【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
皆様もお気を付けてお過ごしください。
アンケートはもう少し様子を見させていただきます。
ジオン公国軍から技術士官と活躍する者は凄惨な戦いの記憶を甦らせる。
「コロニー落としを突っぱねた結果がモビルダイバーシステムの復活か…」
「あの頃を懐かしいと思うなんて」
「お互いに年を重ねたんだ」
彼は栄えある仕事を嫌って適正な公平な評価を下すことを望んだ。
「またビグラングに乗るって言わないでしょうね」
「ビグラングは僕が引導を渡している。それでも記録のためには前線に出ないと」
「あいにく、夫婦で赴くように伝達が来ている。うちの上司は配慮を欠かさない」
この技術士官は凄惨な戦いに身を投じてきた。最大の激戦を命からがら生き延びる。ティターンズとエゥーゴとの三つ巴は安全圏から本業に徹した。ジオンと地球連邦の本格的な戦争が始まると前線へでなければなるまい。
彼の仕事は専ら記録することに置かれた。最前線で全てを記録するために自ら火の中に突っ込むことを厭わない。ただし、従前と異なることは大切な存在が出来たことにある。いつ散るかわからない大戦争の中で大切な存在と愛を育んだ。
「オリヴァー・マイとモニク・キャディラックは片時も離れない。あなたが行くところに私もついていく」
「それがダカールでも?」
「当たり前のことを聞かない」
「今のところ、モビルダイバーシステムを試してからの事はわからないんだ」
技術士官の名前はオリヴァー・マイという。
一年戦争と呼ばれる大戦争で特異な部隊に所属し技術屋に徹した。地獄のような戦いにおいて様々な者と出会っては別れることを繰り返す。ア・バオア・クーの最終決戦で人材不足から超機動兵器のテストパイロットを務めた。予定外の出撃を強行して友軍の撤退を支援する。最終的には撃墜されたが、生き残った仲間たちと共にアクシズに逃げ延びると、自由ジオンの技術屋(テストパイロット)と働いた。
彼の傍らには嘗ての(便宜的な)上官にして現在の妻であるモニク・キャディラックがいる。彼女はギレン派の政治将校の出身だ。アクシズでは肩身の狭い思いをするところ、ア・バオア・クーの影なる英雄ことオリヴァー・マイと結ばれることで覆い隠すことに成功し、彼と未来永劫を共に過ごすことを誓う。
あの凄惨な戦いで唯一の安寧が男女の絆なのだ。
「ジャムルフィンは?」
「僕はテストパイロットも兼任している」
「あなたが拒んでも背中に乗るからね」
「僕が背中を預けるのは君だけだ」
彼らの仕事は自由ジオンに移れど大して変わらない。作戦支援と偽装した特殊作戦に従事し、決して、世の表舞台に立つことのない仕事も歓迎した。それが地球連邦の首都であるダカールを火の海にする作戦計画でも関係なかろう。
ジオン軍の指揮を執るハマーンは冷徹で知られた。敵首都への直接攻撃にコロニー落としは断念した代わり、地球上のジオン残党軍の使い捨てを考え付き、残党軍支援と銘打ったモビルダイバーシステムの再開を命じる。
そのモビルダイバーシステムを担当した。
「ゼーゴックは敵艦隊の迎撃を狙ったから失敗した。コムサイに頼らない。地球の大気圏を突破してモビルスーツを届ける。強行輸送の手段に用いるべきだった」
「対空砲火はどうするの?」
「輸送ユニットを外部ユニットの武装コンテナで囲うんだ。コンテナは対艦ミサイルやクーベルメを積んで対空砲火を制圧する。外部ユニットを盾代わりにしても良い」
「なるほど」
初代ゼーゴックはオリヴァー・マイの反対を押し切ってジャブローに投下される。凄腕の持ち主である海兵隊の兵士が見事にマゼラン1隻とサラミス4隻を撃沈したが、地球連邦軍の戦闘機から迎撃を受けてコントロールを失い、地球の冷たい海へ突っ込んだ。
そもそも無茶の多い思想に急造が相次いでいる。ゼーゴックは未完成も未完成で欠陥どころでないが、オリヴァー・マイという技術士官は公正な評価に徹した。ダカールへ降下する作戦に際して一から見直す。モビルスーツの大気圏突破という強行輸送に特化した兵器に変えた。
「回収は?」
「最初から想定していない。ダカールへの攻撃は捨て駒どころじゃない」
「不穏分子の一斉排除かしら。政治将校としては素晴らしい方法と褒めたい」
「僕も戦争に染まってしまったみたい」
「そんなことはない。あくどいことは私が引き受けるから」
モビルダイバーシステムの一番の問題点は回収方法かもしれない。地球に降下させた後は地上部隊が回収すると言うが、ダカール奇襲攻撃は残党軍をかき集めた寄せ集めによる一度限りに過ぎず、結局は使い捨てに変わらなかった。このような状況をマイは怒るはずが戦争に毒されている。
これを成長と言ってはならない。
彼は良心の呵責に喘ぐことを封じて自嘲を覚えた。そこをモニクが後ろから両手を回して抱きしめる。彼女は政治将校時代の高潔を捨て去った。それは偽りの自分なのである。弟を戦死で失った際に見せた弱さが証明していた。過去を清算した後はマイを求める日々を送る。彼女は弟を失った補填にマイを充てたと見ることができたが、オリヴァー・マイという男は誰よりも成長し、何も言わず黙って寄り添った。
彼も彼女も多くの仲間を失った末に相互依存に生を見出す。
両名の姿は作戦支援艦『アイゼンハワー』に確認できた。本艦はコロニー間を超えた惑星間を航行する超遠洋貨物船を基に建造されている。軍艦としては最上級の機動兵器運用能力を有するが、あくまでも民間船を素体に有する故に戦闘力は対空防御しかなく、ムサイ改級巡洋艦に護衛された。
「モビルダイバーシステムに万全を期すため」
「オリヴァー・マイとモニク・キャディラックの両名は」
「「地球圏へ出撃せよ」」
アイゼンハワーは格納庫内にモビルダイバーシステムを宿した『エントリー』を積載する。敵地へ殴り込むことからエントリーだが、ゼ―ゴックで儚く散った者に対する手向けを含んでおり、彼の献身を忘れてはならなかった。
「地球連邦軍は間違いなく阻止に出て来る。奇襲攻撃と言うけど簡単にできたら苦労しないもの」
「そのためのジャムルフィン」
「そのためのマラサイ」
まったく息ピッタリで仲の良さを証明するが周りの兵士は意に介していない。ここの誰もが両名の辛い過去を理解していた。彼らの関係に文句をつける者は直ちに独房に連行される。アイゼンハワーはヨーツンヘイムの正当進化と言え、モビルダイバーシステムを積載して尚も余裕を有し、モビルアーマーとモビルスーツを並行し、地球連邦軍の阻止に備えることができた。
ダカール奇襲攻撃は奇襲の文字通りに意識外の痛撃を想定しているが、あの地球連邦軍が易々と奇襲を通すと思えず、影なる英雄は出撃の命令を快諾する。オリヴァー・マイは自他共に認める技術屋だが、天才的な操縦と射撃の腕前を有し、ジャムルフィンというモビルアーマーを操る。モニク・キャディラックはヅダの運用停止から様々な機体を乗り換えてマラサイ(鹵獲)に落ち着いた。
「この作戦だけは絶対に成功させるんだ。ヴェルナー・ホルバインの名前は忘れちゃいけない」
「正直言って、嫌いな兵士だったけど、今なら尊敬できる」
「あの人は僕以上の英雄だよ…」
「ズゴックに代わってカプールなんて何の因果かしらね」
「しょうがない。カプールは宇宙生まれで信頼性に欠けた。地球連邦軍が開発したザクマリナーの方が信頼できる始末だから有効活用しないと」
今回のモビルダイバーシステムの官製ユニットはカプールというモビルスーツを基幹とした。もちろん、以前の剥き出しではない。ちゃんと重装甲に纏われてパイロットの保護が図られ、武装ユニットも一度に操作できた。
「見ていてくださいね。あなたの犠牲は無駄じゃないんです」
続く
酔いながら書いたので誤字脱字が多いと思います。
ご容赦ください。