【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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究極を目指した

「増援の到着前に出るとは大胆不敵にもほどがあります」

 

「やむを得ない。これ以上、月に緊張と不安を振りまくわけにはいかんのだ」

 

本国から送られる増援の到着を待たずにシン達は脱出を図った。月にジオンと地球連邦の部隊両方が留まる事実は市民に緊張と不安を強いる。もちろん、中立の盾が存在するが先のティターンズの暴挙と一年戦争のジオンが重なった。アナハイム社のように肝の据わった傑物ならともかく、普通に生活しているだけの一般市民に帰責性の無い重圧を与える。

 

これ以上は市民が耐えられないと危険を承知で脱出した。

 

「これで引っ掛かるかどうか…」

 

「まだ交戦禁止エリアであり、衝突事故を防止するため、安易に出てくるとは…」

 

交戦が禁止されていることは当然として、同時又はやや遅れて追撃部隊の母艦が上がって来るかもしれない。ピッタリと追従して逃さない気持ちを携えた。しかし、艦艇同士が衝突する事故を起こして都市に被害が及ぶことを回避すべきだろう。戦争中でも無様な事故は御免に尽きた。

 

「グレミー」

 

「はっ」

 

「お前はマシュマー、キャラの2隻と協同して月を離脱しろ。追撃は私が食い止める。増援の到着を待ちたいところだが、万が一の場合を想定して行動しなさい」

 

「大佐の万が一はどのように」

 

「撃墜されたら特殊工作部隊に救助される。暫くの間はグラナダに潜伏して機会を窺う」

 

脱出前に特殊工作部隊と落ち合い、非常時の救助について合意している。ザクⅢは射出式の脱出装置を備えて機体は時間経過で自爆した。仮に連邦軍が機体を発見しても爆発四散した後の残骸しか残っていない。また、アナハイム社グラナダ工場の重役らと面談した際に最新鋭の量産機についても合意を取り付けた。グラナダ工場の余剰ラインを活用してワンオフ機又はカスタム機を得られる。

 

つまり、撃墜されても、とりあえずは生き永らえた。

 

「間もなく、エリアを超えます」

 

「民間船を除き、敵影見られず」

 

交戦が禁止されていることは民間船が動き回っていることを意味する。敵味方の識別装置があれど民間船がいると動き辛かった。彼らは慎重に且つ大胆にも、いわゆるラッシュ時に脱出を図る。なんせ月は宇宙と地球を中継するため戦時中でも移動が絶えなかった。

 

すんなりと交戦禁止エリアを抜けるが、突如として切羽詰まった報告が艦橋に響き渡る。

 

「高熱源反応あり!数は一つ!」

 

「解せません。追撃部隊がモビルスーツでも複数機を投入するはず。単騎で戦艦と軽巡に挑むのは荒唐無稽な話ですが、敵機がニュータイプだと恐ろしいことになりましょう」

 

「事情は不明だが、事前の取り決め通りに進めるぞ。私のザクⅢを頼む」

 

追撃部隊が単騎で来るとは驚きだ。戦艦1の軽巡2で計3隻の軍艦に対してMSが1機というのは釣り合わない。もっとも、その1機がワンオフ機のエース級だったり、ニュータイプが操縦していたり等々の事情が予想された。

 

なるほど、MSが1機だけであれば、誤射・誤爆の可能性は低く見積もられる。連邦軍もジオン軍同様に月面都市への影響を最小限に抑えたいのだ。したがって、超高性能な機体で熟練又はニュータイプ(準ずる者を含め)が操る至上の戦力を投入する。

 

ジオン側は事前に定めた取り決め通りにシン・マツナガ1人が迎え撃った。艦前方にあるカタパルト直結格納庫に赴くと、ジェイから特急で準備を整えたザクⅢを渡される。土台がスライドしてカタパルトまで移動して電磁推進の発進を待った。

 

カウントダウンがゼロに至った瞬間に放り投げられる。

 

「マシュマー、キャラ、後は任せた。私はここで食い止める」

 

白いザクⅢは高熱源反応の動きに則り有利な位置を探る。格闘戦と射撃戦関係なく戦いでは常に有利なポジショニングを心がけるべきだ。しかし、そうは問屋が卸さないと高出力ビームが撃ち込まれ狼狽を余儀なくされる。

 

「なんと、この距離で高出力のビームを撃ち込めるとはな。並みの量産機どころかカスタム機も不可能な芸当だろう。長射程と高出力を両立したビーム兵器を携行できる機体は少ない」

 

脳内データベースを参照する際に宇宙世紀で絞り込むが歴史は狂った。宇宙世紀に囚われずに前倒しされたり、後ろ倒しされたり、そもそも作られなかったりと確実性に欠ける。現段階では絞り切れず探りを挟んだ。

 

(これだけの高機動戦闘で長射程を含められる機体は無いに等しい。単騎でビーム兵器の弾幕を張れるようなモビルスーツはZZが浮上する。しかし、ZZは敢えてロンドベル隊から補給艦改造空母に移る面倒はしないだろうよ)

 

単騎にもかかわらず撃ち込まれるビームの数を鑑みるにワンオフのMSに定まる。そして、現時点の条件を加えると真っ先にZZガンダムが浮上したが、あれはロンドベル隊に匿われており、わざわざ母艦を乗り換える手間を挟まない。

 

こうなると様々な試作のMSが出てくるが、敵機の攻撃により案外早く答えに辿り着いた。

 

(ケーブル、いやワイヤーか?)

 

視界の端っこに角度をつけて伸縮するワイヤーの軌道が映る。先までの高火力・高機動を併合すれば絞り込みは完了した。ワイヤーの先端部に設けられた小さな物体からビームが撃ち出され肩部に直撃する。しかし、ザクⅢの両肩には着脱式のシールドがあり、増加装甲の役割を果たして低出力のビームガン程度では傷つかなかった。

 

「この火力にインコムは間違いなく、Ex-sガンダムだ!」

 

ご名答である。

 

敵機は超弩級MSのEx-sガンダムと判明した。

 

本体のSガンダムにゴテゴテしたパーツを与え、実質的にMAに強化した形態である。火力・防御力・機動力の全てが跳ね上げる代償に、その操縦難易度は一般兵はおろかエース級でも碌に動かせない程に高かった。

 

武装は長射程・高威力のビームスマートガンに始まり、背部の2門が2対の4連装ビームキャノン、大腿部ビームガン、インコム、リフレクターインコム、一応の頭部バルカン、ビームサーベルが挙げられた。この圧倒的な火力に各部の装甲を増して、更に胸部にIフィールドを備える鉄壁の堅牢を誇る。もちろん、重量は数倍に膨れ上がったが、馬鹿げた推進力を与えることで無理矢理動かした。

 

頭が痛くなる機体は地球連邦軍の目指した『究極のガンダム』と言える。

 

ただ、どうも解せない点も見られるのが引っ掛かった。

 

「なぜだ。あれだけの火器を適切に運用できる技量があると雖も人間の処理能力を超えている。それに、あの機動でパイロットが無事であるはずがない」

 

そう、あまりにも出来過ぎる。手数に優れて火力のある機体はパイロットが適宜適切に武装を選択し、正確な照準かブラフを仕掛けるか考えて、敵がどのような反応を返すか予想する、等々をコンマ秒単位で行わなければならない。

 

「まるで機械的だな…まさか」

 

ザクⅢ(SM)は射撃兵装を減らして格闘兵装を増した都合で近接戦でなければ敵機を撃墜できなかった。銃剣付きビームライフルが唯一のビーム兵器である。これは短銃身で使い勝手を良くした代わりに威力が下げられた。とてもだが、Iフィールドを展開した敵機には有効打を与えられない。

 

幾度となく接近を試みたが近距離では固定されたビームガンやバルカン、ビームキャノンが火を噴いた。辛うじて掻い潜ることに成功してビームサーベルを振りぬこうにも、インコムとの合わせ技でビームサーベルを見舞われる。話を聞いている限りでは、射撃一辺倒のEx-sガンダムは近距離の格闘戦にも対応し万能を押し立てた。

 

全てに「適切」を返す戦いぶりには疑念を抱かざるを得ない。

 

「ぬぅ!」

 

長大な銃身を有するビームスマートガンの一撃で肩のシールドが飛ばされた。対ビームの装甲材質が研究されても圧倒的な火力の前には及ばない。貫通と熱を軽減するのが精々だった。普段は殺気の機微を感じ取り回避するシンに掠らせるとは素晴らしい腕前と称賛したい。

 

これで何となくを掴めた。

 

(殺気や焦りなど気の変化を感じ取れなかった。よって、答えを見出せる)

 

インコムのワイヤーをヒートホークで断つと同時に答えを発する。

 

「完全自律型のALICEによる無人機か!」

 

続く

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