【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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サッポロ黒ラベル飲みながら書きました。一番好きなビールはプレミアムモルツです。


高機動型ザクⅡ

軽食を済ませて思考の海に沈んでいたら端末が鳴り、ジェイ君から呼び出しが入った。どうやら私専用のザクⅡFS型の整備が完了して手が空いたらしい。いったい、何の用があるのかと思うが別にそこまで気にしなかった。彼とは良い友好関係を築いており階級の垣根を超えて仲良くしている。

 

「あ、中尉。すいません、急に呼んじゃって」

 

「構わない。ジェイが折り入った相談をしたいのなら、しっかりと聞かないと失礼だろう」

 

「ありがとうございます。それで、いきなり本題に入りますが。本国の方で次期宇宙主力機の開発競争が行われていて、エリオット・レム技術少佐が自分で開発したザクを推すため、既存機に大幅なテコ入れをした高機動型ザクを開発したんです」

 

「ほう、ザクの改良型か」

 

「チューンアップを施したFS型や隊長向けのS型もいますが、満足のいく出来ではなかったようで高機動型を開発するに至ったらしく。しかし、それだけ高性能な機体であれば操縦難易度が高くなり、一般兵にはとても扱えなくなりました。よって、操縦技術が優れるいわゆるエースに向けて支給されることが決まりまして」

 

「まさかだが…私に」

 

既にジェイ君が語っている口ぶりから察せた。そして本来は知っていてはならない事実を知っているため、出来レースのようになる。だが、私は全くあずかり知らない感じを醸さなければならなかった。

 

「はい、シン・マツナガ中尉に専用の高機動型ザクを支給することが正式に決まっています。連邦軍はおもちゃですがモビルスーツも送り出しているため、宇宙戦力の強化は急務です」

 

「支給されるのであれば、あり難く頂戴するだけだ。しかし、そこに私の嗜好を反映してもらわないと」

 

「もちろんです。なので、こうして中尉を呼びました」

 

新しく支給されることが決まった高機動型ザクであるが、各エース向けに渡されるのであれば各員が望むチューンが必要だった。エースしか使えない機体を全員均等にしてしまうと面白みが大いに欠ける。宣伝広告みたくなるがオリジナルの機体に仕上げることが好ましかった。例えば射撃を主とした戦いを嗜好とする者は射撃兵装を充実させるなどがある。

 

それでは私ことシン・マツナガはどんなチューンを好むか。

 

これは単純だった。

 

「変わらずだ」

 

「FS型から変わらず機動性に重点を置き、近接の格闘戦に特化したカスタマイズでよろしいですか?新型はジェネレーターからフレームまで一新して、メインの推力を強化して脚部に補助スラスターを増設していますが、とにかく機動性に特化させて」

 

「速度性を無理に引き出しても一撃離脱戦法しかできない。多少速度が遅くても機動性で圧倒すれば私は勝てる。元々近接戦闘しかしない私だから、君が最もよく理解しているはずだが」

 

これには苦笑いを浮かべて「えぇ、一番分かっています」と言ってくれた。彼の正直なところが好きである。阿呆でも分かるぐらいにすり寄らず、かと言って離れることも無く、良い意味で友達の距離感でいてくれた。孤独を志向した私だが彼は例外である。

 

話を本筋に戻し、自分専用の高機動型ザクは格闘戦を想定した機動性特化にするよう注文する。高機動型の四字が付いている時点で高速で且つ軽快に動けるだろうが、変に他に回させないで機動性に特化させた。速力を突け抜けさせる選択肢も存在したのだが格闘戦のためには機動性が重要である。

 

「武装はどうしますか?ビーム兵器も無理したら何とか」

 

「あぁ…いや、結構だな。無理してビーム兵器を使いたいとは思わん」

 

「どうしてです?」

 

「使いどころが分からない。私は旧態依然とした格闘戦を好む人間だから射撃の腕は良くないしね。使えても宝の持ち腐れだよ」

 

(中尉はそうでもないけど)

 

前述の通りで戦闘では格闘が9割を占めるため、ビーム兵器を使う機会が無かった。遠距離から中距離で絶大な威力を誇るビームは近距離になると使い勝手は決して良いとは言えない。この頃の連邦軍は頑張って小型化し、尚且つパイロットの適性から凄まじい戦果を叩き出した。しかし、それが必ずしも私に当てはまるとは限らないのである。至近でビームを使うぐらいなら大出力ヒートホークを使う。

 

また、致命的な問題もあった。

 

「それにいかにも弾持ちが悪そうだ。あくまでもモビルスーツだから無茶があって何発も撃てないんじゃないか?」

 

「あ~そうらしいです」

 

ほれみろと心の中で叫んだ。そう、ビーム兵器は大量のエネルギーを食らう兵器であった。どれだけ高性能な大出力ジェネレーターを以てしても連発すれば弾切れに陥る。一気に戦闘力の低下につながるため、節約することが求められ戦いづらいことこの上なかった。百発百中させられるだけの射撃の腕前があれば問題ないが、少なくとも自分には無く難しい。

 

「やはり。であれば、私には不要だよ。今のマシンガンで十分に戦える」

 

「なるほどですね。マシンガンは変わらず120mmをと。他には?」

 

「ヒートホークは大型を維持してもらいたい。機体のパワーを乗せた一撃は戦艦ですら耐えられないから維持して欲しいな」

 

「はい…ヒートホークは維持…と」

 

「後は特に拘りが無い。今ある物で何とかできるだけの技量は持ち合わせている」

 

ぶっちゃけ贅沢が言えないから要望は最小限に抑え込んだ。それこそ本当の贅沢を言えばマシンガンはMMP80にして、ヒートホークはビームの物にしてほしかったが現在のジオンでは無茶が過ぎた。今の120mmマシンガンとバズーカ等を工夫して使うべきであろう。別に貧弱な武器でもないのだから。

 

「承知しました…では要望に応えてチューンしたいと思います。何かあれば遠慮なく言ってくださいね」

 

「ああ、ジェイに任せる」

 

「はい、お任せください」

 

私は彼を全面的に信頼しているから、細かく注文は絶対につけない。そんなことをしなくても彼は私にピッタリ適しするチューンを果たした。私の信頼を受け取って彼は心を込めて高機動型ザクを仕上げてくれると信じている。

 

さて、ジェイ君と別れると本格的に暇になった。一般兵と違ってエースのため自由の幅が広い。訓練をするにしても実戦を経ており、訓練では得られない経験を吸収した。

 

(一人反省会でもするか)

 

中尉と士官に該当するため一人部屋を与えられており、プライベートが確保されている。ダラダラしてしまいそうだが生き残るためには反省が必須だった。今までは元から持ち合わせている才能と技術におんぶにだっこのため、甘んじることなく研磨を重ねなければあっけなく散ってしまった。

 

やられ千葉ぁするつもりは毛頭なかった。

 

自室に戻ると机の上の反省ノートを開き、日記付けの感覚で今日の戦闘を振り返る。振り返ると言われても敵機を複数撃墜して無傷と最上級のように思われたか。傍から見ていれば無双に等しい戦いぶりでも、コンマ秒の単位で無駄を省けたなど改善点は見られた。飽くなき改善を願う精神が生存を呼び寄せる。

 

「生きるためには反省に次ぐ反省が必要だ。人に謙虚を求めず己に謙虚を求める」

 

これは彼の信条だった。頑張って結果を出した人に謙虚になることは求めない。頑張って結果を出したら褒め称えるべきである。しかし、自分にその時が訪れたら謙虚にならんとした。なお、他人が頑張った人に対して必要以上に謙虚をもとめることは毛嫌いしている。それは当人が決めるべきことであり、他人がああだこうだ言うことは恥を知れと思った。

 

「アクシズに逃れられたら…儲けものかなぁ」

 

遠くて遠くない先を考えて不安に駆られた。

 

続く

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