【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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アンケートに絡めたお話となります。書いてあることはアンケートによって変更されることがあるため、あくまでもアンケートの参考程度に読んでください。

※中途半端な時間に出ましたが、予約をミスりました。気にしないでください


アナハイムの商人

~9月12日~

 

月にある大都市フォン・ブラウン市にてアナハイム社が開発した謎のMSが完成した。地球連邦軍は前の戦争にて伝説たるガンダムに酔い、ガンダム計画を練るとアナハイム社に発注する。旧ジオンの企業を呑み込んだアナハイム社は兵器の開発から生産まで全てを一挙に引き受けるマンモス企業だった。新時代を思わせる新型機を作っては納品しており、市場は彼らによる事実上の独占状態であって誰も太刀打ちできないのである。

 

しかし、それだけの巨大企業であれば必ず綻びが生じる。旧ジオン企業を吸収して肥大化すればするほどに副反応が出てしまった。内部分裂を防ぐために内部で強烈な統制を置くだけでなく、月面の一部工場では軍事基地に匹敵する監視及び警備体制を敷いている。職員は誰も動けないはずであった。

 

ただし、アナハイム社も所詮は民間企業の利益追求を第一とする。

 

美味しい取引に応じないわけがなかった。

 

相手が例の勢力であろうとも。

 

~アナハイム社・グラナダ工場~

 

月面第二都市であるグラナダにアナハイム社の巨大工場が存在した。一年戦争の間はジオン占領下にあったことを逆手にとりジオンの技術を吸収して成長している。もちろん、ジオン系の人間が多数いることは説明に値しなかったが、都市は常時厳重な警備体制が組まれて市民は裏で自由を制限されがちだ。ただし、物事に完全は存在しない。僅かな隙を突いてグラナダ工場を訪れる者がいた。

 

「わざわざのご足労ありがとうございます。ケリィ・レズナーさん」

 

「前置きは結構です。我々との商談を詰めましょう」

 

「それでは。まず、例のガンダム一号機及び二号機は既に連邦軍に納品しました。どうやらオーストラリアのトリントンで試験を行うようですね。もう1機はまだ開発が終わっておらずラビアンローズに置かれていますが予約済みとなります。最後の1機については仲介人『花車(ガーベラ)』へ渡す予定です。ちゃんと納期は厳守しましたよ」

 

「よく分かりました。ひとまず、先に成立した契約は無事に履行されると見ます。では、次の契約へと移りましょう」

 

商談が行われたグラナダ工場も例に漏れず監視されている。だが、隅々までミリ単位で監視されているとは言っていなかった。何の変哲もない雑多な物をしまっておく物入れの小屋には点検口を称した隠れ階段が存在する。階段を降りた先には快適な環境で交渉を行える応接室があった。盗聴などの漏洩をぴしゃりと断つ秘密基地が作られている。

 

そんな応接室に通されたのは内部職員に扮した男2人であった。一応ながら片方は会社を代表するため何ら問題ない。もう片方が完全な部外者で本当は面会が許されなかった。

 

「私も正直言って地球連邦には辟易していて、いつまでも経ってもガンダムとガンダムと叫び続ける。いやぁ理解の余地はありますがね。それでも、ずっと叫んでいては先に進まないのです」

 

「だから我々のプランに乗った。違いますか」

 

「その通りです。幅広く機体を開発・生産するような広い視野を持たないと将来は開けません。もちろんガンダムだって作りますが、一辺倒はどうも私には合いませんでした。そこで、皆さんから頂いた契約内容を読んで賛同し、きっちりと履行させてもらおうと思います」

 

「遠回りしてしまいましたが、4号機納品の後にサイサリスβを提供してもらえるのですね?」

 

「はい、お約束します。小型弾頭もセットです」

 

交渉はとんとん拍子で進んでいる。謎の代理人ケリィ・レズナーとグラナダ工場のお偉いさんは第二弾となる契約を結んだ。交渉の場についた代理人は何を代理して来たのか。それは次に綴られたお偉いさんの発言から分かった。

 

「商売人としては将来性に富むアクシズの皆様の方が色々と都合が良い。デラーズ軍みたいな一度切りは論外ですし、地球連邦のような不誠実な者共とは付き合切れなくて困ります。意外と忘れがちなのはアナハイム社は民間企業なのですよ。利益を出すことを第一としているわが社は利権を漁るためには相手を制限しません。ただし、見定めは厳しくならざるを得ない」

 

「アクシズ本国も喜ぶでしょう。ジオンにとってガンダムは仇敵に捉えられますが、勝つためには手段を選べません。禁忌のMSを得る恥はどうでもいいことになったわけです。私もこうしてアクシズ自由ジオンから頼まれてスパイ活動を働いていること。それは私が家族を養い生き残るため。グラナダ工場の生存戦略には大いに賛同します」

 

「お互い、こういった仕事が良く似合うようで」

 

ケリイ・レズナーはグラナダの住人だった。この場の交渉を除いた彼は何の変哲もない一般市民である。ジャンク屋として働いている身だが実際は旧ジオン軍の人間であり、ぶかぶかのジャケットで隠されているが片腕を戦争で失った兵士だった。当然ながら戦えないため旧軍(強硬派残党軍)から見捨てられ、グラナダでひっそりと一般市民に紛れて潜伏して過ごす。そんな生活で世話を見てくれる優しい女性に出会ってジャンク屋で生計を立ててしぶとく生き残った。当初は彼女に世話になるだけであり何とも無い関係だったが、次第に大切な人だと思い至るようになって、いつしか2人は家族になっている。自分に家族が出来れば多少無茶苦茶でも今の生活を打破しようと試みるしかなかった。

 

そして、彼はアクシズ自由ジオンのスパイへ転身した。残党軍ネットワークを通じて極めて危険なスパイの募集を知り、悩む間もなく栄えある軍人から闇に塗れた諜報員に変わった。家族を養っていけるだけの固定の給料に加え、活動の結果次第では追加報酬が与えられて、彼は愛する人と一緒に何不自由なく暮らせるだけの貯金を得る。しかし、ジャンク屋から良い環境の表に出ると仕事に支障をきたした。したがって、報酬は真っ当に使わずにジャンク屋稼業で培った裏ルートを通じて物品の購入につぎ込む。少なくとも市民が手に入れられることは不可能な高品質な軍製パーツを大量に仕入れて。

 

いつか、愛する人と一緒にグラナダを出てアクシズに下る。

 

物理的に大きな戦果を引っ提げて認めてもらうつもりである。

 

「話が戻ってしまいますが、サイサリスβはいつ頃になりますか」

 

「調整が完了すれば直ちに明け渡せます。毎度毎度、納品より先に入金してくださるので早めを心がけています。ただ、なんせ禁忌の機体ですから一筋縄ではいきませんのですよ。厳重に梱包した上で書類をちょろまかして、何とか隠し通すには相応の用意があります」

 

「大変なご面倒をおかけして申し訳ありません。サイサリスβのアトミックキャノンがあれば地球連邦軍を脅かすことができます故、どうかこれはご内密に」

 

「えぇ、任せてください。これでも私はグラナダ工場の責任者です。もしもですが、武器弾薬に限らず艦やMSまで不足が生じて追加の発注があればすぐにご連絡ください。可能な限り提供させていただきますよ。大口であれば割引をつけますしね」

 

「お願いします。ただ、グラナダ工場には別のご協力をお願いすることが考えられます」

 

「ほう…それは?」

 

これにはアナハイム社グラナダ工場の責任者も食らいつくしか無かった。詳細が全く見えていなかったが面白いことは確実だと読む。

 

ケリィの口から語られた言葉は面白いの範疇に収まらなかったが。

 

「グラナダ蜂起です」

 

「ケリィさん…」

 

「はい」

 

「そのお話は詳しく細部まで聞けますかな?割引率を引き上げなければなりませんので」

 

続く

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