【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
※タイトル変更投稿日22時24分
0079年12月24日 ソロモン宙域
「おいでなすったぞ。連邦軍の団体客だ」
ソロモンから離れた位置にあるデブリには強行偵察型ザクⅡが潜伏し、迫りくる地球連邦軍の大部隊を発見した。数えきれない艦艇に宇宙艇、MSと出せる戦力を全部放出したと思われる。直ちに緊急通報を発して防衛戦闘を開始させ、自機は出来る限りの強行偵察を行う。少しでも多く敵軍の戦力と動向を探りたかった。
「なんちゅう数なんだよ。どうせ撃墜されるなら弾の無駄遣いを強いてやる」
緊急通報を受けソロモンからは続々と艦艇及びMSが出撃した。同時に隠れ蓑にしていたデブリが敵MSによって破壊された。通報を逆探知されてしまったらしい。潜伏が暴かれた以上は逃げ回りながら偵察を行い、無駄撃ちさせて敵に出費を強いることを試みた。自衛の武器も無い強行偵察型は文字通りの強行をするべく足の速さには定評がある。逃げ回っている内に残骸と化したコロニーに接近し、これは幸いと思って障害物を最大限活用した逃亡を続けた。
しかし、正面に度肝を抜く光景が広がる。
「ミ、ミラーがっ!まさか奴ら太陽の光を反射させてソロモンを焼こうってのか!?こちらスカウト、連邦軍の大艦隊と正体不明のミラーの群れを発見!連邦軍はソロモンをや…」
通信はここで途絶えた。艦隊を守るMSがハエたたきを敢行したのである。足が速いと言っても万に近い数の弾を向けられては堪らなかったが、切羽詰まった報告自体は伝わっている。
すぐさまジオン軍は対応しようと試みたが、連邦軍の圧倒的な物量が展開されている中では不可能だった。攻撃開始に先んじてソロモン前面には突撃艇が殺到しビーム攪乱幕を展開され、連邦軍第三艦隊が大量のMS量産機を押し立てて迎撃隊と熾烈な戦闘を開始している。ソロモン内部で全軍の指揮を執るドズル・ザビ中将は前面の敵軍の攻勢が囮であることを理解したが、囮の一部に木馬ホワイトベースと白い悪魔ガンダムがいることを受け、ここでは下手に指示を出せなかった。
「砲台の砲撃が無力化されています!」
「ミサイルの飽和攻撃に切り替えろ!戦艦もMSもビームが通る所まで進出して迎撃、迎撃、迎撃だ!」
決死の索敵により連邦軍第二艦隊を発見したが、凄まじい物量が押し立てられ打って出ることが叶わない。メガ粒子砲台はビーム攪乱幕によって無力化され、ミサイルの攻撃に限定された。MS隊も懸命に戦っているが遠方の大艦隊まで辿り着ける見込みは無い。
「ゲートに待機している艦隊とMS隊を直ぐに出せ!退避するとは言わせんぞ。焼けるぐらいなら少しでも傷を与えて散れ!」
数秒の迷いと待ちが破滅を呼ぶことを知っている。温存させていた艦隊とMS隊を吐き出した。燃料も弾薬も満載するため戦闘自体は可能で出しても戦闘に支障は無い。ただし、温存戦力が消えて当初の防衛計画を破棄せざるを得なかった。何もせず数個戦力が消えるよりはマシであろうか。
このドズル中将の決断は後世に英断として称えられた。ゲートに密集していた戦力は結果的に退避に成功する。そのまま戦闘に参加したため連邦軍第三艦隊の攻勢は鈍化を余儀なくされ、数の差も多少は埋められて無視できない被害も出始めた。怪物ガンダムはたった1機しかいないため、どんなに頑張っても限界が存在する。
連邦軍は真打たるソーラ・システムが早々に暴露され、想像以上にジオン軍が素早く対応してきたため、第二艦隊を率いたティアンム中将は発破をかけて作業を急がせた。ソーラ・システムは初めての実戦投入であり経験が無く、万を超えるミラーを使う超大規模が作業の加速化の足を引っ張る。ティアンム中将は敵を取り逃がすぐらいならば欲張らず、確実に相手へ損害を与えることを選択した。
「何かが来る!?」
「伏せろ!」
誰よりも事情を読んだドズルは全員に伏せるよう命じた。モニター画面に映る超遠方に閃光を視認する。連邦軍はミラーを使い太陽光を収束させ超強力な光線にして放った。下手に直視すると目を焼かれかねない。皆を伏せさせたことは正解である。その直後にソロモンは眩い閃光に包まれた。被弾した時の衝撃は弱かったが、何が起こっているのかは皆が予想できる。もちろん、その予想が外れることはあり得なかった。
眩い光が収まると同時に要塞各所と各宙域から絶えず被害報告が上がった。報告をまとめる前に手早く指示を出す。幸いなことにゲートに留めていた艦隊は照射を免れた。しかし、運悪く宙域に留まった守備隊や掠った艦艇が焼かれて受けたのが大損害であることに変わりない。
「残存艦隊とMS隊を纏めろ!敵艦隊に突っ込み中央突破を図る!」
司令部の中にいた人間は誰も異を唱えなかったが、外から綴られた言葉が反対と言うべきか何かを主張する。常識的に考えて欲しい。この状況で司令官に対して意見具申することは冗談にならなかった。しかし、返答は人によって対応は変わる。
(その必要はございません。あのソーラー兵器は私が叩き潰します。ミラーを一枚一枚丁寧に割るなんて言いません。あれだけの兵器ならば必ずコントロールに専念する艦があるはずです。しかも戦艦級のパワーが無いと…)
「そうか、残骸に隠れた艦隊の旗艦を潰せば二度と撃てない。あいつらの心臓部に突っ込めるか?」
(自分で言うことは憚られるかもしれませんが、私でなければできません。そして、閣下のご心配にも及びません。私は自分の艦があり、尚且つ心強い味方もおります故に)
「よ~し、わかったぞ。あの兵器はシンに任せる。ソロモンは残存艦隊を配置し直し変わらずの防御に徹せ!」
照射攻撃が中途半端だったことが幸いして残存兵力は多かった。正面の敵艦隊を受け止めるだけの力を保っている。MS隊も置物だが大型空母を起点として絶えず動き回った。
(それでは、行ってきます)
「頼んだぞ。シン…」
「ぐっ…早かったか」
ソーラ・システムの照射でソロモンを焼いたティアンム中将は臍を噛んだ。攻撃前に敵偵察機の強行を被り、僅かだが位置とソーラ・システムを暴かれてしまい、目標だったソロモン艦隊及び守備隊を逃しかけた。自然を使う都合上速攻が効かず、中途半端にチャージしていたのを無視し50%の出力で照射してみる。半分の出力だったため、ソロモン本体と守備隊に与えた被害は想定に至らなかった。照準をずらして流し焼きを試みるも、元々の弱点である一点集中攻撃が更に一点になって効果は減じる。結果的に正面の防御を崩し切れず、第三艦隊は突破に失敗した。しかし、それでも大損害と言えるダメージを与えており、物量の差を開けて守備隊をジリジリ押している。
力押しは古典的で出血を覚悟しなければならなかったが。
「第二射を急ぐんだ!今度こそソロモンを焼き切る!」
「が、外縁の護衛艦より報告!1機の敵機が接近中!」
「たかが1機に何を手間取っている。ジムを送り素早く落とせ。ソーラ・システムを失ってはならん」
迫るのが艦隊であれば焦ったが1機だけのMSでは一切動揺しなかった。上手く隠れながら近づいた程度の機体に何を恐れようか。護衛艦の対空射撃と直掩のジム隊でいとも簡単に撃墜できるだろう。
自分は二射目の発射準備に専念するはず。
だったのだが。
「ば、馬鹿な!10分で9機のジムが全滅し、サラミス1隻が沈められた!?」
「敵機、来ます!」
ティアンム中将の目には高速で本艦に接近する白いザクが映った。
同時に白いザクもまたコントロール艦を担う大型戦艦を発見する。周囲に対空砲火による光が形成され眩しいが気にせず動かした。昔から対空砲火を掻い潜って敵艦を撃滅することは慣れている。この程度で己のザクを撃墜できると思ってもらっては残念だった。もう少しは現実を見てもらいたい。
「あのマゼラン級戦艦が旗艦で且つコントロール艦をしている。あれを撃沈すればソーラ・システムは撃てまいな。しかし、数の多くてかなわない。ジムも纏わりついてくる」
まだ距離は離れている。この調子で対空砲火を避け、ジムを蹴っ飛ばして一直線と行きたかった。
「やはり、私の前に立ち塞がるか…」
(ここから先は行かせない!)
「また敵となってくれて嬉しいよ…ガンダムゥ!」
続く
アンケートはそれぞれ大差がついていないため、もう少しだけ待ちます。