【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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線状降水帯をもろに食らいましたが生きています。停電も回避して最低限の生活を送っています。安全な家に籠るので2話投稿するかもしれませんが、2話目の投稿が無かったら察してください。


シン・マツナガ少佐

0079年12月14日

 

地球連邦軍はソロモンを攻略する星一号作戦が発動され、宇宙艦隊が続々と出撃を開始した。また、ジャブローから新造された艦艇及び正式な量産型MSのジムが上がる。宇宙で先行生産型ジムが使われていたが、今回からは系統が異なる正統派の正式量産機が使われる。ジムはカタログ上ではザクⅡを凌駕する性能を有しており、国力を活かした物量戦術と相まってジオン殲滅の切り札と期待された。

 

地球連邦軍の大戦力がソロモンに迫っていることをジオン軍は把握している。既に防衛の戦力を整えており、超大型機動兵器アプサラスⅣも出撃を待つ。だが、裏の準備は未だに進行中だった。ジオン再起を図るため等ではなく、漢の約束を履行するために2人の漢が内々の事項を着実に進めている。

 

時を昨日に遡ろう。

 

「お前には悪いが大層な宇宙巡洋艦は用意できなかった。戦時徴用された民間貨物船を流用して改造した急造品だが、流石は元が貨物船なだけはあって中に詰め込みが利くぞ。その気になればビグロみたいなMAも運用できる余裕があるからな。中身の改造だけはしっかりとやらせておいた。少佐への昇進に合わせてお前にやる」

 

「はっ。ありがたく頂戴いたします」

 

以上の会話が非公式で行われた。

 

昨日付けでソロモンの白狼シン・マツナガは少佐まで昇ってみせた。いっぱしのパイロットから始まった彼は結果を以て一挙に昇進し、ドズル・ザビ中将の下で剛腕を振るって懐刀に至ったかと思えば、今度は少佐になってしまうとは驚きであろう。しかし、これはジオン軍の人材の窮乏を示した。緒戦から今までにかけて多くの将校を失いすぎている。ただし、シンに限って軍の人材窮乏は薄かった。そんな理由では収まらない。

 

彼は将来のジオンを率いられるミネバ・ラオ・ザビ様の軍事顧問に就任することが決まっており、且つ総じてミネバ様をお守りしなければならなかった。周りを黙らせる実力と言う中身があっても外の器が無いと厳しいものがある。したがって、多少無理やりにだが彼を押し上げて外側の器を作り、外はカチカチ硬く内はギッチリ詰まったシン・マツナガ少佐の誕生だ。

 

シン・マツナガが少佐に昇進したことはソロモンの防衛に多少なりとも影響を与える。

 

そう彼に自分の宇宙艦が与えらたことだ。

 

~ソロモン内部ドッグ~

 

「我らが白狼様が艦を持つなんて、この僕ジェイ・アーランドは感激です!」

 

「いつにも増して元気そうでなによりだ。ガガウル級駆逐艦に比べMSの運用と整備が格段にやり易くなっているから、お前さんの出番が倍増するのは言うまでもなく、負担も爆発的に増えるかもしれないな」

 

「望むところと言わせてください。少佐のためなら何でもやります。この『シャ・ルルド・ゴール』は使い勝手が良いことは間違いなしです」

 

彼らがいる箇所はかなり大きな空間だった。360度を全体的に見回すとMSを固定する装置から補給用の各種装置等々と大規模な整備区画だと分かる。ガガウル級は当然ながらザンジバル級をも凌駕するスペースは軍艦としては異常と言えた。それもそのはず、本艦は民間貨物船を戦時徴用しソロモンで大改造を施していた。各コロニー間を動き回って貨物を届けるため積載量と航続距離は軍艦を凌ぎ、戦闘力自体は最低限しか持たないが輸送能力及び拡張性は圧倒的である。民間船を流用した艦は本艦以外に幾つか存在しているため特別対応ではなかった。

 

シン少佐に与えられた本艦の名は『シャ・ルルド・ゴール』である。命名については適当であって本人の希望は無かった。呼び辛い名であるが文句を言える立場ではないため大人しく頂戴する。名前はともかく内部の圧巻のスペースは素晴らしかった。R1A型の運用が格段にやり易くなった。ガガウル級は論外で触れるに該当せず、ザンジバル級ケルゲレンはアイナ様所有なので便乗をとても申し訳なく思う。

 

自分の艦を持って自由に動き回れるため、宇宙を縦横無尽に駆け回れるようになった。しかし、これはあくまでも彼がミネバ様を守っていくための道具であることを忘れてはならない。使命感が覚悟を締め上げた。

 

「私のザクⅡが入ってもあきれるほどに余裕があるか。ビグロが使えると聞いたが、そこはどうだろう?」

 

「分からないですね。僕はMSが専門なのでMAについては門外漢です。まぁ、これだけ広ければ分解して格納すれば2機積めるかもしれません」

 

「了解した。せっかくの余裕を殺すわけにはいかないから適宜使えそうな物を引っ張ってくるか」

 

「人員も増えましたしねぇ。使える物は何でも貰って道具を揃えませんと」

 

本艦はガガウル級駆逐艦を借りていた際の兵士をスライドさせて人員を確保してある。全員がドズル親衛隊と呼ばれるソロモン防衛隊の精鋭だった。シンも親衛隊の一人で名を馳せる。本来は隊長の地位にあるべきだった彼は本人の現場主義の強い意向を建前として単なるパイロットに留まった。しかし、少佐になっては通用しない。顔見知りの兵士を配下に加えて戦った。

 

「それよりも、まだゲルググは貰えないんですか?」

 

「それを私に言われてもな。エースだから新鋭機ゲルググが優先支給されると思わない方がいい」

 

「だってキマイラ隊が満額支給されて、ソロモンに全然回ってこないっておかしいですよ。ガトーさんもリック・ドムで何とか戦っていますし。同期曰くビームライフルの量産体制が整ってゲルググの量産型も頑張って作っているとです。ア・バオア・クーが大事だって気持ちは理解できますけど、ソロモンだって大事じゃないですか」

 

「まぁまぁ」

 

ジェイ君の若さが身に染みた。世の中には一枚岩と言う組織は存在しないのである。どんな組織でも綻び及び亀裂があるものだった。ジオン軍が見事にピッタリと当て嵌まってしまうのは笑い話だろうか。ジオン軍を引っ張る3人のザビ家は個々に分かれて派閥を形成し、それぞれがエースを抱えたり独自の開発陣を持ったりと連携の「れ」の字も無かった。最新鋭機ゲルググの配備も派閥の違いが顕著に表れたかもしれない。ゲルググ先行生産型はキマイラ隊へ支給された末に高機動型に進化し、量産型はア・バオア・クーに配備された。ソロモンに来る気配は全く感じられない。連邦軍の大攻勢を控えているのにも関わらず、ソロモンは既存機で戦えと言うわけだった。

 

数が少なくて貴重だからの理由は分かる。であれば、数機で構わないからエース向けに送って欲しい。同じくソロモンでエースを張るアナベル・ガトー氏はリック・ドムを扱い、彼もまたゲルググなんて機体は知らなかった。

 

「私はゲルググを欲しいとは思わないよ。あれはザクⅡと操縦性が大きく変わると聞いて乗る気が無くなったさ。機種転換は意外と難しくてね。ザクⅡ一筋の私は苦労せずにいられたのは幸運だった」

 

「そんなに違うんですか。僕は乗らないんで分からなくて」

 

ゲルググの配備が進むにつれて致命的な問題が露呈した。会話に出た通り、既存機と操縦性が違いすぎる点が出た。宇宙では長らくザクⅡが主力だったため、必然的にザクⅡに慣れたパイロットばかりである。彼らがゲルググに乗り換えると大変な苦労を被った。ゲルググはガンダムを目指した節があり「扱いやすさ」を軽視してしまったのか設計は大きく変わった。統合整備計画のメスが加えられなかったことが何よりもの証拠である。

 

はっきり言って、ゲルググは欠陥機かもしれなかった。

 

「さて雑談はここまでにしよう。まだまだ確認することが多い」

 

「はい!」

 

新しき艦を貰ったシン・マツナガはソロモン防衛戦に身を投じるだろう。艦は民間貨物船を流用した物でも、ゲルググが与えられずR1A型でも、増援には一切期待できなくても漢の約束を履行するだけだった。

 

続く

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