【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
ハマーンから直々に命令が下る。
「ロンドベル隊は月に降下した当日中に離脱している。アナハイム社から新型機を受領して盗まれる前に離脱した。月は着実にジオンの色に染まりつつあるが、もう一押し、ロンドベル隊ら地球連邦軍を地球の重力に縛り付けろ」
「仰せのままに」
「シン・マツナガ大佐は一旦預かる。守り抜いた褒賞として新型機を送った」
「ハンマ・ハンマでありますか。このバラに懸けてガンダムを討つ!」
「目の前の仇敵に本質を忘れるなよ。マシュマー、期待しているぞ」
シン・マツナガ、マシュマー・セロ、キャラ・スーンの三個部隊は友軍艦隊と合流した。地球連邦の牽制を友軍艦隊と交代して一時の休息に入る。シン・マツナガの部隊は白薔薇と共にアクシズへ帰投していった。主にマシュマーとキャラが連携して次の任務を遂行する。
ハマーンは月にロンドベル隊が降りて直ぐに脱出したことを知る。ダメ押しの一撃を欲した。マシュマーとキャラに限りなくグレーな武力介入を命じる。月の現地は潜伏中の特殊工作部隊と親ジオン勢力が担当するため、ロンドベル隊など地球連邦軍による阻止の阻止を両名に任せた。ジオン軍は地球へ再降下しないが地球連邦軍を地球に縛り付ける。
「キャラ・スーンの部隊にも新型機を送ってある。色々とすまなかったな」
「恐れ入ります。R・ジャジャは最高のモビルスーツでした」
「そうだろう。お前達に新型機を送った意味は分かっているな?」
キャラの部隊は旧式機の改造品が占めた。いくらなんでも、冷遇に等しい放置はいただけず、ハマーンはマシュマー同様に褒賞と新型機を送る。両名の活躍は言うまでもなかった。
マシュマー隊はガルスJとズサという新型量産機を有した。マシュマーだけにハンマ・ハンマという高性能試作機を与える。キャラ隊は前述の通りだ。キャラにR・ジャジャという士官専用指揮官機を与えた。シュツルム・ディアスはアップデートで対応する。マシュマーとキャラの両部隊は共通のコンセプトを掲げている故に大幅な変更を見送った。
「マシュマーとキャラでガンダムを追い詰める。ズサとシュツルム・ディアスが敵艦隊を圧迫する」
「月から地球へ追いやる」
「よろしい」
マシュマーとキャラがコンビでガンダムを追い詰める。ズサ隊とシュツルム・ディアス隊は持ち前の火力を活かし、ガンダムの母艦を含めた敵艦隊を押し出し、ガンダムごと地球に閉じ込めた。
ジオンのサイド共栄圏はスペースノイドの自主自立を掲げている。その看板の裏側にはアースノイドを地球に縛り付ける旨が刻まれた。あまり褒められたことでない。ジオンと地球連邦が分かり合えないことは自明の理なんだ。
ここでキャラから質問が入る。
「地球に閉じ込めても、封が緩ければ、みすみす脱出を許すことになる。それ以前に地球に戻るか…どうか」
「良い質問だ。それはだな…」
この質問はグレミーも抱いた。
「アフリカに残っている名もなき残党や現地民族の反連邦勢力を利用する」
「まるでトカゲの尻尾切りではありませんか」
「そういうことだ。それがハマーンにしかできない。冷徹な勝利の策である」
ハマーンはロンドベル隊らを地球に縛り付けて脱出を許さない策としてアフリカの蜂起を利用した。アフリカには地球連邦の首都ことダカールが置かれる。首都が脅かされることを知れば戻らざるを得ない。ダカール防衛に一定期間は動けないと読んだ。地球連邦軍はロンドベル隊を快く思っていない故に監視も兼ねて手元に置くだろう。
ダカールのお偉いさんを脅かすに正規軍は使えなかった。特殊工作部隊を送り込むことを考えたが、もっとコストパフォーマンスが良く、ハマーンら宇宙組に微細な影響に止まるようなあくどい手段を考案した。
アフリカの残党軍や反連邦勢力を扇動する。旧ジオン軍は地球から総撤退したと言われるが、各地に散り散りとなった残党軍がおり、アクシズ上がりやソロモン上がりを嫌って合流を拒んでいた。反連邦勢力は民族解放も含まれる。ジオンに協力することは癪だが、アフリカ解放の支援を受けられるため、ビジネスライクな関係を構築できる。
「アフリカには砂漠のロンメルと青の部隊が展開している。どれも自由ジオンとの関係は希薄も希薄だ。我々の末端ですらない箇所を切り取っても何ら痛くない」
「なんと…」
「私も直ぐに頷けるような話じゃなかった。私は直ぐに忘れている」
「わかりました。これが戦争なのですね」
グレミーは若いなりに葛藤の末に飲み込んだ。これを咀嚼しては歯が折れかねない。そのまま丸ごと飲み込んだ方が自然と消化できた。アフリカの同志を簡単に捨てる。当事者達を何を思うのかを考えても答えを出さない方が吉だった。
「さて、この話は切り上げよう。私が気に入っている。オリジナルブレンドのコーヒーでも淹れようか」
「お言葉に甘えて」
「コーヒーのお供にパウンドケーキも頂こうと思う」
「良いですね」
彼らはアフリカの砂漠で約10年もの時間を費やした。砂漠の砂に埋まることで潜伏している。地球連邦軍の基地をゲリラ的に襲撃して物資を奪うことで生き永らえてきた。
砂漠の残党軍の願いはザビ家の復興である。
「ダカールを襲撃してザビ家の旗を立てよ」
「北アメリカではイアン砲兵隊、ノイジーフェアリー隊、フェンリル隊が蜂起します」
「地球上で同時多発的に旧ジオン軍が蜂起する。なんとも、上手く利用されたな」
アフリカの砂漠にはロンメル軍団が展開した。ロンメルが率いる残党軍は砂漠戦に特化する。徹底抗戦の構えから撤退を拒んでは時を待ち続け、広義の地球圏に帰還したミネバ・ザビの自由ジオンに呼応すると思われたが、約10年の月日がアクシズ上がりやソロモン上がりを嫌いにさせた。ロンメルの嘗ての柔軟な思想や考え方は頑強で迷走する。
「ドワッジ改の整備は完了しています。ディザート・ザクもいつでも出せます。青の部隊もディザート・ザクとディザート・ゲルググ、アイザックを揃えました」
「地球連邦軍の新鋭機に勝てるかどうかは関係ないな?」
「もちろんです」
「よろしい」
アフリカは残党軍だけでない。民族解放戦線も活動した。アフリカのゲリラは各々の目的は異なれど、反地球連邦に一致しているため、自由ジオンの扇動に乗っかる形で一時的な共同戦線を組む。もちろん、アフリカだけでない。北アメリカやヨーロッパなど世界各地で蜂起を予定した。
「ダカールに立てるはザビの御旗ではない。我々の墓標を立てるんだ」
「この10年は決して無駄ではなかった。ロンメル軍団の底力を見せてやりましょうぞ」
「すぐに全員を集めろ」
ロンメルは老兵に突入しても矜持は捨てていない。アフリカ戦線において砂漠戦のエキスパートの名を馳せた。伝説のロンメル軍団はアフリカで生まれてアフリカで潰える。自由ジオンはザビ家の御旗を立てよと言った。あいにく、ロンメル軍団は各々の墓標を立てる。今更宇宙に帰ろうとは思わない。
「このロンメルはアフリカの砂漠で散るのだ」
「お供いたします」
「私は構わない。しかし、北アメリカの同胞が気の毒だな。ミネバを人形と動かす生娘に利用される。我々は誉を持てるが、彼らは無駄に散るだけだ」
ロンメルの頑迷こそ気の毒である。北アメリカの残党軍は真逆に絶好機と認識した。北アメリカに取り残された者達は10年越しの帰還を約束されている。宇宙へ帰るためにはシャトル発射基地を制圧しなければならない。その機会と支援を与えられた以上は命を無駄にしなかった。
「重力には逆らえん」
続く