし愉快な笑みを浮かべた。

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