【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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皆様かなりシーマ様が気になるとのことなので、予定を変更して0083を開始したいと思います。本話は若干程度時間が遡りますのでご注意ください。


汚れ仕事

「シーマ様、今回は良い物が入りましたぜ。あいつらが運んでいたのは試作機でした。見た目からしてジムの系譜だと思います」

 

「今まで分捕った資源と武器と一緒に補給の時の回収でアクシズの遣いに渡してやりな。あたしたちは宇宙の海賊、自由ジオンの通商破壊任務を担わされた汚れ役なんだ。あの時から決まっていた任務を最後まで貫き通すよ」

 

「俺たちにゃ、これぐらいがピッタリ当て嵌まります。表から見りゃ碌でもなしかもしれませんよ。でも、ちゃんと自由ジオンから命じられて動いていますんでね。しかも連邦軍もデラーズ軍も煙に巻く最先端を行っているときたら最高じゃないですか」

 

宇宙に浮かぶ戦争の跡の中にジオン軍の機動巡洋艦ザンジバル級があった。艦の周りでは古いMSが作業に従事している。作業の様子を眺める女性の指揮官は扇子をひらひらさせていかにも機嫌が良いことを示した。上機嫌が移ったのか周りの兵士も上々であり、本当にアットホームな雰囲気を感じられた稀有な例である。

 

「結局のところ、上がマトモになりゃあ環境も変わった。今までと比べ物にならない程に潤った補給に給料が与えられ、命令で言われた範囲内であれば何をしても構わないというお墨付きまで付いてきた。アタシらは良い主人に巡り会えた。感謝してもいいかもしれないよ」

 

「シーマ独立艦隊は自由ジオン軍の精鋭ですから」

 

シーマ独立艦隊の名は表向きには存在しなかった。至極当然である。シーマ独立艦隊はアクシズ自由ジオン軍が表に出さない裏の刺客とする艦隊だったからだ。裏の戦力のため基本的に行っていることは常道から大きく外れて目も当てられない。地球連邦の勢力圏に遊弋している艦隊は近くを通りかかる船を民間か軍かを問わず襲撃しまくり略奪の限りを尽くした。もちろん、事前に降伏勧告を発して手順は踏んでいる。拒んで抵抗した場合はやむを得ず武力を行使して奪った。その対象は極めて広く武器弾薬からMS、艦艇自体までである。奪った物は消耗品であれば優先的に自分達の物として使い果たし、重要度の高いMSや艦本体になると定期又は臨時で回収に来る友軍の仮装巡洋艦に渡した。

 

そんな海賊艦隊を率いるシーマ・ガラハウ中佐の手腕は見事だった。彼女の艦隊へひっきりなしに裏の仕事を与える上層はきちんと高く評価した。彼女自身が最も驚いた程に潤った補給が送られて、給料も危険手当が上乗せされて支給されており待遇は最良と思われる。ただし、あくまでも裏の刺客のため喝采を叫ばれたり、プロパガンダになったりと表向きに持ち上げられることは無かった。それでも昔のように責任を押し付けられ、渋々でも引き受けた汚れ仕事を他者に罵られる日々とはかけ離れる。とても居心地が良かった。

 

明るい表を知らなくても、真っ当に評価を受けて、好待遇を受けては文句も何も無い。

 

「今度の補給で命令が更新される。前情報だと補給は最大級の規模となる代わりに、冗談に済まされない汚れ切った仕事が回されるってねぇ」

 

「なんのなんの。まったく今更ですぜ。何だってやりましょう」

 

「あぁその気概さ。汚れちまった体は幾ら汚れても変わらない。何も恐れるものなんで無いのさ」

 

~後日~

 

地球連邦が再生を諦めたコロニーの残骸にてシーマ独立艦隊は仮装巡洋艦が率いる補給部隊と合流した。仮装巡洋艦は先に略奪品を受け取ると武器弾薬を提供する。提供するのだがシーマは想像以上の潤沢な補給に驚いた。前情報があっても想像を超えている。

 

「後期型ムサイを2隻も送って、更にMSも特殊作戦機が6機もくれるとは何のことだい?」

 

「今度の命令が極めて危険であり生還の可能性が大きく欠けるからだ。ラコック少将はあなた方を裏の戦力として高く買っている。徹底的な通商破壊は連邦軍へ確実に打撃を与えてくれた。その戦果を加えた総合的な勘案を以て、ムサイⅡ2隻と特殊作戦機の支給を判断している。訝しく思われても困る」

 

「いんや何も訝しみは。して、武器弾薬も多いだろうね?」

 

「当然である」

 

仮装巡洋艦の艦長に聞いてしまうぐらいに今回は大規模だった。鹵獲でカバーし切れない消費を予想した補給を遥かに超えており、一戦闘どころか三戦闘できそうな数量と見える。更には後期型ムサイ級巡洋艦2隻に特殊作戦仕様のザクⅡF2型が与えられた。F2型はシーマ独立艦隊が運用するゲルググMに比べ単純な性能は劣る。しかし、F2型はザクの名に恥じない汎用性の高さが魅力であり、特殊作戦の四字から分かる通りで通常型では使えないような特殊兵装を扱えた。

 

「変に勘繰らない方がいい。ラコック少将はドズル閣下の実力主義を受け継いで正当に評価された。貴官の過去がどうであろうと評価には及んでいない。忘れてもらっては困るが、貴官が所属しているのは旧態依然としたジオン公国軍でもデラーズ軍でもない」

 

「自由ジオン軍だろう?ちゃんとわかっているさ。母体の軍が違うから無罪放免ってのは虫が良すぎる気がするけど、ありがたく受け取らせてもらう」

 

「ならば構わない。さて、これ以上の無駄話は止めさせてもらう。我々は連邦軍に補足されては堪らないため作業の完了後直ちに離脱したく思う。偶発的な戦闘が発生しても我々の援護には一切期待できないことをご了承願おうか」

 

「はいはい。毎度のことね」

 

幾度となくこなしてきた業務のため作業は迅速に進み、完了したらすぐに補給部隊は離脱した。彼らは一日でも早く鹵獲品をアクシズに送り届ける使命を背負い、無駄な戦闘は可能な限り回避する必要がある。大急ぎでシーマ独立艦隊から離れていった。彼らを見送るような真似は慎み、自分達も直ちに宙域から離脱する。同様に無駄な戦闘の回避を理由とした。

 

新たなる命令は作業中には確認しない。完全に自分達の時間を得てから確認した。自分の艦も2隻の後期型ムサイも動き出し、部下たちも落ち着いた頃に敢えて1人だけになれる機会を見計らって命令を知った。命令を理解すれば今回の補給が常軌を逸したことが当然と思われる。それだけに強烈だった。

 

「なるほど…デラーズ軍と共同戦線を張って動向を探れときた。そして最終的にはデラーズを裏切って現コンペイトウのソロモンを奪取するねぇ。道具は何を使っても良くて手段は一切問わないってのは変わらないことが嬉しいさ。それだったら、ちょうどアナハイムさんとパイプの建設が完了したから、デラーズ軍も連邦軍も出し抜けてしまう。是非とも、あたしに任せてちょうだいな」

 

過去に色々と行って来たシーマらはデラーズ軍に加わることは困難だった。しかし、デラーズ軍は圧倒的に戦力が不足しているため、過去の事を考えても味方が増えることは拒みづらい。仲間にするのではなくて一時的な協力の共同戦線が落としどころだった。単純に戦力になること以外にもシーマは超巨大企業のアナハイムとパイプを有し、最新型MSの情報などを非合法的手段によって手に入れることが可能である。デラーズ軍はMSの近代化改修を進め、秘密裏に連邦軍が進めている最新のガンダム計画を欲した。したがって、デラーズ軍はシーマを介してアナハイムから様々な情報や機体を抜き取ろうと画策するだろう。そうしてデラーズ軍と共同戦線を張ることと同時並行してアナハイムから抜き取り続け、いるはずのない仕える主自由ジオンに流した。

 

「こいつは楽しいお祭りになりそうだ。デラーズも連邦もどっちも、このシーマ・ガラハウに操られんだから」

 

稀代の女傑はジオン残党と地球連邦の両勢力を渡り歩く。彼女の戦いは自由ジオンに益をもたらすか否か。それはまだ分からなかった。

 

続く

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