【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

29 / 113
酔っ払いは二話投稿するんですねぇ。


勝者無き戦いの勝者

地獄のコンペイトウ襲撃の翌々日には分かり易くコロニーが地球へ迫った。奪われたコロニーは月へ落ちる動きを見せ、全てを仕組んだはずのデラーズ・フリートの交渉を決裂させた。しかし、月の商人たちは怒って自衛の名の下に軌道変更を試み、見事に成功させてコロニーは一転して地球への落下ルートに乗ったのである。

 

ここまではデラーズ・フリートの目論見通りに進んでいたのだが、ついにアクシズ自由ジオン軍が牙を剥くことになった。デラーズ・フリートを率いるデラーズ座乗の総旗艦グワデンがシーマ艦隊(デラーズ視点)に包囲されたのである。

 

「最初からこのつもりだったか」

 

「悪いね。アタシはあんたより遥かにましな主人を見つけたのさ。正直なことを言うなら、古臭いジオンに付き合う義理なんて無かった。どうでもよくてあくびが出ちまうよ。今までご苦労さんだったね…ここから先はシーマ様の独壇場だい」

 

「哀れ、志を持たぬ者を導こうとした、我が身の不覚であった」

 

「志で飯が食えるかい?そんなくだらないことがあるか。宇宙の海賊を舐めるんじゃないよ…お爺さん」

 

グワデン包囲についてはデラーズ軍も把握していたが周囲をガッチリとザンジバル級と後期型ムサイ級、精鋭MS隊が固めているため突破は不可能に近かった。また、デラーズを人質に取られており、彼に率いられ続けたことが災いして単独での行動を億劫にさせてもいる。したがって、哀れな残党勢力に逆転の機会は与えられなかった。

 

だが、誰よりも彼に付き従って戦い続けた兵士は強引にも突破を画策する。

 

「おのれぇ!シーマ・ガラハウ裏切ったかぁ!」

 

自機のガンダム試作二号機をライバルとの戦闘で失い、主までをも脅かされたアナベル・ガトーは怒りに燃えた。アクシズから支援の一環で頂戴したノイエ・ジールで迫ったが機体を強烈な振動が襲う。恐ろしく強いビームの直撃を受けたらしく、鉄壁のIフィールドでも衝撃を通してしまった。

 

「ガトーォォォォォォォ!!」

 

「くっ!こんな時に連邦軍の手先が来るか」

 

タイミングが悪いことにコロニー迎撃及びデラーズ・フリート殲滅を図る地球連邦軍が追いついた。艦隊の殆どを失えども小振りな部隊は残り、緒戦から猛追撃を行うアルビオンが命令を無視した決死の思いで突撃する。ノイエ・ジールを襲った攻撃を遡ると自機に匹敵するスピードで迫る巨大な機体があった。

 

「ふん…連邦軍もまだ戦力を残していたか。いいだろう…飽きるまで相手する!」

 

「ここで決着をつける!」

 

ノイエ・ジールを襲ったのはアルビオンがラビアンローズから強奪したガンダム試作三号機である。ステイメンと呼ばれる機体本体にモビルアーマーとなる外装を張り付けたモビルスーツでもモビルアーマーでもある超兵器だった。硬い防空網を圧倒的な火力と防御力を以て崩し突っ込む。それを操るパイロットの目にはアナベル・ガトーしか入らなかった。奥の先で繰り広げられるジオンの分裂はどうでもよいのである。

 

両者の最終決戦が始まった頃にはデラーズとシーマの意味を為さない会話も終わりを迎えようとした。

 

「行け、ガトー!儂の屍を踏み越えて!」

 

「最後まで叶わない自分の願いを信じたことは評価してあげるよ」

 

グワデンの艦橋目の前に浮かんだシーマのガーベラテトラは閃光弾を撃ち上げた。単色の閃光弾が炸裂すると即座に極太のビームがグワデンを焼いていく。閃光弾発射の直前にシーマ独立艦隊は最高速で動き出し、シーマらのMS隊は急ぎ離脱を開始しする。そして、包囲が解かれると同時にエギーユ・デラーズを乗せたグワデンは轟沈した。

 

総旗艦を失ったデラーズ・フリートは行くあてがなかった。茨の園に戻るとしても総司令官を失って指揮統制は崩壊して先が読めない。月に降りる選択肢があったが行動する前に彼らは一方的な災禍に見舞われた。

 

「哀れなことよ。良い主人のミネバ・ラオ・ザビが持つアクシズに行けばよかったものを。こうして下手に反逆するから粛清されるのにねぇ」

 

「シーマ様、コンペイトウの動乱は成功したようです。コンペイトウの守備隊は基地司令官を捕縛するクーデターを成功させて前衛艦隊に降伏を申し入れました。工作員が上手いことやったようで」

 

「よしよし、これでとりあえずの家が出来たね。後はラングと一緒に大逆を犯した哀れで愚かな連中を粛正するよ。地球連邦軍は大慌てしてコロニー落としを止めに入るはずだから、こっちまで来ることはあり得ない。落ちるわけがないのに可愛い事だった」

 

「味方を撃つってのは気が引けますが、あれだけシーマ艦隊を拒んだ連中なら話がちげぇますわ。俺たちを除け者にした馬鹿野郎どもに鉄槌を下してやらんと」

 

デラーズ・フリートとの共同戦線はとっくに破綻した。とは言え、腐っても味方であるジオン軍を撃つことは忌避されるべき行為である。綺麗な人であれば見逃しておくだろうが、残念ながらシーマ独立艦隊はアクシズから粛清を任された役人だった。更に言えば、負わされた汚れ仕事をこなした功労者の自分達を罵って受け入れを拒んだ恨みがある者達であり、今こそ復讐の機会が正当に与えられた以上は手を下さないわけが無く。

 

「お前達!こっちには大義があるんだよ!ラングの射線に気を付けながら完膚なきまで叩き潰してやれ!」

 

その頃、大逆を裁いたラングはシーマの離反を知った残党軍を薙ぎ払った。

 

~ラング~

 

「モニク!下方に敵機!」

 

「世話が焼ける子ね。変わらない」

 

ラングは一年戦争の時にア・バオア・クー防衛線で投入された超ド級モビルアーマーだった。ただ、厳密にはモビルアーマーよりかは移動要塞と呼ぶべきである。高火力なメガ粒子砲に対艦大型ミサイル、対空バルカン砲、大型クローアームと火力は艦隊に匹敵した。攻撃に限らず対ビーム装甲とビーム攪乱膜を展開する擲弾筒によって広範囲の味方を守護する。ビグロを流用した未完成の時点で脅威だったが正規のパーツを得て、近代化が推し進められたことで完全無欠の要塞と化していた。しかし、機動性の劣悪さは否定できずMSの護衛を必要としており、なんやかんやでパートナーとなった戦友に援護してもらう。

 

「ヅダⅡの機動力の前にリックドムⅡは赤子同然」

 

「さすがモニク」

 

「この程度の雑兵は敵じゃない」

 

ラングを護衛する機体は見慣れない機体だった。それもそのはず、コンペに敗北した欠陥機ヅダの改修機である。ヅダは自動分解する脆弱さが致命的であったが、まだ力を蓄える段階では贅沢を言えず近代化改修を加えて継続使用された。欠陥機とは言うものの基本設計は優れており、ア・バオア・クー戦を生き抜いたことから決して馬鹿には出来ない。大出力土星エンジンと可変式スラスターのおかげで主力機が捉え切れない動きを可能とした。

 

「大人しく従わないからこうなる!」

 

機体にはマシンガンやミサイルが撃ち込まれるが厚すぎる装甲が弾き返した。お返しにと小型メガ粒子砲が周囲一帯を焼き払ってリックドムⅡからザクⅡF2型まで全体的に裁きを施す。

 

「デラーズ・フリートはここで終わる!」

 

この戦いに連邦軍は介入できなかった。地球に刻々と迫るコロニーをずらすため必死であり、とてもだが漁夫の利を得に行けない。また、連邦軍は秘密裏にシーマからアクシズの粛清をそれとなく知らされていて恩を貸し付けられていた。デラーズ・フリートを叩くのはともかく、アクシズの軍勢を叩いては恩を仇で返すことになる。下手に仇を返せば小惑星を落とされかねかった。

 

アクシズの粛清は淡々と行われた。逃亡を図ったデラーズ・フリートは奇しくも地球連邦軍の艦隊に近づいてしまう。そして、一様に嘗てのソロモンを焼いた超兵器の前に躍り出てしまう。

 

この紛争は誰の勝利でもないように思われたが、なんてことはなく、アクシズの一人勝ちだった。

 

続く

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。