【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
一度は止めたことですが、やっぱり書きたくなってしまいました。
なんとも意志が弱く恥ずかしいことですが、お付き合いいただけたら幸いでございます。
ソロモンの白狼
輝く星々が幻想を見せる宙は平穏には収まらなかった。
宇宙の人民を代表したジオン公国が、地球連邦に対して宣戦を布告して大戦争が始まったのである。
戦いは激しさを増した。ジオン軍による地球降下作戦に始まる地球上の戦闘は未だに続いており、地上と隔絶された宇宙は傍観者となることを許されなかった。宇宙でもジオン軍と地球連邦軍の戦いは各地で行われて互いに損害を出し、数多もの命が散って行くのにもかかわらず、誰も戦いを止めようとしなかった。それもそのはずである。始まってしまった以上は片方が完全につぶれるまで戦い続ける定めなのだから。
そんな戦争に身を投じ「ソロモンの白狼」と敵味方問わず恐れられたエースは抗い続ける。
後世に英雄として称えらた彼は抗い続けた。
「く、くるなぁぁぁ!」
「おざなりな機体でザクに勝てると思うな」
これで10機目か。
私がこの世界に来てから右も左も分からない中で、死を覚悟して戦ってから10機目の敵機撃墜を記録した。本当の私はこの世界の住民ではなく、むしろこの世界を楽しんで見ていた世界の住民である。分かり易くすると、要はこの世界に生まれ変わってしまった。そんな都合のいいことがあるわけないと思うだろうが、現実は時にして捩じり曲がる。言い逃れのできない現実として、私はこの世界に来てしまってジオン軍のエースとして戦わされる運命を担わされた。それも、この世界ではエースの中でも情報が少ない割に重要な立ち位置にあるシン・マツナガになってしまうとは。なんとも、運が良いのか悪いのか分からなかった。
「甘いわぁ!」
こうして敵機の攻撃を避けてカウンターを決めることも慣れてしまった。当初は勝手に体が動いて機体を操縦してくれた。正直を言えば、頭は何にも働かないでいて一種の無意識の状態で戦ってきた。しかし、この世界に数か月も過ごしてしまえば人間の適応能力の高さを思い知る。昔からここで生きて戦ってきたかのようになってしまうのだから驚きである。自分の大元を構成するシン・マツナガ様の人生・能力・経験を全部与えられたら無敵であろう。階級は言う程あまり高くはないが、バックにいる存在が超ビッグのため誰も手出しできず、むしろすり寄る者が多く困ることがあり得た。
まぁ、これも良い経験になって生き残る糧になるが。
とにかく、孤高の白狼は生き続けたかった。
(初期生産型の量産機のモビルスーツか。例の悪魔と出会うのが随分先になるだけ感謝すべきだな)
「すげぇ…」
「バケモンだろ…」
「あんな機動はできねぇ…」
通信越しに関わりのない味方機のパイロットが感嘆する声が漏れ聞こえる。自分としては別に特別な動きはしていないつもりだったが、安全を確保した上で傍から見ていると凄まじい機動だったらしい。確かに身体及び頭脳はジオンの恐ろしきエース白狼であり、且つ、こちらに来てからは手前味噌で恐縮だが密かに研究と訓練に励んだ。自分がエースの腕前のためシミュレーター訓練は最高難易度を何度も反復し、有している知識のエッセンスを加えた戦術を編み出しては実戦で試して磨いた。素体が抜群に優れるパイロットは、訓練と実戦で磨かれることにより晴れて輝く宝石になる。
「敵は撤退を開始。帰投してください」
「了解した。シン・マツナガ機、帰投する」
今回の戦闘もあっけなく終わった。たかだが極初期の先行生産型モビルスーツ相手に、歴戦のザクⅡFS型(SM)が苦戦するわけがない。隊長向けに性能を向上させ、更に自分向けに限界までチューンアップが施された機体である。そして操るのが私(シン・マツナガ)であれば互角の勝負が奇跡と言えた。エースが守る宙域で戦闘を続けると全滅の恐れがあるため連邦軍は撤退する。とりあえず、今日も生き残ることが出来たのだから様々な人に感謝したく思った。
単調な動きで母地に戻る。
そこは金平糖のような形状をする宇宙要塞・ソロモンだ。
オペレーターのガイドに従ってゆっくりとブロックに戻った。中では先に戻っていた隊の機体が整備を受けており、その一部は激しい戦闘をしたのか痛々しい弾痕が見える。連邦軍は極初期だが、我らジオンを真似てモビルスーツを開発しては戦争に投じた。まだまだ機体も兵も未熟なため、私にとっては赤子同然だが友軍機が撃破されることは珍しくなかった。幸いにも試験的な量産機のためか、高価なビーム兵器を運用することは不可能らしく、ザクと同じくマシンガンを使用しているらしい。同じとは言え、マシンガンはれっきとした武器のため決して侮れなかった。当たり所によっては貫徹されなねない。
「機体を頼む」
機体は無傷であるが、激しい機動戦を行うため多大な負荷がかかった。見た目は綺麗でも中身は悲鳴を上げている。ただでさえ限界まで性能を引き上げたFS型だからこそ、丁寧に手を入れなければならない。餅は餅屋として戦闘屋は首を突っ込まずに退いて整備屋に整備は頼んだ。
「中尉!」
「ん、どうした。ジェイ」
「すいません。ちょっと折り入ってご相談が…」
「わかった。FSの整備が終わる頃に来ればいいか?」
「はい、こちらからお呼びするので」
ブロックから離脱を図った際に、私を呼び止めたのは整備担当のジェイ・アーランド君だった。まだ若く戦争をあまり知らない節があるものの、肝心のメカニックとしての腕前は見事であり、整備兵泣かせのFSを綺麗に仕上げてくれる。私は彼に絶対の信頼を置いていて、機体のチューンアップも任せている。
今更になるが、この世界のシン・マツナガとして生きている以上は相応の態度で過ごす。口調などは自分が知る限りとアドリブで演じた。本当の自分とは随分と乖離してしまって忘れそうになることが多い。であれば、この世界に完全に呑み込まれてみるのも悪くないかもしれなかった。
(さて、どうして時間を潰そうか。よし、まずは小腹を埋めることが優先だ)
一戦闘すれば腹が空くものだった。死を免れるため神経を研ぎ澄まし、思考を常時ぶん回せば必然的に腹が減る。自分のようなエースで階級も少し高いと良い食事を得られるが、あまりにも優遇されると嫌になりかけた。良い食事も続けば飽きるため、誰でも使える自動販売機の軽食を頼るとしよう。
その自動販売機は小さな休憩スペースに設置されている。周りの目が怖いが臆せず食すべしだ。
(誰も…いないか。よしよし、好きな物を好きなだけ)
メニューは多種多様であるが、いわゆるジャンキーなファストフードが多い。小振りな自動販売機では手の込んだ物は食べられないのは言うまでもないのだが、案外ジャンキーなフードが食べたくなった。きっと誰かが理解してくれるに違いない。
「フライドポテトにホットドッグね」
一人でいる時ぐらいは素でいさせて欲しかった。手際よく画面をタッチして選び決済は軍内のカードで行う。割に合わない高給を頂戴しているため微塵も痛くない出費だった。お給料以前に家は有名な政治家族のためある貴族に等しく困ることを知らない。そんな人間がファストフードを食らうとは思わないだろうね。
(いただきますっと)
立ち食い用の高いテーブルに付きほんのりと温かいポテト&ホットドッグを置いた。冷めないうちにと素早く食べ始めれば、どこか懐かしい気分が湧いて出て来て哀愁を感じる。止まることを知らない戦争に身を投じ(られ)て終着点を知る自分にはどうにか変えたかった。しかし、ただのエース風情が戦争を変えられるわけがない。バックが巨大でも越権行為は許されなかった。
「せめて孤独に生きるべきか」
続く
これから先の構成
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オリジナルストーリーでもZZに突入
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ZZのストーリーを排し要素だけ入れて逆襲
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そのまま逆襲にゆっくり入る
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急に逆襲が始まる