【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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アンケートは本日19時をもって締め切らせていただきます。

以下の本編はグリプス戦役への導入的な話のため、地の文が多めであり少し短めとなっております。

※アンケートを投稿日22時半過ぎに更新


狼煙は上がった

0087年3月

 

ティターンズが掲げる「ジオン残党狩り」は既に徹底的なスペースノイド弾圧と化していた。そして、起きてしまったサイド1の「30バンチ事件」が契機となる。スペースノイド達の堪忍袋の緒は派手に切れ、中立を宣言していた各々は自らの存立が脅かされることを危惧して反ティターンズの狼煙を上げた。更には地下で活動していたスペースノイド派のエゥーゴが正面に出る。

 

ティターンズと真っ正面から衝突するエゥーゴは圧倒的な不利を覆すため、水面下でスペースノイド支援組織『金の盾』と接触した。ソロモンはあくまでもスペースノイドによる反連邦組織であってジオンの塊ではないと自称するが、どこからどう見てもジオンの塊でしなく、エゥーゴは正直なところ付き合いたくない気持ちが強くある。しかし、贅沢は出来ず敵の敵は味方理論を展開してソロモンの支援を要請した。要請を受けたソロモンは工場をフル稼働させ、エゥーゴ独自のMSを生産すると補助艦艇に積載して出荷する日々を送る。

 

工場を覗けば実にジオン味が強い機体が並んだ。

 

「リックディアスの生産を優先しろ。余ったらソロモン防衛隊に回せばいいんだぞ」

 

「仲間に納入するジムカスタムとジムキャノンⅡはどうしますか?」

 

「連邦機は銀の盾で生産してもらえることになった。ちゃんとお願いしてあるから気にするな!」

 

「はい、わかりました!」

 

工場長が檄を飛ばす先に並ぶのは嘗てのリック・ドムを思わせる機体であるが、これはエゥーゴがアナハイム社と共同開発したリックディアスだった。新型のγ合金を分厚く使った堅牢な重装甲MSであり、更に内部構造は革新的なムーバブルフレーム(厳密には初期型のブロックビルドアップ)のため極めて生存性が高い機体となる。どうしても人的資源に乏しいエゥーゴには機体を失ってもパイロットを生き残らせて再び戦わせる人員の保護を図らせた。

 

「それにしても、俺達ジオンの技術がエゥーゴに使われるなんてな。アナハイム社で磨かれた技術は反連邦組織で輝くか。まぁ、結局はジオンが全部持って行くから帰って来る」

 

リックディアスは新機軸を詰め込まれているが大半はMSの生みの親であるジオンの技術だった。アナハイム社は先の戦争後にジオン企業を吸収して技術を蓄積しており、アクシズとの繋がりから常時更新が行われて新型機はジオンに里帰りする。γ合金はアクシズ工作員がアナハイム社とエゥーゴに伝え、ムーバブルフレームの基となったブロック構造もアクシズ考案だった。したがって、奇しくもエゥーゴ主力機体はジオン機と言えてしまう。

 

しかし、これではアクシズのジオンに益が薄すぎるではないか。アナハイム社との提携は美味しいがエゥーゴに持って行かれると技術的な優位性が失われ、いつか必ず連邦軍に回ってしまうことが予想された。自ら有利を捨てる真似は当然狙いが存在する。アクシズは各地から諸々を吸収する遠回りをしながら地球圏突入を間近に控え、時機を見計らってアクシズはこの事実上の内戦に便乗して掻っ攫おうと画策した。与えた技術を回収して、尚且つ彼らが独自に発展させた物を全部吸い取るつもりである。

 

「建造したハンニバル級空母にはリックディアスとネモが乗るか。機動性の悪い連邦軍空母を押し付けて在庫処理とはラコック少将の考えることは悪いなぁ。既に戦闘艦はムサイⅢとチベ改Ⅱ、ザンジバルⅢを揃えている。戦闘空母はドロスを改修して建造してある。細々と作っている連邦艦は邪魔になるが、銀の盾でジムカスタムとジムキャノンⅡを生産しているからそっちに回せばいいだけだ」

 

委託されて生産したリックディアスはハンニバル級空母に載せて丸々エゥーゴに納めている。ハンニバル級は新型かと思われるかもしれないが、何てことは無く連邦軍のコロンブス級輸送艦の改造空母だった。動乱の際に鹵獲した輸送艦は高い積載能力を活かした空母への改造を行い、敵を誤認させてMS隊を送り込む広義の仮装巡洋艦に該当する。工場長の独り言から察するとハンニバル級はさほど重要視されておらず、別に主力級の空母を有したらしい。

 

ソロモンは残党軍艦艇を掻き集めて改修を施した急造品を本格的な主力艦艇に昇華させた。艦自体は先の戦争から変わらないが、どれもこれも連邦軍の戦艦及び巡洋艦と殴り合える火力と高いMS運用能力を両立させている。特筆すべきは超大型空母ドロスⅡだった。素のドロスはソロモンと関係が薄いア・バオア・クー防衛戦に投入され、180機もの機体を積載して宇宙へ放出することを可能とする。一隻だけで防壁を為すためソロモン防衛の切り札として新しく設計し直し新造された。元々は輸送船のため軍艦としては機動力に欠け、空母の割には対空戦闘を苦手とする脆弱さを補う護衛艦隊を必要とする。よって、新造艦は運用能力をそのままに対空防御兵装を増設して機動性を気休め程度だが向上させた。

 

ただ、彼らは生粋のジオン艦以外にも連邦艦を建造しているはずである。動乱で接収した艦をコピーして建造する連邦艦は引っ張って来たコロニーに預けた。闇取引で頂戴した廃コロニーは全体的に壊れていたため、最低限の復興を図り工場及びドックを修復する。未だに工事は続いているが小規模ならばソロモンからスライドされても問題なかった。

 

なお、当該コロニーは『ソロモンの金の盾』と双璧を為す『コロニーの銀の盾』と名付けられる。外見は戦争で傷ついたボロボロの廃コロニーでも中身は綺麗に整えられており、本拠地ソロモンと並んでスペースノイドの自治を叫ぶ場であった。中で生産する機体は旧式のジムカスタムとジムキャノンⅡである。両者も接収した機体のコピー品だが、どちらも連邦軍らしい堅実な機体で十分に戦う力があった。第三次統合整備計画で主力機体が交代しているジオン軍には不要のため、主に協力関係にある各地の反連邦組織に支給している。自前でMSを開発はおろか生産できないゲリラ組織に与えて恩を売っていた。

 

「リックディアスの追加発注きました!」

 

「お~し、こうなったらやけだ!ラインを全部まわしちまえ!」

 

元気になった工場長はとても楽しそうだった。今度も戦いもジオンが得するだけなのだから。

 

続く




さて、次回からグリプス戦役です。アンケート結果をお楽しみに。
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