【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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怪物と怪物と古兵

無人機自体は特段の珍しいことではない。人が入れないような危険な地帯では遠隔操作の無人機が多く使用された。軍用では偵察ドローンとして無人機が広く運用されている。兵士の損害を気にすることなく投入できる点は素晴らい強みだ。

 

しかし、完全に自律してMS戦闘を担える無人機は聞いたことが無い。単調な標的機ならともかくだ。エースパイロットを相手に大量の火器を適切に扱うのは尋常じゃない。もちろん、教育型コンピューターは戦いから吸収して成長した。

 

「それにしては完成度の高いこと!」

 

恐ろしく成長速度が早い上にブラフを織り交ぜるなどの狡猾さを有する。どうも、単なるAIこと人工知能とは思えない。それもそのはずだ。なんせ、Ex-sの原型たるSガンダムは完全自律型AIの『ALICE』を組み込まれた。超高性能な人工知能どころの話ではなく、地球連邦軍が得意とする荒業が見られる。ALICEはある種の人格を持っており、命令に反しない範囲で自分で考えて、自分で決断して、自分で行動できる。

 

もはや、人と表して差し支えない。

 

(相手が人間のパイロットなら、気を読むことができる。しかし、ああいうAIだと見えない。人格を有するシステムだから比較的に漏れ聞こえるが僅かだ)

 

AIが持たない人格を与えることで恒久的な学習を成立させるが、当分の間は有人機として正規のパイロットを置いた。現在は地球連邦内部のゴタゴタ騒ぎを経て完全自律を確立している。しかし、将来的には全てのMSをALICEをデチューンしたAI搭載型量産機を目指した。開発担当の博士は亡くなっても残されたデータがある上に、ゴタゴタ騒ぎと雖も貴重な戦闘で得たデータを活用して継続は可能である。

 

そして、今回の追撃任務で飛躍を狙った。

 

(幾らでも疑問に思えばいいだろう。完全自律型モビルスーツと戦うのは人生で一度あるかないかだ!)

 

インコムのワイヤーを断ち切ると近接格闘戦がやり易くなった。ビームガン程度の出力では装甲を破れないが気になることは否めない。鬱陶しい攻撃を潰すのは地味だが負けを消して勝ちを拾う一歩だ。そして、格闘戦に移行するとEx-sのALICEは貪欲に吸収し続ける。長時間の消耗戦に入ると学習し続ける以前にコチラの体力が底を尽きた。

 

生身の人間と高度な人工知能では体力面で天と地の差がある。無人機はパイロットの消耗を気にすることなく燃料の続く限りで戦った。特に高機動の戦闘では如実に表れる。有人機では到底不可能な高負荷の動きを繰り返した。

 

なるほど、ALICEは地球連邦軍の合理性の塊と評せるかもしれない。

 

ただし、無人なら何でもよいとは断定できない。

 

「もう少し、こう、何というか。手心というか」

 

「??」

 

「敢えてした手加減は混乱を招く策だ。これをいい機会にして学ぶんだな」

 

至近距離で2×2で4門のビームキャノンが火を噴きザクⅢの右肩を焼き上げた。これでチェックメイトを指したとほくそ笑む瞬間に沸々と疑問が湧き上がる。あれだけ近接格闘戦のスペシャリストと言われ、ニュータイプすら歯が立たないと称えられた者がアッサリと渡すだろうか。

 

「!!!」

 

Ex-sガンダムへ無数の90mm砲弾とミサイルが撃ち込まれた。ビーム兵器を満載してIフィールドも備えたMSでも実弾兵装の飽和射撃は貰いたくない。即座に回避に移るがザクⅢには目もくれず、一時的でも離脱せざるを得なかった。

 

(やはり、あの多量の気は救援だったか。ザクⅢで視界を塞いだ背中から援護射撃を貰うのは冷や汗が出た)

 

「あなたがシン・マツナガでしょう。どいてちょうだい」

 

「悪いが、君なりの配慮を頼むよ。こいつは格闘戦でないと、撃墜はおろか撃破もできない」

 

「なら、誤射しても許して」

 

~救援~

 

「各機は弾幕を形成して安易に近づかないこと。見てわかる通り、シン・マツナガ大佐との戦闘に入るのは危険すぎる」

 

救援対象は到着に気付いていたのか敵機に覆い被さって視界を奪った。ビームの一撃で片腕を失う大ダメージを負った代償に救援部隊の弾幕射撃で敵機は分かり易く動揺して一時離脱する。

 

(さっきからファンネルを掻い潜っては格闘戦に挑む。常識外れの非常識)

 

実弾兵装を満載したゼク・フィーアの射撃は絶え間なく行われた。Ex-sの高機動と高い知能がかみ合わさり、全てを回避してザクⅢに食らいつける。いや、その中に人工知能が追いつけない領域のニュータイプが散りばめられた。5機のゼク・フィーアを率いる黒いキュベレイから発せられた多量のファンネルが良いスパイスである。よって、敵機は弾幕射撃とファンネルによる行動阻害を常時受けた。更に、怒りの猛追撃を仕掛けるザクⅢに対処しなければならない。

 

右腕を失えど高級量産機の意地を張る白いザクⅢはプルの目には異常に映った。確かに、オールドタイプ最強格のパイロットであることは否定しない。しかし、ファンネル(量産機仕様)30基が飛び交う中で冷静に立ち回る度胸は理解できなかった。

 

時代が高火力で押し切り、ファンネルなど遠隔兵器で一方的に撃破する、そんな流れで古典的な格闘戦は常軌を逸する。

 

「どうした!ファンネルの動きが鈍いぞ!」

 

「言われなくても」

 

見事な銃剣捌きと並行してファンネルの動きを把握するとは驚きだ。ニュータイプ同士の場合はファンネルの動きを予測した射撃に始まり、サイコミュの脳波を逆探知して母機を特定する離れ業を可能とする。シンの場合は動きをコンピューターの補助を得た上で認識した。自身の技術と経験を用いて動きを予測すると自機の位置を絶妙に調整する。

 

もちろん、許容限度が存在して超えた場合は潔く退いたが。

 

「やっぱり、手を抜いているじゃん」

 

~シン~

 

(あれだけのファンネルの量を扱えるパイロットはプルしか出てこない。手を抜いているのも見透かすとは)

 

プルには見透かされたが、彼は若干ながら手を抜いている。今回の目的は月の脱出にありパフォーマンスはサブクエストだった。敵機の撃墜は優先すべき事項には該当せず後ろへ回される。万が一の万が一で都市部に被害が及ぶことは一転して最優先で回避した。

 

「そして、完全自律型無人機との戦闘はまたとない機会である。是非とも引き出してみたい」

 

そう、シンは敵機の力を引き出す戦闘に徹している。ジオン軍が完全自律型MSと接敵することは始めてのため、貴重な機会を逃すことなく一度に大量の情報を得たいと考えた。片腕を支払ったのはその一つである。

 

「見えた!」

 

中遠距離の射撃戦に特化したEx-sはへばりつかれると厳しさを露呈する。ビームスマートガンは長大な銃身のため扱い辛く、頭部バルカンはミサイルの迎撃程度にしか役に立たず、大腿部ビームガンは位置が悪く、インコムはワイヤーを切られて使えなかった。必然的にビームサーベルを取り出すが、基本形態(Sガンダム)から格闘は順位を下げられている。

 

「Iフィールドを集中した箇所がウィークポイント!」

 

Ex-sは胸部にIフィールドを展開することでビーム兵器を無効化する。胸部には言わずもがな有人運用の際はパイロットが乗り込んだ。パイロットを撃ち抜く以上に簡単な撃墜手段はない。パイロットを重点的に保護する設計はALICEシステムを絶対に守り抜いた。

 

「敵機はスマートガンを犠牲に最速で離脱した。救援部隊には申し訳ないが、これ以上は都市が危険に冒される。まずはこの場を離れるぞ」

 

胸部に銃剣を突き刺そうと試みたがビームスマートガンを犠牲に受けられる。直後に敵機は自慢の大推力を以て直線的だが追撃を許さない逃亡を図った。大局的には短時間の局地戦闘だがALICEは湧き上がる疑問の答えを得られることなく自発的に逃亡する。

 

「流石にくたびれた」

 

続く

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