【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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100話なんですが通常運転です。


怪物の出現

「案の定か。限界ギリギリまで交戦禁止エリアを航行し一発も撃たせない。エリアを外れた直後に仕掛けてくるだろうが、その前に私だけ放り投げろ」

 

「いくら大佐でも、地球連邦軍の追撃部隊を単騎で相手するのは無茶が過ぎます」

 

「マシュマーに同意します」

 

グラナダに匿われたシン、マシュマー、キャラの3名は、現地を拠点に活動する特殊工作部隊から通報を受けた。その内容は地球連邦軍の追撃部隊が降下して出航を今か今かと待っている。あくまでも、表向きは中立である月のため、両軍共に手出しは厳禁と縛られた。したがって、仕掛けるのは交戦が禁止されるエリアを脱した瞬間と絞られる。

 

高速戦艦ドズルとエンドラ、ミンドラは快速に該当した。地球連邦軍の追撃部隊と思われる、補給艦改造空母が追従できると思わない。しかし、母艦の中にあるMSが問題でロンドベル隊でなくとも、特別なワンオフ機が襲来する可能性は否めなかった。

 

「大佐のドライセン隊もあります。消極的を承知で戦闘しながら、少しずつ後退するのが最善策です」

 

「無理だ。地球連邦軍がみすみす逃すような生ぬるい手を使うか?」

 

「…」

 

全面衝突に至れば手段を問わないのが定石である。地球連邦軍は恐るべき隠し玉を残していることは十分にあり得た。一方的な蹂躙は端から放棄して大苦戦を予期する。また、意図せずして月面都市の市民へ火の粉が降りかからない配慮も見られた。仮に追撃部隊が出現してMS隊を放った際に3隻は全速力で退避する。同時にドズルからシンのザクⅢが単騎で出撃し迎え撃った。決して、部下を信用していないわけではない。非常事態はコントロールできないもので比較的に回避策を講じることが容易い、シン・マツナガの自分が一人で処理するべきと判断している。

 

「なに、撃墜されても特殊工作部隊が救出に来てくれるだろう。生きていれば、どうとでもなる」

 

「大佐の仰りたいことは痛いほどわかります。この身に染み入りますが、マシュマーには立場があります」

 

「キャラ・スーンも同様に立場というものがあります」

 

シン大佐の月面都市に対する配慮と部下を多く残したい気持ちは痛いほどに理解できる。しかし、マシュマーとキャラには立場から認められなかった。月面都市に友軍の特殊工作部隊が展開して救助を受けられると雖も易々と撃墜されることがあってはならない。

 

「わかった、わかった。せめて、本国に救援を要請することで手打ちにしよう」

 

「ご理解ありがとうございます」

 

シンが折れて本国から救援を送ってもらい、盤石の体制で撤退することで妥協する。特殊工作部隊からはプロパガンダになって一気に月を味方に引き入れられる。上手く行けばサイド共栄圏の確立を目指せると言われたのもあり、本国の本気度を示す材料として救援を送ってもらうのが良いと考えた。あわよくば、地球連邦軍がジオンの大軍勢を目の当たりにして、潔く諦めてくれることを希望している。勝つことは重要だが戦わずして勝つが最善と相場は決まった。

 

「問題は到着までの間に追撃部隊が暴走しないことだ」

 

ジオン側が大人しくても地球連邦側が暴走しない確証はどこにも存在しない。

 

当日中にアナハイム社の回線を借りて中立コロニーを経由する。アナハイム社の取引に関する諸連絡に偽装して本国との連絡を図った。本国でも月の状況は把握しているが、中立地帯である以上は下手を犯せない。表向きは全面衝突だが地球連邦も不本意なため、お互いに探り探りの状況が続いた。僅かでも綻びを見せた瞬間に付け込まれるに違いない。しかし、始まったならば最後まで貫徹しなければ筋が通らなかった。中途半端な地点で止まれば、第三勢力の思うつぼなのは言うまでもない。

 

画面越しながら、普段の黄金仮面を崩さないハマーンはため息を吐いた。

 

彼女も政治を一手に担っているため苦労が絶えない。

 

「増援の件だが中立コロニー制圧のため余剰分が無い」

 

「分かっている。私も全体の状況は大まかにだが把握しているつもりだ」

 

「もっとも、それは通常の兵団に過ぎないのです」

 

これにはシンの眉がピクリと動く。

 

「私の預かり知らぬ所で進められることか。いや、何も責めたりする気は毛頭ない。私は一軍人でありハマーンがミネバ様を代理して指揮を執った。文句の一つも何も無い」

 

サイド共栄圏の確立には中立コロニーの制圧という名目で抱き込むことが必須だ。ティターンズの暴挙による被害を受けた等の理由でジオン側に回るコロニーは少なくない。ただし、新しく建設されたコロニーはどっちつかずの中立を示した。更には、一年戦争でジオンから被害を受けたコロニーは再建後に地球連邦に回ることもある。サイド共栄圏という理想に賛同を示したコロニーとは円滑に進んで当然だが、中立や地球連邦側のコロニーは難航するのは誰もが予想した。まずは位置も立場も近いコロニーと接触して抱き込みを図る。

 

「ありがとうございます」

 

純粋な階位ではハマーンが上でも、年齢や実力、ミネバ様からの信頼度を総合的に勘案して彼が上に立つ。しかし、軍の指揮権は彼女が握っているのであり、部隊編成や特殊な研究等々のことに介入する余地は一切なかった。

 

「話を戻しましょう。つい先日アクシズにて習熟訓練を終え、辛うじて戦力になるルーキー部隊があります。ちょうど良い機会ですので、是非最前線で鍛え上げてもらいたく」

 

「グレミーも預かっているが、今度は一個新兵(ルーキー)部隊を預けるのか。私を高く買ってくれるのは嬉しいが、度が過ぎると内部から突き上げられて内側から崩れかねん」

 

「誤解されてはいませんか。私が預けるのはF機関の『白薔薇』です」

 

首までカバーされる大きな椅子に体重を割き両腕を組まざるを得ない。白薔薇と言う単語が何を示しているのかは不明だが、途中で「の」を挟んで綴られたF機関という単語だけで察することは可能だった。

 

「ハマーン…私を巻き込んだな」

 

「盛大に巻き込ませていただきました。しかし、そうでもしないと戦いには勝てない上に守護ることも出来ませんので」

 

ハマーンの策やいかに。

 

~数日前~

 

「なんの御用ですか?ハマーン様」

 

「全く変わらんな。まぁ、よい。お前にはグラナダに向かってもらう」

 

「月ってこと?」

 

「そうだ」

 

ハマーンはグラナダに潜伏する特殊工作部隊の報告と提案を受け取った。地球連邦軍の追撃部隊との戦闘をプロパガンダにすることを承諾した。ただし、マシュマー隊及びキャラ隊は実力不足が否定しきれない。新鋭機で固めたと雖もジオン兵はベテランが少なかった。あのシン・マツナガでさえ一年戦争からのベテランだけで称えられる。

 

「グラナダに潜伏する大佐を救うのだ」

 

「そんなにシン・マツナガってすごいの?」

 

「馬鹿なことをいうな。お前は足元にも及ばないだろう」

 

「へ~面白そう」

 

若すぎるため生意気な事を言っているが、プルは後に思い知らされた。世の中はニュータイプ、ニュータイプと時代は新しき者へ世代交代を迎えつつあることは事実である。しかし、温故知新という古典が東洋で残された。

 

新しきを知りながら古きを温めることは馬鹿にならない。

 

「見てくるがよい。百聞は一見に如かずだ」

 

「わかった。それで、グラナダに行くのは私のキュベレイMk-Ⅱだけでいいの?」

 

「そうもいかん。お前の実力は高く評価しているが非常事態は起こり得る。よって、護衛を与える。お前が鍛え上げたゼク・フィーアを連れて行け」

 

「は~い。暴れてくるよ」

 

キュベレイにゼク・フィーアと知らぬ単語がポロポロ崩れ落ちた。

 

続く

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