side:ティータ・ハイラル
どざーっ、と。
バケツを引っくり返したような大雨が辺りを覆い尽くしていました。
通り雨みたいですから、直に引くでしょう。
しかし。そう、しかしなのです。
オヴェリア様、ランベリー領でご遊興。
などと、昨日は迂闊なことをしてしまいましたが、今日も『喫茶シグルド』は平和です。
でもいざという時のために、私たちは自分の荷物をまとめておきました。
いざこざが起きる、いえ、起こしてしまう前に、私たちはここを去らねばならないかもしれません。
それに対してシグルドさんは。
「おまえのせいでこの店が切り盛りできなくなったらホントに路頭に迷っちまう。責任取れるんだろうな」
と、やっぱり冷たい言葉をいただきました。
大丈夫、何かが起きる前に私たちはここを去るつもりです。
いささか急な話になってしまいましたが、ご迷惑をかけるつもりは毛頭ありません。
しかし。
「シグルドさん、やっぱり一緒には来ていただけないですか?」
「当たり前だ。なんの道楽でおまえに付いていかなきゃならんのだ」
ラムザさん、オヴェリア様、そしてシグルドさん。
私に必要なのはこの三人。
そう仄めかした少女がいました。
今となっては夢うつつの出来事だったのですが、そのことだけは忘れていません。
ただし、その真意は結局つかめないままです。
なのでシグルドさんを無理矢理連れて行くのはややお門違いの面が多いのですが。
「……まあ気が向いたら出向いてやる。行き先くらいは聞かせろ」
やっぱり、優しい。
お人好しなシグルドさんの懐の大きさに感謝感激です。
「南のライオネル領に逃げ込むつもりです。あそこもまたグレバドス教会の所轄領。北天騎士団に眼を付けられたとしても、充分に逃げられる可能性がありますから」
「逃げて逃げて、逃げ回って。おまえらは本当にそれでいいのか?」
「よくはありませんが、オヴェリア様の無事が第一です。ディリータ兄さんに追い付くには、オヴェリア様の存在が必須。それならそれで、あちらからコンタクトがあるはずです」
「今のオレには、まあ気をつけなとしか言えねえがな。出ていくならさっさと出ていけ」
「はい、シグルドさんにはお世話になってばかりで恐縮ですが、シグルドさんも身辺にはご注意なさってください」
「わかってるっての」
「では今日の業務に戻りますので」
「……チッ」
露骨な舌打ち。
無理もありませんが、やっぱりお別れは辛いです。
私もあのひらひらしたウェイトレス姿、嫌いではなかったのですが。
「どうだったの。ティータ」
「やっぱり邪険に扱われました。それもこれも私の不徳の次第です」
「私は別に構わないわ。それじゃ――」
――チリンチリン。
と、お客さん来訪のベルが玄関から鳴り響いてきました。
「はい、ただいま」
オヴェリア様がご来店のお客さんの元へ向かいます。
「あら、貴方は……」
「ああ、きみか。オフィーリア。先日はパフェをご馳走になったな。ありがとう」
私も急いでそちらに向かいます。
そこに立っていたのは、ウィーグラフさん。
この通り雨にやられたのか、ずぶ濡れでした。
「何か拭くものはないかね。急に降られてな」
「ティータ」
オヴェリア様が私の方を向いて声掛けされます。
「あっはい。すぐにお持ちしますね」
「ウィーグラフ様、良ければ玄関ではなく店内へ。すぐ部屋を暖めますわ」
言われて、ウィーグラフさんは。
「すまない、恩に着る」
ペコリと小さく頭を下げました。
私は店内からバスタオルを一枚持ってきて差し出します。
「風邪でも引いたら大変です。鎧兜はお脱ぎになって、少しでも服を乾かしてくださいね」
「うむ。その間にホットコーヒーでも頼むとするかな。外は随分と冷えているからな」
言って、ウィーグラフさんは銅貨を一枚、ピンと私に向かって弾きました。
吸い込まれるように私の手元にそれが届きます。
地味ですが、なんだか人に自慢できそうな妙技。
「ティータ、ホットコーヒーの準備をして。私はラムザたちを呼んでくるから」
「ああ、そうですね。せっかくウィーグラフさんにも来ていただいたことですし」
「察しがいいわね」
そう言って、オヴェリア様は静々と邸内の奥へ引っ込んでいきました。
「そんなに気を遣わずとも構わないのだがな。どうせ喧嘩になるのは眼に見えている」
「まあそんなことは言わずに。ラムザさんだってもう本気で怒ってはいませんよ」
「奴もまた成長しているということか。これもきみたちのおかげだな。ラムザがきみたちと出会えたのは幸運なことだ」
「ええ、ホントに――」
――ドーン……!
一瞬、稲光が閃いてどこかで雷が落ちました。
外を見てみると、通り雨は既にどこかに行ってしまって、雲間からは晴れた空が見渡せます。
しかし、先ほどから雷雲が鎮座ましましており、まだまだ予断は許されない様子。
「晴れるといいんですけどね」
「そうだな……。ん?」
不意にウィーグラフさんは立ち上がり、玄関へと足早に駆けていきます。
「あ、ウィーグラフさん。コーヒーの準備はまだですよ?」
「匂うのだ」
そう言って、軽装のまま玄関を開きます。
そこに。
ドンッ!!
爆発音が勢いよく鳴り響きました。
爆炎が燃え盛り、喫茶シグルドの悪趣味な花々が炎を散らしています。
「な、なに? 何事ですか!?」
「ティータ、下がれ!!」
ウィーグラフさんが狼狽える私を制して、抜剣しました。
先の爆発音を聞きつけてか、オヴェリア様とラムザさん、シグルドさんが駆け付けます。
「ウィーグラフ! 一体どうしたんだ!?」
「気を付けろラムザ! 敵襲だ!」
表は既に紅蓮の業火に包まれつつありました。それというもの、玄関に飾られている悪趣味な植物のせいで……って、愚痴っている暇はありません!
「逃げ場は無いぞ!!」
外から男の怒鳴り声が響きます。
「王女誘拐の実行犯、大人しく出てこい!!」
「そうすれば貴様らの命だけは助けてやるぞ!!」
まさか……北天騎士団!?
ミルウーダさんから受け取った情報によれば、まだ当分、見つかるまで時間がかかると思っていたのに!
それもこれも、昨日の私のせいってことになるのでしょうか!?
「女子供は裏手に回れ! 裏口くらいはあるのだろう? 即刻この店から脱出しろ!」
ウィーグラフさんの檄に、私たちは頷いて邸内の裏口目指して走り抜けようとします。
「ウィーグラフ! 加勢する!」
「無用だ、ラムザ! おまえは彼女たちの護衛に回れ! 賊どもは私が引き受けた!」
「……くッ!」
その声に圧されて、ラムザさんは私たちの後ろを守るように追従しました。
「どうした! 早く行け、ラムザ!!」
「みんな、僕の後について走れ! 大丈夫、皆のことは絶対に守るから!!」
私たちは必死の思いで、ラムザさんの後に続いて邸内を駆けます。
何故こんなことに……。
私の見通しが甘かったせいで、オヴェリア様やシグルドさんにこんな迷惑をかける形になるだなんて……!
「みんな、急げ!!」
ラムザさんの叫びに応えるように、私たちは邸内の裏口を目指します。
しかし。
「いたぞ!」
「一人も逃すな!」
こちらもまた、既に封鎖されている模様。
北天騎士団……組織だって来られると、やはり厄介――!?
「――いえ、これは……!」
「気付いたか、ティータ」
「ええ、北天騎士団じゃない……! あの軍装は、骸旅団です!」
裏口もまた火の手が上がっていて、バチバチと火花を散らしています。
そこに現れたのは。
「まだこんな所にいたのね」
「ミルウーダさん!!」
「僥倖、と言っていいのかしら。表の北天騎士団の動きは鈍いようだけれど、まあ最初から当てにはしていないわ」
ミルウーダさんが抜剣し、私たちへとその剣先を向けます。
「ミルウーダ! 裏切ったのか!?」
「そういうことになるわね。北天騎士団に代わって、オヴェリア王女の命をいただいていくのも悪くないわね。どうせ私たちは捨て駒にされる運命だし、少しは色を付けてもらわないと」
「何故こんなことをする? きみたちが僕らを裏切っても、何の得も無いはず!」
「それがあるのよ。ねえ、ティータ嬢?」
私が……?
「貴女のことは前々から注視していたのよ。いずれ貴女はこのイヴァリースの混乱の中心となる。言っている意味、分かるわよね?」
「……何のことだかさっぱり分かりません。私がどうしてイヴァリースを混乱させなければならないんですか?」
「そこのラムザは貴女のことを信じて疑わないでしょうけど、貴女自身は分かっているはず。貴女はこの世界にいてはならない。オヴェリア王女を守っている貴女は、それがどういうことか分かっているでしょう?」
「私がオヴェリア様をお守りすることが、イヴァリースに混乱を巻き起こす、ということですか? そんなの、事実無根の言いがかりです」
「王女は始末されなければならないのよ。このイヴァリースが平穏無事に保たれるには、ね。それを守る貴女は邪魔なの。それにね」
すっと息を吸い、次の言葉を紡ぎます。
「貴女の存在は歪。千里先を見通すような眼力と、この国の未来をたかが小娘ひとりとを天秤にかけて歴史を書き換える暴力的な知見。それだけが貴女を殺す理由になるのよ」
「そんなこと……それこそただの荒唐無稽な言いがかりじゃないですか!」
「そうでないことは貴女自身がよく理解しているでしょう。これはこの国にとって必要な仕置きなのよ」
言って、ミルウーダさんはラムザさんへと視線を向けました。
「ねえ、ラムザ・ベオルブ。貴方も実は分かっているみたいで、本当は納得していないんでしょう? 彼女という存在がどれだけ歪んで存在しているのかどうか。違和感は拭えていないはず。分かったらさっさとその娘を渡してもらえないかしら?」
「……また弱い者を犠牲にしようというのか」
ラムザさんは私の前に一歩、足を踏み出します。
「そんなことはさせない。あの時のような、ティータを失った時の絶望は繰り返してはいけないんだ!」
「言って聞かせてはもらえないみたいね」
ジリ、とミルウーダさんが距離を詰めます。
それに合わせて、ラムザさんも抜剣しました。
「一年前のあの時のようにはいかないわよ、ラムザ!」
「僕はオヴェリア様を……、ティータを助ける!!」
「おい平民、こっちだ」
「シグルドさん?」
「この部屋の先に隠し通路がある。そこからならこの包囲を抜け出せるはずだ。おまえたちは先に行け」
「先に……って、シグルドさんとラムザさんはどうするんですか!?」
「おまえらが逃げた後で追い付くからよ。ラムザのことは任せておけ」
「でも……」
「グズグズするな、この平民! さっさとそっちのオヴェリア王女を連れて逃げろ!」
「……こちらの方はオヴェリア王女ではありません。よく似た顔のオフィーリアさんです」
「ああ、そうかい。だったらどうした。早く行け!」
「……ッ、ご武運を……」
それだけ言い残して、私はオヴェリア様の手を引いてその部屋へと駆け込みました。
「ティータ……」
「すみません、オヴェリア様。私のせいでこんなことに……」
「構わないわ。だけど、ラムザやシグルドのことは」
「シグルドさんは後から追い付く、と言っていました。今はそれを信じましょう」
「そう、ね……」
「オヴェリア様?」
「……やっぱり私は生きていてはいけなかったのではないかしら。大人しくラーグ公に引き渡されていた方が、この国のためには仕方ないことだと――」
――パシンッ!
思わず私はオヴェリア様の頬を張り付けていました。
「それは言わないでって、昨日も言ったじゃないですか……。今は生き延びることだけを考えてください」
「ッ……」
張られて赤くなった頬を撫でて、無気力な眼差しを落とすオヴェリア様。
「ご無礼を、オヴェリア様。ですが、貴女も自分の命を軽く見ないでください。何のためにラムザさんたちが居残ったのか、その意味を考えてください」
「ティータ……」
「さあ、お早く!」
side:ウィーグラフ・フォルズ
北天騎士団の騎士のひとりを打ち払い、私は一息ついた。
もう何人斬り伏せたか数えることすら頭にはない。
だが。
「おうおう、やるじゃねえか。さすがはあの骸騎士団の団長を張ってただけはあるな。なあウィーグラフ」
「貴様らごときに後れは取らん。さっさと尻尾を巻いて逃げ出すのだな」
「言うねえ。だがオヴェリア王女だけは始末しなければならンのでな。おまえこそさっさと逃げてラムザやあの娘たちと合流するンだな。まとめて始末してやるからよ」
「させると思うか?」
「肩で息しながら言われてもな」
言って、ガフガリオンが指笛を鳴らす。
その瞬間、背後から騎士が数人、まとまって私を襲撃してきた。
「伏兵!?」
直感を頼りに、私は剣をそちらに向けた。
一合、二合と剣を合わせてその攻撃を凌ぐ。
「あめえよ」
ドシュッ!!
無防備を晒した私を背後から、ガフガリオンの剣が貫き通した。
「ぐッ……かはッ……!」
「よく頑張ったがここまでだ」
ガフガリオンが剣を抜き、その拍子に私は倒れ伏す。
「くッ……、ラムザ……、ティー……タ」
ガフガリオンの剣は肺を貫いていた。
自分でもわかる。致命傷だ。
「こんな……所で……私は、死ぬ……のか」
ゴホッゴホッと咳を吐くと同時に喀血する。
「ミルウーダとも……会えずに……こんな所で……余りにも……無様な」
もはや墳血するだけの体に成り下がった。
私はもう手足を動かすだけの力もない。
「嫌だ……こんな、無様な死に方……は……余りにも……。誰……か……」
意識を失いかけた私の懐から、何かが転げ落ちる。
それは。
ゾディアックストーン。
かつて神殿騎士から受け取った、聖石だった。
それが。
まるで何かの意志を持ったかのように、自然と浮かび上がる。
『聖石を持つ者よ……我と、契約を結べ……』
「おい……、なンだ、これは……?」
『汝の絶望と悲憤が、我を呼び起こした……契約を結べ……。さすれば汝の肉体は蘇り、未来永劫の時を超える不死の力と知識を得るだろう。さあ、契約を結べ……』
「これが……聖石の秘密……?」
『さあ、聖石を持つ者よ……。我と契約を結べ……』
私は最後の力を振り絞って。
「助けて……くれ……」
自分でもみっともないと思うほどに、助けを乞うていた。
『我が名は魔人ベリアス……汝の願いを叶えよう……』
聖石が激しく光を放ち、魂の塊ともいうような気配が私にまとわりつく。
それは。
悲しみであり、慈しみであり。憎しみであり、許しであり。
様々な感情が集まったものだった。
私を包み込んでいた光が爆発するかのように中空へと霧散した。
そうして現れたのは。
先の傷の痛みも無ければ、ぼやけた脳でもない。
ただ無限の力を得た肉体と、幾百年を超える知識が、私の中で血と共に巡り、満ちていた。
『これが聖石の力か……!』
異形の肉体と化した私を、慄く騎士たちが遠巻きに眺めている。
『フンッ!!』
ブオンッ!!
腕の一振りだけで強烈な衝撃波が巻き起こる。それに煽られた騎士たちが一息に吹き飛ばされて、したたかにその体を屋敷の壁に打ち付けた。
「チッ……何だってンだコレは」
ガフガリオンが指笛を鳴らした。
外からチョコボが疾駆してきて、その勢いのままにガフガリオンが飛び乗る。
私へ振り向くことなく、奴はそのまま屋敷から撤退していった。
『逃したか……』
私は逃げたガフガリオンからは砂粒ほどの興味すら失い、屋敷の中へと踏み入った。
まだラムザが、邸内に侵入してきた賊どもと戦っているはずだ。
side:ラムザ・ベオルブ
ガキィン!!
僕の剣がミルウーダの剣と噛み合う。
先のセリフは伊達じゃない。
傭兵として鳴らした僕の剣技と何の遜色もない、剛の剣だ。
一合、二合……いや、さらに僕の剣に噛み付いてくる。どんどんと、その剣閃が速くなる。
そして。
キィン!!
僕の手からついに、剣が吹き飛んだ。
無手になった僕の鼻先に、ミルウーダが剣先を突き付ける。
「勝負あったわね」
「くそッ……!」
その時。
うわんッ、と空気が。
いや。
空間が揺らめいた。
「なにッ!?」
「なんだ!?」
僕とミルウーダは同時に、そのたわんだ空間へと眼を向ける。
そこに現れたのは。
ズシン。
羊の頭と、四本の怪腕を携えた巨大な異形だった。
「何なの!? この怪物は!?」
『ミルウーダか……おまえは私を怪物と呼ぶのだな……』
「くッ!」
ミルウーダが手を掲げて、他の団員に向けてその手を振った。
「撤退! 撤退よ!! 今すぐこの場所を離れなさい!!」
号令をかけるや否や、ミルウーダは即座に邸内から脱出していった。
団員もまたそれに追従して屋敷から撤収する。
しかし僕の眼はその異形に注がれたままで、逃走した骸旅団を追うことは無かった。
光が――満ちる。
その異形を包み込んだ光から、人の姿が現れた。
「ウィーグラフ……!?」
「ラムザ……」
ウィーグラフは無言のまま、屋敷の一部屋を指差す。
「行け、ラムザ……。ティータたちはあの部屋から外へと逃れた……」
「ウィーグラフ、なのか? おまえは一体……」
「行け……、ラムザ」
僕は弾き飛ばされた剣を一足飛びで、その手に戻し。
ウィーグラフへと視線を向けた。
どこか亡羊とした表情の彼からは、何の気配も感じられない。
ガフガリオンは? さっきの異形は一体……?
答えの出ない問答を頭の中で繰り返し、僕は剣を鞘に納める。
「……すまない。恩に着る、ウィーグラフ」
僕は脱兎のごとく、ウィーグラフが示した部屋へと入り込んだ。
side:ウィーグラフ・フォルズ
私の中で力が、知識が渦巻く。
聖石の力で得たそれらの全知全能の高揚感は、全く逆の零知零能の虚脱感へと変じていた。
確かにこの力は尊く、そして素晴らしい。
だが同時に、この力はあまりにも人の手に余る。
まるで己自身が神にでもなったかのような多幸感。
しかしそれは、麻薬と同じだ。
力は、力だ。
ただそれを振るう者、それ次第で幾つもの悲劇喜劇を演ずる。
私は、私だ。
この力はあくまでも、ただの力でしかない。
私はそう戒めた。
力があろうとなかろうと、私がやることは変わらない。
ラムザ……。ティータ……。ミルウーダ……。そして人間は……。
おまえたちはどこから来て、どこまで行く?
この力はそれを見届けるためにあるのではないか。
私は神に等しい存在となった。
で、あれば。
私は慈しむ。全ての人を。
この混沌とした世界に、大地に根をつける全てを。
そして私は、業火に包まれたシグルドの屋敷から姿を消した。