【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
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ジオン残党軍の中でも生粋の強硬派であるデラーズ・フリートの蜂起は最終的に失敗した。星の屑作戦は本性を現したシーマ・ガラハウ中佐の裏切り及びアクシズの粛清と呼ばれる内乱が契機となって不完全燃焼で終わる。ガンダム試作二号機の核攻撃は地球連邦軍の宇宙艦隊を半壊させ、再建には長期間を要する大損害を与えることに成功していた。しかし、本来の目的である地球への再度コロニー落としはシーマの暗躍に伴い怒った月の商人が阻止した。
したがって、最後の結果としてデラーズ・フリート蜂起は彼らの敗北を意味する。
だからと言って、地球連邦軍が栄えある勝者とは限らなかった。前述の通り、宇宙の戦力が大きく失われて再建には長期間を見込んだ。最悪のコロニー落としを回避したものの、あと一歩のところまで追い詰められて実行されかけた。強い強いと宣伝した地球連邦軍がギリギリまで詰められたことは否定できず、宇宙の覇権が酷く傷つけられる。ただし、本当に致命的だったのはデラーズ・フリートではなかった。
コンペイトウのクーデターこと『ソロモン動乱』が致命傷である。
当時のコンペイトウ守備隊はデラーズ・フリート襲撃による艦隊消滅を目の当たりにしただけで終わらなかった。守りが剥がされて無防備に等しい要塞は突如として後方に出現したジオン軍艦隊とコロニーと言う超質量兵器を突き付けられる。コロニー落としを暗に示されて要塞丸ごと脅かされた。しかし、守備隊は頼もしい艦隊を壊滅させられた怒りと敵愾心で対抗できるはずだった。
いいや、そんな感情は生まれない。なぜなら、当時の守備隊兵士は地球連邦に対する不信感が拭え切れず、要塞が宇宙に位置した都合上親ジオンの空気が漂っていた。そんな状況で鋭利なナイフを喉元に突き付けられたのである。徹底抗戦で増援を期待する基地司令官に嫌気が差した者たちは思い切ったクーデターを敢行した。どれだけ巨大で堅牢な要塞でも外からに強いだけであり、内からの攻撃には極めて脆い。
地球連邦軍の宇宙要塞コンペイトウは基地司令官を捕縛したクーデター軍に占拠され、隅々まで掌握した彼らは謎のジオン軍に降伏した。便宜上で降伏と呼ぶが、実際には計画され尽くした工作活動である。そして、アクシズの謀略だったことは言うまでもなかった。事実、クーデター軍の中枢の大半はアクシズの工作員・スパイと判明している。彼らは要塞内にて巧みな扇動とプロパガンダを駆使して親ジオンを浸透させた。己の謀略であるクーデターが成功したことを知ったアクシズは直ちに増援を派遣することを決定し、クーデターに地球連邦軍が介入して奪還されることを許さない。なお、宇宙艦隊が壊滅した軍に出来ることは無かった。何をどう足搔いても介入は不可能となる。
この一連の紛争は恐ろしいことにアクシズの独り勝ちに終わる。言い換えれば、真なる「漁夫の利」だった。アクシズにとって目の上のたん瘤で憂慮すべきデラーズ・フリートは消え去り、同時に地球連邦軍の宇宙戦力が壊滅した結果は大勝利でしかない。
クーデター軍を吸収したアクシズ軍はコンペイトウにて大規模な集会を開催した。降伏した兵士も含めた守備隊がズラッと連なり、要塞外では連邦軍鹵獲艦艇にジオン軍艦艇が混じった混合艦隊が壁を作り外敵を通さない。皮肉を込めた鉄壁の警備体制の下で嘗ての地を取り戻したジオン軍は宣言した。
「コンペイトウと言うつまらない名を捨てる時が来た。地球連邦の圧政から解放された我らの母たる地はソロモンとなった。ここ懐かしきジオン軍のソロモンだったのだ。この地に集え、宇宙の民のため戦うジオンの兵士たちよ」
壇上に立ち演説するアクシズ自由ジオン軍少将ラコックは一呼吸を置いた。
「ソロモンは全ての宇宙の民を卑劣なる狩りから守りぬくだろう。我らはソロモンに金の盾を結成することを宣言する。金の盾は宇宙の民を圧政から救い出し、如何なる圧力を弾き返す鉄壁の防壁である」
会場の雰囲気は最高潮に達しつつあったが、大半な仕込まれたサクラである。いわゆるヤラセの盛り上げ役だった。
「金の盾に集え!スペースノイドたちよ!」
全部台本通りに進んだ集会は無事に閉幕した。この時点を以てコンペイトウのクーデターは完全に終息し、名がソロモンに戻った宇宙要塞にスペースノイド支援組織『金の盾』が結成される。表向きはクーデター軍とジオン残党軍が融合し生まれた対地球連邦の反乱組織だが、実際は自由ジオン正規軍がコンペイトウを占領しただけである。デラーズ紛争の地球連邦のごちゃごちゃに便乗した見事な戦略だった。
彼らは地球連邦軍が復旧した要塞をほぼ無傷で入手し、内部に残された連邦軍のMS及び艦艇も無血で鹵獲する。クーデターに乗った前衛艦隊はスライドしてソロモン防衛艦隊となり、司令官ラコックがソロモン最高司令官に就任した。アクシズ本国の軍のトップは摂政ハマーンが兼任することが決まっており、アクシズとソロモンの二国体制が敷かれている。本来ソロモンの人間であるラコックが里帰りで就任することは至極自然なことであり、何処からも異論は一切が出なかった。
就任したてほやほやのラコック少将は直ちに仕事に取り掛かる。ソロモンを前哨基地とした以上は大急ぎで一先ずの戦力を整えなければならなかった。
「工場の生産ラインは可能な限り流用し、第二次及び第三次統合整備計画のMSを量産できる体制を構築してくれ。ただし、一部はそのままで残して置き、鹵獲した連邦軍機の再生産を行わせる。嘗て連邦軍が鹵獲したザクを攪乱作戦に使用したことがあった」
まずはソロモン内工場の整備だった。現在は地球連邦仕様となっているため最小限の手入れでジオン仕様に変え、アクシズ第二次統合整備計画で生まれた機体を優先的に量産させる。持参したMSもいるが地産地消をした方が好ましい。しかし、一部は手を入れずに残して敢えて連邦軍のMSを生産させた。純粋な連邦軍兵器は偽装コードを使ってスパイの潜入や攪乱作戦などの特殊部隊向けとされる。前の戦争において連邦軍は鹵獲したザクⅡを用い、地上の各補給所を襲撃する作戦で地味ながらもジオン軍を苦しめた。その苦い思い出をそっくりそのまま使うつもりでいる。
「とにかく急いでくれ。おそらくソロモンには我々を頼って散り散りになったジオン残党軍に加え反地球連邦組織まで受け入れ対象の幅が広い。それに例のジオン残党軍掃討を掲げるティターンズがいつ来てもおかしくないぞ。宇宙艦隊が壊滅した奴らに速攻は不可能だが、我々と明確に敵対している以上は警戒して備える」
金の盾が結成された最もの理由はティターンズの存在だった。ティターンズはデラーズ・フリートの蜂起を受けた地球連邦軍がジオン残党軍を徹底的に殲滅することを掲げ、各地のジオン残党軍及び不穏分子を消す軍隊である。敢えて説明せずともご理解いただけるが、何をどうしても自由ジオンに合うわけがなかった。コチラから手を出さずともアッチが一方的に殴りかかる危険性は極めて高いと言えよう。そのためには正しく「盾」が必要だった。
(アクシズが地球圏へ帰還するまで2年から3年。何とかソロモンで耐えなければならない。一番嬉しい事はティターンズ結成に反発した勢力が立ち上がり、地球連邦内部で勝手に争ってもらう事だが上手くいくか分からない。本国の増援も到着には時間を要するから自分達でどうにかするしか手はないのだ。ドズル閣下の前に立てるだけ頑張らなければ)
金の盾を作るはラコック少将の覚悟。
続く