【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
「脆い。なんと脆い」
アフリカにおいて大規模な民族蜂起が発生した。地球連邦政府の圧政に耐えられなくなった各地の少数民族がゲリラ的に連邦軍基地や都市部を強襲する。現地残党軍もMSを動員する程の動乱で初期的な鎮圧は早々に頓挫を強いられた。
アフリカのダカールに連邦政府が置かれる。ここが脅かされては堪らないと増援という増援がかき集められた。宇宙に飛び立った部隊も呼び戻されるなど混乱は広がって止まらない。月と地球における同時多発的な蜂起はジオンのテロリズムと断定した。
「連邦軍など烏合の衆に過ぎません。ジムがザクに勝てるものか」
「ダカールを包囲する。敵は籠城戦を選択して救援を待つだろうが上空の一撃に破滅を待つだけだ」
「上空? 宙から何か来るのですか?」
「私も把握し切れていないが衛星軌道上から大質量の爆弾を投下する。ダカールの中枢部をピンポイントに破壊する」
「はぁ。つまりはお膳立てという」
「そうだな」
アフリカに一大勢力を築き上げた残党軍はロンメルを中心に快進撃を続ける。砂漠戦に特化した現地改造品は連邦軍の量産品を凌駕した。地形を巧みに活かした機動戦を以て翻弄する。連邦軍も油断していたのか二線級のジムやキャノンを配置した。一線級は全て宙に飛ばしている。
ロンメルも自身のディザート・ザクを操作した。120mmロングライフルで正確に撃ち抜こう。ビーム兵器が主流の中で補給が容易い以外にも確固たる理由が存在した。彼らのゲリラ戦は何よりも隠密行動が求められる。高エネルギーと高熱源を発生させるビーム兵器は己の位置を暴露した。実弾兵装は工夫次第で隠密性を纏わせることができる。彼は後方から指揮しつつ長距離の狙撃を叩き込んだ。
「アイザックは健在です。電子戦は負けていませんが長期間は持ちません」
「わかっている。ジリ貧で擦り潰されることは百も承知した」
「負け戦でもやらねばならぬわけです」
「残存部隊を再編して縮めますか? あまりに広範では非効率です」
「港を封じよ。陸路はある程度開けても良い」
「かしこまりました」
ダカールの包囲網は着実に狭まりつつあるが連邦軍の抵抗も相当に激しい。上層部が腐っていようようと最前線の兵士たちは生きるために必死だった。連邦軍の誇りは知ったことでない。生きて帰るために必死の抵抗を見せたが、結局のところ、体よく使い潰されるだけだ。
一方のアフリカ残党軍もジリ貧を理解している。どれだけ局所的な勝利を重ねても物量の前には無力が否めなかった。地球連邦の中枢部を破壊したとして巨人は幾つもの心臓を有する。一時的に麻痺させることが精一杯で宇宙を主戦場とする自由ジオンの時間稼ぎに過ぎない。
「先の戦いの置き土産が機能する」
ダカールに物資を運び込もうとする貨物船が護衛艦共々と爆沈した。
「さすがゴッグだ。なんともないぜ」
「この程度の機雷原で侵入を阻止できると思ったのか。連邦のアホども」
「政治家の尻を蹴り上げてやる。俺達の怒りを知れ」
ダカールは海に面しているために地上だけでなく、海上ないし海中からの侵入に備えなければならず、常に海軍の艦艇が警戒に従事した。海中も潜水艦や水陸両用MSの侵入を拒む機雷が撒かれたが人工的な深海の覇者たちは易々と通過する。
連邦軍は背後からの奇襲攻撃に慌てふためいた。貨物船と駆逐艦が次々と爆沈する。古典的な爆雷やミサイルの攻撃を始める前に竜骨を折られた。まさか機雷原を突破してくるとは予想だにしていない。艦底を突きあげられる感触を覚えた直後に真っ二つになった。
「ズゴックじゃなくても戦える。ゾックの支援下で暴れるぞ」
「ズゴックは良いなぁ。VLSで安全に攻撃できる」
「ゴッグは地上に出てからが本番だ。メガ粒子砲を拡散させて薙ぎ払う」
水中を突き進むは地球降下時に投入されたゴッグである。残党軍が撤退した部隊の置き土産を拾い上げた。何かと使い勝手の悪い機体だが貴重な戦力と密かに運用している。時代に合わせて改造も施しており、秘密のパイプを通じて部品を入手するなど、野心的な最初期の水陸両用MSの姿は薄れた。ゴッグ持ち前の耐圧構造は重装甲を際立たせて機雷の誘爆にびくともしない。
「異音を関知しましたがVLSの一斉発射です。これで地上はボロボロになっている」
「着弾と同時に上陸する。ジャンプの準備だ」
「了解」
「ゾックはいけるか」
「こちらは問題ない。追従できる」
「火力支援は頼んだぞ」
ゴッグ隊が突入する前に別働隊のズゴック隊がVLSを一斉発射した。彼らは頭部の魚雷発射管を垂直発射式のミサイル発射機に換装している。敵艦を海中からミサイル攻撃してもよし、敵地にミサイルの雨を降らしてもよし、敵機を叩き落としてもよしの三方よしを携えた。今日はダカール軍港の設備をミサイルのシャワーで破壊して混乱を強いる。その隙にゴッグ隊が上陸して白兵戦に突入する手筈を整えた。もちろん、自分達も負けてはならないとジャンプする。
「着弾まで…5…4…3…2…1」
「上陸!」
コンクリートの岸壁から数十メートルより目一杯に跳躍した。主たる推進装置に使い捨てのロケットを噴射して強引に海面を突き破る。低空に到達後は自由落下の力で着地を果たすところ、連邦軍のMSが既に待機して銃口を向け、なんとも勘の良いパイロットがいるものだ。しかし、陸上の生物は深海から生まれたように母の前には赤子同然である。
「メガ粒子砲は拡散できるからの芸当よ」
「踏みつぶしてやったぜ。ジムが抵抗すんじゃない」
「ゾックが着陸できるだけのスペースを確保しろ。どうせ死ぬんだ。最後まで暴れてやる」
ゴッグのメガ粒子砲は収束率が低い。拡散しがちな傾向があることを逆手に取った。ジムⅡの盾を破壊して本体も切り裂く。メガ粒子砲が小隊単位で拡散されると一帯は大やけどを負う。敵機は倉庫などの建物に隠れるも大型ミサイルが建物ごと粉砕した。ゴッグ隊はゾックが展開できるスペースを確保する。ズゴック隊が自慢の軽快な運動性を活かしてジムとキャノンを白兵戦で撃破してくれた。
「ゴッグ隊、遅れてすまなかった。クローを展開する。絶対に射線に入るなよ」
「わかってる」
「一気に溶かしてやる。アースノイドは引き籠っていれば火傷を負わずに済むものを…」
ゾックが到着するや否やゴッグ隊は散開する。その機体は単騎で一個中隊並みの火力を発揮できる。それ故に巻き込まれては無事では済まされなかった。クローを地面に刺して機体を固定すると必殺の高出力フォノンレーザー砲を照射する。ダカール軍港を焼け野原に変えるのだ。
「ジェネレータを換装したおかげでチャージ中も攻撃できるんでね。ゾックは見かけ倒しじゃない」
「ワラワラと出てきやがる。どこに潜んでいた」
「いかにも数だけの連邦らしいじゃないか。ジオンの少数精鋭を舐めるなぁ!」
「撃てぇぇ!」
もう阿鼻叫喚としか言いようがない。
高出力レーザーの照射は装甲を一瞬にして溶解させる。ジムⅡやネモ、キャノンは抵抗虚しくドロドロに消えた。これを阻止しようにもレーザー砲と別に設けられたメガ粒子砲が火を噴く。本来は同時並行できないがジェネレータを換装したことで出力を調整すれば可能に変わった。移動式の砲台という性質を帯びる。自衛手段は圧倒的な火力に収束せざるを得なかった。ゴッグ隊は射線に注意しながらスナイパーを排除する。別働隊のズゴック隊も合流して施設の破壊を始めた。
「ジオンに栄光あれ!」
「ガンダムタイプ! ただのガワだけだろう!」
「SFSだ! 空から来やがった!」
明朝には事態は収束している。
瓦礫の中にモノアイを残した。
続く