【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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ソロモン防衛戦4『アプサラスⅣ特攻』

ソロモンをめぐる戦いは終わりの兆候を見せ始めている。

 

ソロモン攻略軍の主戦力である連邦軍第二艦隊旗艦タイタンがソロモンの白狼とガンダムの死闘の末に撃沈され、コントロール艦を失いソーラ・システムの使用が不可能になった。しかし、元から存在したジオン軍・連邦軍の戦力差は広がり続けソロモンの前衛は崩れる。ソロモン守備隊は前衛を放棄して要塞至近及び表面での決戦に切り替えた。言わずもがな、敵を内部に引き入れることを意味し、ソロモン最後の戦闘となる。

 

最終決戦の指示を出したドズル・ザビ中将は安全な内部で指示を出し続けることを拒んだ。自分がソロモン陥落の蓋然性が高いをことを最も理解しており、どうせ落ちるのならば自分の命を引き換えにして配下を多く残し娘に託す。残った戦力が多ければ多い程に選択肢が増えた。後は本人の好きなようにすればいい。

 

「ビグ・ザムの代替となったアプサラスⅣか。サハリン家のギニアス少将が設計しただけはあって面白い。連邦軍の艦隊を片っ端から薙いでやるわ」

 

要塞内で最も大きな格納庫に鎮座する超大型機動兵器アプサラスⅣを前にしてドズルは笑った。もはや惜しむ気持ちが起こるわけなく、眼前に迫った連邦軍を全て撃滅する気概に満ちる。パイロットスーツに身を包み初期の建造から整備まで全てを担った兵士に敬礼してからコックピットに入り込んだ。本来使えるはずだったビグ・ザムが大遅延したため、その代替として作られたアプサラスⅣは複数名が乗り込むビグ・ザムと異なり単座の一人乗りである。孤独を感じる前に気を利かせたのか指揮を任せる副官が最後の会話を試みた。

 

「閣下」

 

「ラコック、お前は残存艦隊を率いてアクシズに送れ。ジオンの栄光にかけてアプサラスⅣで奴らを捻りつぶす。時間を稼ぐ間に一兵でも多く戦力を保持して退け。ソロモンは落ちるがジオンが終わったわけではない。まだまだお前には働いてもらうぞ」

 

「ドズル・ザビ中将の下で戦わせていただいたことは身に余る光栄であります。私はこれより残存艦隊を率いアクシズへ向かいます。閣下もご武運を!」

 

「おう。あぁ、念のため言っておくが、ゼナとミネバはシンに預けておいた。あいつなら何が起こっても大丈夫だ。出来る限り補佐してやってくれ」

 

「はっ!お任せください!」

 

ドズル・ザビ中将の表向きの副官ラコック大佐の会話はこれが最後だった。会話から察せるが既に司令部には人はおらず、要塞内の人員は退避して残存艦隊か温存した艦隊に乗り込んでいる。防御は崩壊しつつあり敵艦隊を跳ね返す力は残っていなかった。脱出した彼らはア・バオア・クーでも本国でもなく比較的に遠方に位置したアクシズへ向かった。なぜ、アクシズなのかは様々な事情が絡み合ったが、一つ言えることはドズル軍はミネバ・ラオ・ザビを主とし再起を図ることを誓っている。

 

「やらせはせんぞ…」

 

~ソロモン表層部~

 

「ついた!ソロモンは俺たちが踏みしめてやったぞ!」

 

「まだだ。中に籠った奴らを叩かねぇと癪でしかない。一番乗り行くぜ!」

 

第二艦隊及び第三艦隊のMS隊は圧倒的な数で守備隊を押し込んだ。敵機のスカート付き(リック・ドム)や一つ目(ザク)は厄介で苦しむも数の差を活かした強行ですり潰す。メガ粒子砲や衛星ミサイルは艦隊の集中砲火によって次々と撃破されていき、運よく対空砲火を潜り抜けた部隊はソロモンに着陸を果たした。敵艦隊を叩く選択肢もあったが要塞内部に侵入して戦いを終わらせる方を好んだ。

 

しかしながら、昔から言われていることがある。

 

いかにも美味しそうで魅力的な餌は罠だと。

 

「な、なんだ!?」

 

「中に途轍もない熱量が!」

 

「く、来る!」

 

破壊されたゲートに近づいた部隊は直後に須らく消し炭と化した。壊れたゲート周辺の岩盤を巻き込んだ一撃を放った主が姿を現す。それは着地して浮かれた連邦軍を恐怖のどん底に落とすことに十分すぎ、次に放たれた攻撃は近づきすぎた艦隊を丸ごと消滅させた。

 

「ワハハハ!これぞ俺の威光!アプサラスⅣを以てすれば連邦軍なんぞ敵ではないわぁ!」

 

ついに超大型機動兵器アプサラスⅣが実戦に投入された。ビグ・ザムより現実的な代替のはずなのに放つ咆哮は周囲の敵を無差別に焼き尽くす。機体中央に設けられた大出力メガ粒子砲は戦艦ですら薙ぐ威力を誇った。急な敵の出現に対して直ぐにジム隊とボール隊は攻撃を開始するが生半可な攻撃ではアプサラスⅣを壊せない。対ビーム塗料が分厚く塗られ且つ増加装甲を張られたため、戦艦の主砲でない限りは耐えられた。戦艦の主砲も距離が離れると優れた形状によって弾かれる。

 

「真っすぐに撃てるだけではないぞ」

 

アプサラスⅣの高出力メガ粒子砲の特徴は何と言っても直線と拡散を使い分けられる点だ。真っすぐに極太のビームを数秒放ち薙ぎ払う射撃モードに限らず、細くなった光線を複数広げる射撃モードの2種が用意されている。後者の射撃は文字通りのため広範囲を満遍なく焼いて回った。

 

「ソロモンをやらせはせん、やらせはせん、やらせはせんぞぉ!」

 

(ドズル閣下に続け!)

 

(アクシズへ向かう味方を守るんだ!)

 

ドズル・ザビがソロモンに纏わりついた敵機と艦隊を圧倒的な火力で払う姿に感化した生き残りの前衛艦隊はアプサラスⅣに追従した。当初から最前方で敵を迎え撃った彼らには逃げるなんて不名誉であってとても受け入れられない。アプサラスⅣに付き従う艦艇はガガウル級駆逐艦、チベ級重巡洋艦、ムサイ級軽巡洋艦とバラバラだが戦意と団結は極めて強固だった。アプサラスⅣよりかは低速のため必然的に連なる格好になるが前面に火力を集中させて第三艦隊を押し返す。

 

「ミサイル全弾発射!」

 

当初は装備していなかった対艦大型ミサイルが撃ち尽くされ、各々が目標に向かって驀進して直撃した。サラミスかマゼランかを問わず、メガ粒子砲と重なって凄まじい破壊力を発揮する。

 

(か、閣下。申し訳ありません)

 

(ここまでのようです。突っ込みます!)

 

(ジオンに栄光があらんことを!)

 

局地的には圧倒的なアプサラスⅣも被弾が増え、モニターで確認できる範囲では全身が破損している。メガ粒子砲とコックピット周辺は特に重装甲であるが、機体左右は簡単な物しかなく近距離の攻撃で傷ついた。ただ、当該区画はさして重要ではないためまだ戦える。しかし、ドズル・ザビを慕って特攻に加わった各艦は次々と爆沈した。爆沈しなくても満身創痍となると自らを質量兵器とした艦が敵艦と衝突して沈めていく。

 

ただでさえ損耗しており数少ない守備隊が十倍に迫る敵艦隊に突撃して勝てるわけがなかった。アクシズへ逃げる友軍を守る時間稼ぎだから当然と言えば当然である。瞬く間に猛烈な砲火に絡め取られて消滅した。何度放ったか分からないメガ粒子砲で活路を見出すこともできず、次第にドズル・ザビのアプサラスⅣは包囲される。近距離から受ける敵MSの攻撃に艦砲が加わったことで信頼性に欠ける装甲がはがされ、対ビーム塗料も機能を失いつつあった。

 

「もはや俺だけか…」

 

周りにいた味方はいつの間にか消えた。代わりに連邦軍が全ての方向に展開していて撃墜は時間の問題である。ドズル・ザビはソロモンに散ることを受け入れたが、最期ぐらいは「やらせはせん」ためにアプサラスⅣが一度切りの最高火力を用いることを選択した。

 

「やらせはせん!やらせはせん!やらせはせんぞ!この俺の人生をやらせはせんぞぉ!!」

 

直後、アプサラスⅣは強烈な大爆発を発生させた。周りを囲んでいた連邦軍はMSか艦艇かを問わず大爆発に巻き込まれて焼尽する。絶え間なく与えた攻撃で爆発したわけではない。設計の時点で機密を漏らさないためにアプサラスⅣはリック・ドム3機分のジェネレーターを暴走させて自爆する装置が備えられた。自爆にはメガ粒子砲内のエネルギーや燃料も合わさって威力を増し、且つ機体を構成する鉄板が散弾と化して三次元の広範囲に莫大なエネルギーの熱と膨大な量の散弾をまき散らした。

 

このアプサラスⅣ及び守備隊の特攻により連邦軍第三艦隊は半壊し、最後の自爆によって第二艦隊も全滅は免れたが無視できない甚大な損害を被った。ソロモン攻略は成功したもののジオン軍を多く取り逃がしてしまい、更に二個艦隊が壊滅的な損害を受けると散々な結果である。目標は果たしたが痛すぎる傷を受け連邦軍は後のア・バオア・クー攻略に支障をきたす羽目になった。

 

後世に語られる。

 

ソロモンの戦いはドズル・ザビの勝利であると。

 

続く

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