【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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昨日の2話目投稿はありませんでしたが無事に生きています。友人が断水したと聞きましたので、ありったけの水を送り届ける輸送していました。とにかく、作者は無事ですのでご安心ください。


高機動型ザクⅡ(SM・局地戦仕様)

ソロモンの前面にて哨戒活動を行う部隊がいる。哨戒部隊と名が付いているが所詮は名ばかりである。軍内でも卓抜した精鋭部隊の長は数多もの連邦軍を撃滅して来たエースだった。彼らは戦場が宇宙に移るに伴って増加傾向にある連邦軍の強硬偵察を撃破することが仕事だが、もはや偵察も何も無く連邦軍が見えた時は攻撃開始の合図であろうに。したがって、最大限の緊張感を持って職務に当たるものの、否が応でも視線を奪われる対象がある。一応は心強い味方のため目くじらを立てる必要はないが見ざるを得なかった。

 

「ガトー隊長。ありゃ随分とご機嫌な動きですね」

 

「ドズル閣下が最も信頼を寄せるシン・マツナガ少佐の機体だ。ザクⅡのR型で機体更新が進んでいないと聞いたが」

 

目立つ激しい機動に同じく目立つ白色塗装が相まって識別は容易だった。ソロモンにおいて白いザクは1機しか存在せず、敢えて説明せずとも誰もが分かるシン・マツナガ少佐の機体である。主力機リック・ドムを使う自分と違って昔ながらのR型ザクのため部下の注目が集められた。

 

「それにしてもですよ。ここを守るために更に改造したと?」

 

「あり得る話だ。機体の更新が停滞している中では、今ある物でどうにかしなければならない。仮に焼け石に水だとしてもやる。しかし、流石はマツナガ少佐なだけはあるな。旧式化しつつあるザクがここまで恐ろしく感じることは無い」

 

彼らの視線の先にある白いザクは遠距離では分からない細かな改造が施されていた。ザクらしからぬ動き、リック・ドムを圧倒する動きからして機動性特化だと理解できる。良くも悪くも格闘戦に一辺倒の彼には当然のカスタマイズと言えた。

 

~本人視点~

 

「加速が良くなっている。瞬発力の高さはいいな」

 

彼の機体を目を凝らして見ると腰部に外付け式の小型スラスターが左右2基追加されていた。補助的な推進装置を追加して更なる機動性の向上を図ったらしい。素のR1A型の時点でザクと言い難い驚異的な機動性を誇ったが、例の白い悪魔と戦闘して自機との性能差を知り求めた。しかも、この後のガンダムはマグネットコーティングを施す等の改良で更なる圧倒的な力を発揮するはずだった。何とかして食らい付きたい。

 

「私のザクは局地戦闘に特化した機体になった。感謝するぞ、ジェイ」

 

これからは遠方に出ることは無かった。次に戦闘することがあれば、間違いなくソロモン防衛戦である。したがって、多少は変な改造を施しても悪くなかった。新型機を貰えなかった以上は持つ物を磨くしか選択肢を持てない。

 

(増加タンクに異常は…見られない。分解して誘爆することよりも被弾した時を考えないとな)

 

機動性が上がることは素晴らしいのだが、必ずしも良い結果を出すとは限らなかった。事実として燃費が悪化し航続距離及び戦闘可能時間の減少が指摘される。それは素のR型の時から言われているため、補給作業を簡略化するカートリッジ式を採用した。カートリッジならば交換作業の大幅な簡略化が見込め、戦闘中でもできてしまう程になる。頻繁に行わなければならない面倒な補給作業を簡単にして長く戦えるようにしたわけだ。しかし、それは根本的な解決にはなっていないことは明白である。根本から直すには機体設計に戻る必要があり、やむを得ずその場しのぎの工夫を継ぎ接ぎで用いた。

 

背中から突き出す形で2基の筒が存在する。板でなく筒であるため放熱板の類には見えなかった。この筒は統合整備計画で開発されたリック・ドムⅡでも使われた物である。その正体は本人が明かした通りの増加タンクだった。機体本体に内蔵された燃料タンクでは燃費の悪さが足を引っ張り、一戦闘するとすぐ空っぽになる。よって、機体外部にタンクを追加して少しでも燃料の量を稼がせた。もちろん、根本的な解決にはならずのまま。

 

(ちょうど空になってくれた。当たらなければいい話かもしれないが、万が一を見越して優先的に消費し空にして更に投棄した上で本格的な戦闘に入ることが鉄則になる。どうにかならんものか)

 

外部に可燃性物質が充填されたタンクは被弾した際が大変を極めた。装甲なんてないペラペラ鉄板は中身を守れない。小口径のバルカンでさえも一発貰えばアウトな危険性を有し、外部タンクは賛否の分かれるポイントになった。

 

確かに「被弾しなければいい」の考えはその通りのため否定はしない。特にMSが戦艦並みの威力を誇るビームライフルを携行するようになり、掠るだけでも致命傷を負う現在では尚更で謎の説得力を増した。なお、高機動を徹底した装甲不要論が一部で信じられているらしいが、流石にそれだけは否定したく思う。旧軍の戦闘機不要論が頭に浮かんできた。

 

少しでも被弾時のリスクを抑えるため、先に増加タンク内燃料を消費することがある。中身を消費して少なくすれば誘爆を抑えられ、最終的に空にしてしまえば純粋な障害物になり下がった。付けたままではデブリ等に引っ掛かり邪魔のために切り離す。妙案に聞こえそうだが、敵が遠くに位置して戦闘の気配が感じられない状況などの余程に都合が良くないと難しかった。中途半端に戦闘が始まった場合は潔くよくタンクを切り離し残存燃料を捨てる。

 

さて、今度は新しく貰った武器を試す時間へ移った。

 

「シュツルムファウストね。構造は簡素だが高威力のロケット弾。小さくて携行しやすい事はありがたい。そんでもって、目標のデブリはあれか」

 

動きやすさのテストをしながら目標のデブリに近づいた。普段は近接の格闘戦を主とするため、携行する武器はMMP-80マシンガンだけだが、それでは心もとないから簡易な対MS兵器を持たされた。片手で扱える程度に小さく機体に備え付けられ、昔ながらのザクでも簡単に使用できる。弾頭部には炸薬がたっぷりで満足感が得られる威力を持って一発でMSを破壊する。

 

「こんな程度でどうだろうな」

 

自分が格闘戦をする距離ぐらいで実弾を試した。目標の金属デブリをMSに見立てることは少々無理があってもお試しなので仕方ない。直進した弾頭はデブリに直撃すると見事に粉々にしてみせた。かなり簡素な割には高い威力があると改めて認識する。

 

(ふ~ん。今は単調な機動だったから当たったけど、これがガンダムと戦った時の動きであれば当たらないぞ。使い捨ての無誘導ロケットだから期待し過ぎが間違いかなぁ。無いよりはマシ程度に思っておこう)

 

シュツルムは構造が簡素で扱いが簡単であることが強みと弱みを両立させる。誘導装置を持たない無誘導ロケット弾のため狙いを正確に付ける必要があった。戦場において冷静に照準を絞る暇と余裕があるだろうか。いいや、そんなことはないだろう。ましてや激しい機動を多用する格闘戦での使用は論外に尽き、辛うじて使うとしても囮程度に収まった。有ると無いでは変わるかもしれないため持ちはする。

 

「うん?ガトー少佐の部隊に見られていたか。お恥ずかしい限りだ」

 

ふと外側を見ればガトー少佐が率いられる哨戒部隊があった。今までの動きを見られたと思うと恥ずかしさが勝る。しかし、恥ずかしいからと言って黙り込みは失礼になる。ここは変に飾りもせずに普通の敬礼の動作を挟み、それからならし運転を継続させた。

 

(ソロモンにはガトー少佐もいたか。何をしてもあなたの自由だから私は何も言わない。ただ、私には私の人生があるんだ。悪いが邪魔しないでくれよ)

 

この後のことに思いを馳せた。間近に迫るソロモン防衛戦の先を考えて。

 

続く




追記
ガトーが少佐になっておりますが、こちらはシンと共に昇進したことになっています。シンのみでは怪しすぎるため、公平性の担保から彼も昇進としました。
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